閑静な住宅街に存在する大神邸のリビングでそれは起こった。
海外逃亡中だった“神凪 和麻”が、恥知らずにも大神家に顔をみせに訪れていたときに、前触れもなく全身から発火したのだ。
俗に“人体自然発火現象”といわれる超常現象なのだろう。たぶん。
この現象は世界的にみれば決して珍しいとはいえないが、全く原因が究明されていない現象に、偶然立ち会った人達は困惑を隠せなかった。
大神家の次男である“大神 武志”は、黄金の火柱を羨ましく思いながら見ていた。
かつての彼の相棒であった“火武飛”は、黄金色だったが、進化した“赤カブト”は、武志の気の色に染まり赤色だ。これついては綾乃がお揃いだと喜んでいたこともあり、武志に不満はなかった。
だが、武志としてはやはり最高位の黄金に憧れを感じてしまうため、死亡フラグを回避した今でも修行は欠かしていない。
そのお陰で物凄く体調の良い日は、一瞬だけ炎の色に金色が混じる事があると本人は言い張る。しかし本人以外で確認した者はまだいない。
大神家の長女である“大神 操”は立ち上る火柱を前にして思う。
“あらあら、せっかく戻ってきた手駒が燃えているわ。まあそれはいいとして、普段は冷静な煉が暴発するなんて思春期は大変ね。私の可愛い武志も思春期だから色々と気を配ってあげなきゃいけないわね”
大事な弟を心配する優しい姉は、明日は思春期の男の子のハウツー本を買いに行こうと、火柱を見ながら考えていた。
大神家で暮らしている“石蕗 紅羽”は立ち上る火柱の中に人影を認めて思う。
“へえ、本当に和麻さんは燃えているみたいね。そういえば前にマリアが反魂の術を使えるとか言っていたわね。後学の為に見せて貰いたいわ。その為には和麻さんの身体が燃え尽きなきゃいいんだけど”
紅羽は、石蕗一族と完全に決別して生きていくつもりだった。
将来的には、フリーの拝み屋として個人事務所を設立する予定の為、現在は様々な系統の術を学び、自分の引き出しを増やしている。
そんな勉強家の紅羽は、教材として使えるように彼の肉体が残っていて欲しいと考えながら火柱を見つめていた。
大神家で悠々自適な居候暮らしを満喫する“マリア・アルカード”には秘密があった。
実は彼女は“きのこ派”だったのだ。
大神家では“たけのこ派”が優勢だったため、マリアは自分の派閥を明らかにはしなかった。
何故なら彼女以外で唯一の“きのこ派”は、大神家の長男にして、同時に大神家のカースト最下位の“大神 武哉”だけだったからだ。
彼と同じ派閥などと知られたら、己の沽券に関わると考えたマリアは、『お前は板チョコでも食ってろ』と迫っても、一向に応じない彼に苛立ちを感じていた。
そんなある日、大神家に優柔不断が服を着たような情けない男が訪れたので、マリアはストレス解消を兼ねて説教をかまして楽しんでいた。けれどその男は、説教に夢中になっていたマリアの隙をついて逃げ出してしまう。
慌てて追いかける途中で、“たけのこ派”の食べかけを発見した彼女は、何となく手にとってボリボリと食べてみる。
「うむ、流石は永遠のライバルだな。敵ながらやりおるわ」
改めて感じたライバルの手強さに頬を緩めながらリビングに辿り着くと、そこには黄金の火柱が勢いよく燃え盛っていた。
「チョコが溶けるではないかっ!!」
マリアは気合一発で、黄金の火柱を吹き飛ばした。
“風の妖精ティアナ”は、運命との邂逅を果たす。
まるでお日様のような
思わずダイブした身体を優しくモコモコに受け止めてくれた、包容力に溢れたフワフワな毛並み。
身体全体で感じる精霊達の鼓動と息吹。
一瞬で魅了された。
これが人間がいう恋なのだと理解させられた。
小さな妖精の身で、その恋は余りにも唐突で劇的だった。
そして恋の炎はティアナの身も心も燃やし尽くす。
後に残ったのは“無償の愛”それだけだった。
彼とずっと共にある為に、ティアナは己を縛る使命をサッサと片付けようと、手下1号に秘宝の奪還を命じた瞬間、黄金の火柱が立ち上る。
ティアナは思った。
“まるで私達の未来を祝福してる花火みたい”
だが、運命は過酷だった。
黄金の火柱が突然、ティアナに向かって吹き飛ばされたかのように迫ってきたのだ。
その強力な炎にティアナは消滅を意識した。
恐怖はなかった。
妖精である彼女にとっては自然に帰るだけの話なのだから。
ただ、自分が炎によって消えてしまったら彼が――火の精霊の化身のような赤カブトが悲しむかもしれない。
それだけが心配だった。
そんな健気な小さな妖精に運命は過酷ではあったが、非情ではなかった。
赤カブトの頭に乗っていたはずのティアナは、気がつくと赤カブトの頭から降ろされていた。
そして、黄金の炎に赤カブトが立ち塞がる。
黄金の炎に包まれる赤カブトの姿にティアナは息を飲むが、炎は決して赤カブトを傷付けない。
全てを焼き尽くす苛烈な炎が、いつの間にか全てを慈しむ穏やかな灯火となっていた。
その光景を目の当たりにした“
『その者、紅き衣を纏いて金色の野に降りたつべし。 失われし精霊との絆を結び、ついに妖精達を愛の地に導かん。』
*
「俺を殺す気かぁあああっ!!!!」
頭に血が上っていた煉だったが、いつもの癖で熱量よりも破邪の力を高めた炎で攻撃したお陰で、和麻は一命を取り留めていた。
幸いなことに全身火傷を負いはしたが、マリアの治癒魔術で瞬く間に回復できた。
何故か紅羽は、舌打ちをしながら見ていたが。
「まあまあ、和麻兄さん。煉も悪気があった訳じゃないんだから、許して上げなよ」
「悪気があろうと無かろうと殺されてたまるかっ!!」
実の弟の煉に対して、大人気なく怒りまくる和麻を武志が宥めようとするが、大人気ない和麻には大して効果はない。
もっとも煉の行動を気にする人間は、和麻一人だったので流されることになる。
結局、自分の生命の危機をアッサリと流された和麻は、この時初めて自分の事を第一に考えてくれる“小雷”と“翠鈴”の二人の有り難さを心底感じてしまった。
この時の感情が和麻の心に楔として残ってしまった為に、これ以降どれほど二人の所為で酷い状況に陥ろうと、和麻は決して二人を見放す事が出来なくなる。
なお、この時の二人は別室で高級お菓子店のケーキをパクつくのに夢中だったため、和麻の窮地の事など微塵も気付いていなかった。
*
和麻とティアナの事情を確認した一同は、亜由美の中に妖精の秘宝があることを知る。
そして、恐らくはその秘宝が現代の技術では製造不可能なホムンクルスの秘密なのだろうと結論付けた。
「兄様、お願いします! 亜由美ちゃんを助けて下さい!」
「れ、煉くん!?私なんかの為に土下座なんてしないで!」
「私“なんか”なんて言わないでほしい。亜由美ちゃんは僕の大切な人なんだ。たとえ亜由美ちゃん自身でも、僕の大切な人を蔑ろにする事は絶対に許さないよ」
「っ!? あ、ありがとう、煉くん。私なんか…じゃなくて、私の事を大切だなんて言ってくれて。でもね、私にとっては煉くんが大切な人なんだよ。その事を、煉くんも忘れないでね」
マリアが亜由美の身体を調べた結果、秘宝で強引に成長させられた身体は既に崩壊が始まっている事が判明した。
その事実を知った煉は、迷いなく武志達に土下座をして亜由美の事をお願いする。
しかし自己評価の低い亜由美にとっては、煉の行動は信じられないものだったのだ。
「亜由美ちゃん…」
「煉くん…」
「チッ」
そして、なんだかんだと言い合いながらも結局はイチャイチャする若い二人に、和麻は思わず舌打ちをしてしまう。
「あれ、和麻兄さんには小雷さんと翠鈴さんがいるのに、小学生カップル相手に嫉妬してるの?」
「あらあら、和麻さんが
「神凪一族に警戒される男…名を売るには中々いいキャッチフレーズだわ。和麻さん、油断ならないわね」
「紅羽姉さんが独立する時には、大神家が全力でバッグアップするから、宣伝の事なんか気にしないでよ」
「ありがとうね、でもあまり武志達に頼ってばかりじゃいけないもの」
「そんなことないよ、僕達は家族なんだからいくら頼ってくれても構わな……ううん、紅羽姉さんが困ったときに僕を頼ってくれなきゃ怒るよ」
武志はキリッとした表情で紅羽に語るが、何故か彼女は頬をひきつらせている。
「武志…あんまり女の子にそんな格好良い事ばかり言っちゃダメよ。そこで操が悪魔でもチビりそうな凄い形相で睨んでいるわ」
「え…?」
紅羽の言葉に武志が操の方を振り向くが、そこにはニコニコと笑っている操がいるだけだった。武志と目が合うと、いつもの様に二人は手を振り合う。
「あのさ紅羽姉さん、ここは冗談を言う場面じゃないと思うんだけど?」
「うふふ、そうね。冗談なんかじゃ済まないから、本気で気を付けなさいね」
紅羽は微笑するが、その目は紛れもなく本気だった。
「お主ら、そろそろ話を先に進めたらどうだ?」
じゃれ合いを続ける武志達に、マリアは呆れたように声をかけた。
**********
「コホン、そろそろ真面目な話をしようか」
僕は咳払いをすると、皆んなを見渡して同意を得る。
「先ずは煉に言っておくよ。煉の彼女は必ず助けるから安心してほしい」
「亜由美ちゃんは僕の彼女ってわけじゃないよ。ねっ、亜由美ちゃん!」
「あ、うん…そうだね」
僕が口にした“彼女”という言葉。それに過剰反応した煉が放った否定の言葉に、亜由美ちゃんは寂しそうな反応をする。
「そんなに強く否定したら彼女が可哀想だよ」
「そ、そんなことないです! 私が煉くんの彼女じゃないのは本当の事ですからっ!」
「あ…そうだね。僕達はそういう関係じゃない…よね」
今度は煉の方が亜由美ちゃんの強い否定に凹んでいる。
よしっ、ここは僕がとことん二人をからかう場面だよね!
僕は気合を入れて二人をから……殺気!?
突然の殺気に振り向くと、そこにはマリちゃんがサッサと話を進めろと言わんばかりの形相で僕を睨んでいた。
僕はマリちゃんの殺気で思い出す。
明日は武哉兄さんに高級スイーツを奢らせる日だから、今夜は早く寝るとマリちゃんが言っていた事を。
仕方ない。マリちゃんを怒らせると怖いし、今回は諦めるとしよう。
僕は意識を切り替えると和麻兄さんに尋ねる。
「和麻兄さんは何かアイデアはないの?」
「その子を助ける手なら幾つか思い付きはしたが、実現できるかは保証出来ないぞ」
流石は腐っても原作主人公の和麻兄さんだ。アッサリと打開策が浮かんだらしい。
「実現できるかどうかは皆んなで検討すればいいからさ、教えてよ」
「ああ、俺の案はアルカード様のお力をお借りする事が基本なワケだが…」
和麻兄さんが語ってくれた案は次のようなものだった。
でも、アルカード様って…
さっきの短時間の説教で調教されたみたいだ。
恐るべし!? マリちゃん!!
案1.アルカード様が崩壊が進む亜由美の身体を治す。
案2.アルカード様が真由美の新たなホムンクルスを作り、そこに亜由美の意識を移す。
案3.アルカード様が全く別のホムンクルスを作り、亜由美の意識を移す。
案4.何故か瞳をキラキラさせて、“愛こそが真理なのよ”とか、“愛は種族すら越えるのよ”とか、“愛の妖精ティアナ爆誕!”等々、ワケの分からん事を延々とほざいてるそこのチビ妖精の魔法を試してみる。妖精の魔法は因果律すら無視するから意外と何とかなるかもな。
「ええと、案1から3までのマリちゃんに頼りきった案は、ある意味予想通りではあるけど。案4はどうなんだろう?」
「ククク、私を頼るだろうとは思っていたが、妖精の魔法を思いつくとはな。本来ならば妖精は人の頼みなんぞ聞かん存在だが、そこの妖精は“愛の妖精”に生まれ変わったらしいからな。赤カブトに頼ませれば良いかもしれんな」
マリちゃんはニヤニヤと面白そうに笑いながら、赤カブトにベタベタしている妖精に視線を向ける。
うーん。マリちゃんもこう言ってるし、試してみようかな。
僕は赤カブトに念話で頼んでみることにした。
『赤カブト、話は聞いていたよね。その妖精に亜由美ちゃんの身体を治せないか聞いてくれないかな』
『ガウ!』
たぶん分かってくれたと思う。
念話でも赤カブトはクマ語(?)だからニュアンスでしか意思の疎通が出来ないのがネックだね。
「ガウ、ガウガウ」
「うんうん、そうなんだー!うんそれでそれでっ」
「ガウガウガウ」
「うふふ、もうっ、赤カブト様ってば、からかわないでよー!」
「ガウガウ、ガウガウガウ」
「うそっ!?それって本当なんですか!」
「ガウガウ」
「うん、私もそう思いますよー!」
「ガウ、ガウガウ」
「えっと、たぶん何とかなると思います!」
「ガウ!」
「えへへー、赤カブト様の為なら頑張っちゃうぞー!!」
『ガウ!』
どうやら交渉は上手くいったらしい。赤カブトから誇らしげなニュアンスが伝わってきた。
『うん、ありがとう!』
『ガウ!!』
僕はそっとマリちゃんの顔を伺う。
僕の視線に気付いたマリちゃんが念話を飛ばしてきた。
『私でもクマ語は分からんぞ』
“愛の妖精”って、凄いね!!
*
亜由美に向かって、“愛の妖精ティアナ”から全てを慈しむ癒しの波動が放たれる。とかいうのは全然無くて『えーい』という気の抜けた掛け声だけだった。
妖精の魔法というのは僕達が使う魔術全般とは原理自体が全く違う。
いや、そもそも魔法には原理など存在しない。
たとえば魔術は数式に例えることが出来る。
“術式+霊力=魔術”
この様に魔術を発現させる為には、術式に霊力(これは魔力、妖力など呼び名は様々だけど基本的には同じだと考えてほしい)を込めることによって発動する。
言い換えれば、術式をエンジンだとすれば霊力を燃料だと考えれば分かりやすいだろう。
燃料を入れたエンジンが動き、動力を得る。
この動力が様々な魔術としての現象だ。
そして術式はエンジンでもあり設計図でもある。
どんなに奇跡の様な魔術でも、そこには理論があり法則がある。
物理法則を凌駕すると言われる精霊魔術も、実際には僕達に力を貸してくれる物理法則を司る精霊が、他の物理法則を司る精霊を力任せに抑えつけるという文字通りの“力任せの理論”で成り立つ。
結局は全ての魔術は因果律に囚われている。
原因(霊力と術式)があるから結果(魔術)がある。
だけど魔法は違う。
結果(魔法)だけが突然現れる。
そこに理論はなく法則もない。まさに本物の奇跡だといえるだろう。
人間では辿り着けない境地に魔法は存在する。
魔法を使いこなす妖精は、その小さな体に途轍もない神秘を内包した存在だ。
そして、ティアナの掛け声と共に亜由美ちゃんの身体が不思議な光に包み込まれる。
霊力も何も感じない光なのに、僕の心が何かを感じとっているのが分かる。
それは雄大な大自然を前にした時に感じる感動に似ていたけど、それ以上のものだ。
「これが魔法…本物の奇跡の力」
僕は思わず言葉を漏らした。
そして、光はしばらく亜由美ちゃんを包んでいたと思ったらパチンッという音を発して弾かれた。
あれ、弾かれた!?
「あれー? 弾かれたー?」
ティアナも不思議そうに亜由美ちゃんを見ている。どういうことだろう?
「今のを見たところ、魔法の力が足らぬというよりも、魔法そのものが亜由美から弾かれたように感じた。推測だが、妖精の魔法は生物には効かんのかも知れぬな」
マリちゃんの言葉を聞いた僕はティアナに目を向けると、そこには“アッ”と何かを思い出したような顔をしたアホ妖精がいた。
僕達の視線に気付いたティアナは、アワアワしながら赤カブトに近付くと、その後ろに隠れてしまう。
赤カブトはそんなティアナに気にするなと言わんばかりに、ポンポンと妖精の頭を撫でで上げていた。
その光景は仲の良い兄妹のようで、とてもティアナに何か言える雰囲気ではなかった。
「えっと、和麻兄さんは何かアイデアはないかな?」
「そ、そうだな。俺の案はアルカード様のお力をお借りする事が基本なワケだが…」
とりあえず仕切り直した。
*
結論からいくと案2に決まった。
秘宝の力で無理な成長を促した亜由美ちゃんの体を根本的に直すことは、マリちゃんの力でも不可能だった。多少の延命は出来るそうだけど、そんなのは却下だ。
案3の全く別のホムンクルスを作ることも却下した。体が心の影響を受けるように、心も体の影響を受ける。他のホムンクルスの体に亜由美ちゃんの心を移したりしたら、その影響を受けて亜由美ちゃんの心が変質する危険があるからだ。
よって、案2を実行するために真由美の細胞が必要だ。亜由美ちゃんの崩壊を始めている細胞を使うわけにはいかないからね。
「じゃあ、明日は真由美ちゃんの細胞を貰いに行こう!」
「うふふ、富士山見物は初めてね。お弁当はお姉ちゃんに任せてね」
「とうとう“石蕗 巌”をタコ殴りにできる日が来たのね」
「細胞を取りに行くのは任せるぞ。私はその間にホムンクルスを作る準備を進めておく。それに明日は武哉が高級スイーツを私に献上する日だからな。私は居なくてはあやつが可哀想じゃ」
「ガウッ!」
「赤カブト様が行くならあたしも行くよー!」
「亜由美ちゃんは危険だから僕と留守番しよね。そうだっ、折角だから遊園地に行こうよ!」
「ええっ!? 皆さんが私の為に動いて下さるのに遊びに行けないよ!!」
「いいよ、行って来なよ。亜由美ちゃんは遊園地に行った事ないよね。煉がエスコートするから楽しんできてよ」
「ほらっ、武志兄様もこう言ってくれてるから一緒に行こう?」
「えっと、その…でもやっぱりダメだよ」
「亜由美ちゃんは僕と一緒はイヤ?」
「…そんな言い方、ズルいよ」
煉は真剣な目で亜由美ちゃんを見つめる。美少年の煉に見つめられた亜由美ちゃんは真っ赤になって文句を言うが、結局は煉の言葉に頷いた。
美少年は得だよね!!
「なあ、お前らお気楽過ぎないか? 俺から言っておきながらあれなんだが、ホムンクルスを作るのは倫理観に反するし、その真由美ってのが素直に細胞を渡すわきゃないし、第一に生贄の話はどうするんだ? 誰を犠牲にするつもりなんだよ」
和麻兄さんの言葉に、亜由美ちゃんは顔色を悪くする。
「あ、あのっ、やっぱり私が生まれた理由は真由美様を助ける為だから…」
「このクソッタレが余計な事を言うなっ!!」
「プキャラァッ!?」
煉の会心の一撃(ドロップキック)を受けた和麻兄さんが吹っ飛んだ。
この後、和麻兄さんの提案で、石蕗一族と話し合ってみる事になった。
沙知「話し合いなら、あたし達が同行してもいいんじゃない?」
綾「とても話し合いで決着がつくとは思えないわね」
沙知「ヘタレな和麻様がいれば、戦闘にならないと思うけどなあ」
綾「富士の魔獣の問題がある限り無理ね」
沙知「魔獣…たしかゴ◯ラだったわね」
綾「あら、ガ◯ラの方じゃなかったかしら?」
沙知「いっその事、光の巨人が現れて倒してくれたらいいのに」
綾「それは意表をついた展開ね」