テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー 作:sinne-きょのり
「ユアさん、話は終わったんですね」
「ええ、ルン。じゃあ出発するわね」
ユアがリンブロアと話した後、街の出口付近でロスト達は待っていた。持っていた地図を広げたユアはそれをロスト達に見せる。ロストが旅に出る時にもっていた地図とは違い、しっかりとフェアロの領地が全て記されていた。
「エレッタへ向かうと言っても、ここからの道のりは長いわ、まずは異国へ向う為の船に乗らなければいけないの」
「船が出ているのは確か、フェアロ・テスフェという港町と聞いた事があるが…」
「正解よ、ロスト。私達がまず向かうべきはフェアロ・テスフェ」
ユアは地図の上のフェアロ・リイルアからフェアロ・テスフェまでの道をなぞるように指で示す。
「ユアさん、しかし途中にあるこの洞窟…テス洞窟でしたっけ?一般用の道、落盤して封鎖されてますよ?」
「ルン、誰も一般用の道で通るとは言ってないわ」
ユアは当然といった風だった。ルンは「ですよねえ…」と疲れたように項垂れた。
「また洞窟に行く、という事か…」
腕組みをして言うロストを見て、ルンは更にいじけたようにする。ララは何故ルンがそんなにも洞窟を通るのを嫌がっているのかよくわからなかったが、ララの肩の上にいるチャールもあまりいい表情をしていなかった。
『テス洞窟…って確か川沿いの洞窟だったよな…』
「ええそうよ?だから水がよく滴ったりしているから、濡れる事には気をつけなくちゃいけないわね」
さらっとユアに言われチャールも落ち込みを見せる。水が滴っている。というところが嫌なのだろう。それはルンも同じだった。
「か、髪の毛湿気に弱いんですよ!」
「ルンちゃん、もしかしてくせっ毛?」
ララはルンの髪の毛を見て言う、ルンは小さく頷き、ぼそぼそと「だから髪の毛のセットも時間かかるのに…」と呟くようにして言った。
「まあ、目的地に行くにはこれしか方法がないから仕方が無い。それにルン、お前さっきの威勢はどうした」
ロストに言われ、ルンは先程リンブロアに対して自ら言った言葉を思い出す。そして「それはそれで……これはこれで……」と言い訳をし始めるがユアにため息をつきながら言われた言葉がルンに突き刺さる。
「騎士は言い訳しないの。まったく、貴方が自分で決めた事よ?」
「うう……」
こうやってうじうじとしている様は普通の13歳の少女である。ロストは改めてルンにも年相応の部分があるのだと確認した。
「…ねえ、ユアさん。少し聞いてもいい?」
ララは歩きだそうとするユアを引き止めるようにして尋ねた。その顔はあまり見せないような真面目な顔だった。ユアは何を聞かれるのかと少し身構える。
「何かしら、ララ」
「英雄と、100年前の戦争について、少し教えて欲しいの」
ララは当事者であるユアに聞く事が一番だと思ったのだろう。一方のユアは意外とでも言うようにララを見た。
「あら、知らないの?基本は本でも何でも…」
「私、本とか、あまり読んだことないんだ…恥ずかしながら……」
ユアはため息をついて少しチャールを睨む。ユアの視線にビクッとしたチャールは毛を逆立てた。そして気まずそうに言い訳をし始めるのだ。
『なっ、何でボクを睨むんだよっ!』
「ララに何も教えてないの?あなた……まったく、呆れるわねえ」
『痛っ!』
抗議する様子のチャールにユアはデコピンをした。ララは少し苦笑いして、ユアをもう一度見つめた。
「仕方ないわ。じゃあ少しだけね」
「ありがとうございます!」
「ルンとロストも、一応復習として聞いておきなさい」
ルンとロストは静かにうなずき、ユアが話し始めるのを待った。2人はどうやらその辺りは知っているようだ。
そしてユアは思い出しながら語り始める、100年前のこの世界を。
「そうね…100年前の戦争は…」
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100年前の戦争は、エレッタが引き起こした。と言われているのは知ってるわね?
当時はフェアロとスレディアの関係も良くなくって、三国の間で大きな戦争が起こったの。
それが、今でもこのメモルイアの歴史として語られる三国戦争。
フェアロは精霊達を利用して、エレッタは強大な魔法技術と、機械技術を用いて、スレディアは磨きあげられた武器を使って。
しかし、スレディアはフェアロ、エレッタに比べて戦力が足りなかったの。
不利だと気付いたスレディアは、途中でフェアロとの間に和平を結んだわ、エレッタは同時に2つの国を相手にしなければならなくなったの。
そして、エレッタが敗戦する大きな原因となったのは、今でも英雄の1人として語り継がれる、スモラ・タール。
スモラは、エレッタのやり方に疑問を抱き、フェアロ側へと亡命してきたの。
私や仲間達はそれを受け入れ、エレッタに勝利した。
失った物も、大きかったけれどね…。でもそれは戦争だったから仕方ないと言えば、仕方ないのかもしれないわ。
フェアロもスレディアもエレッタも、戦争が終わってしばらくはそれぞれの国の復興にみをやつしていたわ。
私自身が言うのもおかしいことだけれども、当時の英雄として語り継がれているらしいのが私と、ヤトノ、レイシ、エディル、ノレ、レナシアね。
私達はただ、戦争を止めただけなのだけれど…ちなみにこれは初代パーフェクティオ隊のメンバーでもあるわ。
今でも生き残ってるのはエルフであるレイシ、エディル、それと私のみね…。そうそうロスト、レイシは貴方の知ってるレイシ・テイリアで合ってるわ。
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「まあ、話はこんなところね」
ユアの話を聞き終えた後、ロストは驚愕の表情を浮かべていた。まさか身近にいた人物の名前が出てくるとは思わなかったのだ。ユアは知らなかった事が意外であると首を傾げる。
「あらロスト、知らなかったの?」
「お、おい…レイシの爺さんが100年前の戦争に関わってたというのは初耳だぞ」
「言ってなかったのねえ…というか、貴方も100年前の戦争については詳しくは知らなかったのかしら?」
ユアは本を取り出しながら言った。どうやら100年前の戦争について書かれている本のようだ。ユアはその本をロストに差し出す。読め、ということなのだろうか。
「レイシ爺さんやエートから掻い摘んで聞いたくらいだ。エートはヤトノ、という英雄の孫らしいからな」
ロストは本を受取りながらぺらぺらと本をめくる。エートという名前を聞いた時にユアは何かしら反応したようだが、ロストはあまり気にしなかったようだ。
「ロスト君、レイシさんって人はロスト君のお祖父ちゃんだったりするの?」
ララはロストに尋ねるが、ロストは首を傾げる。
「さあ、しかし、あの人エルフだったのか…」
ロストとレイシに血縁関係がある、となるとロストはエルフの血を引いているという事となる。レイシがエルフである事も知らなかったのかとユアは「あの馬鹿、さては何も教えてないわね…」とロストに聞こえないように呟いた。
ルンはまじまじとロストを見つめるが別にエルフ特有の尖った耳ではない。
「あんた、水属性しか扱えないのよね?」
「……そうだが」
ロストはまじまじと見つめられ後退りしながら答える。ルンは後退りするロストに「なんで逃げるのよ」と不服そうである。
「本来エルフの血族はいくつかのマナ属性を持っていることが多いのだけれど、ロストにはその兆候もないから、恐らくエルフの血が流れてるとしても微弱ね。ロストはほとんど人間よ」
「そう言われると、レイシ爺さんとの関係が尚更気になるところだが…」
ユアの言葉にロストは考えるようにするも、これ以上考えても無駄だと悟ったようだ。諦めたように首を横に振った。
「まあ、まずはテス洞窟に向かいましょ。こっちであってますよね?」
「ええ。あってるわ」
ルンは地図を見ながら指をさした。ユアはルンの指さした方向を見つめて頷いた。
「ここから北東にしばらく歩けばテス洞窟よ。行きましょう」
ユアに続いてロスト達は歩き始めた。リイルアを出て、街は遠くなっていく。暫く歩いていると草原にモンスターが何体か現れるはずだ。
敵意を感じたユアは周囲を見渡す。
「敵ね、気をつけましょう」
ユアは大剣を抜き、迫ってくるモンスターを1度横薙ぎに飛ばした。モンスターが飛ばされた先にはロストとルンがいた。
「て、手荒いんだな…行くぞ、魔神剣!はっとおっ!」
「少ないわね…えいっ!やあっ!まだまだ!ね!」
ロストはユアの多少強引なやり方に驚きつつも、構えた両手剣で飛ばされてきたモンスターを倒す。剣で1、2撃与えて技を加えた程度ではあるがロストに多少力がついてきているからなのかモンスターは消え失せた。
ルンの方は技も使わずに大鎌で斬り伏せた。モンスターは2人の前に倒れ、ララはぼけっとその様子を見ていた。
「凄い…私の出番なかったよ!」
「ララ、油断大敵だ。」
「大丈夫だって、周囲にモンスターの気配はしないよ」
ロストは注意するも、ララは周囲を注意深く見渡した。どうやら本当にモンスターはいないようだ。
「早くテス洞窟に行きましょ。でないと余計に疲れるわ」
『ルンの言う通りだな、さっさと洞窟を抜けようぜ』
チャールはララの肩の上であくびをしながら言った。ルンは「あんたは1歩も動いてないでしょうが!」とデコピンをした。
『うー…』
「はいはい、そろそろ着くわよ?」
ユアは見えてきた洞窟を指さす。ロストは顔を上げてやっとか、と言うようにため息をついた。
「洞窟の中もモンスターが蔓延っているわ、注意して行きましょう」
ユアの助言に耳を傾けつつ、ロスト達は落盤している一般用通路ではない方へと進んだのであった。
続く