テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー 作:sinne-きょのり
「ルン殿、戻っておられたのですか」
「はい、少し…調べたい事があって、ですけど」
1人の老騎士がルンに声をかける。騎士団本部に入る時にルンは胸元の紋章を見せ、入ってきたのを間近で見ていて、ララは改めてルンが凄い人物なのだと感心していた。
「ララ、今から騎士団本部に入るけども…」
ルンはララを振り返って言う。何度もこの建物の中に入っているルンにはララに対して不安な点が一つあった。
「う、うん…?」
「くれぐれもあまり騒がないようにね?」
ルンがあまりにも真面目な顔をしていうものなので、ララはついきょとんとしてしまった。
ルンからはララはだいぶ子供らしく見えていたのかもしれない。
「大丈夫だよルンちゃん!私これでも結構おとなしいんだよ!?」
ララは当然と言った風に胸を張った。
「あー、うん、わかったわ…」
大丈夫じゃない。ルンはそう考えた。
ララは恐らく建物の中に入ってそうそうおとなしくはできないとルンは察した。そして2人は騎士団本部の中に入った。
廊下を歩く騎士達は揃ってルンを見て驚いた顔をしたり、複雑な表情をしたり、なんだかルンはあまり騎士団では受け入れられていないようだった。
「…」
ララ自身に向けた視線もあったかのようにララは感じたが、気のせいだと思っていた。
「あんた、背が高いから余計目立つのよね」
「え?あ、そうなのかな?」
ルンはララを見上げた。ルンとララの身長差は結構あるようで、ルンはララを見上げないとマトモに顔を見ることもできない。
ララは少女というにしては身長が高いのが特徴だ。年齢にしては身長が低いルンは正反対である。だからこそこの2人が並んで歩いていると目立ってしまうのだろう。
「此処が団長室よ。この手前のところが副団長室。客間も一応あるけれど大して使われないわね。騎士の宿舎はこの建物から少し離れたところにあるわ」
「ほへー…凄いなあ」
団長室の扉はララよりも大きく、豪勢な雰囲気が出ていた。騎士団の建物でこれなのだから城内となるともっと豪華なのだろうとララは推測した。
「ルンさん、戻ってこられてたんですか」
「今とうさ…団長はいらっしゃるかしら」
ルンが団長室の前にいた騎士に話しかけると、その騎士は「あー…」と少し困ったようにしていた。
「団長は今席を外されておりまして…副団長も今は…」
「今、戻ったわよ」
「ユアさん!」
突然現れたのは一人の少女にも見える女性。
ララは「ロスト君に似てるなあ」と呑気に呟いていたが、ルンはかしこまった態度になった。
相手は上司なのだ、当然であろう。
「あなたがララね」
「は、はい…?」
ララは何故自分の名前を知っているのかというふうにきょとんとしていた。ユアはそれに対して微笑みながら言う。
「セテオスやルンからの報告で既に聞いたわ。先程宿屋に向かったのだけれど、もう1人はかわいいペットを連れていたわね」
(ペットなんて言われたらチャール怒るだろうなあ…)
ララはユアの話を聞きながらそう思っていた。ユアは「さて」と副団長室の扉を開けた。
「ここで話すのも疲れるわ、中で詳しい事は聞きましょう」
「はい。失礼致します」
「あ、ありがとうございます」
2人はユアに連れられて副団長室へと入った。中は客人をもてなすためなのか3人掛けのソファとテーブルが置いてあった。副団長室なだけあって部屋は豪勢だ。これでも精一杯質素にしているらしいのだが、それでも田舎の村に住んでいたララには想像もつかないほどの値段であろう絵画が壁に大きく掛けられていた。
「どうぞ座って頂戴。テーブルの上の茶菓子は好きに食べていいわよ」
ユアは1人掛け用(恐らくユア専用なのだろう)のソファに座り、ララとルンに2人駆けのソファに座るよう促した。テーブルの上にはユアが言う通り茶菓子が籠の中に並べられている。
「じゃあ、詳しい話を聞きましょうか。ルン、貴方が今回動いた理由をね?」
2人が座った事を確認すると、ユアはそう切り出した。ルンは少し頭の中で言いたい事を整理した後に口に出した。
「私が今回動くきっかけとなったのは、ロストとララに出会った事です。たまたま凶暴なベアが出現していたのを討伐を手伝ったのと…」
「もう一つ、あの場所で何かあったのかしら」
真剣な顔になるルンを見てユアがそう言った。ルンは否定せず、静かに頷いて肯定した。
「はい。私はあの場所で、レティウス・ベリセルアのクローンに出会いました」
「クローン?」
「あの、禁術のクローンです」
ユアは【クローン】という単語が出た途端に顔を顰めた。ユア自身もクローンに関して何かあったのであろう。ユアは少しだけ頭を抱えた。
「誰かがあの禁術を用いて、クローンを作った。という事かしら。それとそこのララ達に何か関係があるのかしら」
「恐らく。関係があります」
ルンがそう言い切った。ララは自分の事と言えど、クローンというものに関して殆ど知らないので何も言う事は無かった。
「7年前に起こった、あの事件の生存者です。ララとロストは」
「…あの、誘拐事件の…?数少ない、生存者なのね…」
騎士団の方では、7年前にリースとエルスで起こった誘拐事件については大きな成果を得られていない。分かっていることは、誘拐された多くは未成年、若しくは二十代前半当たりの若い人間だった。生存者は殆ど居らず、その数少ない生存者は事件以前の記憶を全てなくしていた事くらいだ。クローンを作っていた事は濃厚であるものの、確証が得られていない上にクローンを作る為に誘拐したとしては誰が何の為に、という疑問も浮かび上がっている。
当時誘拐した犯人が使っていたと思われる施設跡へ騎士団が向かったものの、その調査隊は何も持ち帰ることは無かったらしい。
「騎士団の方で持っているその資料を、見たいんです」
ララはユアにそう言った。ユアは「そうねえ」と左手を顎に当てて考えた。
「ルン、 貴方はどうしたいの?このままロストとララについていくだけなの?」
「えっ」
突然話を振られたルンは戸惑うようにするが、その後にすぐ顔を上げて力強く言った。
「私は、騎士として人々を、国民を守る為に働きます。そして何者かがその国民達を脅かそうと言うのなら、私がそれを倒します」
ルンの決意を聞いた時、ユアは安心感を覚えた。
「そう。それが貴方の決意なのね」
ユアは柔らかな笑みを浮かべた。それは母性溢れるもので、騎士団の副団長という威厳は感じられなかった。暖かく、柔らかい笑みだった。
「でも、騎士団が得ている情報も少ないわ。それでもいいのかしら」
すぐにユアは真面目な表情に戻り、柔らかな笑みは消えた。ルンは気が緩みかけたが「はい」と答えた。
「少しでもヒントが見つかればいいのです。これから先何が起こるかわかりません。何かが動き始めていると私は感じます。隠されたその記録を暴かなければいけないと思うのです」
「隠されたその記録を…ね」
誰も知らない、誰かが隠したその誘拐事件の秘密を。解き明かすことが出来るのはきっと彼らだけ。ユアは思った。
(いつの間にこの子はこんなに立派になったのかしら。リンブロアもきっと目を丸くするわね)
ユアにとってその決意したルンは眩しかった。光のように思えた。ルンの真っ直ぐな瞳を見て、ユアは同時に安心した。
「分かったわ。資料室の監視をしている子には伝えとくわ。でも、野生のモンスターも道中に住み着いてしまっているから気をつけて頂戴ね」
ユアは許可証をララに手渡した。ララはそれを受け取って立ち上がった。ララの瞳はキラキラとしていた。
「大丈夫ですっ!私達、強いんで!!ねえ、早くロスト君やチャールと合流しよ!ルンちゃん」
「あっララちょっと待ちなさい!ありがとうございました。ユアさんでは、失礼致します」
「ええ、行ってらっしゃい。くれぐれもリンブロアに心配かけしないようにしてちょうだいね」
「はい。承知しております。こら、ララーっ!!」
自信満々にララは言った後、すぐさまこの場を立ち去ろうとする。ルンはそれを追いかけようと慌てて立ち上がり、ユアへの礼を忘れずにして、そのまま部屋を出ていった。
「ララはここに…ロストも…。なら【あのこ】もここにいるはずなのに…」
ユアはそうぼやいて、寂しそうに窓の外を見た。茶色の瞳には、青い空が写った。
*********
「と、いうわけで許可証もらってきたよー」
ララとルンが宿屋にやって来た。ロストとチャールはずっと受付口のあたりで待っていたらしく、少し人目を引いていた。目立つ容姿をしているのだろう。
ルンは周囲の視線に溜息をつきながらロスト達と合流した。
「ああ、ありがとう。すまないな、行ってもらって」
「いいわよ、それにチャールのわがままだから仕方ないじゃない」
ロストの言葉にルンはそう返し、チャールは『うっ』と漏らした。一応わがままを言った自覚はあるらしい。
『ボクのせいって言うのかよっ!』
「じゃあ、大方の用事はあとはその資料室。というわけだな」
チャールの叫びを無視してロストが続ける。
ルンとララも頷き、その場を動き出した。チャールは慌ててララの肩に乗っかる。
『全く、もう少しボクの行動には意味があると思ってもらいたいさ』
「俺を連れていくことのどこに意味があるんだか」
「はいはい、もうその言い合いはいいから。早く行くわよ。資料室はここの地下にあるの。前にも説明したけれど、野生のモンスターが湧いて出てくるから気をつけていくわよ」
まだロストに突っかかるチャールを宥めつつ、ルンは先導を切った。
ララは「あはは……」と乾いた笑いを浮かべた。
そして、一行は街の東側へ向かい、ルンの案内でマンホールの入口から地下へ降りていった。
「…ったく。奴が仕留め損ねたせいで俺が動くハメになったじゃねえか。この落とし前はどうつけてくれるんだ?」
「俺様ぁ知らんぞぉ?」
それを影から見ていた人物が2人。1人はレティウス。おそらく彼もクローンであろう。
そしてもう1人は黒い長髪に深い蒼の瞳。出で立ちは少年のようにも見えたが顔は、ララにソックリだった。
彼…性別が不明なので一応彼と定義しておく…はニヤリと笑い。ロスト達が入って行ったマンホールに近づく。
「開けられるのかぁい?」
「これくらいたやすい。テメエは邪魔すんなよ。ここは俺だけでカタをつける」
「へーいへいぃ。失敗したぁってぇ、知らねぇぞぉ?」
レティウスの言葉をよそに、彼はマンホールを自力でこじ開け、中へと入って行った。
「ったくよぉ、せっかくぅ、最近解放してやったぁてのに……」
レティウスは彼が気に食わないようで不機嫌な表情をしながらその後をついて行く。
続く