常盤台中学校
東京都西部を切り拓き、作られた学園都市と名付けられた場所にある名門と言われた女子中学校。 この都市では、超能力を持った生徒が存在していた。 学園都市の存在する理由の一つである、超能力者を生み出す為の街とも呼ばれていた。
エリート校とも呼ばれる常盤台中学校には、日々能力を高める為に女子生徒達が集められている。
《超能力開発》
その名の通り、人間に本来持たない能力で摩訶不思議な力を発現させる言葉。 そんな行程を学校のカリキュラムに組み込まれ、学園都市に住む230万人の人口に八割が学生であった。 日々『頭の開発』に取り組む生徒達。 その中に1人、常盤台中学校に元々レベル1の電撃使いがレベル5まで上り詰めた少女が1人。
「お姉様〜」
白昼堂々と一昔の貴族である姉妹の姉を呼び方をするツインテールの少女。 後ろからそんな呼ばれ慣れてしまい、振り返る1人の少女。
「どうしたの、黒子。 ジャッジメントの仕事は今日は無いの?」
ツインテールの少女を『黒子』と呼ぶ少女は、髪は茶髪で後ろ髪は肩より伸び右の前髪にヘアピンをして顔は整い殆ど異性からは美少女とも言えるほどだった。 この少女こそが、常盤台中学でエースと言われる名を『御坂 美琴』またの名を『超電磁砲』と言われている。 元々彼女は、低いレベルから頂点であるレベル5に努力で上り詰めた優等生だった。
そして、そんな彼女を『お姉様』と呼ぶ少女は『白井 黒子』と言う名前であった。 彼女も能力を持ち、高いレベルの持ち主である。 彼女が所属している学園都市を取り締まる風紀委員《ジャッジメント》の1人である。 日々活動しており、片腕に腕章を常につけて時にはボランティア活動を行っていた。
「えぇ、今日は非番ですの。 だからお姉様を見つけて追いかけてきましたの」
黒子と言う少女は、美琴の事を尊敬しライクでは無くラブの意味で好いていた。 そんな百合な彼女も、人としての能力は高いのだが強すぎる彼女への思いを表に出してしまい何処か残念な少女であった。
そんな二人は横並びながら、黒子は先日に起きた事件を美琴に話していた。
「そう言えば先日、夕方にある店内での爆破事件がありましたの。 聞いてます…お姉様?」
ドゴォ
ガシャッ
「聞いてるわよ、連続爆破事件とか言う奴でしょ?」
美琴は公園に配置されている自動販売機を蹴り、現金を払わずに飲み物を出させていた。 そんな光景を苦笑いしながら、黒子は話を続けた。
「正確には連続虚空爆破《グラビトン》事件ですの」
黒子は美琴に近寄り、美琴が先ほど自動販売機から取った缶に指を指した。 その行動に不思議に思う美琴。
「アルミを基点にして、重力子の数では無く…速度を急激に増加させ、それを一気に周囲に撒き散らす。 ようは『アルミを爆弾に変える』能力ですの。 ぬいぐるみの中にスプーンを入れ破裂させたり、ゴミ箱のアルミ缶を爆破する手段を使われていますの」
黒子の説明に、自分が持っている缶ジュースを苦い顔で見ていた。
「とりあえずその事件って、能力者の犯行なんでしょ? だったら…学園都市の『書庫』にある情報を洗って全ての能力データを見れば、該当する能力者が犯人ってわけじゃない?」
美琴の言う通り、学園都市にいる生徒達の全員のデータは『書庫』に管理されていた。 自分なりに良いと思った案を黒子に言ったが、黒子は残念そうな顔をしていた。
「それなんですが…妙なのですの。 『量子変速』 その能力も爆弾に使用できる程に強い能力者は存在しますの。 …だけど、レベル4である釧路帷子と言う生徒ただ1人。 私も彼女が犯人だと思いましたが…一連の事件が始まる一週間前に。 彼女は8日前から原因不明の昏睡状態に陥っていますの…」
手かがりであった『書庫』に犯人と思われる人間を見つけるが、事件前に昏睡状態になっていれば犯行は不可能。 その為に事件を解決に走る黒子は頭を捻らせていた。
「もしの話だけど…『書庫』の方で不備があったって事は無いの?」
「あるいは…滅多に無いですが、前回の身体検査後の短期間に急速に力をつけて犯行に走ったと言う可能性もありますの」
そんな話をしている2人だったが、行き詰まってしまい同時に溜息を吐く女子2人。 突如黒子のカバンから着信音が鳴り始め、彼女は携帯をカバンから取り出す。 携帯の画面を見た黒子は、少し顔を歪める。
「ごめんなさいですの、お姉様。 本部から呼び出しを貰ってしまったので…」
「あ〜、了解。 黒子…無理しないでね」
「お姉様…」
美琴の気遣う言葉に感動する黒子。 その後、2人は別れ美琴が1人で歩いていると彼女を呼ぶ人間が現れる。
「御坂さーん」
その声に反応する美琴は、声がする方向に顔を向けると都立の学校の正門前に頭に花をつけた少女がいた。 風邪を引いているのか、口元にマスクを着用して美琴に向かって手を振っている。 そんな手を振っている彼女の隣に長く黒髮の少女も立っていた。
「初春さん、おっす〜。 そっちはお友達?」
「はい。 これから一緒に洋服を見に…」
頭に乗せた彼女は、『初春 飾利』と言う名の少女。 初春と美琴に呼ばれる少女は、彼女に近寄ろうとするが途中で長い髪を持った少女に止められる。 そして、初春を美琴から距離を取って声を小さく話していた。 そんな2人を見て戸惑う美琴。
そんな戸惑う彼女とは違って、少しずつ盛り上がっていく彼女達。
「『超能力者』! レベル5!?」
「それも学園都市最強の電撃使い! あの『超電磁砲』の御坂 美琴さんなのですっ!!」
「ウソ…まさかあの『超電磁砲』?」
「そうですよ。 私なんか、こないだ生で見ちゃいました。 超電磁砲!」
何処となく美琴を自分の様に自慢する初春。 その後も美琴を置いて、2人で盛り上がりそれを見守る美琴は少し残念そうな顔になっていた。
(あぁ…こんな感じに噂って、広がっていくのねぇ…)
有名人としてレベル5の彼女は、学園都市で色々な噂が広がっている。 名の通りに学園最強の電撃使い、レベル5『超電磁砲』と持ち上げられると偶にある事無い事まで広がってしまう。 そんな光景を見て、美琴は少し溜息を吐いてしまった。 そんな2人の話が終わったのか、長髪の少女が美琴に近寄り彼女の右手を取り両手で握手し始める。
「あのっ…あたし、佐天涙子です! 初春の親友やってます!!!」
佐天と言う彼女から、元気過ぎる自己紹介に少し戸惑う美琴。
「そ…そう。 よろしくね。 あっ、洋服見に行くならさ。 私もご一緒していいかしら?」
最初の方で初春が言っていた事を思い出し、今自分に予定が無いので彼女達に一緒に行かないかと聞く美琴。 それを聞いた2人は、少し申し訳無さそうに答える。
「勿論、大歓迎ですけど…」
「あたしらが行こうとしてるのって、普通のチェーン店ですよ? 常盤台の人が行くような所じゃ…」
高く見られて、誤解だと言わんばかりに自分の顔の前で手を振る美琴。 確かにエリート校である常盤台中学は、都立に通う彼女達に似た人間達に誤解される事が多い。
エリート校だからと言っても、ファッションまでお嬢様学校では無かった。 美琴のように一般に売られている服を着る事が基本多いのだ。
「いや…あんま関係ないわよ? ウチって外出時は制服直用が義務付けされてるけど。 服に拘らない人が多いし」
「そんなんですか? じゃあ行きますか。 あっ、そう言えば今日は白井さんは一緒じゃないんですか?」
「あー、さっき連絡入ったのか本部に行っちゃったわ」
3人は服屋に向かって足を運ばせる。 横に並びながら、他愛ない話を話している3人。
「もしかして、白井さんが呼ばれたのってこの前の事件関係かも」
「? 初春、何その話」
初春の言葉に興味を持ったのか、佐天に爆破事件を説明していた。 それを聞いた佐天は、怖がる素振りを見せて他の話に切り上げる。
「そうだ、御坂さん。 この話知ってます? 最近人が困っている所を助けてくれる液体の話」
いきなりの不思議な話題に、首を傾げてしまう美琴。
「何それ?」
「話によると最近、外暑いじゃないですか。 熱中症とかで倒れた人を助ける液体や、ガラの悪い人達からナンパされて困ってる女の子を助けた液体とか。 噂では良く漫画やアニメに出ているスライムじゃないのかって話が出ているんですよ」
この科学で満ち溢れた学園都市に、非科学なファンタジックなスライムが存在するとは考えられない美琴。
「ガセじゃなくて?」
「他にもあるんですよ、それに助けられた現場には偶に緑色の液体が落ちている事もあるって。 成分検査をして見ても、色が変わっただけの水だと」
「佐天さん、良く知ってますね」
少し誇らしげに話す佐天に、初春が疑問に思ったのか彼女に聞いた。
「だって、科学に囲まれた学園都市にファンタジックな話だよ。 面白いし…何よりもそれが人助けしていると聞くと好感持っちゃったんだ、私」
そんな話をしながら目的地に向かう3人であった。
☆★☆★☆★
シャカシャカシャカシャカ
耳にイヤホンを付けて、音楽を聴きながら歩く眼鏡をかけた学生が1人。 そんな所に、前から歩いてきた少しガラの悪い2人組が歩いてきた。 音楽を聴いていた少年は、彼らを避ける為に少し横にズレようとしたがすれ違いに肩を接触してしまった。 すると軽くぶつかってしまった1人の不良が、音楽を聴いている少年の髪を掴みあげる。 それに悲鳴をあげる少年。
「ひっ!?」
「人にブツかっといて…謝罪もなしかよ? あぁん」
「え? だってそっちがぶつかって…」
ゴッ
少年は右頬を不良に殴られる。 口の中を切ってしまったのか、口の端から血が出ていた。 そんな所にジャッジメントがやってくる。
「こらそこっ! 何してるんだ!」
「おい、ジャッジメントだぜ」
それを知った不良達はその場から逃げるように去っていく。
「っせーな、何でもねーよ!」
その場を後にする不良を眺めていたジャッジメントの1人は、絡まれた少年に気遣うように話しかける。
「まったく…君、大丈夫かい?」
だが、彼は何度もこのような事に体験しているのか心の中は怒りに染まっていた。 そして理不尽に襲われ、助けてくれないジャッジメントに向けて小さく呟く。
「もっと早く来いよ…」
「? 何か言ったかね?」
「別に…」
少年も痛む口を手で押さえながら、その場を後にした。 そんな光景を近くの塀の上で、緑色の液体が眺めていたのは誰も知らない。 そして、緑色のスライムは眼鏡をかけた少年を追いかける。 短い足でトテテテと走り、彼の前から少年の口に目掛けて自分の一部である緑色の液体を✖︎口から吐き出した。 その際、自分の姿は誰も発見されないように隠れていた。
ビチャッ
「!!!?? うぇっ!? 何だ! 何だ! ぺっぺっ…」
突然と自分の口に入ってきた液体に驚く少年。 尽かさず口に入った液体を、地面に吐き出す少年は自分の口から緑色の液体を吐き出した事に驚愕していた。 今日で災難続きに襲われ、少年は心の中で世の中の理不尽に怒りと惨めさの感情で染まめていた。
「何なんだ、今日は!! 僕が何をしたって言うんだ! 不良に絡まれ! ジャッジメントは仕事しないし!! 挙げ句の果てに変な液体が口に入ってくるし!!! どいつもこいつも…要らない! そうだ、あれをやろう! やってやる!!」
吠えるように叫ぶと、走って自宅に向かった。 その時、少年の口内の傷は既に癒えていたが本人は怒りの余りに気づいてはいなかった。 走っていった少年の後ろ姿を眺めていたスライムは、彼の姿が見えなくなると晴れた青空に顔を向けた。
スライムは、点の目を一にして何処か哀愁を感じさせる雰囲気を出していた。