火の聖痕が欲しいです!   作:銀の鈴

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風の聖痕の原作ヒロイン登場の巻!


8話「火の御子」

僕が通っている小学校には、神凪一族の子供達が多く通っている。一族全体で同じ職業に就いているのだから住居も近いためだ。

 

つまり、この小学校には神凪宗家のお嬢様も通っているわけだが…

 

「和麻兄さん、壁にへばり付いていたら不審者にしか見えないよ。通報されても知らないからね」

 

「ば、馬鹿たれっ!声が大きいぞっ!気付かれたらどうするんだ!」

 

その日、中学生でありながら小学校に忍び込み、町内会でも美少女と評判の女の子を物陰から粘着質な視線で凝視している不審者を発見した。

 

「武志さん、見てはいけませんよ。あの様な社会の底辺を蠢くゴミ虫を視界に入れるだけで、武志さんが汚されてしまいますわ」

 

「えっと、職員室と警備室それに警察にも連絡しなきゃね。そうそう、本家にも連絡して隔離依頼が必要だよね」

 

冷淡な反応をする綾と、嬉々として社会的抹殺を図ろうとする沙知

 

「和麻兄さんって、ある意味人気者だよね」

 

「そんな人気などいらん!」

 

「貴方達、学校では静かになさい」

 

僕達が騒いでいると、和麻兄さんが覗いていた女の子が気付いて注意してきた。

 

「学校っていうのは、騒がしいものだよ。少しぐらい大目に見てほしいな、綾乃姉さん」

 

そう、原作では一方的に憧れていただけの僕だったが、現実では、師匠繋がりで姉さん呼びをできる関係にレベルアップしているのだ!

 

脳筋師匠が、綾乃姉さんのお目付役に任じられたので、必然的に僕も一緒に行動させてもらえる機会ができ、友好関係を結べたのだ。まあ、元々親戚ではあるから警戒とかされてないし、僕が年下だから色々と気を使ってもらえたので、無事に仲良くなれた。

 

「武志達だけなら態々注意までしないわよ。中学生でありながら小学校に入り込んでまで騒いでる人が居たから注意しているのよ」

 

「じゃあ、後は和麻兄さんに任せて僕達は行かせてもらおうかな」

 

「はい、武志さん」

 

「早く行こうよ、武志」

 

「ちょっと待ってくれっ!俺をアイツと2人にさせないでくれっ!」

 

僕達の冗談に涙目になって追い縋る和麻兄さん。

 

「少しぐらい年上の威厳を見せてほしいと思う僕は、間違ってるのかな?」

 

「申し訳ありません。そればかりは武志さんの間違いだと愚考致します」

 

「武志でも間違うことがあるんだっ!」

 

「うん、2人共ありがとう。間違いを指摘してくれる友達を持てて、僕は幸せ者だよ」

 

「とんでもありませんわ。私達こそ武志さんの友達になれたことを天に感謝させて下さい」

 

「あたし達はずっと仲良しでいようね!」

 

「うふふ、美しい友情ね。少し羨ましいわ」

 

僕の冗談にここまで乗ってくれる彼女達は、本当に得難い友人達だ。

 

「…武志以外は絶対本気だと俺は思うぞ」

 

和麻兄さんが何やらブツブツ言っているが、いつもの事だから気にしないでいよう。

 

「結局、和麻兄さんは綾乃姉さんのこと覗いていたけど、綾乃姉さんに気でもあるの?」

 

「申し訳ありませんが、私としましては貴方に対する好意は一切持ち合わせておりません。勿論、親戚としての親近感的な感情を、少しばかりは見つける事ができると期待して、私の心の中を隈なく探し尽くせば、恐らくは一欠片ぐらい見つけ出せると、私は己に思い込ませることはできるだろうと、人間の無限の可能性を期待したい所存です。ですが、こういう言い方をしてしまうと貴方に僅かにでも期待させてしまって、私にちょっかいを出されてしまった場合、私としましては我慢の限界に達してしまって、何をしでかしてしまうか自分でも自信が持てなく、少々怖くなるほどなので、決して勘違いされないようにご理解下さい」

 

僕の何気ない一言に綾乃姉さんが反応した。

 

…怖かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「和麻兄さんって、綾乃姉さんにすごい嫌われてるよね」

 

「嫌われてるっていうより、無能な俺の相手をしたくないんだろ」

 

「うーん、そうかなぁ?」

 

原作では、綾乃姉さんは炎術の才能を持たない和麻兄さんのことを気にもしてない感じだったよね。

 

綾乃姉さんがあそこまで反応するって事は、和麻兄さんが気になっている証拠だよ。

 

「でも好意を抱く理由がないんだよね」

 

「なんだそれ?好意を抱くのに理由が必要なのか?」

 

「綾乃姉さんは神凪宗家だよ。当然、典型的な脳筋だもん。好きになる理由は強さだよ」

 

原作ではそうだった。風術師として強大な力を得た和麻兄さんに、当初こそ反発していたけど、その強さに接する内にあっさり落ちちゃうような強さ至上主義の脳筋娘だった。

 

「和麻兄さんって、実は精霊術師として目覚めてるの?」

 

「またそれか、俺には炎術師としても風術師、水術師、地術師どの適性も持ってないよ」

 

「そっか…」

 

実は僕は、和麻兄さんに炎術師以外の精霊術師の適性がある可能性を告げていた。原作では風術師として大成しているのだから才能は絶対にあるはずだし、無ければ僕が困る。

 

「目覚めるためには、やっぱり命の危機が必要かな?」

 

「何やら不穏当な台詞が聞こえるんだが」

 

「和麻兄さん、僕の為に死ぬような目に遭ってくれないかな?」

 

「お断りだ!」

 

「可愛い弟分の為だよ!」

 

「訳がわからんぞ!?」

 

「僕の幸せな未来の為に和麻兄さん、一度死にかけてから不死鳥のように蘇ってよ!」

 

「ちょっと待て!お前、目がマジだぞ?」

 

「本気と書いてマジと読む!和麻兄さん、僕は兄さんが憎いんじゃないよ。自分の事が可愛いから兄さんを襲うんだよ。いいよね?」

 

「いいわけあるかぁっ!!」

 

炎術を使い、2時間程追いかけ回したが残念ながら和麻兄さんは目覚めなかった。

 

「でも僕は諦めない!明日も和麻兄さんを襲うぞ!」

 

「か、勘弁して、くれ…」

 

僕の平和な未来のため、和麻兄さんを人間兵器に生まれ変わらせてみせるぞ!おー!

 

「ちっ、今日も楽しそうにしてるわね!あんな奴と遊ばなくても、何時でも私が遊んであげるのに!」

 

友達が少ないお嬢様が、自分の友達を取られたと怒っているとは気付くことができない僕だった。

 

「あの男…燃やしてやろうかしら?」

 

「(ゾクッ!?)なんだ、いきなり化け物にでも睨まれたような寒気がしたんだが?」

 

和麻兄さんが目覚めるのも近いかもしれない…


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