テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー   作:sinne-きょのり

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チャプター12:レティウス再来

「うう…むにゃ」

「ララ!チャール!」

 

 ロストが天幕に入ってきた時、ララとチャールはまだ寝ていた。

 疲れていると思われるのであまり起こしたくはなかったが、自分1人では無理だと踏んだのだろう。

 

「んんっふぇ!?ロスト君…?あっぶっ無事だったんだ!」

『んー…何だよお』

 

 ララとチャールはロストの声で目を覚ました。1人と1匹は目を擦ったり寝起きの様子であるがロストはそれどころではなかった。

 

「この暗い中騎士の女の子が誰かを探して飛び出したんだ!」

「もしかして…ルンちゃん!?でも、誰を探して…」

『考えてる暇はない!とにかくボクが炎で道を照らすから』

 

 チャールが尻尾に火を灯し、天幕から出ていく。ロストとララはそれに続き、暗い森の中へと走っていった。見張りの騎士にちょうど見つかり呼び止められそうになったが2人と1匹はそれを気に求めず走った。

 

「ちょ、ちょっと君達!」

『さっきの子のマナを追ってみる!』

「あっす、すみません」

「ごめんなさーいっ!」

 

 ロストは見張りの騎士が少し哀れに思ったがララとチャールは全くその気もなかったであろう。

 2人と1匹の姿はもう天幕の傍にはない。

 

 

 

 

 

 

 セテオスは人影を追っていた。先程突然セテオスの様子が突然おかしくなったのはそれが原因だった。

 

「なんであんたがここに…!レティウス!」

 

 レティウス・ベリセルア。その姿はロスト達が対峙したレティウスと同じだった。セテオスは剣を構えてレティウスを睨む。

 

「はははぁ!!セテオス、よく来たなあぁ!」

「あんたっ7年前に突然消えたかと思えば!何やってるんすか…」

「何ってえ…計画を遂行するためさぁ。セテオスは知らなくていいんだがァ」

 

 レティウスは斧を構えてセテオスを見る。睨む、と言った感じではなくその顔からは感情が伺えなかった。

 

「計画?どういう事っすか!」

「さあねぇ。それにしてもお、メテオスの居場所お、気になるかぁ?」

 

 メテオス、というのを聞いた時にセテオスは目を見開いた。それと同時にセテオスは剣をレティウスに向かって振り上げる。

 

「メテオスに…何をしたっすか!」

 

 しかしレティウスはその剣を軽々と避ける。感情が昂っているせいでセテオスの剣筋がぶれぶれになっているのだ。

 

「少し脅してぇ、計画に協力してもらうのさぁ!」

「だからその計画って…それに、あんた、そういう奴だったんすか…俺達の両親はそんなこと望んじゃ!!」

 

 セテオスの口ぶりは、まるで昔からレティウスを知っているようだった。だが、今セテオスの前にいるレティウスは少なくともセテオスの知っている彼とは違うのだろう。

 

「両親?あぁ、俺が殺したさぁ。あんまりにも煩いんでねぇ」

「っ…!?あ、あんた…それでも俺の兄貴っすか!!!」

 

 セテオスは耐え切れずに激昂した。

 2人の会話からすると、2人はどうやら兄弟という関係らしい。そして、レティウスが両親を殺したという事。

 

「あははははぁ!!」

「やああああっ!!」

 

 セテオスは笑い狂うレティウスに剣を左から振った。レティウスはそれを避けようとするが左腕をかすり、袖が破れ血が流れる。

 だがレティウスはそれを気にもとめず、右手で持った斧をセテオスにぶつける。

 

「ああああああっ!!」

「おいおいぃ。俺を失望させないでくれよぉ」

 

 セテオスは斧をぶつけられた勢いで近くの木に打ち付けられる。それを見たレティウスはセテオスを煽るように鼻で笑いながら言った。

 

「……っ蒼破刃!!」

 

 その声が響いたのと蒼い衝撃波がレティウスを襲ったのは同時だった。セテオスにとって聞き慣れた可憐で、そして気の強い少女の声。

 

「んあぁ?だぁれだ?俺様を邪魔ぁするのは」

「な、なんで…どう、して……」

 

 セテオスは声、そして衝撃波が飛んできた方向を見る。そこに立っていたのは、大鎌を携えた小柄な少女、ルンだった。

 

「セテオス。私は貴方の上司なの。部下に勝手に動かれては困るわ」

「そ、ういう…問題じゃ…こいつはっレティウスは強いっす!隊長でさえも立ち向かえるか…!」

「だからって!諦められないもの。私はこの手の届くすべてを守る…それが騎士、それがフェアロ・ドーネ騎士団の人間なのよ!」

 

 ルンはそう言ってレティウスに蹴りを入れる。

 斧を使い、動きの遅いレティウスに比べてルンは小柄で大きな鎌を持っているものの動きは身軽。

 そしてルンは先ほどのセテオスとは違い、冷静に戦っている。流石弱冠13歳にして部隊長に選ばれる程だ。彼女の実力自体はそれなりにある。

 

「ちょぉこまかとおおお!!」

「隊長っ!危ないっす!」

 

 レティウスが周囲の木を切り倒す、素早いルンの動きを少しでも封じる為だ。そのレティウスの目的に気付いたセテオスは叫ぶが、ルンは倒された木に武器である大鎌を挟まれてしまった。

 

「……っ!」

「武器さえなけりゃあ、部隊長といえどぉ」

「『来ないで』!」

 

 一瞬、ルンの言葉を聞いたレティウスの動きが鈍くなった。セテオスは少し違和感を感じたが、ルンはレティウスから逃げる事に必死だった。

 セテオスは立ち上がり、ルンを守る為にルンの元へ走ろうとした、しかし先程の傷が痛み、そう安々とルンの元へ行かせてはくれない。

 

「人質としてぇ使わせてもらうぜえ!」

「きゃっ!!そん、な…私、誰も、まも、れな…」

 

 ルンはとうとうレティウスに捕まってしまった、セテオスはなんとか力を振り絞り立ち上がった。しかし、レティウスはルンを盾にしてセテオスに攻撃させまいとしている。

 

「せ、セテオス!あんたは私に構わないで…!」

「声、震えてるじゃないっすか…」

 

 そうルンの言葉に返すも、セテオスは自らの手にこの状況を打破する為のカードがない事をわかっている。

 

(あの人達が…なんて、頼っちゃダメっすよねえ)

 

 セテオスは、諦めかけていた。しかし誰かが来ることを願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 チャールの辿る道を頼りにロストとララの2人は夜の山道をかける。チャールは恐らく人のマナの気配を辿って走っているのだろう。

 ロストはこけそうになったがララに無理矢理手を引っ張られてこけはしなかった。

 

「うわっ!」

「ロスト君足元に気をつけて!」

「気をつけろと言われたって!おいチャール、本当にわかるのか!」

『わかるからこうやって…!』

 

 チャールが突然立ち止まった。ララに引っ張られていたロストはその先にあった木にぶつかった。

 

「がっ!!」

「あ、ごめん。ねえチャールどうしたの?」

「ごめんで済ますな…俺一応大怪我してたんだぞ…」

 

 ロストはぶつかった部分である額を抑えながら呆れたように言った。ララは少し苦笑いしてスピアロッドを構えた。

 

「あははは…じゃとりあえず、ファーストエイド!ねえ、チャール」

 

 改めてララがチャールに問いかけると、チャールはどこかを真っ直ぐに見つめていた。

 

『ヤツだ…』

 

 チャールの視線の先には、レティウスの姿があった。ルンとセテオスの姿もある。

 

「ルンちゃん…っ」

『あまり下手に動くなよ』

 

 今にも飛び出そうとするララをチャールは静かに制した。よく見るとルンはレティウスに捕らわれているようだった。

 

「…水の戯れよ」

『っておいロストっ』

 

 詠唱を始めるロストをチャールは止めようとしたがロストは構わずに詠唱を続ける。初級術なためすぐに詠唱は終わる。

 ロストの視線はしっかりレティウスを捉えていた。

 

「スプレッド!!」

 

 スプレッドを唱えたと同時にロストは駆け出す。その手にはしっかりと剣が握られていた。戦う気満々だ。

 

「待って!」

『くっそ沸点低いなあいつ!行くぞララ』

 

 チャールとララは一足遅れるものの、ロストを追いかける。

 

「はああっ!大丈夫か!」

「おまえはぁ…あの時のぉ…!」

 

 ロストは、レティウスが捕らえていたルンを助ける為に、スプレッドで気を引いた後に強襲し、ルンを取り返した。

 セテオスは傷を負っており、剣を立てて片膝をついていた。

 

「あっあなたは…っ!いたたっす…」

「あんたはこの子を頼む」

「あっは、はいっす」

 

 セテオスは現れたロストに驚愕の瞳を向けるものの、ロストからルンを任されるとルンを片手で抱える。そこにララとチャールが到着する。

 

「セテオス君!ルンちゃん!」

『くそっどうしてお前はこうなんだロスト!ララ、セテオスってやつ結構怪我してるぞ!』

「わかった!癒しよ…ファーストエイド!」

 

 ララはセテオスの近くに立ってスピアロッドを地面に突き刺す。と同時に魔法陣が広がり、セテオスの体を光属性のマナが包む。

 

「レティウス、お前は一体何をしようとしていた」

 

 ロストは剣をレティウスに向けながら問いかけた。まともな返答は戻ってこない事くらいはロストには予測できていた。

 しかし、返ってきたのは意外な答えだった。

 

「何ってさあ、かーわいい弟に、頼みごとをぉしていたぁだけさぁ」

「弟…?」

「そうそうぅ。そこにいるセテオスってのぉ、俺の弟なんだわぁ」

 

 その場にいる全員は、ついセテオスを見た。

 セテオスは呆れたような表情をしてため息をついた後に、忌々しいとでもいうような顔をレティウスに向ける。

 

「まさかあんたがこんな事をやってるとは思わなかったっすよ。レティウス」

「あははははぁ!まぁさかセテオスがこんなぁにカワイイ子連れてるなんてなぁ!」

「…くっあっあんた何でこんな…」

 

 セテオスに支えられたルンはレティウスを睨みつける。しかしレティウスはそんなものを気にも止めずにセテオスを煽るように言うだけだった。

 

「こいつは俺の両親を殺し!俺の弟であるメテオスを利用して何かをしようとしているっす!!それは絶対に許さないっす!」

 

 ララに数を癒してもらったセテオスは剣先をレティウスに向ける。ロストはまだやめとけ、と言おうとしたが今止めたとしてもセテオスは止まらないと判断した。

 

「セテオス、俺もあんたに加勢する。こいつには借りがあるからな」

「大丈夫なんすか?」

「十分に休んだしな。ララ、回復を頼む」

「りょーかい!ルンちゃんはもう少し休んでてね。我が同胞に力を…シャープネス!」

 

 ララの唱えたシャープネス…攻撃力を増強する術がかかったことを確認するとロストは真っ先にレティウスを目掛けて走り出した。セテオスもそれに続く。ララは後ろから術を唱える構えをして戦況を見ている。

 

「「魔神剣!!」」

 

 セテオスとロストの声が重なる。2人の放った攻撃はレティウスに当たる。先程のセテオスがつけた傷の部分に当たったせいか、少しだけレティウスは顔を歪めた。

 

「はっ!せいっ!」

 

 ロストが両手で強く握りしめた剣をレティウスに向けて右から振りかざす、レティウスはそれを斧で軽く受け止め、そのまま突き飛ばした。

 

「そーれえっ」

「ぐはっ!」

「ロスト君!お願い、守って…バリアー!」

 

 既に攻撃を受けた後だったものの、次のレティウスの攻撃に耐えるためにとララはバリアーを唱える。次にまたララはスピアロッドを地面に突き刺し詠唱準備をする。

 

「後方支援…かぁ……うぜえなあ!」

「今度はそうさせるかっ!ララに手を出すなら、俺を倒してからにしろ!」

 

 レティウスがララに向かって攻撃しようとしたが、今度はロストが先手を打って妨害をする。

 

「癒しよ…ファーストエイド!ありがとう、ロスト君」

 

 そうしている間にララの唱えていた術が発動した。ロストは前回の戦闘から学んでいたのだ。

 前衛の自分が後衛のララを守る事。それが戦闘でロストがやるべき事の一つだ。

 

「俺も忘れて貰っちゃ困るっすよ!そいやっ!!」

「うぐぅっ!!くっそおおおおお!!!」

 

 セテオスの渾身の一撃がレティウスの背中を直撃し、セテオスと最初対峙した時の余裕さはすっかり消え、もはや哀れな姿となっている。何かに焦っているようでもあった。

 

「くううううっ!きっ消えたくないっ!けさなぁいでぇくれぇっ!」

「殺しはしないっすよ、一応、こんなんでも兄貴なんすから」

 

 苦しそうに悶えるレティウスに向けて、セテオスは冷たく言い放った。

 

 しかし、次の瞬間に一同が見たのは驚きの光景だった。

 

「いゃだ……いやだあああああああ!!!!」

「な、なによ……これ」

 

 ルンは絶句した。

 レティウスの体が、光の粒子となって消えていく。

 

『…こいつは…』

 

 チャールはそれがどういう事なのか気付いたようだ。ララとロストは、既視感を覚えている。セテオスは、先程まで「それ」が必死だった理由を理解した。

 

「クローン技術…!」

 

 憎しみの感情が籠った声でセテオスは呟いた。

 

「まって、それって…禁じられた技術でしょう!?資料も封印されてるわよ!?」

 

 フェアロ・ドーネ騎士団でも、存在は教えられる禁断の技術。オリジナルと呼ばれる元々の人間から生み出されるそっくりの人間。

 そう、今目の前で消えていくレティウスは本物のレティウスではないのだ。

 

「ちっ!!じゃあ、本物のレティウスはどこにいるんっすか!!」

「セテオス落ち着きなさい!…ひとまずは、野営地にもどるわよ」

 

 感情の昂りを抑えられないセテオスを制しつつも、ルンはそう提案した。

 ロストもララもチャールもそれに賛同し、一行は暗い道の中チャールの尻尾の火を頼りに来た道を戻る。

 

「さて、ついたわ…もう夜も遅いし、貴方達は出発は朝になりそうね」

「うん、そうなるかも…お世話になります」

 

 ルンに言われたララは真っ暗になった外を見る。月が綺麗に輝いているし、山の上だからか星もたくさん見える夜空だ。

 

「俺達は明日、リイルアに向かう…」

「私も行っていいかな」

 

 ルンが突然そう言い出した。セテオスもそれは予想していなかったらしく「へ?」と声を上げた。

 

「禁断のクローン技術が使われてるって事は、大きな事件が起こる前触れかもしれないわ」

「たしかにそれもなくはないかもしれないっすけど……」

 

 セテオスはそこまで言った後に、降参とでも言うように首を振った。

 ルンには逆らえない上にルンがついていかない理由がないのだろう。

 

「暫くはここを任せていいかしら」

「いいっすよ。隊長は言い出したら聞かないっすし」

 

 そうと決まれば、と思うとララは大きなあくびをした。

 

「そろそろ寝た方がいいわね。おやすみ、朝日が登ったら出発よ」

「わかった。ララ」

「うんー……ねむい……」

 

 ロストはいかにも眠そうなララを連れて天幕へと戻った。それを見送ったルンとセテオスもまた自らの天幕へと戻る。

 

 そして、その夜はふけていく。

 

「……」

 

 早朝、朝日が登る少し前、セテオスは1人起きて1羽の鳥に手紙を託していた。

 これは騎士団長へ直々に宛てた手紙だ。中にはロスト達の事が書いてあるようで、恐らくルン達が王都に着く前に手紙が騎士団長の手元へ来る事を想定しているのだろう。

 

「おはよう、セテオス」

「隊長、早起きっすねえ…」

 

ルンが天幕から出てきた。既に旅の支度は済んでいるようだった。それに続いてロストとララも出てくる。

 

「一晩止めてもらい……ありがとうございました」

「本当に助かったよ!ルンちゃんにはこれからも助けてもらうし!」

 

 あまり例を言うのに慣れていないのかたどたどしくロストが例を言った後に、ララはルンの手を握って目を輝かせている。

 

「ま、まあね…セテオス、行ってくるわ」

「行ってらっしゃいっす」

 

 ルンが歩き始めたのにつられ、ロストとララが続く。セテオスはそれを野営地から見送っていく。

 3人の姿が見えなくなっていく。

 

「行ってらっしゃいっす…隊長、そして……」

 

 セテオスが最後に続けた言葉は少し強くなった風にかき消され、誰の耳にも届かなかった。その時のセテオスの表情は、心配そうな…しかしどこか安心したような表情であった。

 

「貴方が無事であると分かっただけ、我々にとっては、大きな希望っすよ」

 

続く

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