テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー   作:sinne-きょのり

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チャプター18:リンブロアとルン

  一晩経ち、ロストとチャール、ルンは買い出しに、ララは先日怪我をしたクゥリィが心配だと言って騎士団の医務室に向かうユアについて行った。

 

「すまないな、お前にまで買い物手伝ってもらって」

 

 ロストは荷物を持ちながらルンに言った。ロストは先日頭を強く打ちつけた事からララが頭に包帯を巻いていた。大袈裟だとロストは渋っていたが倒れ時の場所が固い床の上だったのでその心配は分かるとルンは共感していた。

 

「いいのよ。私は街に顔が知られてるから、買い物がしやすいし」

「そうか…。なあ、気のせいであってほしいんだが…」

「?」

 

 ロストの言葉にルンは首をかしげた。ロストが何を言いたいのかいまいちわからないようであった。言い辛そうに周囲に視線を向けたロストはやはり、と何か1人で勝手に納得して溜息をついている。

 

「街の人の視線だ。お前と一緒にいるせいかさっきよりなにか見られてる気がしてな」

「見られてる…あんたが?」

『おーい、もうそろそろユア達と合流しないか?』

 

 ロストとルンの会話を遮るようにチャールが声をかけた。話を遮られたルンはむっとした表情になるがロストがそちらを相手にしてしまった為にその話は打ち切られた。

 

「ああ…だが、お前騎士団本部に行きたくなかったんじゃないのか」

『ユアに会った以上仕方ないだろ。ボクもそう渋ってはいられないさ』

「そうなのか」

 

 チャールはあまり乗り気のようではないが、仕方ないと割り切っているらしい。ロストの方はどことなく不安を感じていた。つい先日までは騎士団本部に行きたがっていた割にはどこか元気がない、とルンはロストの事が気になってしまった。

 

「もしかしてあんた、あの事気にしてんの?あんたが魔輝石の事を知ってたりしてた事」

「…まあ、何となく、怖いんだ。もしかしたらこの街に俺の事を知っている人がいるかもしれない。いたとして、もし、話しかけられたとして…俺はどう反応すれば良いのだろうか」

 

 苦い表情をするロスト。ルンはその言葉でロストが悩んでいることがわかった。

 

「あんたがもしこの街の人間だったんなら、父様に聞けばわかるかもしれないわ。今はとにかく、ララとユアさんに合流しましょ」

 

 ルンに言われても、ロストの頭の中には先程の事が巡っていた。

 もしここに住んでいたとしても、その当時の記憶は空っぽなのだ。それになによりロストの実母であった女性はロストに何も教えてはくれなかった。もしかしたら行方知れずの父親の方に何か秘密があるのでは無いかと思ったが、わかりもしないことを延々と考えるほど労力はない。

 ロストがそう考えているうちに、騎士団本部の前まで着いてしまった。

 

「ローストくーん!」

 

 ララはロストの姿を見つけるとすぐに走って駆け寄って来た。医務室に居たはずだがもう席を外してもよかったのだろうか。怪我をしていたクゥリィの容態がよくなったのかもしれない。

 

「ララ、治療は終わったのか?」

「うん。幸いユアさんの応急処置が効いてたみたいで、今は絶対安静、っていう事で寝てもらってるよ」

 

 ララはブイサインを作って見せた。ロストはどことなくほっとし、本部の扉の前にいた騎士達に声をかけられた。

 

「中でユア殿が待っております、どうぞ、入ってください」

「……あ、ありがとうございます」

 

 ロストはどことなくその騎士達に何らかの違和感を感じたが、ララとルンはそれに構わず中へと入って行く。ロストもそれを追いかけ中へと入って行った。

 その後の騎士達の表情は何故か安堵を表すようだった。

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 ロスト達は騎士団本部内の廊下を歩いていた。ルンが先頭に立ち、ララとロストを案内している。という図だ。しかし、本部のの中に入ってからというものの、チャールはまったく黙ってしまい、ロストは降り注ぐ視線に耐え続けていた。

 

「…なあ、ルン。これはフェアロ・ドーネ騎士団流の客人の歓迎の仕方なのか?」

 

 ロストへの視線の元は、騎士達だった。とは言っても若い騎士達は全く反応せず、少し年老いた騎士に視線を向けてくるものは多かった。

 中には何かしら話している騎士もいるがその内容は聞き取れない。

 

「わ、私も知らないわよ…。あんた、本当にただの村の青年なわけ?」

「俺に聞くなよ…覚えてねえって言ってるだろ」

「そうよねえ…」

 

 ルンも流石にロストの事を疑い始めていた。もしかしたら彼は騎士団になにか関連のある人物なのかも知れないが、彼が誘拐事件にあったのは7年前だ。ルンは当時6歳、だからルンは彼のことを知っているはずなのだ。

 しかしルンは心当たりがないので、ルンにとってもロストに対する謎が深まるばかりなのであった。

 

「ここが確か、副団長室だっけ?」

 

 ララに言われて、ルンとロストは立ち止まった。ロストは初めて見る豪勢な扉に気圧されかけたもののその反応は少々表情に出る程度だった。

 

「パーフェクティオ隊隊長、ルン・ドーネです。副団長はいらっしゃいますか」

 

 ルンは扉をノックして尋ねた。その扉の向こう側から声が聞こえた。

 

「いいわよ」

 

 ユアの声だ。ルンは扉を開け、ロストとララもそれに続こうとした。しかし、ルンは扉を開けた途端に固まってしまった。まさかそこにいるとは思いもしなかったとばかりにルンは口を開けてしまう。

 

「ユアさん…って……えええ!?」

 

 ルンが開けた扉の向こうには、ルンが思いもしなかった人物がいた。何故彼女がこんなにも呆気ない声を上げてしまったのか、それは部屋の中に立っていたユアの隣にいる人物が原因だ。

 

「と、父様…何故ここに」

 

 固まるルンの後ろから顔を覗かせたロストとララは、ユアの隣に立つ人物を見つめた。

 ユアよりもかなり高い身長に、ガッチリとした体格。瞳と髪色はルンと同じだが、顔はあまり似ていないのはルンが恐らく母親似の顔立ちだからであろう。まだ齢13のルンの父親にしては老けているようだが、この人物こそがルンの父親であり、フェアロ・ドーネ騎士団の団長リンブロア・ドーネなのだ。

 驚愕の表情を浮かべ固まるルンに対し、リンブロアは無表情のままだった。

 

「この人が、騎士団長なのか…」

 

 物怖じしていないのか無表情のままロストが声を発する。リンブロアはロストを見ると少し驚いた顔をした後に、優しく微笑んだ。その穏やかな微笑みにロストは声には出さなかったものの少し思ってしまう。

 

(どうやら、思ったほど厳しい人ではなさそうだ…)

 

「はじめまして、と言った方がいいか。しかし…色々と聞きたい事があるが、そこの赤い狐のようなそいつ…」

 

 リンブロアは口を開いた。ララは肩に乗っているチャールの事かと、チャールを見たがララの視線に対してチャールはそっぽを向いた。まるでリンブロアの視線から逃げたようにも見えるが。

 

「…少し我儘な奴だが、悪い奴ではない事は私が保証する。いつもこいつの面倒を見ていてくれてありがとうな」

「え?は、はい…?」

 

 リンブロアに言われ条件反射で返事をするも、ララはリンブロアがチャールを知っている事が気になった。もしかしたらチャールはララの元へ来る前はリンブロアの元にいたのかもしれないが、何故それがララの元に来る理由も見当たらない。

 

「まっ待ってください父様、何故チャールの事を知ってるんですか!?と、というか何故ここにいるんですか!?仕事でいないと…!」

 

 突然の事にルンは混乱しているようであった。リンブロアがチャールの事を知っていたなど想像もしていなかった。しかも仕事でいないと聞いていたので、完全にルンはユアしかいないと思っていた。だが現実は無慈悲である。目の前に今一番顔を合わせたくなかった実の父親がいるのだ。

 

「落ち着けルン。騎士たるもの動揺せず、話を聞け。仕事は急用ではあったすぐに終わった。ユアの報告を聞いて気になって来たところなのだ。それと、チャールは昔からの友人だ」

『……ほんっと、何でお前に会わなきゃいけないんだか』

 

 リンブロアを見て、チャールはため息をついた。チャールの【会いたくない人物】は恐らくリンブロアの事だったのだろう。何が嫌なのかは全く分からないが。前に因縁があったのかもしれない。とララは思う事にした。

 

「……さて、ユアからの報告についてだが」

 

 リンブロアは話を変えた。それと共にその表情は流石騎士団長、とも言えるような真剣な表情へと変わる。先程の姿は客人を出迎える為のものだったのだろう。営業スマイルというものだ。

 

「ルン、本当にエレッタへ向かうつもりか」

 

 先程の優しい口調とは反対に、厳しい口調だ。ルンはリンブロアから反対される事くらいは予測していた。

 

「…はい」

 

 ルンはリンブロアの話をしっかりと聞く姿勢だった。言い訳をするような真似はしたくないのだろう。幼かろうが彼女は1人の騎士なのだから。プライドくらいは持っているのだ。

 

「今エレッタは緊迫した状況だ。そこにまだ未熟なお前や、お前の友人達を連れていく事に私はあまり賛成しない」

「あら、可愛い愛娘を危ない場所に送りたくない、という事かしら?」

 

 ユアは少しリンブロアをからかうように言った。リンブロアはため息をついて手を腰につけた。ユアを相手にしては少し調子が狂ってしまうのだろう。

 

「ユア、どうせお前が言い出した事だろう」

「だって、どうせ私はエレッタへ向かうもの。この子達も連れて行っていいでしょう?」

「駄目だ、ルン達をエレッタに行かせるわけにはいかない」

 

 ユアの言葉にも耳を貸さず、リンブロアは一貫して反対していた。ルンは自分は父に甘やかされてるのだと悟った。危険な場所へと行かせたくない、そんなリンブロアの心情が見え透いている。

 

「私が、力不足だからでしょうか」

 

 ルンはぽつりと言った。今のエレッタに向うという事は、戦争相手になるかもしれない国へ行く事なのだとルンは思ったようだ。しかし、ルンにも譲れないものがあった。だからルンはしっかりとリンブロアを見つめた。

 

「…ああ、そうだ」

 

 フェリサ・テックの時にベアを圧倒したルンでさえも騎士団長の前では力不足と断言される。

 ロストは何も言えなかった。疲労があったとはいえあのベアを食い止めるだけで精一杯だったロストには、エレッタに行く選択は恐らく辛いものなのだろう。とリンブロアの言葉から推測できた。

 

「確かに、私は力不足です。だからこそ、危険を冒すのです。危険を冒して、私は強くなりたいのです。誰かに頼ってばかりではなく、自分が行動したいのです。強くなりたいという気持ち以外にも、私には行く理由があります。お父様…いえ、騎士団長。私達がエレッタに行く事を、許してください」

 

 13歳らしかぬ眼をしていた。リンブロアの気迫に気圧されそうになりながらもルンはまっすぐに見つめていた。

 ルンは諦めようとは全くしていなかった。

 

「リンブロアさん、俺達も一緒に行かせてください。そこには俺達の知るべき何かがあるんです。それに、ルンは充分に頼りになる仲間です」

「私からも、お願いします!!」

 

 ロストとララも、そう言ってリンブロアに頭を下げた。リンブロアはやれやれといった表情をしていた。客人に頭を下げさせてしまうとまでは考えていなかったようだ。

 

「分かった。そこまで言うのであれば、仕方ない。ユア、頼めるか」

「最初からそう言ってるじゃないの」

 

 リンブロアはついにルンの意見をのんだ。ユアは笑って言い、ルンは嬉しそうに顔を上げた。

 

「ただし、死ぬな。絶対にだ。連れの2人も絶対に死なすんじゃないぞ」

「はいっ…はいっ!わかってます、父様!」

 

 リンブロアは優しくルンの頭を撫でた。それは騎士団長の顔ではなく、娘を心配する父親の顔であった。

 

「もう準備も出来ているみたいね、早めに出発しましょう」

「はい!」

 

 ユアに言われてララは元気に答えた。ロストももう行く準備は出来ているようだった。

 

「じゃあ、リンブロア。私たちは行くわね」

「…ユアには少しだけ話がある」

 

 4人が部屋を出ようとすると、ユアはリンブロアに少し引き止められた。ロストは少し気になったが、騎士団のトップ2人の話だ、自分には全く関係がないと考えた。

 

「……そう。ロスト達は先に行ってていいわよ」

 

 ユアはそう言ってロスト達が出たことを確認すると扉を閉めた。そして、リンブロアを見つめた。

 

「ようやく、我々の苦労が報われたのだ。絶対に見失うなよ」

「それだけ言う為に私を引き止めたの?まあいいわ、私だってもうあの子を失いたくはないもの」

 

 ユアは悲しそうにそう言った。リンブロアは実はユアの事を深くは知らない。

 100年前の戦争の英雄は、その胸に何を秘めているのか、リンブロアとユアの話している人物にどう関係しているのか、リンブロアは知らない。

 

「…何故お前はいつもそのような顔をする?私には不可解だ」

「そう?まあいいわ、私は行くわ。次にあった時には、あの子に全てを話せるといいわね」

 

 ユアはそのまま部屋を出た。1人残されたリンブロアは、ため息をついた。何を思ったため息なのかはわからなかった。

 

「その時には、全てを…か…」

 

 私には荷が重すぎる、とリンブロアは既に部屋を出ていないユアに対してかのように呟いた。リンブロアの抱える真実はあまりに重く、彼の主君にも言えないものmで含まれていたのだから。

 

続く

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