ACE COMBAT Shining Merteor 作:vangence
―――― 機動六課 ミーティングルーム ――――
「さて、二人とも。詳しい話、聞かせて貰おうやないの」
「……あぁ」
広いミーティングルームにいるのは、俺とヴィム、そして深刻そうな顔をしている八神。
あと、記録係として席を置いている、リインの計四人だ。
「と言っても、俺たちにも何が何だか分からないのだが」
「分からないって……どうゆうこと?」
「言葉の通りってこと。あり得ない事が目の前で起こったってことだよ」
八神が、呆れたように頭を抱える。
いや分からないんだから、しょうがないじゃん?
「そのあり得ない事を説明しても貰いたいんよ」
「……少し、整理させてくれ」
「ええよ、ゆっくりでええから、少しずつ説明して」
八神の言葉に促され、先ほどの戦闘の結末を思い出しながら説明する。
ベルカ公国を名乗る戦闘飛行隊。
保護を求めてきた「ロト隊」「ズィルバー隊」
その部隊を追っていた「シュバルツェ隊」
俺たちは彼等の部隊名、強いては隊長の本名さえ知っていた。
俺とヴィムのどちらもだ。
なぜなら、彼等はかつて俺たちの世界において、エース部隊として名を馳せた者達であるからだった。
彼等との戦闘については、案外あっけない結果に終わった。
彼等を追撃してきた部隊が引き返したからだ。
理由は、恐らく燃料の問題だろう。
前者の部隊は燃料のギリギリまで飛んでいた。
つまりは追っていた彼等も、相当量の燃料を消費していたわけだ。
帰投するための燃料を考えれば、撤退という選択は当然のことだろう。
保護された彼等を、六課だけでどうこうすることは、さすがに無理があった。
あの数の戦闘機を維持することは、六課の経費を多量に割くということだ。
そこまでの余裕は、六課には無かった。
八神の伝手でゴールトン一佐という人から、管理局の本部に受け渡すらしい。
それが今回の戦闘の成果であった。
「……ってな感じです」
「……どうゆうことなんや」
相変わらず八神は難しい顔をしている。
まぁ無理もないだろう。俺もイマイチ理解しがたい状況だし……。
「新しい戦闘機に、過去から来たエース部隊? ……いったい何が起きてるんですか?」
「俺達にもよく分からん」
リインもヴィムもすっかり混乱してしまっていた。
「今回ばかりは、ウチでも信用しづらいなぁ」
「俺もそう思いたかったですよ。でも……見たことあるんです。あの人…デトレフ・フレイジャーのこと」
「…見たことあるって、会ったことあるんですか?」
「正確には彼のインタビュー映像を拝見したことがあるんです」
2005年頃だったか、ベルカ戦争の情報開示が行われた年。
一人のジャーナリストが、当時戦争に関わった人間にインタビューを行った事があった。
その映像を俺達は訓練学校にいた頃見たことがあったんだ。
「彼等は、かつての激戦を。史上最悪の血にまみれた戦場の空を駆けた騎士です」
「……正直、彼等に勝てる気が全くしないってのが俺達の見解」
「……ホンマですか?」
「ホンマです」
彼等を追っていた、シュバルツェ隊と戦闘になる事が無くて本当に良かったと、内心俺もヴィムも思っていた。
彼等は激戦だったベルカ戦争に於いて、最も激しい戦闘が日夜行われていた「円卓」から生還しているのだ。
もちろん、隊員全員が生き残った訳ではないんだが…。
「…彼等をどうするつもりなんですか?」
ヴィムが唐突にそんな事を言い出した。
その言葉に、俺は動揺を隠しきれなかった。
「おいヴィム。そのことは……」
「そのことについては、正直ワタシ達の手に余る事なんよ。彼等を地上本部に預けるしかないんや」
「…まあ、そうなるでしょうね」
「手荒な事はされへんと思うけど……機体の方は調べられるやろな」
その一言は、俺達についても一概に関係が無いとは言えないことだ。
同じ戦闘機に乗っているんだ。本部から一言も無しという事にはならないだろう。
……面倒なことになりそうだな。
「二人には迷惑が掛からないよう善処はするけど……難しいよ、今回ばかりは」
「まぁ腹は括っときますよ」
「……」
ヴィムは耐え難いだろうけど……後でちゃんと話し合わないとな。
八神が、溜め息をつきながら言葉を零す。
「新人達にはとんだファーストミッションやったなぁ」
「まぁ被害は最小限だったんでしょ? なら全然問題無しじゃん」
「そうですよマスター。みんな気にしてませんよ」
「二人とも……ありがと」
そう言うと、少しだけ顔に笑顔が戻った。
うん、やっぱり女性は笑ってるのが一番だな。
「八神さん、やっぱり笑ってる方が可愛いですよ」
「……へ? な、なんやいきなり」
(……ユウスケの悪癖か)
漢としては、女性が悩んでたり深刻そうにしているのは放っておけないしな。
少し、励ましといた方が良いよな。
「八神さん綺麗だから、あんまし悲しい顔とかして欲しくないんです」
「まあ褒められて悪い気はせぇへんけど……」
「俺、八神さんの力になりたいんですよ。八神さんに拾って貰って、俺達は今こうしていられるんです」
八神さんが少し後ろに引いたので、身を乗り出して正面から見据える。
「ゆ、ユウスケ、顔が近いんやけど…」
「六課のみんな、八神さんの力になりたいって思ってますから。みんなを信じてください。もちろん俺もヴィムも」
「……あぁサポートしよう」
ヴィムも頷いてくれた。
見ると、八神は笑っていた。
さっきまでの深刻そうな顔は微塵も姿を見せていなかった。
「……分かった。ウチはみんなを信じる、みんなはウチを信じる。それでええんなや?」
「おう、思いっきり頼ってくれ」
「まぁ限度はあるがな」
おいヴィム少しは空気読め。
「じゃあ、ウチも頑張らなあかんな」
「…俺達も頑張るよ。じゃトレーニングしに行かなきゃ」
「うん、頑張ってな二人とも」
八神に見送られミーティングルームを出る。
突然ヴィムが俺の正面に立つ。
「何だよヴィム?」
「……自重しろ」
一言だけ言って、ヴィムは踵を返す。
「おい、ヴィム。自重しろって何をだよ。おいヴィム!」
声をかけるがヴィムが無視し続ける。
いったい何なんだよ……
「はぁぁあああ」
「どうしたんですかマスター! 顔が真っ赤ですよ!」
「大丈夫やリイン。大丈夫やから」
「……本当ですか?」
「うん……少し驚いただけやから」
「驚いたって……何にですか?」
「う~ん、男の人にまっすぐな目で褒められたのが久しぶりってことなんかなぁ」
「……? 私にはよく分かりません」
「リインにはまだ早いことやから……」
「マスターそれってどうゆうことですか?」
「……まだまだ子供ってことやな」
「うー私は子供じゃありません……」
「アハハハ」
「笑わないで下さいよお!」
―――― ミッドチルダ航空武装隊第13群司令部 ――――
「……君達の事については粗方は理解している」
第13群司令部司令官 アンドリュー・ゴールトン一佐が答える。
その顔には、厳しい表情が張り付いていた。
「八神二佐の話と総合するに、君達は別の世界からの漂流者。次元漂流者という奴になっている」
「次元漂流者……ですか」
「説明されても、なにがなんだかといったところだろう。まあ無理もないだろう、いきなりそんな事を言われたとして、信じられる話じゃないだろう……だが、これは現実だ」
ゴールトンは真っ直ぐこちらの目を見据えて言い放つ。
その言葉には言いしれぬ威圧感と、真実味を帯びていた。
「……発言、よろしいでしょうか」
「許可しよう。なんだね?」
「私達の処遇はいったいどうなるのでしょうか」
「……処遇とは?」
白々しく惚けたような事を抜かした事に若干の苛立ちを感じつつ、言葉を続ける。
「はぐらかさないでいただきたい。いきなり現れた別の世界の軍人を、そのまま野放しにしておく筈がない。少なくとも私はそうする」
「……君はどうされたいんだね」
「私はどうなろうとも構いません。ただ部下達に危害は加えないでいただきたい」
私の言葉を受けてもゴールトンは眉一つ動かさない。
息苦しさを紛らわせるため、胸元を緩める。
「その言い方ではよく分からないな……具体的に、君はどのようにしたいのかな?」
「私を拷問にかけるなり、最前線に送り込むなり好きにして貰って構わないと言うことです」
「……そうか」
ゴールトンのその一言には、待ち侘びていたと言わんばかりの雰囲気を纏っていた。
まるで鷹や鷲の様な鋭い瞳に見据えられ、一瞬背筋に悪寒がはしり悟る。
この男はとんでもない実力者であるということを。
するとゴールトンは部屋の隅に控えていた士官に声をかける。
話が終わると彼はこんな話を持ちかけてきた。
私、デトレフ・フレイジャーは次に発せられる彼の言葉に衝撃を受けるとも知らずに。
「君……管理局に来ないか?」