テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー 作:sinne-きょのり
特殊なジャンルとは思いますが、とりあえず読んでくだされば嬉しいです。
昔々、大精霊マクスウェルがいました。
マクスウェルは一人でした。
一人ぼっちの大精霊は時と源を司る大精霊を創生しました。
時の大精霊はゼクンドゥス。
源の大精霊はオリジン。
三人の大精霊は世界の記録を作りました。
その記録の中に、人や動物ができました。
多くなる生命の中で、三人の大精霊では世界を統治することはできなくなりました。
そこでマクスウェルは、人の中から大精霊を選定することに決めました。
最初の選定…それで選ばれた始まりの大精霊達は、今もこの世界に残り続けています。
マクスウェル達も、もちろん。
メモルイア創世記第1節。精霊の誕生より。
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そうして育って行った世界が、このマナに満ち溢れ、精霊の恩恵を受け反映する世界、メモルイア。
ここには人々がマナを体に持ち術を扱うことで平和を作り上げている風景があった。
100年前にフェアロ、スレディア、エレッタの三国で大戦争が起こったという痕跡も人々の記憶の中から薄れつつもある。
だが、こんな世界にも危機は訪れていた。
これは、記録と記憶を巡る、一つの物語。
-テイルズオブメモリア-
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メモルイアには三大大陸、そのそれぞれに大国があり、その中の一つであるフェアロ王国での話。
フェアロ王国の王都フェアロ・リイルアから離れた森に囲まれた田舎の村、フェアロ・リースにとある青年が住んでいた。
「ふう・・・今日の朝食はこんなもんだろうな」
青年の名はロスト・テイリア。彼は今、朝食を作っていたようで、キッチンには火にかけてあった鍋がコンロの上に乗っている。緑色の瞳を階段の方に向け、茶色の髪の毛の頂点から垂れたアホ毛を少しいじってみせる。
彼にはそっくりな双子の妹がおり、名前をレイナという。
彼女は朝が弱く、ロストが朝食を作り終えたときにはまだ寝ているというのもよくあることである。
「レイナはまだ寝てるのか・・・」
起こしに行くのも面倒だと思いロストはいずれ起きてくると決めつけ朝食を自分の分とレイナの分を注ぎ始める。
その時、二階から誰かが駆け下りてくるような音が聞こえてきた。ロストはその足音が誰の物なのか既に予測しており、ロストは階段の方を向いた。
「やっと起きたか、寝坊助」
「やっと起きたか・・・じゃない!」
二階から降りてきた少女・・・レイナはからかうように言ったロストに対して頬を膨らまし不満そうに言った。ロストはいつものことだと思いレイナを起こさなかった。このようなことはほぼ日常茶飯事なのだ。
「俺は別にレイナの執事じゃないからな。起こしたりとかのお世話はやらねえよ」
「けちんぼー・・・起こしてくれるとかはいいじゃん!」
「誰がやるか、毎日言ってるだろ。まあいい、朝食がさめるからとっとと食うぞ」
「・・・はーい。まあ結局、ロストの手料理が美味しいから許しちゃうんだけど・・・んーおいしい!」
レイナは席についてテーブルの上の料理を一口食べるとご機嫌そうに笑う。レイナのその嬉しそうな姿にロストは苦笑いしながら、自らも席に着く。
「その前に言うことあるだろ?」
「あ、作ってくれてありがとう?」
「違う、いただきますだ」
ロストの言葉にレイナはそれをすっかり忘れていたのか、ロストの言い方がおかしかったのか、つい笑ってしまった。このように当たり前の事を真面目に言うロストがおかしく思えた、というのが正解のようだが。
「っふふくく・・・あははっ」
「お、おい、笑うところかよ、そこ」
ロストは突然レイナが笑い出すのでなんとなく自分も笑いそうになってしまったが、そう反論してみた。そして恥ずかしくなってしまうのだ。
「ごめんごめん、ふふっ。なんだかロストの言い方がおかしくって」
レイナはお腹を抱えてひとしきり笑った後、手を合わせた。
「こうすればいいんでしょ?いただきます」
「まあ、な・・・レイナが笑うから恥ずかしくなっただろ・・・いただきます」
ロストも手を合わせて食べ始めた。
二人の母親は5年前に他界、父親は行方不明。そして、一番重要なのが、二人には7年前以前の記憶がないこと。
ロストは7年前、一人でシェルフィールの森というところに倒れていたのを発見され、レイナは6年前にロストの母親が連れ帰ってきた。
そんなことで二人にとって母親は大切な存在だった。
「ねえ、ロスト、今日は何の手伝いするの?」
「そうだな・・・この前収穫だったから今日あたりは種まきかもな」
「よかったじゃん、耕す作業とかだったらロスト倒れそうだし」
レイナはからかうように言った。ロストは村の収穫の手伝い、そして周囲の森のモンスターの討伐である。
人間がマナを持っているのと同じようにそれ以外の生物もマナを持っている。そのマナを人間は上手に扱うことができるが一部の生物はそれをうまく扱えずに魔物化してしまう。それが人を襲う恐れがあるので、たまに戦うことのできる人間がモンスター討伐をする。
「ロストの水属性の術はすごいからなあ・・・」
「お前だって水属性だろ?」
「同じでも違うよ。いくら一人一人の人間がマナ属性をひとつ持ってるとしても、その量が同じな訳じゃないし」
レイナは食べ終わってスプーンをおいた。ロストは食器を片づけようと立ち上がった。
「私・・・不安なんだ」
「突然、どうしたんだ?」
「いつか、私が私じゃなくなるんじゃないか・・・ってね」
レイナのそんな言葉にロストはただの冗談かと思った。
彼女は不安そうな顔をしていたがロストにはレイナの不安など一切伝わっていないのだ。もっとも、レイナが何に対して不安がっているのか、それが不可解なのだが。
「はあ?何言ってるんだ。早く食器片づけて俺は畑に行くぞ?」
「むー、人が真剣に考えてるのに・・・まあいいや、で・・・私は何すればいいの?」
「フリーヌおばさんのところに手伝いに行ってやってくれ。フレイアもレイナと話すのを楽しみにしてるらしい」
「わかった」
フリーヌというのは、この村にすむ女性だ。その娘フレイアは足が不自由で、外にでることもままならない。なので、レイナがよく彼女の元に向かっており、レイナとフレイアは結構仲がよいらしい。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってらっしゃーい・・・さあて、私もいこうかな・・・」
家を出て行くロストを見送って、レイナも欠伸をして家を出た。
その道中、レイナは目的地であるフレイアの家につく前に、畑とは見当違いの場所に居るロストに似た人物を見たような気がした。
「・・・アレ?ロスト?でも、畑はこっちじゃないし・・・。・・・後、追った方がいいのかな・・・?」
そう悩んでいる間にレイナは誰かに手を引っ張られるような感覚がした。無理矢理に引っ張られたせいか腕が痛む。
「いった!・・・っだれ!?」
レイナは必死に抵抗を試みるも、呆気なくその手に引き込まれてしまい、森の中へと連れ去られてしまった。
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「レイナ、ただいま。フリーヌおばさんのところ、行ってきたか?」
「・・・あっ、ごめん、行ってない・・・」
ロストが帰ってきたとき、家で待っていたレイナの様子はどことなくよそよそしかった。何かに気を取られていたかのような、心ここにあらずと言った状態である。
「・・・どうしたんだ、具合、悪いのか・・・?」
ロストはレイナの様子がおかしいことに気付き、レイナの顔をのぞき込もうとしたが、レイナはそれをかわした。ロストの顔も見たくないのか目を逸らす。
「レイナ?」
ロストはますますレイナの事を心配するが、レイナはそれを許してくれない。レイナはとってつけたように不機嫌ではないと、ぎこちなく笑った。今朝の笑顔とは雰囲気が明らかに違う。
「だ、大丈夫・・・。何でもないから。ほ、ほら!はやく夕飯しよー!ロストの手料理食べたいなー!」
「・・・ああ、わかった」
ロストはレイナの言動が挙動不審なことに探りを入れたかったが、この話は途絶えてしまった。
そのままロストは夕飯を作り、会話もないまま食事をした。
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次の日の朝、ロストは寝覚めが悪かった。寝るときまでレイナの態度は変わらなかった。何か怒らせてしまったのかと思ったが、考えても考えても答えは出てこなかった。
朝になれば期限も良くなっているだろうと、朝になれば昨夜の態度の理由も教えてくれるだろうと彼は思っていた。
「・・・あれ、レイナが部屋にいない」
何となくとなりの部屋で寝ているレイナの様子を見ようとのぞいたが、そこにレイナの姿はなかった。
綺麗に整頓されたベッドと、申し訳程度の机と椅子。そして棚があるのだが…特に変わった様子もなく、ただこの部屋の主がいないだけとなっていた。
「珍しいな、早く起きているのか」
嫌な思考にたどり着きそうになったが、ロストはそう考えてみた。とりあえず階段を下り、一階へ来てみたが、そこにもレイナの姿はなかった。
代わりにぽつりとテーブルの上に手紙が置いてあった。恐る恐るその手紙を手に取ったロストは、その内容に目を見開いた。
『ごめん、ロスト。
私、此処に居ちゃいけない存在みたい。
結局ロストに心配かけちゃうけど。
私が此処に居ないほうがきっとロストも
…そしてきっと私も幸せなんだ。
刃物を触ると、誰かを殺しそうで怖いの。
どうしてかは分からない。
でも、体に刻み込まれた何かが頭の中で叫ぶの。
誰かを…殺せって。ああ、今にも誰かを殺しちゃいそうだよ
だからきっと私は此処にいちゃいけない。それに…
私、ロストの家族じゃなかったんだから。
人間ですら…無かったから』
その手紙を読んだ途端、ロストの中で何かが崩れ落ちそうだった。レイナの手で書かれた文字は、最後の方はぐちゃぐちゃになっていた。
涙の跡らしきものもある。紫色に滲んだインクがレイナの心情を表しているようにも思えた。
「なんだ・・・なんだよ、家族じゃないって・・・人間じゃないって」
ロストには訳が分からなかった。レイナが何を言いたいのか、なぜ自分の目の前から消えたのか。
レイナが自分と違うなどと考えたこともなかった。
レイナと自分は当たり前に似ていて、双子だと思っていたからだ。それが、家族ではない、人間ですらなかったと書かれていた。
「・・・冗談、だろ・・・」
そうとしか言いようがなかったロストの声は無気力にその場に響いた。手紙を持ったまま、ロストは動けなくなった。
昨日のレイナの態度が、この手紙にあるのだとしたら、自分がいない間にレイナに何かがあったのかもしれない、そう思いはしたが、この村にレイナに悪い事を吹き込むような人間はいないとロストは記憶している。
「おなかが減ったら…帰ってくる…よな…だって、そんな…レイナが一人でいられるわけが…」
もしかしたら、一人でいられないのは自分かもしれない。
レイナは本当は、自分に何か不満を持っていたのかもしれない。
そんな負の思考がロストの頭の中をぐるぐると回った。誰かにこのことを話そうかとも考えたが、誰に話すのかも思いつかない。誰かに、村の人間に無駄な心配をかけたくはなかった。
「…そうだ…エート…あいつの所に行ってみよう…」
エート・トエスは年上の多いこのフェアロ・リースでのロストと年齢が近く親友と言える人物だ。
彼ならば、レイナがいなくなったことに関して話を聞いてくれるかもしれない。
そう希望を持ったロストはエートの元へと向かおうと思ったのであった。
続く