テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー   作:sinne-きょのり

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チャプター11:助けられたその先で

「たーいちょっ」

「セテオス、やっと来たわね」

 

 チャールとルンの追いかけっこが一段落した頃には、一人の男性が近づいてきていた。ルンの口ぶりからして、彼がそのセテオスという者なのだろう。

 朱色のうねうねとした短髪に、黒い飾りのピアスを右に、羽の形をしたピアスを左につけている。瞳の色も髪と同じ朱色で、たれ目のようだ。アーマーのようなものをつけているが左肩あたりにしかついてない。

 

「まったく、いきなり連絡が来るもんっすから慌てたじゃないっすか」

「慌ててるようには見えなかったわよ…。で、セテオス、この人を運んでくれると助かるのだけれど」

 

 ルンに言われてロストを見たセテオスは一瞬驚いた表情をしたが、ルンにはその表情は見えていなかった。

 

「分かったっす。そっちの子は…ってララじゃないっすか!?」

「…あっ!メテオス君のお兄さん!」

 

 ララはやっとセテオスが知り合いであることに気づいたらしく、手を叩いて反応した。メテオスというのは、ララの村にいた友人であろう。

 

「えっ、あんたこの子と知り合いなの?」

「そうっす隊長。俺の故郷にいた子なんすけど…何かあったんすか?」

「あー…えっとお…」

 

 セテオスはララにそう尋ねるが、ララは言いづらそうに言葉を濁す。騎士団に村の件が伝わっていないと思ったのだろう。

 そしてその考えは間違いではなさそうだった。セテオスは頭の上にハテナを浮かべたような表情をしている。

 

「…ララが村を出るなんて、村に何かあったとしか思えないんすけど…まあ、とりあえずは怪我人を運びましょうっす」

 

 セテオスはロストをアーマーをつけていない方の肩で抱え、ルンを見た。ルンは静かに頷いてララを誘導するように手を振った。

 

「こっちが野営地よ。あなたも疲れたでしょう。休むには丁度いいわ」

「ありがとう、ルンちゃん。チャール、おいで」

 

 

 ララはチャールを肩の上に乗せた。

 ルンとセテオスは歩き始めたので、ララもそれを追う。道中には勿論モンスターがちらほらといる。セテオスはロストを抱えていて戦闘ができないので、ルンとララが戦うしかない。

 

「うー…すまないっす、にしても男性にしては軽いっすね」

「多分ロスト君それ気にしてるから本人の前では言わないであげてね」

 

 ロストを抱えているセテオスは少しふざけた感じで言うが、ララが想像するにロストは気にするタイプなので苦笑いしながらセテオスに返した。

 

「ははは…年頃の男の子ってのは扱いが難しいっすね。そういえばメテオスは元気にしてるっすか?」

「えっと、それは…」

 

 セテオスに話を振られララが少し口を濁した。気になったセテオスは訝しげにララを見る。

 

「そのメテオスっていう人はララの友達なの?」

「うん。そうだよ…でも…」

 

 ルンの言葉に返したもののララは俯いてしまった。何かしらの理由があるのかとセテオスは尋ねようか迷ってしまった。

 

「…噂が、関連してるのかも」

 

 ルンがふっとこぼした言葉にララは少しびくりとする。

 

(も、もしかしてもう村の事…)

 

「えっ隊長どういう…」

「この子、セテオスと同じ村から来たのでしょう?一つ聞いていいかしら」

 

 真剣な声のルンに気圧されそうになりながらもララは顔を上げた。その表情は年相応なものではなく、いかにも騎士の1人であることを示すような凛々しい顔だった。

 

「あなたの村は、襲撃を受けた?」

「…!どうしてその事を…それは…」

 

 ルンは実際には噂で聞いた程度だった。しかしララの様子を見るに、村の住人に何かがあったような素振りだった。その反応を見てルンはそれがほぼ確実だと踏んだ。

 ララにとっては同じ村出身のセテオスがいる以上、あまり踏み込まれたくなかった事だろう。

 

「ピーアの方へ物資を買いに行った時にたまたま部下が聞いてきたのよ。フェアロ・エルスとフェアロ・リースが襲撃されたって噂をね」

「…メテオスは…」

 

 セテオスは不安そうにララの方を向きながら言った。ララは観念したように言葉を紡ぐ。流石にセテオスの弟が関係しているとなると、言わないわけにはいかなかった。

 

「メテオス君は、ソルを追いかけて村を飛び出したの…その後どこに行ったかは私も知らない…。それに、ここまで来る途中でも出会わなかったの。出会ったのはレティウスっていう人くらい。その人も、様子がおかしいみたいだったけどね」

 

 セテオスはそれを聞いて唇を噛み締めたようだった。そして小さく「あんの馬鹿…!」とルンやララに聞こえないような声で言った。

 メテオスへの感情以外のものも見え隠れしているようだったが、ララとルンはそれに気付かなかった。

 

「そろそろ着くわね。セテオス、お疲れ様」

 

 それから暫く歩き、天幕が見えてきた。いくつか置いてあるようで、他にも騎士が居るのだろう。

 

「えっあ、ああ…そうっすね」

 

 セテオスは何かに気を取られていたのか考え事をしていたのか少しどもるような返事だった。

 

「ありがとう。ルンちゃん、セテオス君…うぅ…」

 

 ララは深々と礼をして顔を上げた途端、疲労なのか立ちくらみを起こしてしまう。

先程まで緊迫した雰囲気だったのもあるのだろう。よく見ると体のあちこちに傷が見える。ルンを探す時にできた傷だった。

 

「少しだけでも天幕の中で休んでくださいっす。隊長も休んだらどうっすか?」

 

 ララとロストを天幕の中へ寝かせ、セテオスはルンに尋ねた。セテオスなりの気遣いなのだろう。

 

「気遣いは不要よ。あなたこそ疲れていないの?」

 

 ルンは元気だという事を主張するように胸を張ってみせた。逆にセテオスが心配されている。

 

「俺は元気っすよ!少し調査したい事もあるので、俺はもう少し見回りしてきます」

「なら、私も…」

「隊長は客人をもてなしてくださいっす!心配しなくていいっすよ。あっ俺が帰ってきたら隊長がマッサージをしてくださいっす!他にも少し話したいこともあるっす。だから…おとなしく、ここで待っててくださいっす」

 

 そう言うなり、セテオスは背を向けて去ってしまった。ルンはセテオスが何を考えているのかわからなかった。

 取り残されたルンはセテオスを追いかけようとする。

 

「隊長ー!少し相談なのですが」

 

 しかし他の部下に声をかけられてしまった。ここからセテオスを追うことはもう無理だとルンは悟る。

 

「えっ…な、何かしら…」

「ええっと、実はこの道なのですけど…」

(あの馬鹿は一体何を考えてるのよ!)

 

 セテオスが去っていった方向を気にしつつ、ルンは部下の話を聞く異にした。正直その部下の話は大してルンの頭には入ってこなかった。

 

 

 

 

「ううん…むにゃむにゃ…」

『…』

 

 疲れきってしまっていたララはもうすっかり寝てしまっていた。チャールはその隣で丸くなりながら、ルンをこっそり見つめるようにしていた。

 

『…下手にやつに似てんなあ、さすが娘。変なところを引き継ぎやがって…。【あいつ】もやつに似てたばかりになあ…。さて、ボクも寝るか』

「チャールう…」

『ぎゃっ!?』

 

 チャールはララに捕まり、力強く抱きしめられた。

 

『ちょっら、ララ!ぐっぐるじっ!』

 

 その声は完全に寝ているララにもロストにも聞こえなかった。チャールは必死にもがくも無駄に力が強いララの腕を振りほどくことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

「…俺、は…。助かったのか。ララはっ」

 

 ロストは暫くして目を覚ました。怪我はある程度治療されており、擦り傷があったと思われる場所は既に傷は塞がっている。大きな傷のある場所は流石に包帯が巻かれていたが。

 ロストが慌てて周囲を見渡すと、隣の布団でララが寝ていた。前の宿での事を思い出し目を背けそうになったが、ララの方にも傷があり、一応治療を受けているのを見るとロストはひと安心した。

 

(そうか、ララは無事に助けを呼べたのか)

 

 意識がなくなる直前、ララの声が聞こえた事でララが助けに来たことはわかったが、騎士団がいたかどうかまでは思い出せない。だが一応布団などがあったり応急処置を受けていたりするのを見ると騎士団に助けられたのだろうと推測できる。

 

「はあ…だが、よく寝られたな。俺にもっと力があれば…」

 

 ロストはふと何を思ったのか、布団から立ち上がり天幕から出た。

 外はすっかり暗く、あまり出歩いて良いものでは無さそうだ。

他に人間が外にいる様子でもない。

 すると、他の天幕から人が出てきたのをロストは見た。

 

「あら。目が覚めたのね、良かった。ララが心配してたわよ」

 

 出てきた人物というのはルンだ。ロストはこんな小さな人物が騎士団なのかと驚愕したが人を見た目では判断してはいけないと自分に言い聞かせた。

 

「俺は、あんたに助けてもらったのか」

 

 ロストにそう言われてルンは「そこまでではない」と首を横に振った。

 

「私はあのベアを倒しただけよ。あなたがある程度相手を消耗させてくれていたから楽に倒すことは出来たわ。あなたを運んだのは別の人物よ。で、あなた達は山越えをするつもりだったの?」

「王都に、向かわなきゃいけないんだ。俺もララも、昔村で起こった誘拐事件について調べたくて…」

「村って…フェアロ・リースとフェアロ・エルスの事?昔起こった事件って…」

「知らないのか?」

 

 ルンは少し考えるようにしたが、その事件について思い出そうとすると、知っているようで知らない不思議な感覚に陥った。

 

「何か、起こったのは覚え、てる…でも」

「思い出したくない事なら、無理に思い出さなくていい。助けてもらったことには変わりはない。俺達に何か出来ることはないか」

 

 ロストの申し出にルンは思わず「えっ」と声を漏らした。

 

「俺だけでも何か手伝えることがあれば」

「大丈夫…と言いたいけれども」

「そういえば、俺をここまで運んでくれた人物は」

「ここにはいないわ。改めて見回りをすると言ったきり。戻ってこないの」

 

 辺りはもう暗くなっている。ロストはそれは危ないのでは、と思ったが案外ルンが慌てている様子ではなかったので大丈夫なのかと思う事にした。

 だがルンは突然駆け出した。

 

「おいっ!」

「貴方はここにいて!私はやっぱり彼を追う」

「だが…!くっもう姿が見えない」

 

 ルンは足が速く、ロストは追えなかった。

 どうしようかと思ったが取り敢えずララのいる天幕へと戻る事にした。

 

続く

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