テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー 作:sinne-きょのり
「ここが、資料室のある地下洞窟か…」
ロスト達はマンホールから降りた先の少し広い場所に来た。そこには小さく門のような物があり、人が立っていた。傍らには狼型のモンスターが行儀よく座っていた。
「クゥリィ、久しぶりね」
「あっルン先輩。どうされたんですか?」
立っていた人物はルンよりいくつか年上であろう女性。水色のポニーテールをして、鎧を着ていた。騎士なのであろう。手に持った槍には無色の宝石のような石がはめ込まれている。
ロストはその槍から何か不思議な物を感じたが、何か分からなかった為詮索はしなかった。
「今から資料室を見ようと思ってね。これは許可証、ちゃんとユアさんから貰ったわ」
「あー、騎士団長今居なかったんですね。お父さんに会わなくて良かったんですか」
「父様は忙しいもの。仕方ないわ」
そう話したところで、クゥリィと先程呼ばれた女性はロストとララ、チャールを見る。
「はじめまして、クゥリィ・リルカーナと申します。ルン先輩とは、騎士学校の時の先輩後輩でした」
「えっでもルンちゃんって13歳だよね?クゥリィさん幾つか年上に見えるけど…」
ララはクゥリィとルンを見比べていう。
クゥリィは「それはですね」とニッコリと笑みを浮かべて言う。
「私は今20なのですが、騎士学校に入ったのはルン先輩よりあとなのです。正式に騎士になったのもごく最近でして、ルン先輩には昔お世話になったんです」
「あれはたまたまよ。私以外の他の騎士でも、同じ事をしたわ」
昔クゥリィはルンに助けてもらった事があるらしい。ルンはそれをどことなく否定するが、クゥリィは真っ直ぐにルンを信じて慕っているようだ。
「へえ…あと、クゥリィさんの武器についてるあの石って?」
ララはクゥリィの武器である槍についている石をじっと見つめる。無色のその石は、なにか特別なようだとララも気づいたのだろう。
「確か魔物使いが必ず武器につけているものよ。とは言ってもあの色のものだけが魔物を使役する用途の為に使われるの。他の色のものは別の用途に使われるわ、ええっと、名前は…」
『魔輝石(マルシャレス)。ララのペンダントの石と同じ物だよ』
ルンの言葉を遮ってチャールが説明をした。ララは胸元の青い色をした石のペンダントをみつめた。今までララ自身もそのペンダントが何なのか知らなかったのだろう。
「これが、まるしゃれすっていうの?」
「魔輝石は死んだ人間、またはモンスターなどのマナが凝固してできる宝石のような石よ。まあ、王都では必ず教えられることなのだけれどね。ララのそのペンダントは誰かの形見だったりするのかな」
ルンに言われてララは「んー」と唸るが、首を傾けた。
「わからないなー。これ、気づいたら持ってたし…」
「それは水色だから水属性の魔輝石だな。普通魔物使いが持つ無色透明の魔輝石はオリジンが司る源、無の属性だと言われている…だったか」
それまで無言だったロストが口を開いた。ロストの解説にルンが「え?」と口を開けぽかんとしている。ロストは「違ったか…?」と不安げに言ったがクゥリィはそれを否定した。
「い、いえ…合ってます。しかし…魔輝石についてよく知ってましたね…ここまで詳しい事は、王都の学校、それも高位の人ばかりが通う所か騎士学校で教えられる事なんですよ?」
「え……」
ロストはクゥリィを見た、クゥリィはロストの顔を見て何かハッとしたのか「あ、し、失礼しました!」と頭を下げた。
「え、お、俺何か変な事言ったか??」
「お気になさらず!ででで、ではルン先輩行ってらっしゃいませ!」
突然のクゥリィの行動にロストは狼狽えるがクゥリィは動揺全開のまま無理矢理話を進める。
「え?え、ああ……まあ、行くわよ、ロスト……ララ」
「……ああ」
「わかった!行くよ、チャール」
ルンはそのまま進んでしまい、ララとチャールもそれに続いていってしまった。ロストはクゥリィが挙動不審だった事が気になったがこのまま進むしかないと2人と1匹の後を追った。
そのままロスト達が見えなくなった事を確認したクゥリィは、大きな溜息をついた。
「あのロストという方…もしかして。いえでも……そんな…。後で騎士団長に確かめてみましょう…」
クゥリィの独り言は当然ロスト達には聞こえなかった。クゥリィが一体ロストの何に気が付いたのか、それを知る者はクゥリィ以外にはいない。
しかしクゥリィはその事に気を取られてしまい、後からマンホールをこじ開けてやってきた2人組に気付かなかった。
「…」
洞窟の道中、ロストは先程クゥリィが挙動不審だった理由を考えていた。クゥリィが挙動不審になったのはロストの顔をしっかりと見た後だった事にロストは気付いていたのだ。
クゥリィはもしかしたら自分を知っているかもしれない。ロストは自分の記憶の手がかりになるかもしれないと思ったのだ。
「ロスト君もしかして、さっきの事気にしてるの?」
「まあ、そうだな」
ララに言われてロストは顔を上げた。
ララ自身は全く魔輝石について分からなかったらしい。歩いている間自分の首から下がっているペンダントを見つめては何か考えている様子だった。
「とりあえず、ここに来て正解だった。というわけね……っとゆっくり話している暇はなさそうよ」
ルンは大鎌を構えた。モンスターの気配にいち早く気付いたのだ。
「うわっ!ちょっ!待って!!」
「ララ、下がってろ!!」
ララは必死に上、左、右から飛んでくる蝙蝠のような小型モンスターから逃げ回る。
「虎牙破斬!魔神剣!ルン、そっちは頼んだ!」
「了解っ!」
ララが避け、地面にぶつかった小型モンスターに向かってロストが剣を振り上げる。ルンはロストが相手にする事ができてない分のモンスターに向かって飛び上がって大鎌を横に薙ぐ。
そのまま遠心力を使い周囲のモンスターを一掃した。
「る、ルンちゃんすごい…私も負けてられないよ。光よ…フォトン!ってこっち来てる!?来るなーっ!」
ルンの技に感心していたララであったが光を弾けさせる術を放った直後に背後からモンスターがやってきてしまう、それをスピアロッドでバットのように打ち上げた。
「ナイスだララ!行くぞっ!」
ロストはララが打ち上げたモンスターを飛び上がって斬った。着地したロストは周囲を見渡した。
ルンが首を横に振ってもうこの辺りにモンスターがいない事を示した。
「…」
ロストは再び俯いて何か考え出した。ルンは掛ける言葉も見つけられないまま、ララも呆然としていた。
「ねえララ」
「何?ルンちゃん」
ルンはこのままでは空気が重い。そう思ってララに話しかけてみた。ルン自身、2人についての情報整理もしたかったのだろう。
「ララとロストは、7年前以前の記憶が無いのよね?」
「うん。そして私は気づいた時にはもう両親がいなかったの。周囲の大人達に大事に育てられてきたんだ。ルンちゃんはお父さんについては聞いたけど…お母さんもいるんだよね?」
ララは自分達のことばかり話していてルンの事を知らない、とルンの家族の事を聞いてみた。
「ええ、いるわ。病弱で都会外れの実家にいるけれど。私にも弟がいて、弟は体があまり強くなくて騎士になれないって言われてるの」
「だからルンちゃんは騎士を目指したの?」
「…ええ、その、はず……あれ、何か違う…?」
ルンは自分の答えに何故か自身が持てなかった。何か大切なことを忘れている気持ちになり、何かが引っかかるような感覚。
ララはそんな様子のルンを見て心配していた。
「大丈夫?ルンちゃん。どうかしたの?」
「何でもないわ。ただ…ううん。私は誰かの為に騎士になりたかった。人を救い、導く事が騎士の務めだもの」
「ルンちゃんって立派だね」
ララの純粋に憧れを示す笑顔を見て、ルンは対称的に暗い顔をした。
「立派ではないわ。ただ自分の掲げた正義を走るだけで結局は周囲を顧みることができなかったりしたの。今回の行動だって父様に叱られるかもしれないと思ってたの」
「…ルンちゃん…」
『2人とも、話し込むのはいいがロストにおいてけぼりくらいかけてるぞ』
「「えっ?」」
チャールに言われて2人はロストがいつの間にか進み始めていることに気付き、慌ててその背中を追った。
「全くロスト君先に行く時は早く言ってよね?」
「……すまない」
ロストに追いついたララはそう言うが、ロストは心ここに在らず、と言った様子だった。
恐らくまだ先程の件について吹っ切れていないのだろう。
「2人とも?もうそろそろ資料室の扉よ。ほら、あそこに見える大きな扉が資料室」
ルンの指さす方向を見ると、そこには人の手ではとても動かせるようなものではない扉が構えていた。
「うわあ…大きい…ねえロスト君これ動かせる?」
ララは冗談混じりにロストに言う、ロストは「げっ」と小さく言って扉を見つめる。
「俺通常の男よりも力無いんだよ…動かせるわけないだろ」
「屈強な男でも動かせないわよ、この扉は…何故なら」
ルンはそんな2人を軽く無視して大鎌を取り出す。
「この先端部についてる魔輝石が…」
そうやってルンが扉の前に立ち、大鎌を扉に翳そうとしたが、何かを感じたのか咄嗟に後ろを振り返る。
「そうはさせねえよ!」
声が響いた。と同時にララ目掛けて2本の剣…1対の双剣が飛んでくる。
ロストはララの前に立ち即座に双剣を叩き落とした。そして警戒をしつつ、周囲を見渡す。
「誰だ。どこにいる……!」
ロストの呼び掛けに応じるようにして現れたのは、少年とも少女ともとれる外見をした人物。
その人物はもう1対持っていた双剣を取り出し、逆手持ちに構える。明らかに敵意を示していた。
「…ちっ、面倒くせえ」
「お前は、誰だ…」
ロスト、ララ、ルン、チャールはその人物の顔を見て驚愕を示した。
「ララに似ている…?」
浮かべる表情こそは違うものの、その人物の顔はララと同じだった。
違う部分を上げるとするならば、口調、表情、そして瞳の色が深い青色なところであろう。
「オリジナル、できれば会いたくはなかったがな。しかしこれは『あの方』からの命令だ。オリジナル、テメエを殺す!」
ララに似た人物はララに襲いかかろうと双剣を振りあげようとした。その間にルンは滑り込んで大鎌で跳ね返した。
「貴方…一体どうやってここに来たの!入口にはクゥリィが……っ」
「は?そんなの強行突破に決まってるだろ?俺はちまちまとした潜入とかが苦手なんだよ。安心しなよ、命までは取っちゃいねえ、まあ重傷ではあるだろうな」
「そんな…っ!」
ルンの表情が険しくなった。しかしそれに相対している人物は余裕そうにしていた。
「しかしチャール、お前までいるとは思わなかった。ロスト…てめえもな」
「どうしてお前が俺の事を知っている」
「教えるわけないだろ?まあ、オリジナルを殺した後にでも教えてやろうか?」
「お前……っ!」
ロストは少し眩暈を感じた。そして眩暈は激しい頭痛へと変わりロストを蝕む。
『おい!ロスト、お前どうしたんだ!?』
「ぐっ……あ、ああ……」
ロストの脳裏に映ったのは誰かの嬉しそうな表情。そしてその誰かはロストを呼ぶ。聞き覚えのある声で「---」。しかし、ロストにはその声がはっきりと聞こえなかった。 ロスト自身の忘れた、過去の記憶なのだろう。
「ロスト君!」
「ふん、まあいい、始めようぜ?」
その人物は、ララに剣先を向ける。ララは1歩後ずさるようにしたが目の前の人物は逃げる事を許してはくれない。
「戦うしか、無いの?」
ララの瞳には悲しみが浮かんでいた。何故ララがそこまでしてその人物に対して戦う事を躊躇っているかは不明だが、しかし相手は本気でララを殺しに来ている。
このままでは危ない。ロストはそう思い頭痛を我慢してララに言う。
「ララ、今はとりあえず迷うな…殺されるぞ」
「…うん」
ララは決心してスピアロッドを握る。
ルンも今にも飛び掛らんとする勢いで大鎌を構えた。そう、これから、戦闘が始まろうとしていた。
続く