私が吸血鬼に転生して早くも五年の月日が流れた。生まれたばかりの頃は食っては寝、遊んでは寝を繰り返しながら、転生したことについて考えていた。どうしてこうなったのか、前世の自分はどうなったのかなどを時間の許す限り考えていた。結局は何もわからなかったが。転生のパターンとしては前世の自分は死んだ後、神様に会ってなんてことがあると思うのだが、死んだ記憶も神様に出会った記憶もない。だから、答えを出すのを諦めて前向きに考えることにした。前世に未練がないと言えば、嘘になるがそこまであった訳でもない。それに吸血鬼になりたいという夢が叶ったのだから、良いじゃないかと。そう思えば、次は自分が望む吸血鬼、カリスマ溢れる吸血鬼になるという目標もでき、それを叶える為に行動することもできた。
初めに行ったのは情報収集。自分がどのような両親の元に生まれたのか、吸血鬼の能力はどのようなものなのかなどを。調べてみた結果、自分はとんでもなく恵まれているのだとわかった。私の両親はここら一帯の吸血鬼、狼男、魔法使いなどを統べるスカーレット家の当主、しかも実力、統括能力とともに歴代当主の中でも優れているらしい。目標を叶える為にも両親から教えを請いたいものだ。そして吸血鬼の能力は予想よりも凄まじいものだった。驚異的な身体能力、再生能力、大量の蝙蝠に分解し、霧状にまで細かくできる。それに加え、息をするかのようにできる悪魔の召喚、そして他の種族とは一線を画す魔力を有している。この魔力はこの世界の魔物共通の力らしい。妖怪で言えば妖力、人間で言えば霊力、神力と呼ばれるものらしい。前世の記憶からすれば魔力=魔術という考えなので、魔術を扱ってみたいと思ったが、吸血鬼は魔力の扱いに長けている訳ではないのであまり役には立たないらしい。まあ、興味はあるので学んでいるが。吸血鬼単体でも恐ろしいのに、それに加え悪魔を大量に召喚できるとか、どうやって倒すんだ? というか人類は存続しているのか? まったく、『ぼくがかんがえたさいきょうのせいぶつ』とでも言いたいのだろうか。強力な能力の反面、弱点もきちんと存在しており、日光に弱い、流水を渡れない、鰯の頭や折った柊の枝には近づけないなどがある。
次に吸血鬼の能力の使い方を学んだ。前世では体を蝙蝠に分解するなど出来なかったし、そもそもしようとも思わなかったことなの中々出来なかった。初めて行えた時は、たった二匹の蝙蝠にしか分解出来なかったが、とても嬉しかった。分解した時は何とも言えない奇妙な感覚であったがコツは掴めたので少しずつ分解する数が増え、霧状に成る事も出来るようになった。最近は魔力の使い方を覚え、魔術を扱えるようになった。何とも地味なものしか出来なかったけれど。私は修行をしながら、充実した生活を送る事が出来た。
そんな順風満帆の生活をしていたレミリア・スカーレットは自分の部屋で今、妄想に耽っていた。
(ふふふ、素晴らしい素晴らしいな、私よ。夢が叶うとはこれ程までに嬉しい事なのだな。ふふふ、もっと修行して強くなり、お父様から上に立つ者としての知識を得なくてはな。)
コンコンコン コンコンコン
(吸血鬼として一人前になれた時は、当主としての地位を継ぎ、ふふふ」
「それから、最恐の吸血鬼として名を、ふふ、ふふふ、ハーッハーッハーッ、素晴らし「ガチャリ」…ゑ? 」
興奮しすぎたのだろう。ノックの音に気がつかなかった。
「お、お母様」
「え、えっと、返事が無かったから心配したのだけれど大丈夫そうね。そ、そうよね、お父様の子供ですものね。そういう時期もあるわよね」
そう言いながら、暖かい眼差しを向けてくるお母様。
(そ、そういう時期って、もしかして誤解されて……は、早く誤解を解かねば)
「ち、違います違いますよ、お母様」
「大丈夫、わかっていますよレミリア、それとお父様が呼んでいるので一緒に行きましょうか」
(ぜ、絶対わかってない〜‼︎)
それから必死に説得をしていたが、結局お母様の眼差しはお父様の部屋に行くまで変わらなかった。
「今日は個々人が保有する『程度の能力』の確認をしようと思う」
「『程度の能力』ですか? お父様。個々人ということは、お父様や私にもあるのですか? 」
「ああ、我は『封印する程度の能力』を保有している。封印するまでにある程度の時間が掛かるが、一旦使えば、数百年は封印することが可能だ、さて、レミリアの能力の確認をしよう」
「はい、お父様」
「うむ、方法は簡単だ。自分の魂の奥底に潜るイメージをすればいい。それだけで自ずとわかる」
(難易度が高いかと思うんですけど…魂なんてわかりませんけど。とりあえず潜るイメージで、う〜ん)
そうして、レミリアの意識は潜り始める。 深い深い奥底の一筋の光へと。そして、辿り着いた先で観る自らの力。
《我々の結末は生まれる前から既に決まっている、神の御業によって。如何なる選択をしようとも、この定めから逃れることはできはしない。ならば、この力は神への反逆。定めを操り結末を変える、神の領域へと踏み込む力。名付けるならば》
(名付けるならば、そう『運命を操る程度の能力』)
「お父様、わかりました。私の能力は『運命を操る程度の能力』です」
「運命を操る力…ふむ、使いこなせればかなり強力なものとなるだろう」
(お父様もお墨付きの能力、ふふ、必ず使いこなして、夢を叶える為に役立てよう)
そう意気込んだものの私は、能力の使用が中々出来なかった。能力を完全に使用する方法として、最も近道なのが死に瀕することらしい。自分が吸血鬼であって死ににくいとはしても自ら、そんな状態にはなりたくない。だから、地道にするしかないのだが、運命を操るとはどんな風なのか、皆目見当がつかずに行き詰まっていた。そして今、魔術の勉強をする場所である図書館にきていた。お父様もお母様もかなりの読書家であるらしく、スカーレット家の権力を用いてまで本を集めているので数えるのも億劫になる程の大量の本がある。この中ならば、能力を使用する為のヒントもあるかもしれないと思っていた。
(本の整理が余りにも出来てないじゃないか、いつも使っているのは一部の所だけだったから気づかなかった)
料理本の横に哲学関連の本、その横には植物図鑑といった具合に何処にどんな本があるのかがわからない。量が量だけに一冊ずつ確認すれば、どれほどの時間が掛かるのか、考えたもない。
(必ず司書を雇おう。これは酷すぎる。さて折角来たのだから、少しだけでも探してみるか)
ある程度探すと、一冊の本から目に留まった。普段なら見逃すであろう一冊の本。しかし、私には確信があった。この本は役立つと。その本の題名は『予知夢とはどのようなものか』であった。
本を読んでイメージが固まったからだろう。破滅への第一歩となる夢を観た。
《運命を告げる。その者は苦しみ続ける暗闇の中で一人。その者の苦しみは永遠と続く、光へと放たれるまで。その者は破壊の化身、全てを破壊せんと狂い続ける》