問題児たちが異世界から来るそうですよ? ━魔王を名乗る男━   作:針鼠

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九話

 ――――人間より素晴らしいものなどこの世に存在しません。

 

 

 かつて、人間を誰よりも愛した彼女(・・)はそう言った。

 

 

『来るがいい英傑達よ! そして踏み越えよ! 我が屍の上こそ正義である!!』

 

 

 月龍と太陽龍。箱庭における現状最高の切り札と呼べる一手を前にしても、アジ=ダカーハは晒された心臓を隠しもせず堂々と立ち塞がる。

 

 何故ならいつだってそうしてきた。試練たるアジ=ダカーハはそれ以外のやり方を知らない。己こそ英傑であると名乗りを上げる者達が、自身の力と内に眠る勇気を振り絞って立ち向かってくる。時に栄誉の為、時に名声の為。友人……仲間、恋人、家族。愛する者を守る為にこの悪の巨峰に立ち向かう。時には勝てないと知りながら、それでも彼等はあらゆる愛する何かを守る為に戦った。

 

 永遠を生きる神には無い人間の儚き輝きと愚直さを知っていたから彼女は涙した。

 

 

 ――――ならばこそ悲しいのです。

 

 

 全ての人の憎悪を背負う為だけに生まれた彼女は、己を糾弾する人をそれでも愛したが故に泣いたのだ。

 

 

 ――――彼等の滅びが、絶対的であることが。

 

 

 そう、人類は滅びる。どうあっても滅びるのだ。拝火教の経典では勧善懲悪を示すものの、それは所詮神霊を視点として綴られたもの。拝火教の枠組みを越えて、より強大な超越者として俯瞰した彼女には人類の結末が見えてしまった。抗うことの出来ない絶対的な滅びの道が。

 

 彼女にそんな力が無ければ、彼女が人を憎んでいれば、そんなことを知らずに済んだのに。何度そう思ったことかしれない。しかし彼女にはそれだけの力があり、彼女は人を憎みはしなかった。罵声を浴び、謂れのない事でさえ憎まれる、あらゆる人の憎悪を背負う為に存在した彼女は人の輝きを愛した。ならば、こんな『もしも』は意味の無い話なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アヴェスター起動。相克して廻れ!』

 

 

 二元論の最速構築。それによって相手の恩恵を含めた性能を自身に上乗せするアジ=ダカーハの疑似創星図。相手の宇宙観の反面を模倣し限定的に行使するこれがあれば、たとえ幾万の神霊を敵にしようともその分だけアジ=ダカーハは強くなる。

 しかし、アジ=ダカーハは即座に異常に気付く。

 

 

『月龍の霊格しか上乗せされていない?』

 

 

 向かい来る二頭の龍を正面に迎え、アジ=ダカーハの頭脳は迅速にこの異常を解析し答えを出した。レティシア達吸血鬼は可能性の時間流から外れて生まれた種族。人類の次の世代の霊長の一角。一方で、太陽龍は人類の残した文明の擬人化、太陽の軌道線上を飛ぶ衛星の化身。最強種でありながら人類の遺産から生まれた巨龍は人類の宇宙観を重ねた存在とも言える。

 アヴェスターは唯一、彼本体と宇宙観を共にするものについては1体以上の模倣は出来ない。

 

 

覇者の光輪(タワルナフ)!』

 

 

 ならばと、伝承において世界の3分の1を滅ぼすとされた閃熱系最強の一撃。アジ=ダカーハの固有する最大の恩恵は巨龍となったレティシアを狙う。

 口腔から放たれた灼熱の極光は、しかし噴き出した黒炎に阻まれる。

 

 

「か……はははははは!!」

 

 

 体の大部分が同じく黒い炎に侵されながら、構えた長銃の引き金を引く。放たれた黒炎がアジ=ダカーハの覇者の光輪と衝突し、やがて呑み込んだ。

 終末論の引き金となるアジ=ダカーハの覇者の光輪。だが信長のそれは、終末を焼き払った炎だ。

 

 まさか一度ならず二度までも自身の最強の一撃を防がれたことにさしものアジ=ダカーハも動きが鈍る。

 その隙を月龍となった蛟劉、巨龍のレティシアが襲う。防御の構えを取ったアジ=ダカーハから血飛沫が舞った。覇者の光輪とアヴェスターは同時には使えない。故にレティシアを仕留めるために一度アヴェスターを停止させていた。

 

 

『アヴェスター起動!』

 

 

 再び疑似創星図を発動させるアジ=ダカーハだが、やはり上乗せされるのは月龍の霊格だけ。

 

 

(何故だ……太陽龍ならまだしも何故あの男の霊格が上乗せされない!?)

 

 

 信長の、正確には信長が扱う魔炎レーヴァテイン。北欧神話においてユグドラシルの天辺に棲まう木蛇を殺せる唯一の武器。或いは神々の戦争を終わらせた終末の炎。どちらにせよアジ=ダカーハの宇宙観を共有するはずのない力。ならばあの力はそっくりそのままアジ=ダカーハに上乗せされるはずなのだ。――――いや、実際多少の上乗せはされている。しかし不安定なのだ。蝋燭の炎が揺らぐように、上乗せされる霊格が安定しない。

 考えられる可能性としてはレーヴァテインが人類である信長と同化していることが原因か。元々は『人』であったアジ=ダカーハに、同じ人類の血を引く者であればアヴェスターを掻い潜ることが出来る。模倣が不安定なのはレーヴァテインの霊格と、同化している人類(信長)の霊格が入り乱れているから。

 

 

(だが、あり得るのか。あれほどの力に飲み込まれるならばまだしも……『人』としての霊格を未だに残していられるなど……!?)

 

 

 極光を撃ち破った信長は長銃でさらに一発の炎弾を放つ。視界を覆うほど巨大な黒い炎。

 

 

『この程度ッッ!』

 

 

 アジ=ダカーハはその場にて迎え撃つ。障害は砕く。敵よりも速く。

 

 咆哮と共に振るわれた爪撃によって黒炎は無残に引き裂かれる。飛び散った炎は地面に落ちてなお大地を貪った。誰よりも醜く、そう願われたアジ=ダカーハにしてその醜悪な炎に嫌悪を覚えた。

 

 視界の端に影を捉える。

 

 

「やっぱり躱さない! 舐めすぎなんだってば!!」

 

『小癪な……炎を目眩ましに!』

 

 

 炎弾を撃つと同時にその後ろを追走していた信長は引き裂かれた炎に紛れて懐へと踏み込む。下段。斬撃が深々とアジ=ダカーハの右足を斬り裂く。

 巨大な敵はまず足から崩す。ここにきて信長は冷静に、冷徹にアジ=ダカーハを追い詰めようとする。トドメは完全に動けなくなったその時で充分だと言わんばかりに。

 

 

『ヌ、ァァァアアアアア!!』

 

 

 半ばまで斬られた右足で沈み込んだ信長の顔を跳ね上げる。小さな塊が宙を飛んだ。それは信長の右耳が千切れ飛んだ物だった。

 

 完全に捉えたはずだったのに僅かに攻撃が早すぎた(・・・・)。アヴェスターによる信長からの不安定な上乗せに力が安定しない。おかげで狙いがズレてしまった。

 

 

『これでは逆効果か……!』

 

 

 アジ=ダカーハが今まで天軍を相手にしても単騎絶対戦力を実現させていたアヴェスターがこんな形で裏目になるなど予想外だった。一先ずアヴェスターを停止させる。

 

 

「っ、はああああああ!」

 

 

 片耳を千切られた程度で今更止まるはずのない信長は悪鬼の笑みで向かってくる。それはおよそ『人』が浮かべるべきものではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人類は滅ぶ。そんな人類を彼女は愛し、その悲劇に涙を流した。

 

 『もしも』の話に意味は無い。それが全てであるならば、ならば彼女の涙を少しでも拭う為に、その為だけに彼はなった(・・・)。最古の魔王――――人類最終試練に。

 

 如何なる手段を用いても、彼に人類滅亡の未来は変えられない。ならば人類が滅ぶ要因を明確にし細分化することで、彼等が勝利する未来を造ろうとした。

 その為ならばいくらでも邪悪であろう。誰よりも醜悪であろう。最も業の深い『絶対悪』を背負おうとも、世界の終焉までついていこう。

 

 

(貴方が背負う罪を、私が共に背負いましょう)

 

 

 誰よりも人に憎まれながら、誰よりも人を愛した。拝火教における悪神の母。アジ=ダカーハは彼女と歩む為だけに『悪』で在り続けた。いつか現れる、彼女が愛した人類を救う正義の英雄を待ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(結末には妥協すまい。人類最強の試練として、最後まで立ちはだかってみせよう。――――だが!)

 

「!?」

 

 

 真正面からの剣撃を、敢えて挑むかのような信長の剣をアジ=ダカーハはいなした(・・・・)。正面から受けるでも反撃の為の回避でもない。

 突如、信長の目の前が闇に覆われる。それがアジ=ダカーハの龍影による目隠しだと気付いたときには死角から放たれた一撃に脇腹が抉られていた。

 

 

「が、はっ……!!」

 

 

 咄嗟に体の位置をずらしていたことで上半身が消し飛ぶことは避けられた。――――が、夥しい血が黒炎と共に腹から流れ出す。

 

 明らかに今までのアジ=ダカーハの動きとは違う。ましてや目隠しからの奇襲などという小細工を、絶対的な力でもって挑戦者を打ち砕くことを至上としていた彼がするはずがなかった。

 

 

『違うのだ。貴様だけは断じて』

 

 

 龍影を広げる。流した血で数多の分身体を侍らせる。

 

 

『貴様のような者が、『あの方』が望んだ存在であるはずがない!!』

 

 

 ここにきてアジ=ダカーハは持てる全ての力を発現させる。

 

 

『なんかえらいことになってるやん』

 

 

 月龍の姿で蛟劉は呆れたように言った。正直な心境を語れば絶望が増した。アジ=ダカーハが常にこちらの思惑に乗ってきてくれていたからこそここまで追い詰めることが出来たといっていい。すでに弱点の心臓を露わにしたといっても未だアジ=ダカーハが最強の魔王でることに疑いはない。

 

 

「余力を残した相手に切り札はきれないでしょ?」

 

『もっともらしいことを』

 

『信長、傷は大丈夫か?』

 

「んー、大丈夫大丈夫」

 

 

 レティシアの気遣いに、抉られた腹を撫でて平気だと答える。実際、傷は決して浅くない。しかしもう感覚すら飛びつつある信長には、今は己の傷より目の前の、正真正銘の本気となったアジ=ダカーハに心奪われていた。

 

 

「じゃあ、あとはお願いね」

 

 

 黒炎の波状攻撃。さらに自身も接近戦を挑む。今までのアジ=ダカーハであったならこれを体で受けた後、馬鹿正直に信長を迎撃する。

 

 

『覇者の光輪』

 

 

 アジ=ダカーハは一切の躊躇いなく灼熱の極光を放つ。牽制程度の黒炎を突き破り、その後ろにいる信長ごと消し去ろうとしてみせた。

 それを読んでいたのは信長も同じ。さっさと炎の後ろから抜け出してアジ=ダカーハの側面へ回り込んだ信長は刀を振りかぶって――――動作を中止。一歩退いた。そこへ割り込んできたのは岩石の分身体。さらに数多の分身体が信長へなだれ込んでくる。

 

 

「君達程度じゃもう物足りないよ!」

 

 

 逆巻く黒炎は分身体達を呑み干す。分身体といえど拝火教たるアジ=ダカーハから生まれたもの。生半可な炎は無効化出来る彼等が無残に灰に変わる。レーヴァテインの炎はこの箱庭においてすでに埒外の力を発揮していた。

 そんなこと、アジ=ダカーハとて承知している。

 分身体の灰を踏み越えて、新たな分身体が信長へ殺到する。今更相手にならないといえどその数は膨大。一瞬で囲いを抜け出すことは出来ない。それを待っていた。

 

 

『覇者の光輪』

 

 

 今更出し惜しみはしない。分身体は足止め。それごと砕くことこそアジ=ダカーハの狙いだった。常に孤高にて多勢を薙ぎ払ってきた魔王が、逆に数にてひとりの人間を抑えつける。

 

 

「!」

 

 

 信長は動けない。破滅を厭わない分身体達の囲いを突破するにはどうしてもあと1秒いる。その頃にはまとめて消し炭になっているだろう。

 

 ――――それもまた、待ち焦がれた瞬間だった。

 

 

『蛇遣い座の恩恵よ……一瞬でいい、奴を拘束する力を!』

 

 

 黄金の巨龍がその体を圧縮して縛鎖となってアジ=ダカーハの動きを封じる。覇者の光輪を使えばアヴェスターは使えない。月龍の力を上乗せされていればわからなかったが、アジ=ダカーハは単体ならば一瞬程度の動きは封じることは可能だ。

 

 

『今だ黒ウサギ! 私に構わず撃て!』

 

 

 レティシアの叫びに応じるように、火龍の一団から並々ならぬ神気が溢れだす。

 

 

『これは帝釈天……いや、月の兎の生き残りか!』

 

 

 空へ跳び上がった黒ウサギ。その手に握られた必勝の槍。それを見たアジ=ダカーハに浮かんだのは驚愕でも感心でも無い。怒りだった。

 

 

『愚かな!』

 

 

 ことここにおいてインド神群、三幻神が担う必中必勝の槍。まともに当たればアジ=ダカーハの体とて問答無用で消し飛ばすだろう。しかしアジ=ダカーハにはアヴェスターがある。今更になって宇宙真理の権能などと。アヴェスターによってあれを模倣、衝突させれば余波だけで龍達は消し飛ぶ。さっきまでアヴェスターを使えなかったのは不安定な力に戦闘が困難だったからだ。

 

 

「我が一族の仇、今ここで晴らします!」

 

 

 滑稽に響く月の兎の覚悟に、尋常ならない憤怒を露わにしたアジ=ダカーハだった――――が、異常に気付く。アヴェスターが起動しない。

 

 

『何故――――いや、まさかそれは』

 

「そうです! この槍は我が主神から生まれたもの! それが意味することはひとつ。この槍は貴方と同じ拝火教の宇宙観を宿した恩恵でもあるのです!」

 

 

 200年前、幼い黒ウサギを逃がすために散っていった同志達の無念。そのことに誰より悔しい思いをしたのは誰であろう黒ウサギだった。己の無力さに、恐怖に屈した非力さに。だが、悔やむのは今日で終わりにする。過去の痛みと今日散った勇気ある同志達の為に。

 

 

「穿て――――疑似神格・梵釈槍!」

 

 

 放たれる速度は第六宇宙速度。星辰体と同等の速度で突き進むそれは瞬きの時間もかからずアジ=ダカーハの心臓を穿つだろう。逃れられぬ敗北。かつてない窮地。

 

 そんなもの(・・・・・)、最古の魔王は嘲笑ひとつで跳ね除ける。

 

 

『魔王を……絶対悪を甘くみるでないわ!』

 

 

 先ほどまでの戦いから自力で星辰体の力を引き出したアジ=ダカーハは星を砕く膂力をもってレティシアの鎖を引き千切る。負けていた。試練は終わっていたはずだった。この土壇場で、最終試練はその壁をさらに高くした。

 星辰体の力を引き出したアジ=ダカーハは、同じく星辰体の速度で槍を躱すだろう。

 

 ならば、誤算だったのは何か?

 

 星の光より速く動けるものはまだいた。

 

 

「ああ、お前なら避けると思ってたよ」

 

 

 逆廻 十六夜。

 

 彼だけが信じていた。必敗の運命さえ自力で覆すアジ=ダカーハの王威を。だから、十六夜は黒ウサギの投げた槍を自分が受け止めアジ=ダカーハに突き立てることを選んだ。一歩間違えば自分自身が死んでしまう。それを承知で黒ウサギは槍を投げ、十六夜はそこに踏み込んだ。

 

 

(これが、人間か)

 

 

 アジ=ダカーハの紅玉の瞳が一瞬穏やかな光を灯した。最後までこの絶対悪に挑み続けた少年。死地へ踏み込んだ一歩。それこそが勇気であると彼は気付けるだろうか。その勇気がいずれ彼等を、彼女が愛した人類を救うのだと気付いてくれるだろうか。

 心残りはある。――――が、この槍は甘んじて受け入れよう。試練を乗り越えた勇者を喜ぼう。

 

 だから、

 

 

『本当の恐怖を知らない貴様にだけは、この心臓をくれてやるわけにはいかん!』

 

 

 すでに死に体となった三頭龍。無事なふたつの首が十六夜とは別に迫っていた少年を捉えた。

 

 織田 三郎 信長。

 

 

「――――あっは!」

 

 

 十六夜の背後から、頭上を飛び越えるように現れた信長の体は殲滅した分身体の血で染まっていた。三日月のように引き裂いた笑み。輝きなど無い、どこまでも深い、光の見えない漆黒の瞳。狂悦に満ちた男はこの死地を土足で踏み込んだ。

 

 この少年には恐怖が無い。苦難を知らない。コミュニティの未来を捨ててまで時間を稼いだ《サラマンドラ》の決死の覚悟も、十六夜と黒ウサギは見せた信愛も、彼にはわかるまい。恐れを知らない彼には、その先に踏み込む躊躇などあるはずがない。

 『想い』などという不確かなものをアジ=ダカーハは語るわけではない。それで全てが上手くいくとも言わない。そんな彼等を砕いてきた者こそ自分という存在なのだから。

 

 それでも、彼等の踏み出した一歩が、死を軽々しく踏みつけるこの少年の一歩と同じはずがない。あっていいはずがない。

 

 一瞬でいい。一瞬あれば十六夜達の槍はアジ=ダカーハの心臓を貫く。

 

 龍影が伸びる。次元を裂きかねない速度に、影の恩恵は耐え切れず形を崩す。それでも砕けるも承知と伸びた刃が信長を襲う。これを躱すにしろ受けるにしろ、どちらにしても時間は稼げる。それで充分――――そう思っていたアジ=ダカーハは驚愕に見舞われる。

 

 肉塊が弾け飛んだ。信長が自ら差し出した右腕。

 

 信長は躱すことも受けることもしなかった。片腕を犠牲にしてなお真っ直ぐアジ=ダカーハへ向かってきた。初めからこの瞬間を狙っていた信長。引き絞られた突きの構え。切っ先が、十六夜の槍より先に脈打つ心臓を狙う。

 

 

「――――ッ!?」

 

 

 初めて、信長の笑顔が崩れた。困惑の視線の先には刃を貫かれながらも身を挺して受け止めた三頭龍の頭。真ん中以外の頭部が折り重なって、長刀の刃を受け止めていた。刹那遅れて、十六夜の槍がアジ=ダカーハの心臓を貫く。

 決着は、ついた。

 

 無事な真ん中の頭部が侮蔑を口元に浮かべて信長を見据えた。

 

 

『私は、貴様には討たれない』

 

「ちぇ」

 

 

 すでに限界を超えていた信長は糸の切れた人形のように倒れた。




閲覧感想ありがとうございます。

>長かったアジ=ダカーハ編これにて終了と相成りました!!長かったといっても章の話数的には他とあまり変わらないのですがね。次章は原作的にもほぼエピローグな扱いなので9割方終わったといっていいでしょうか。多分次章はいいとこ1、2話で終わるでしょうし。

>さてさて、今話は設定にしろストーリーにしろ人物像にしろ、かなーり捏造と妄想が入り乱れたものになりました。その最たるはアジさんでしょう。感想でもちょろっと書いたように、アジさんの戦う理由が将来的に人類を救う為、人類を救える勇者の誕生ならば、つまり彼にだって『理想の勇者像』ってのいうのがあったと思うのです。まあ、その影響は宗主たる彼女に多分に影響されているでしょうが。
なら、『自分を倒した者こそ正義』というつまりは力こそ正義を言いつつ、やはり認められない者もいると思うのですよ。それが信長君だったというわけです。

>信長君は死んだように生きるのは御免だと常々言っています。これは召喚前、世界との差に軽い廃人だった自分を指しているわけですが、それが箱庭で解消されつつあると思ってますがそれは勘違いです。結局彼は生きる為に戦うでも、何かの為に戦うでもありません。戦うために戦ってます。目的がなければ勝ち負けなんてあるはずはなく、失うものもないので通常躊躇うような『線』だって簡単に飛び越えちゃいます。戦っているだけで満足なわけですから。
そんな彼が人類を救えるか、はたまた救ってくれると託すことが出来るか、出来るわきゃないですよね(笑)

>もう一点捏造設定補足。
アヴェスターについてはもうあれぐらいしか対処法が浮かびませんでした。実際あんなの持ち出されたら勝てないのですもの。この捏造設定ですが、実は信長君とレーヴァテインとの関係やらで辻褄合わせの設定はありますが、それを語るのはまた別の機会にしておきます。

>さてー、次の更新はこっちにするか別作品にするか決めてませんが、ともかく次話或いは次々話で一部完となります。ここまでお付き合いくださった皆様、最後まで宜しくお願い致します。

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