FINAL FANTASY F   作:クロム・ウェルハーツ

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ガチャは世界を救う

 三方に扉がある白い小部屋のような空間でルクスは目の前の生き物に向かって尋ねた。

 

「モーグリ。ここは一体?」

「クリスタルで増幅された力が君のクリスタルツールに作用して、君をこの空間に送り込んだクポ。あと、モグのことはシャインと呼ぶクポ」

「そうか、済まない。シャイン」

「気にしないでいいクポ」

 

 頭を下げるルクスにモーグリはその短い手を振り、楽にするように促した。

 

「この空間は君の心の中を写した空間クポ。モグたちはこの空間を“クレイドル”と呼んでいるクポ」

「クレイドル、か」

「クポ。君の心の中の始まりの空間クポ。君の成長と共にその空間は拡張を繰り返していくクポ」

「つまり、クリスタルツールの機能を十全に引き出すためには私の成長が不可欠ということか」

「クポ。そこまで、分かっているならモグが君の前に姿を現した理由にも気づいているクポ?」

 

 ルクスは頷く。

 

「クリスタルツールの新たな力が開放されたから、シャイン、君は私の前に姿を現したのだろう?」

「正解クポ」

 

 シャインは体全体を使って、ルクスの答えが是だと示した。

 

「では、案内するクポ」

「頼む」

 

 ふわふわと宙に浮きながら先導するシャインはルクスから見て左の扉へと彼を案内する。その扉の前で止まったシャインを見て、ルクスは理解した。自分がこの扉を開けることをシャインは期待しているのだ、と。

 ルクスは手を伸ばし、目の前の扉を開いた。扉の先にあったのは赤、青、緑のカラーリングが施された柱が三本。赤い柱、青い柱、緑の柱はそれぞれに対応した光がゆっくりと下から上に向かって移動している。思うに、材質はクリスタルなのだろうとルクスは当たりをつけた。

 

「ここはアルトクリスタルリウム。力を導く場所クポ」

「力を……導く?」

「そうクポ。さっき魔物を倒した時にクリスタルで出来たカードのような物を拾ったクポ?」

「ああ、これか?」

 

 ルクスはシャインの言う物に心当たりがあった。

 敵からドロップしたアイテムは独りでに光の粒に分解され、ルクスの持つクリスタルツールの中へと吸い込まれていた。その時に表示された通知画面を確認していたルクスはシャインの言う“クリスタルで出来たカードのような物”が画面上に出ていることを確認していたのだった。

 ルクスはクリスタルツールを操作して、所持アイテムの項目をシャインに見せる。

 

「これクポ。“赤のソウルカード”、このドロップアイテムを100枚集めると、一回、赤の柱からクリスタルの導きを得ることができるクポ」

「100枚、か。それほどの量はない」

「心配しないでいいクポ。今回はモグの力を使って、ソウルカード1000枚分の効果の11連クリスタルダイレクトを行うクポ。そうすると、君は武器を11個、手に入れることができるクポ」

「1000枚分で11回、そのクリスタルダイレクトを行うことができるのか? 100枚で一回、クリスタルダイレクトが行うのなら計算が合わないが……」

「1000枚のソウルカードを赤い柱“ローズエンタシス”に捧げると、時空が乱れて一個多く武器が排出されるクポ。性能などには問題がないことは今までの数多くの試行から確かめられているから心配無用クポ」

「そうか。なら、頼む」

「クポ!」

 

 頷いたシャインが赤い柱、ローズエンタシスに近づくと、ローズエンタシスの赤い光が少しの間、激しくなったがその励起はすぐに収まった。通常の弱い光が下から上へとゆっくり向かう状態となったローズエンタシス。ルクスはローズエンタシスの様子を見て、自身のクリスタルツールを確認する。彼が持つクリスタルツールの画面には、シャインが言ったように11個の武器が映っていた。

 ルクスはその武器たちを一つ一つ見分していく。

 

 武器、ロッド ☆4“天空のロッド” 属性、光

 武器、弓 ☆4“疾風の弓矢” 属性、風

 武器、弓 ☆3“エイビスキラー” 属性、無  鳥系統のモンスターに威力中UP

 武器、槍 ☆3“オベリスク” 属性、土  低確率で石化(ブレイク)効果

 防具、頭 ☆3“シルバーヘルム” 属性、無

 武器、斧 ☆3“デスシックル” 属性、闇  超低確率で即死(デス)効果

 武器、剣 ☆3“ブレイクブレイド” 属性、土  低確率で石化(ブレイク)効果

 防具、体 ☆3“ウインドメイル” 属性、風

 武器、剣 ☆3“ルーンブレイド” 属性、光  魔力低UP

 武器、ロッド ☆3“炎のロッド” 属性、火

 武器、剣 ☆5“ゴールドソード” 属性、無

 

「次に行くクポ」

 

 シャインはローズエンタシスの前から移動し、青い柱の前で止まった。ルクスもシャインに続いて青の柱へと歩みを進める。

 

「アネモネエンタシス。先ほどのローズエンタシスと違って、アビリティを排出するクポ。今回は特別にモグが青のソウルカードを1000枚払って11連クリスタルダイレクトを行うクポ」

 

 シャインがアネモネエンタシスに近づくと、それはローズエンタシスと同じように光り輝き、その光が収まった後にルクスは11個のアビリティを得た。

 

 アビリティ ☆4“アースブラスト” 属性、土  範囲物理攻撃

 アビリティ ☆3“風の乱舞” 属性、風  全体物理攻撃

 黒魔法 ☆3“バイオ” 属性、毒  単体魔法攻撃

 白魔法 ☆3“ケアル” 属性、聖  単体HP回復

 黒魔法 ☆3“ブリザド” 属性、氷  単体魔法攻撃

 アビリティ ☆4“フレイムブラスト” 属性、火  範囲物理攻撃

 アビリティ ☆3“エアロフィスト” 属性、風  範囲物理攻撃

 黒魔法 ☆3“ダークラ” 属性、闇  範囲魔法攻撃 

 アビリティ ☆3“ウォータイラプト” 属性、水 全体物理攻撃

 黒魔法 ☆3“エレメトβ” 属性、土風雷の三属性同時 単体魔法攻撃

 アビリティ ☆5“セインクロス” 属性、光 単体物理攻撃 自身に蘇生(リレイズ)効果(一戦闘時一回のみ)

 

 アビリティが表示されたクリスタルツールからルクスは目を離し、緑の柱を見つめる。そのルクスの視線に気がついたシャインは一つ頷いて、説明を続けた。

 

「この緑の柱はバニラエンタシスというクポ。この柱から排出されるのは“メモリア”という物質クポ」

「“メモリア”?」

 

 聞いたことがない、いや、どこかで耳に挟んだワードだ。ルクスはメモリアという言葉について考える。しかし、そのどこかとペルトゥルは同じ雛型を使っていても、全くの別物であることに思い至り、頭を振った。

 考えても答えがでないのならば、調べるしかない。その調べる手段は今の所、限られている。シャインに聞くことだ。

 

「そのメモリアというのはどういうものか教えてくれないか?」

「“メモリア”は記憶クポ。これ以上のことは君が成長したら教えるクポ」

「そうか」

「君は随分、あっさり引く人間クポ」

「シャイン。君が教えたくないということを無理矢理聞き出すということはいけないことだと私は考える。それに、私が成長したら教えてくれるのだろう?」

「クポ」

 

 シャインは厳かに頷いた。

 

「それにしても驚いたクポ」

「何がだ?」

 

 突然のシャインの言葉にルクスは首を傾げる。

 

「強力な力を持つが故に、☆5のレア度は滅多に排出されることがないクポ。多くの光の選者たちは☆5のレア度の武器やアビリティを求めたクポ。そして、ソウルカードを集めるために数多くの魔物たちと戦って、その命を散らしたクポ。それなのに、君は一回で☆5を引き当てたクポ。もしかしたら、君が世界を救う運命を持つものかもしれないクポ」

「元よりそのつもりだ。ペルトゥルを救う。それが私の使命なのだろう?」

「君の、というより光の選者たちへのペルトゥルの民の期待クポ。決して、使命などという君を拘束するようなものではないクポ。初めにモグが言ったように君は、光の選者は自由に生きる権利を持っているクポ」

「なら、私は皆の期待に応えよう。期待に応えることを選ぶのも、また自由だろう?」

「君は飛んだお人よしクポ」

「そうでもない。今の私には力がない。ここで理想を語っていても世界を救うことはできない。だから、教えてくれ。武器の扱い方を」

 

  シャインは頷く。

 

「シドが説明したアビリティの装備手順を覚えているクポ?」

「ああ。つまり、今、ローズエンタシスから得た武器を先ほどのアビリティと同じ手順で装備すると、反映されるということか?」

「そうクポ。今の君のジョブは“すっぴん”クポ。全ての武器とアビリティを使うことができるクポ。その代わり、ステータスアップといった他のジョブなら持つ特別な効果を持たないジョブになっているクポ。早速、装備してみるクポ」

 

 シャインに頷いたルクスは自分のクリスタルツールを見つめる。武器装備画面をシャインに教えて貰いながら開くと、そこには4つの空欄があった。武器、防具(頭)、防具(体)、そして、アクセサリだ。アクセサリを持っていないルクスであるが、これは仕方のないことと割り切り、今、手に入れた武器と防具をクリスタルツールに表示された空欄へとセットしていく。

 

 武器、剣 ☆5“ゴールドソード” 属性、無

 防具、頭 ☆3“シルバーヘルム” 属性、無

 防具、体 ☆3“ウインドメイル” 属性、風

 

 次にルクスが操作したのはアビリティの箇所だ。先ほど、シドから教えて貰った通りにアビリティをセットし直す。

 

 アビリティ ☆5“セインクロス” 属性、光 単体物理攻撃 自身に蘇生(リレイズ)効果(一戦闘時一回のみ)

 黒魔法 ☆3“エレメトβ” 属性、土風雷の三属性同時 単体魔法攻撃

 攻撃

 ジャンプ

 

「これで準備は整ったクポ」

「ああ」

「君ならこれからの困難にも立ち向かっていけると思うクポ」

「困難、か。確かに、アリスにどう接していいか分からないな」

「心配することはないクポ。君の心に基づいた行動をしていけば、北風のような彼女の心にも春がやってくるクポ」

「そうだといいな」

「クポ!」

 

  シャインは大きく体を動かした。その様子を目に写したルクスの頬を緩ませて、アルトクリスタルリウムへと入ってきたドアを開ける。

 

「私はそろそろ行く。ありがとう、シャイン」

「気にしなくてもいいクポ。元々、モグはアドバイザーとしての役割があるクポ。だから、これはモグの仕事の一環クポ」

「そうか。なら、いい仕事をしてくれた。ありがとう」

 

 ルクスはシャインに笑顔を見せて、アルトクリスタルリウムに繋がるドアから外へと出ていった。

 

「いい仕事……クポ」

 

 ルクスを見送ったシャインは自嘲気味に笑う。

 

「モグが採算度外視で仕事をするならば、君がここに来た時点でクリスタルツールの機能を全て開放しているクポ。モグが君を助けない理由。それは、君を見極めるためクポ」

 

 シャインはどこか諦めたように、しかし、希望はまだ捨てていないかのように言葉を紡ぐ。

 

「君は本当の意味で“光の選者”と成るべき存在なのか? それをモグはここから見定めさせて貰うクポ」

 

 +++

 

 薄緑色をした光の中、体が運ばれる。

 それは母の腕で揺り籠から外に出されるようなもの。一人で立つこともできない赤子はまずは這うことを覚えなくてはならない。揺り籠の中で多少の力を手に入れたとて、このペルトゥルという世界で生き抜くためには足りない。まだ這う程度の力でしかない。で、あるならば……

 ルクスは手をギュッと握りしめる。

 ……少しでも早く強くならなければいけない。

 母に守られる雛鳥の時期を抜け、あの大空を自由に飛び回る。そのためには、力を示し自身が“守る存在(光の選者)”であることを認めさせなくてはならない。

 

「済まない、待たせた。ジンという人物を止めに行こう」

 

 薄緑色の光がルクスから霧散すると共に彼はクレイドルからペルトゥル、プルヴァマのカズスの森のクリスタルの元、つまり、シドやオレンたちの元に移動(テレポ)した。ルクスはその目をシドの後ろにいる人物に向ける。彼の視線の先の彼女は露骨に表情を歪める。

 

 貴様はいらない、ジンの件は私たちだけで解決する、だから貴様は付いて来るな。

 

 彼女は言葉を口にしていないが、その目はルクスに彼女の気持ちを雄弁に語っていた。しかし、ルクスは怯まない。彼女、アリスの鋭い目線を正面から受け止める。

 蒼い鎧を纏い、苛立った視線を自分に向けるアリスに自分自身が持っている力を知ってもらい、認めてもらう。

 

 ――それが、私の旅の第一歩になる。

 

 この時、ルクスの旅の終着点が決まったのかもしれない。

 それは魔王に滅ぼされる運命にある世界を救う物語。今のルクスの目では全容が闇に包まれている魔王の姿を正しく捉えることはできない。

 魔王にとって、光の選者とは羽虫のようなもの。湧いては自分という悪の火に向かってくる愚か者どもだ。そして、新しく生まれ出でたルクスは羽虫とも呼べない。蛆よりも弱く醜く、地に這い蹲っているのが似合いだと、この時のルクスに魔王が会ったのならば、そう断じただろう。いや、それとも、矮小過ぎるルクスの存在は魔王の目に留まることすらできないのかもしれない。

 小さなルクスが世界を救うといくら吠えた所で、その夢は幻想だ。だが、彼がもしも……万が一……あり得ないことであるが、魔王を倒せたのなら、その幻想は崩壊を終わらせ世界に幸福をもたらすに違いない。そうなれば、ルクスの旅はこう呼ばれることだろう。

 “FINAL FANTASY”、と。




Tips

武器
⇒光の選者の武装。一種類しか装備できず、アクションは武器に依存する。同時にステータスも上昇し、オートアビリティも発動する。

防具
⇒光の選者の武装。頭と体に一種類づつ装備できる。同時にステータスも上昇し、オートアビリティも発動する。また、防具の項目の中にアクセサリという項目もあり、こちらはより弱体防止など特殊な効果をプレイヤーに与える装備品となっている。

属性
⇒火氷水の三竦み、風雷土の三竦み、聖毒の相互、光闇の相互の優劣関係がある。また、無属性は優劣関係がない属性。その他にも、物理攻撃、魔法攻撃の区分分けもある。
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