火の聖痕が欲しいです!   作:銀の鈴

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もう一人の風牙衆の女の子視点です。


15話「父さんとあいつ」

あいつの事を最初は警戒していた。

 

風牙衆のあたしに気軽に声をかける神凪なんて、胡散臭いどころの話じゃない。

絶対にあたしを騙そうとしているに違いないと思った。

 

目的は、金か?身体か?

 

金が目的ならお門違いもいいところだ。

あたしの家は貧乏だから、逆さにされたって1円だって出てこないぞ。

 

身体が目的ならこいつは変態か?

小学1年の女の子を狙うだなんて…

いや、アイツも同い年だから正常なのか?

どっちにしろ、アイツが小学1年でも油断は出来ない。

最近の子は早熟だって、お母さんも言ってたもん。

 

「おはよう。風木さん」

 

「お、おはよう。大神くん」

 

「今日もツインテールが決まってるね」

 

「あたし、ショートカットだけど?」

 

「な、なに、訂正されただと!小説は先に言った者勝ちじゃないのか!?」

 

神凪でも有名な大神家の子供は、変わり者みたいだった。

 

「ショートカットよりもツインテールの方が、世間の需要は高いと思うけどなぁ」

 

「あんたの好みがツインテールだから、あたしにツインテールにしろって、言ってるわけ?」

 

「まさか、ただの一般論だよ。第一、彼女でもない女の子の髪型についてあれこれ言えないよ。髪は女の子の命ともいうしね」

 

「か、彼女って…あんた小学1年のクセして、ませたこと言うのね」

 

あたしは、恐る恐る大神家の子供に軽口を叩いてみた。

普通の神凪の子供なら、風牙衆に軽口を叩かれたら逆上して、暴力を振るってくるはずだ。

 

「あはは、最近の子供は早熟らしいからね。僕もそうなのかもね」

 

普通に…というか、少しおどけたように笑うと機嫌よく返された。こいつ本当に神凪の子供か?

 

「あんた…あたしが風牙衆の子供って気付いてないの?」

 

「風牙衆か…」

 

図星だったのかもしれない。

あたしの言葉に急に黙り込んでしまった。

何かを考え込むその姿に、逆上して暴力を振るってくる姿が重なって見える。

 

身体が僅かに震えるのを、手を握りしめることで何とか我慢する。

 

「なによ。なんか文句があるなら、早く言ってよ」

 

あたしは、殴られることを予想しながらも強気に言う。

 

毎度のことながら、あたしはバカだなぁって思いながら。

 

「僕は、風牙衆のネーミングは『ない』と思うんだ」

 

「……は?」

 

「だから風牙衆って一昔前のネーミングセンスだよね。もう少しセンスが欲しいよ」

 

「……え?」

 

「僕なら『ウィンド・ナイツ』とか『 熱き風の旅団』とか『げほげほ団』とか、もっとセンスの良い名前を付けるけどね」

 

「もしかして、あんたってバカなの?」

 

あたしは思わず素で返してしまっていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おはよう。沙知」

 

「おはよう、武志」

 

あいつがバカだと分かってからは、警戒心も緩んでしまい、いつの間にか名前で呼び合う仲になっていた。

 

「未風さんも、おはよう」

 

「おはようございます。大神様」

 

「様付けは止めてほしいなぁ。僕を様付けで呼んでいいのはメイドさんだけだよ」

 

「生憎とメイド服は所持しておりませんので、取り寄せるまで少々時間がかかります。どうぞ、ご容赦のほど伏してお願い致します」

 

「未風さんって堅いよね。どうにかして未風さんと沙知を足して2で割ること出来ないかな」

 

「沙知は私の大事な親友です。その沙知と一つになれるのなら、これ以上の喜びはありません。ですが、一つになった幸福の後、再び分かつ事となれば私の心が耐えられそうにありません。ですので、大神様のご提案を辞退させて頂くご無礼お許し下さい」

 

「はっはっはっ、許す許す。良きに計らえ」

 

「大神様の寛容な心を神に感謝します。と思いましたが、残念ながら私は無神論者でしたので、そこのカタツムリに感謝する事で代わりとしたく思いますわ」

 

「…あんた達って、仲良いの?それとも悪いの?」

 

「マブダチと言っても過言ではないかもしれないね」

 

「大神様と仲が良いなど恐れ多くて困ります」

 

よく分からん。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「綾は、どういうつもりなの?」

 

「何の事かしら?」

 

綾は、あたしの問い掛けにワザらしく惚ける。

 

「武志のことに決まってるでしょう。武志はバカだけど神凪の奴とは思えないぐらい良い奴だよ。態々イヤな態度を取らなくてもいいじゃん」

 

「全く、沙知は単純すぎて心配だわ」

 

「どういう意味よ」

 

「彼は神凪一族なのよ。今は子供だから友好的かもしれないけど、すぐに他の奴らと一緒になるわ」

 

「そんなこと決めつけなくてもいいじゃん。案外、このままの関係でいられるかもしれないよ」

 

あいつは面白いし、できればずっと友達でいたいと思う。

 

「そうね。このままの関係でいられたら何も問題はないわ。でも、彼が変わった時に下手に関係を持っていたらどうなると思うかしら?」

 

「どうなるって、言ってる意味が分かんないんだけど?」

 

「私たちは女なのよ。個人的に付き合いのある女…逆らえない立場の女…何かしても罰せられることのない女…そんな状況で傲慢な男が考えることなんて分かるでしょう」

 

あたしはその言葉に咄嗟に反論が出来なかった。だってそれは、あたしも最初は考えた事だったからだ。

 

「で、でもあいつは…そんな奴じゃないと思う」

 

「どうして、そう思うのかしら。まだ出会ってから大して時間も経ってないわ。彼の人間性なんて分からないわよ。それに私はこれから変わってしまう可能性の事を言っているのよ」

 

「それはそうなんだけど…」

 

「沙知。何か言いたい事があれば言ってほしいわ。私だって別に彼を嫌いたいわけじゃないのよ。ただ、彼なんかより貴女の方がずっと大切だっていうだけなの」

 

「うん、ありがとう。あたしも綾のこと大切に思っているよ」

 

綾があたしを心配してくれる気持ちは、凄く嬉しかった。でも、それでも…

 

「あいつってさ…あたしのお父さんに、ほんの少しだけ似てるんだよね」

 

「沙知のお父様に?」

 

「えへへ、お父『様』なんて立派じゃなかったよ。いっつもお母さんやあたしを笑わそうとして、バカなことばっかりしてた」

 

あたしはお父さんの事を思い出しながら話した。

 

「バカなことして、お母さんに怒られて、それでも懲りずにまたやらかして…ホントに仕方のないお父さんだったよ」

 

お父さんは、大人なのにいたずらっ子みたいな感じの人だった。すぐにふざけてはおどけて笑ってみせるような人だった。

 

「でも、ある日突然帰ってこなくなっちゃった」

 

「え…?」

 

「綾は覚えてるかな?半年前の大規模討伐のこと」

 

「風牙衆の動ける人間の大半が駆り出されたやつよね」

 

半年前に起こった妖魔の大量発生事件。

事件の詳細は分からないけど、あたしのお父さんも出動した。

 

神凪の術師も大勢が出動したらしい。

でも、神凪宗家の人間は別の依頼で全員が国外に出ていたそうだ。

 

それが混乱の元になったと聞いた。

 

バカバカしいことに、術師同士で主導権争いが起こったのだ。

近年では滅多に起こらない妖魔の大量発生。

その大討伐作戦で、宗家不在なのを理由に分家毎に自分こそが作戦指揮をとるに相応しい術師だと争い始めたのだ。

ただ、功を立てて家の格を上げるためだけに。

 

その混乱は作戦が始まってからも治らなかった。現場は指揮系統などなく、各々が勝手に妖魔と戦い、収拾のつかない状態だったらしい。

 

そんな状態で堪らないのは風牙衆だ。神凪の炎は神凪の人間を傷つけないから、奴らは周囲の事などお構いなしで炎を放つ。

でも、風牙衆は神凪の炎を浴びれば命に関わる。

 

大勢の風牙衆の人が神凪の炎と爆風で傷付いた。

その威力は周辺の地形を変えるほどだったらしい。

 

「そして、全てが終わったあと…お父さんの姿はどこにも見当たらなかったんだって」

 

「ちゃんと捜索はしたのっ!?」

 

「風牙衆の長は、捜索しようとしたけど、風牙衆全体の被害が大きくて、でも他の依頼も沢山あるから、神凪の奴らがたった1人の行方不明者のために人員を割く事は許してくれなかったそうだよ」

 

「そんなっ、そんなことあったなんて私聞いてないよっ!?」

 

「うん。神凪から箝口令がしかれたからね。お母さんとあたしは…長が土下座して謝ってくれたから知ってるんだ」

 

「そんな、そんなの酷すぎるよ…それじゃ沙知のお父様は神凪に殺されたみたいな…」

 

「違う!お父さんは、お母さんやあたしを守る為に命を賭けてくれたの!妖魔から皆んなを守る為に戦ってくれたの!神凪なんかの犠牲になったんじゃないっ!」

 

「あ……ごめん、ごめんね。辛いこと思い出させちゃって、本当にごめんなさい」

 

あたしは、今まで誰にも話せなかったことを初めて話した。

 

あたしは気付いたら泣いていた。そして、同じように泣いている綾に抱きしめられていた。

 

だから、あたし達は気付けなかった。

 

あいつが全てを聞いていたことに。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お母さん、遅いなぁ」

 

綾と抱き合って泣き崩れた後、お互いに気恥ずかしくなり、取り敢えずアイツの事は保留にする事になった。

ちなみに綾には(非常に不本意だが)ファザコン認定をされたみたいだった。

 

それから幾日か経った頃の事だった。

 

「いつまで電話してるんだろう。ご飯が冷めちゃうよ」

 

夕食が出来上がった後、かかってきた電話に出たお母さんが戻ってこない。

 

どうしたんだろう。なんだか胸騒ぎがした。

 

ガタンッ

 

「どうしたのっ、お母さんっ!」

 

何かが倒れたような音が電話口の方から聞こえた。あたしは慌ててお母さんの元に向かった。

 

「お母さんっ!?」

 

お母さんが電話の前で座り込んでいた。

あたしが慌てて駆け寄ると、お母さんは受話器を握り締めたまま泣いていた。

お父さんが行方不明になった時にも泣かなかった気丈なお母さんが泣いている。

あたしは何が起こったのか分からなくてパニックになりかけた時…

お母さんの嗚咽混じりの声が聞こえた。

 

「沙知…お父さんが……見つかったの」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「綾、おはよう!」

 

「おはよう、沙知。朝から元気ね。まあ、無理もないわね。お父様が見つかったんだから」

 

「えへへ、まあね」

 

あたしのお父さんが見つかった。

突然の連絡に混乱したあたし達だったけど、連絡のあった病院に駆けつけると、まだ昏睡状態だったけど、確かにお父さんが生きていた。

病院の先生が言うには、重症だけど峠は越えたから命の危険はないらしい。

 

「昨日、意識も取り戻したって連絡があったんだよ」

 

「そう、本当に良かったね。沙知」

 

「うん!ありがとう、綾」

 

うちに電話をくれたのは、風牙衆の長だった。

ぬか喜びをさせないようにと、あたし達には内緒にされていたけど、数日前に突然、神凪宗家から呼び出しを受けて、宗主直々にお父さんの捜索を風牙衆の総力を挙げて行うようにと命令を受けたそうだ。

 

しかも風牙衆だけでなく、神凪宗家からの働きかけで警察などの協力も受けての捜索だった。

 

捜索を始めて数日後、現場から10㎞以上離れた川下から、お父さんの霊力の痕跡が発見された。

その後は、その周辺の探索と病院への聞き込みで直ぐに身元不明の患者の情報が集まり、お父さんを無事に見つける事ができた。

 

「神凪の宗主って、案外いい奴なのかな?」

 

上機嫌のあたしは、そんな事を口にする。

 

「そうね。少なくとも幼い者の言葉に耳を傾けるだけの度量はあるみたいね」

 

「なにそれ、どういう意味?」

 

綾のよく分からない言葉に聞き返すが、綾は後ろを振り返ってしまった。

 

「おはようございます。武志さん」

 

「おはよう、未風さん。今日は名前で呼んでくれるんだね」

 

「はい。厚顔無恥ですが、武志さんのお言葉に甘えさせて頂きたく思います」

 

「はっはっはっ、許す許す。良きに計らえ」

 

「はい。良きに計らいますね。それと私の事も沙知と同じ様に名前でお呼び下さいね」

 

「いや、あの、なんていうか…急にどうしちゃったの?悪いもので拾って食べちゃったの?」

 

綾の普段からの激変ぶりに、最初はいつものようにおどけて対応していた武志も素に戻って心配しだした。もちろん、あたしも綾の脳みそを心配する。

 

「ホントに綾どうしたの?最近暑かったから、脳みそ茹だっちゃったとか?」

 

「僕は拾い食いの方だと思うんだけど、カラフルなキノコを食べてパワーアップするのはゲームの中だけだよ?」

 

「ねえ、2人とも『親しき仲にも礼儀あり』という言葉をご存知かしら?」

 

「「なにそれ?」」

 

「うふふ、2人はバカップルね」

 

「綾、それって意味が違うと思うんだけど?」

 

「あっと、ごめん。今日は僕、日直だから先に行くね。そうだ。さっき言ってなかったよね。おはよう、沙知」

 

「うん。おはよう、武志」

 

「それじゃ、もう一度。おはよう、綾」

 

「はい、もう一度おはようございます。武志さん」

 

「あはは、じゃあ先に行くね」

 

武志は、少しおどけたように笑うと駆け足で教室に向かった。

 

「ねえ、綾。急にどういう心境の変化なの?もしかして、あたしのお父さんの件で神凪への見方が変わっちゃったとか?」

 

「私の父は、神凪宗家の屋敷の周辺警備を主に担当しているの。その父から聞かされた話をしてあげる」

 

綾はあたしの疑問に答えるのではなく、突然、別の話をしだした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日は神凪宗家の屋敷内にて警戒の任に就いていた。

もちろん、神凪宗家の屋敷を狙うような愚か者など、この任に就いてから随分と経つが1人としていなかったが、手を抜くことなどありえなかった。

 

その日の午後に奇妙な二人連れが、屋敷を訪れた。

1人は、神凪一族に於いて『分家最強の術者』と名高い男性だった。

彼は別に問題はない。

これまでも幾度となく訪れているのだから。

 

奇妙に思ったのは、彼が連れている子供の方であった。特にその子供に不審があるわけではない。

恐らくは『分家最強の術者』が最近弟子にしたという、彼の甥だと思われたからだ。

 

ただ、彼のような幼い者が、神凪宗家の屋敷に初めて訪れていながらも、些かも畏縮することもなく、いや寧ろ覇気さえ纏っているかのように感じられたのだ。

 

そんな考えに囚われた直後、私は自分の考えに笑ってしまった。

あの様な幼い子になにを思っているのかと…

 

頭を振ってから彼を見直してみれば、私の娘と変わらぬ年に見えた。

私の娘は幼いながらも聡く、風牙衆の現状を正しく理解していた。

普通の家庭に生まれていれば、優れた子として幸せに暮らせていただろう。

だが現実では……いや、これ以上は考えてはならぬことだ。

私は気を取り直して任務に専念するため彼等に意識を戻した。

 

そして私は、

 

これ以上はないだろうという驚きを受けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「武志さんは、宗主の胸倉を掴んだまま、こう叫んだそうよ」

 

『宗主にとって神凪一族とはなんだ!家族じゃないのか!』

 

『一族にとっての宗主とはなんだ!親ではないのか!』

 

『親ならば子供の行いの責任をとりやがれっ!』

 

「その後も色々とあったらしいけど、詳細は流石に教えてもらえなかったわ。ただ、武志さんが宗主を動かして、結果として沙知のお父様の捜索は成された。それだけで十分よね」

 

そこまで語った綾の顔には、隠しようもないほどの嬉しさに彩られていた。

 

「もっとも、武志さんの名前は表に出ていないわ。混乱を避けるためには当然な処置よね。たかだか小学1年生の言葉に宗主が動かされたなんて知れれば、どんな騒動が起こるかなんて想像したら楽しいわね」

 

嬉しさを露わにする綾とは対照的に、あたしは困惑に苛まれていた。

 

「あの、でも、だって、どうして武志はそんな無茶な事をしたのよ!?」

 

いくら武志が同じ神凪一族だといっても、宗主に直談判など許されないだろう。しかも宗主の胸倉を掴むなんて、下手をすれば一族を追放されてしまうかもしれない。

 

「ど、どうしよう!武志が追放とかされちゃったら!?」

 

「沙知、落ち着きなさい。今さっき本人が平気な顔で登校してきたでしょう」

 

あたしはどれだけ慌てていたのだろう。もしも武志が処分を受けるのならとっくに受けているだろうに。

 

「でも、どうして武志は、お父さんを助けてくれたんだろう?宗主に逆らうことになるかもしれない危険を侵してまで」

 

あたしには分からなかった。

確かにあたし達は…神凪と風牙衆ではあるけど、友達だといえる関係だと思う。でも、そこまでの危険を侵してまで助けてくれる関係かといえば、それは違うだろう。

 

「ふふ、沙知はその理由を知っているはずよ」

 

綾は意味深に笑っている。正直言って気持ち悪い笑みだった。

 

「気持ち悪いだなんて失礼ね。そんな事を言うんなら教えてあげないわよ」

 

「綾は知っているの!?」

 

驚くあたしに綾は、先ほどよりも気持ち悪い笑みを浮かべる。

 

「父が最後に教えてくれたのよ。細かい事を教えられない代わりにってね」

 

「あたしにも早く教えてよ!」

 

「うふふ、私の笑みを気持ち悪いだなんて今後言わないのなら教えてあげるわ」

 

「言わない!絶対に気持ち悪いだなんて言わないからっ!」

 

うん。綾の笑みは気持ち悪いを超えて、だんだんと不気味な笑みになってきたからね。

 

「何故かしら。教える気が無くなったわ」

 

こいつエスパーかっ!?

 

「ごめんなさい。教えて下さい」

 

「うふふ、素直でよろしい」

 

「もうっ、なによそれ」

 

あたし達はなんだか可笑しくなり、2人で笑いあってしまった。

 

「ふふ、それじゃあ、教えるわね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

全ての話が収まった後に、宗主は彼に尋ねた。

それは、風牙衆の誰もが聞きたがる問いであっただろう。

神凪一族である彼が風牙衆を……己の全てを捨てる程の覚悟を持って助けようとする理由とは何なのかを。

 

そして私は、

 

驚きというものに上限がないことを知った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『友達を助けるのに理由なんていらないよね』

 

武志は宗主の問いに対して、少しおどけたよう笑いながらそう答えたそうだ。

 

「武志ってバカだ」

 

「ほらね、沙知は理由を知っていたでしょう」

 

綾はこれ以上はないという程の嬉しそうな笑顔をみせる。

 

「武志って本物のバカだ」

 

「そうね。きっと彼は神凪一族とか風牙衆とか、そんなもの歯牙にもかけないほどのバカなのね」

 

綾は見た事もないほどの優しい笑顔をみせる。

 

「あんなバカ…放っとけないよ」

 

「そうね。あんな優しいバカを放っとけないよね。ふふ、だって私達は友達だもん」

 

綾は少しおどけたように笑った。

 

まるで、いつものあいつのように…




風牙衆の女の子コンビが主人公に好意的なのをうまく表現出来ていれば良いのですが。うまく伝わったでしょうか?

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