問題児たちが異世界から来るそうですよ? ━魔王を名乗る男━ 作:針鼠
ジリリと鳴り響く目覚まし時計を布団にもぐったまま伸ばした手で止める。しばらくもぞもぞと無駄な足掻きをしていたが、やがて観念して僅かばかり重さの残る瞼を持ち上げゆっくり体を起こす。
ベットから退けて窓をあける。太陽の日差しに目をしばたかせ、雀のさえずりが耳を打ち、ようやく体と意識が覚醒してきた。
コンコンと部屋の扉が叩かれる。
「どうぞー」
声を返すが中々扉の向こう側の人物は入ってこない。
「どうぞー」
もう一度声をかける。するとゆっくりノブが回り、ギギと軋みをあげながら扉が開かれる。その向こうからは――――なんともやる気のない虚ろ気な瞳の少女が立っていた。
白い長袖のブラウスの襟元には赤い棒ネクタイ。紺色のブレザーは少しサイズが大きいのか、袖が手のひらにかかってしまっている。そして、紫がかった髪を縛るリボンとチェックのスカートの下に履いたニーソックスの斑模様が彼女のトレードマーク。
そんな彼女へ、朝から愉快な声をあげるのは――――高校生、織田 三郎 信長だった。
「やあおはよう愛しい愛しい我が妹ペストちゃん! 朝から健気に大好きなお兄ちゃんを起こしにきてくれるなんて僕は世界一幸せものだなぱうっ!?」
ペストの渾身の拳が深々とパジャマ姿の信長を穿った。
「あ、ぐ……っふふふ、は……恥ずかしがっちゃってー。可愛いんだーもう」
「寝言を言うならそのまま死んで一生寝てなさい」
冷たい視線と言葉を残して、彼女は役割を終えたとばかりに部屋から立ち去る。
★
制服へと着替えた信長は自室のある二階からリビングあるの一階へ降りてきた。
「おはよー」
先ほどのダメージもなんのその、飄々と敷居を跨いでやってきた彼を横目で見るなりソファーの上で体育座りの格好をしている妹はあからさまに舌打ちをした。
そんな態度を歯牙にもかけず信長はその足で香ばしい香りと小気味いい音をたてるキッチンへ。
キッチンを覗いていの一番に目に飛び込んできたのは美しい金髪。今は料理中とあって後ろで束ねているその髪の持ち主は、見た目十に前後といった少女だった。彼女はキッチンを覗く信長の気配に気付いたのか踏み台の上に乗ったまま後ろを振り返り、柔らかな微笑みで迎えてくれた。
「おはよう信長」
「おはよー、レティシアお母さん」
「もう少しで朝食が出来る。待っていてくれ」
「はーい。毎朝こんなに可愛いお母さんの手料理を食べられるだなんて、僕は本当に幸せだなぁ」
「まったく、朝から親をからかうものじゃない」
あはは、ふふふ、と和やかな朝の談笑が交わされる。
「向こうのテーブルにお皿を並べておいてくれ――――ああ、そうだ。ペスト」
「………………」
「ペストー」
「…………」たっぷりの間を取ってから「なにかしら、オカアサン?」
「今日はえらく不機嫌だな。なにかあったのか?」
「……べつに」
はっ、とやさぐれたように渇いた笑みを浮かべるペスト。
「まあいい。もう少しで朝食が出来る。その前にあの子のおしめを替えてやってくれ。さっきぐずっていたからな」
「! ええ喜んで」
ここにきて初めて楽しそうにニタリと笑った彼女は足取り軽く隣の母の寝室へ。母の丈には絶対合わない大きなベットの横、木製のベビーベットが激しく揺れていた。それを見たペストは笑みを深めて今度はゆっくりとした歩調でベビーベットに近付く。彼女が近付く度、ベットは激しく揺れる。
「さあおしめを替えてあげるわね。貴方は私の可愛い弟だもの。当然よね? ――――ねえ、ジン?」
「ば、バブウウウウウウウウ!!!!」
一人の少年の、一人の男の尊厳は、こうして彼女の憂さ晴らしによって粉々にされるのであった。
続く!? 少なくとも次話には続きません。
と、いうわけで現実から逃げると書いて現実逃避な今日この頃。内容もおかしい。
>どうもこんばんわー。そしてお久しぶりです。勉強からちょっと逃げておまけを書いた私はもうだめだ。やる気があるない以前に駄目だ。ダメダメだ。あっははっは!!!
>これは以前言っていた超妄想の学生編。でも前回の本編逸れてグダってしまった失敗を活かしてこれの続きは未定です。
今度からおまけは突発的に。そして四コマを見習って短く!てな感じで唐突に割り込んでくるスタイルにしました。
>さてさて、こうして更新してしまったものの、これで次の更新は今度こそ試験が終わってからなのです。(フラグじゃないよ!)
試験が結局八月末なので、次更新は九月ですかねぇ。それまで問題児最新刊も読むのは我慢!買うけども!!
>追伸
コスモ#こすもさん、以前にリクエストいただいてた交渉場面ですが、途中まではいけましたがやっぱり形になりませんでした。申し訳ないっす。