テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー 作:sinne-きょのり
「おい、お前は名前はなんて言うんだ」
ロストは剣を向けながら、ララに似た人物へ問いかけた。相手は不機嫌そうな顔を見せた、聞かれたくなかったのだろうか。
「何でわざわざ俺の名前を聞くんだ」
「『お前』とか言うのが面倒なだけだ」
「…名前なんて立派なもんは持ち合わせちゃいねえよ。変な番号は有るがな。R・B00とか言うな」
R・B00。そう彼は言った。まるで人間につけるような物でない名前にロストは怪訝そうにR・B00を見た。
「俺はそこにいるラリアン・オンリンのクローンだ」
彼の言葉に、チャールは眉を顰めた。そして、何かに気づいたように叫んだ。
『お前っ、あの施設のやつか!!』
「…さあな、俺はとにかく、オリジナルが許せねえんだ!!」
R・B00はララに向かって双剣を振り上げ、ララはその斬撃を咄嗟に後ろに下がって避けた。
「まだだっ!」
しかし彼はそれだけでは止まらず、次の攻撃を確実にララに当てようともう1度左手を振り上げた。
「駄目だっ!」
「ちっ!」
その前に間一髪、ロストが両手で剣の柄をしっかり握り、彼の振り上げられた剣に当てる。火花が散り、ロストは全体重をかけ全力でその勢いのまま彼を突き飛ばした。
「くっ!」
突き飛ばされた彼は地面に背中を思い切り打ち付けた。ここの地面は堅い、痛そうだとロストは一瞬思った。
「てめえっ…!」
「リアン…もうやめよう…?」
立ち上がろうとする彼に、ララはそう声をかけた。
リアンと呼ばれた彼は、その顔に嫌悪感を浮かべた。何故ララがその名前を呼んだのか、それはこの場にいるロストやルンは分からなかったが、それを考える暇さえも与えられなかった。
「その名前を呼ぶなっ!!!魔神剣・双牙!」
「……っ!」
立ち上がった彼…リアンは怒りという感情に任せてララに向かって技を放つ。ララがそれを避け、ロストとルンはララを援護しようとするがロストは体力が切れかかってしまっている。ルンはララの元へ駆けつけ、向かってくるリアンの双剣とルンの大鎌がぶつかり合い、火花を散らした。
「ララ、大丈夫?」
「う、うん…ありがと。ねえリアン、あなたは何者なの?」
「どうして俺の事を知らねえのに名前を知ってるんだ、オリジナル!!」
ララはルンに助けられながらも再度問いかけをするがリアンは名前を呼ばれる度に苛々したように顔を歪めた。これ以上話す事は無駄だとルンは悟り、大鎌を大きく振り回した。
「ぐっ!!くそっ、こいつ騎士団のやつにしては強い…」
「あんた、ララから離れなさいっ!!」
ルンはリアンに向かって叫んだ。その言葉を聞いたリアンは「ちっ」と舌打ちした。
「こいつ、面倒な技を使いやがる…仕方ねえ、なら、狙うはあいつだ!」
「……まさか!」
ララはロストの方を見た。ロストはリアンとの先程の交戦で力を使い果たしてしまったようでまともに立ち上がる事が出来ていなかった。
「てめぇを先に殺してから、オリジナルを殺すとしようか!!」
「くっ……そっ!!」
リアンはロストに向かって剣を向けた。ルンとララはロストを助けようとするが、既にロストの首筋にはリアンの持つ剣が当てられている。
「お前らは引っ込んでろ…ジャッジメント!!」
リアンが唱えた中級術が2人を襲う。感じた事のない痛みにララは表情を歪めた。
「きゃああああ!!」
「ああああ!!ろ、ロスト、君……!」
ジャッジメントをまともに食らってしまった2人はロストのもとへ駆け寄る事ができずに蹲ってしまった。
「さて、どういう風にやってやるか…」
「がはっ!」
リアンはロストの腹を蹴り、ぎりぎり立ち上がる事が出来ていたロストは後頭部を地面に打ちつけた。意識が切れそうになるが、ロストの意識はなんとか持っていた。
「さようならだ!」
「そうはさせないわ…焔よ、ファイアボール!!」
リアンが剣をロストの頭に突き刺そうとした時、ある人物の声とともに炎球がリアン目掛けて飛んできた。
「誰だっ!!」
リアンは剣をロストから遠ざけ、周囲を見渡した。通路の方から1人の女性が出てきた。茶色の髪の毛に黒のメッシュ、そして黒色の瞳。
救世主の登場にルンは思わず声を上げた。
「ユア、さん!!」
「貴方…やっぱりね。それにしても、この状況は一体どういうことなのかしら?クゥリィからの連絡が無いと思ってきてみたのだけれど…」
大剣を構えた彼女はリアンを見つめた。リアンはユアを相手にする事は危険だと察した。騎士団の副団長であり、100年前の戦争を終結させた英雄。この国では戦闘力的に見てナンバーワンとも言える実力を持っている。
「今度は騎士団の副団長かよ…!!」
「あら、クゥリィをあんな目に遭わせたのが貴方なのね?一命はとりとめたけれど、かなり危ない状態だったのよ?」
「はっあいつが生きてようが生きてまいが俺には関係ねえ!!」
リアンはこの状況でなお煽るように言葉を吐いた。リアンではユアに勝てる事などないという事くらい、彼自身わかっているはずなのに。
「雷よ…ライトニング!」
「ああああっ!!」
ユアは容赦なく雷属性の術をリアンに向けて放った。強大な雷撃を受けたリアンは、逃げる余力は残っているものの、このまま戦闘を続ける事は不可能だった。
「さて、貴方、逃げるの?それともこのまま捕まる?今なら逃してあげるわ」
ユアの真意は分からないが、突然彼女はそんな事を言った。それを聞いていたルンは「ゆ、ユアさん!?」と戸惑ったようにしていたが、ユアはそれを聞いていない。
「…やめたやめた!てめぇのお言葉に甘えてやるよ!『100年前の英雄』に来られちゃ、俺も勝てるわけねえ。じゃあな、だが、次は殺すぞ、オリジナル!!」
リアンはそのまま、どこかへ歩き去って言った。ユアは3人を見渡したものの、どうやらルンとララは動くことはできるようだったのだが、ロストの方は完全に意識を失ってしまっているようだった。後頭部を少し硬い床に打ちつけてしまったのだ、無理もない。
「リアン…」
「あいつ、何なのよ……っ!!」
「今の貴方達がまともに戦って勝てるような相手ではないわ、あれは」
ユアは悔しそうにしていたルンに手を差し出した。
「立てるかしら?」
「は、はい…」
ルンは立ち上がって大鎌を手に握った。
そして改めて資料室の扉に向けて掲げた。先端についている魔輝石が輝く。
「ララも立てる?」
ユアはララにも手を差し出した。ララも立ち上がり、ロストを気にするようにしていた。
「はい…ロスト君は…」
「出血は見られないから恐らく大丈夫ね。応急手当はしておきましょう、資料室の中へは私が運んでおくわ」
「ありがとうございます。それと、私…」
「さっきの子のこと?…今は、それを考えるべきではないわ」
ユアにそう言われてララは「はい」と答える。それからユアはロストを抱え、ララも一緒に資料室に入って行った。
「う、うう…」
「あっ目が覚めたんだ」
ロストは目を開けた。資料室の中に人が1人寝るだけの寝台などはあるわけはなく、硬い床の上で寝させられていた。
ララがついていたらしく、後頭部には軽く濡れたタオルがあてられていた。
「俺は…というか、頭が凄いズキズキと痛むんだが」
「あんなに強く床に頭を打ちつけたんだもん、無理もないよ。ルンちゃんとユアさんが今は資料を探してくれてるよ」
頭を手で軽く抑えながらロストはため息をついた。ララはスピアロッドを地面につきたてて術を唱えた。
「気休めにしかならないけど…ファーストエイド。どう、少しは楽になった?」
「効いたかどうかは微妙だが、まあ…ありがとうな」
ロストはふらふらと立ち上がり、資料室を見渡した。その名の通り、資料と思われるものが棚に綺麗に整頓されて並んでおり、幾つか遠くの棚のところにルンとユアが立っていた。
「ユアさん、ルン……」
「あら、目が覚めたのね。ちょうどよかったわ。資料が見つかったのよ」
ロストとララが2人のもとへ行くと、ユアが資料を開いて2人に見せてきた。ララとロストが探していた通り、リースとエルスで起こった誘拐事件に関するものだ。
「これは…」
ロストが見たものは誘拐事件当時の状況を記したものだった、次のページに被害者の名前と殉職した騎士の名前が書いてあるようだったが、ロストがそのページを見ようとしたらユアが資料を閉じた。
「この誘拐事件には、当時エルスに来ていた王子も巻き込まれたのよ」
「王族まで巻き込まれたってこと?」
ユアの言葉に反応してララが尋ねた。ユアは複雑そうに「ええ」と言った。ロストはユアが何かをはぐらかした様子だったことが気になったが、ユアは話を続けてしまったため聞くことができなかった。
「王子と、その婚約者までね。しかも現国王には兄弟や親戚はいない、その子息のディアロットにもご兄弟はいなかったわ。だから本当は公になって大騒ぎの事件のはずだったのよ」
「それって、相当やばいんじゃないのか?結局は王家の跡取りがいないってことだろ?」
ロストがそう言った。ユアは肯定の頷きを見せた。
「そう、だけれども現国王は大事にする事を避けたかった。だからリンブロアに頼んでこの事件を秘密裏に追うことにしたのよ。7年経った今でも、まだ王子とその婚約者は見つかってないわ…」
「だから今でも騎士団にはその為の隊があるって聞いたわ。でも当事者がいるもの、何か…この事件に関して動き始める予兆かもしれないわね」
ルンがそう言い、ユアは静かに頷いた。ロストとララの存在は騎士団にとって、フェアロにとって重要なのだ。
「大半が殺されたとされるあの事件で、数少ない生き残りがいたのだもの」
「でも、そう言ったらセテオス君だってあの事件の当事者だった筈じゃないの?」
ララに言われ、ユアはそういえばと考えた。
「確かにセテオスは何か知ってるかもしれないわ。でも私が聞いた限りじゃ、あんまり情報は望めないかも」
「あら、ルンは何か聞いていたの?」
ユアはルンがセテオスに故郷について聞いていた事は知らなかったようだ。しかしルンの方は「大して聞いてません」とはあ、とため息をつきながら言った。
「セテオスに故郷の事聞いても、自分は何も出来なかった。としか言われなかったんですよ。何故だか私を見ては悲しそうな顔して…全く何考えてんのよセテオスは」
「…そう。他に手がかりは…。確か、これよ」
ユアは資料の違うページを開き、ロストとララに見せた。魔法陣のようなものと、それに関する説明だろうか。
「これはエレッタで生まれた術式なの。けれど…これは実験施設の後に残ったものから読み取ったものだから、細かい部分までは残っていないのよね。これが何の術式かある程度の推測はされているし、先程の彼を見てほぼ確信に変わったのだけれど…まだ、誰が一体どうしてそれをしようとしたのかが分からないから報告しようがないのよねえ」
「エレッタって確か、今では機械技術が世界でトップなんですよね?その国が魔法を?」
ルンが腕を組みながら尋ねた。ロストは呆れながら「騎士なら知ってるんじゃないのかよ」と呟いた。
「エレッタは昔は魔法大国で、スモラ・タールという人物が機械を生み出したって普通習うことだろ、大砲塔は実際マナを原動力にして…って、なんで俺、こんなこと知ってるんだ?」
「…ロストの言ってる事は合ってるわ。大砲塔の事は知ってるかしら」
頭を抱えるロストに驚きつつも、ユアはララに尋ねた。ララは一般常識を知らなすぎるため、確認を取ったのだろう。
「えーっと、確かエレッタの観光スポットになってるところだっけ?何に使われてたかは知らないけど」
ララの曖昧な答えにロストは「お前なあ…」とララの頭を軽く小突いた。
「あたっ」
「知っとけ。大砲塔は100年前の戦争で使われたものだ。今はその機能を全停止して観光に使われてるって話だったか」
ロストはルンを見ながら言う。ルンはロストの持つ知識がどれくらいなのか気になったようでこう尋ねた。
「その話は誰から聞いたの?あんたたまに変な知識持ってることあるし」
「…殆どは母さんに聞いたものだが。魔輝石の事だって、俺自身知らないはずの事だ。俺だって、何が何だか…」
「…そう。で、貴方達はこれからどうするの?」
ユアに言われて、ララが答えた。それはもう自身満々にその後の事を話しだす。
「それは決まってますよ!エレッタに向かいましょう!」
「は?」
「へ?」
『は?』
「……あらあら」
ララの言葉に、ロスト、ルン、チャール、ユアが呆然とする。まさか100年前の事とはいえ昔は敵国であった上に現在も警戒されている国に行こうと言い出すとは誰も思っていなかったのだ。
「エレッタは現在、確かに表向きはフェアロと平和条約を結んでいるけれど、エレッタの皇族はフェアロを良くは思ってないわ。緊迫した状況なのよ。そこに貴方達だけを行かせるわけにはいかないわ」
「そんなあ…」
ユアに言われてララは落胆するも、続けてユアは言う。
「だから、私もついていくわ」
「ゆ、ユアさん!?い、いいんですか!?」
「だってルン、私も近々行くつもりだったもの。なにも戦争が起こるかもしれないという状況を見過ごすことはできないもの。私がついていけば大船に乗った気分でいられるわよ?」
ルンは慌てるものの、ユアはマイペースに微笑む。ユアは騎士団の副団長で、本来はあまり離れられないはずなのだが、恐らく今回はユアが動かなければならない程の出来事に発展するとユアは予測しているのだろう。
「って事は、私達、エレッタに向かってもいいの!?」
「でも、エレッタに向かう事が危険な事であることくらい、ララ、あなたもわかってるの?」
喜ぶララだったが、ユアは真剣にそう言った。エレッタの現状を聞けば、安全ではない事くらいわかるだろう。
「大丈夫だ。俺達はこれまでも危険に巻き込まれてきた。今更だ」
『おいおい、本当にいいのか?お前らは、あのへんなやつらにねらわれてるんだぞ?』
チャールがロストの肩に乗りながら言った。2人を心配しての言葉だろう。
「だから、それが今更なんだ。俺達は恐らくどこへ向かったって奴らに狙われる。それはこのフェアロにいようときっとエレッタにいようとだ」
「貴方達の覚悟はわかったわ。今はとりあえず戻って休みましょう。私も旅支度をしなければならないもの」
ユアは資料室の出口の方へ向かった。ロスト達もそれに続いて行く。
「さて、改めて宜しくね」
「はい!」
ユアに言われてララは元気よく返事した。
続く