テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー   作:sinne-きょのり

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チャプター23:少しの軋み

 ユアが目を覚ました時、チャールだけが目を開けていた。

 いつの間に誰かが看病したのだろう、ルンの止血は終わっており、ソルの方も体のあちこちに包帯が巻かれていたりした。

 軽く周囲を見渡せば、モンスターが近寄らないように軽い結界のような何かが張られており、ぼんやりとした今のユアの思考では誰がそれをやったのか分からないでいた。

 

『やっと目を覚ましたか。どうしたんだ急に倒れて』

「……少し、昔を思い出しただけよ」

 

 ユアは俯いて言った。チャールはユアとは知り合って長いわけでもない。正確に言うとチャールからすれば長い付き合いなのだが100年前の戦争の英雄の1人であるユアにとっては付き合いが長いとはいえない。

 ユアのいう昔は、きっとチャールも知らない途方もない昔の事なのだろうとそれ以上は追及しなかった、が一つだけチャールには気になっていたことがあった。

 

『なあ、ユアには弟がいたのか』

「…っ。ど、どうしてそう思うの」

『倒れる前に言った事は覚えてないのか。お前まるでロストを弟扱いしてたぞ。見た目も相まってまるで本当の姉弟に見えた』

 

 顔が似ているとはチャールも思っていた。しかしチャールにはロストとユアに直接的な繋がりがあるとは思えなかった。

 だからユアに弟がいたのならば、似ているロストに重ねてみていたのではないかと聞いてみたのだ。

 

「…昔の事は忘れたわ。そろそろロスト達も起きるから、出発の準備をしましょう」

 

 ユアは立ち上がってはぐらかすように言い、チャールはいつもこうだ、とため息をついた。 

 彼女と出会った殆どがユアの過去や本音を探ったが、彼女はそれを明かさなかった。

 誰も、彼女の本当のところを知らない。

 

『気を張りすぎるなよ。お前がダメになったら、若い奴らまで引き摺られる』

「ご忠告、感謝するわ」

 

 周囲に寝そべっているロスト達を見て、チャールも普通に地面に立っていたことからユアはようやく気づいた。どうやらこのあたりは地面が濡れている訳では無いようだ。

 まずは1番疲労の無かったであろうララを起こし、その次にロストを起こした。

 ソルとルンは無理には起こさなかったが、眠ったおかげかある程度は回復していた。

 ルンの傷口もユアが思ったほど深くなかったようで、ユアはルンの様子を見て「よかった」と零した。

 

「…ララ」

「私が何を言いたいか、分かるよね?」

 

 ソルはララから目を逸らした。言い辛いようでララは困ったように頭を掻く。理由がある筈だとララは言った。理由も無しにソルが自分の元を去るわけが無いと信じている。

 ロストはそんな2人を見て、レイナの事を頭に浮かべた。

 レイナは襲撃をした者達について行ったが、ソルはそうではない。寧ろ襲撃した者達の仲間と思われるレティウスに捕まり暴行を受けていた。

 

(レイナとソルの件は確実に違う…ソルはララに敵意を抱いていない)

 

 レイナとの別れ際がロストの頭をよぎる。

 どこか思わせぶりで、しかしロストに冷酷な言葉をレイナは投げかけた。

 

「ララ…僕は、ララの本当の弟じゃない」

「…誰かに、そんな事吹き込まれたの?確かにソルにも私にも記憶が無い。本当に姉弟かなんて、私にもわからない…っでも、ソルは私の大切な弟だよ!」

 

 ララに言われソルは「ごめん、ララ」と零した。ララには何故ソルが自分に対して謝るのかが分からなかった。

 

「…どうしても、僕は、僕のことが、認められない…」

「…」

 

 ソルの言葉にララは何をどう言えばいいのか、とソルが何を考えているのかが分からないせいで口を閉じてしまった。

 目を覚まし、その光景を見ていたルンは痺れを切らしたようであった。そもそものルンやユアの目的はエレッタへ向かう事だ、まだフェアロに留まっている時間はあまりないとルンは思っているのだろう。

 

「…貴方は結局、どうしたいの?あんた自身は自分の事を認められないとか言ってるけれど、あんた自身を認めてここまで探しに来たララの好意まで踏みにじる気?」

「…そうじゃない、そうじゃない!僕はララの重荷になりたくなくて」

「もうなってんのよ」

 

 ルンの冷酷な言い方にソルは怯んだようだった。

 ララには何故ルンがこうも冷たい言い方をするか分からなかった。ロストはルンの言いたい事も少し分かるようで、目を伏せた。ユアは心配そうに見つめていたが何も言う事はしなかった。

 メテオスはソルの精神状態があまり良いと思っていなかったからかルンを抑えようとしたが容易く振り払われてしまった。

 

「ルンちゃん、そんな言い方は!ソル、そんな事はないよ、安心して…?」

 

 ララはソルが責められて聞いていられなかったのかルンを非難するように睨んだ。ルンはそれを気にもとめず続ける。

 

「あのね、ララ。私やユアさんにはもっと先に目標があるの。ここで立ち止まってる暇なんてないわ。それに、ララは良いじゃない、きょうだいが見つけられて。ロストのきょうだいはまだ見つかってないのよ?その上ロストはそのきょうだいに冷酷な言葉を投げ掛けられたみたいじゃない。ソルだっけ、あんたもよ!こうやって心配して駆けつけてくれるお姉さんがいて、良いじゃない」

「……ルン?」

 

 ルンの様子がおかしい。ユアは長らく彼女を見ていたからかすぐに気が付いた。

 ルンは何故か、きょうだいに関する部分に過剰に反応しているようにユアには思えた。

 ララとソルはルンの気迫に押されているため気付いていないだろうが、チャールは『まずいな』と言った。

 メテオスとロストにはユアの焦りの理由が分からないようだ。

 

「どうして自分を否定するの?認めてくれるきょうだいがいるのに!優しい優しいお姉さんがいるのに!」

「……どう、したの、ねえ、怖いよ…」

「ルンちゃん!やめて!そんな、そんな言い方って、無いよ…」

 

 ソルは耳を抑え始め、ララはルンを見て叫んだ。メテオスはソルを心配するように背中を撫でた。

 ルンは血走ったような目をしていたのを見て、ララはルンは本来このような事言わないと思った、しかし今そのルンの言葉が大切な弟を傷つけた事は事実だった。

 

「…ララ、落ち着け。取り敢えずはここで止まっていても意味がない。ルンもだ、今ここで言い争ったってどうにもならない。次の街へ言ってひとまずゆっくり休め、お前は疲れてるんだろう」

 

 そこへロストが口を挟んできた。

 彼は流石にこの状況は傍観する事は出来なかった。

 ソルも既に精神的に余裕が無い雰囲気であるのに、更にルンにここまで言われてしまったのだ。会話を一度切る事が適切だと判断した。仲間内で口論をすることは望ましくない。

 

「…そうね、ごめんなさい」

「早く先へ進みましょう。メテオス、ソルを頼めるかしら」

「おう…ってソル、お前ララとオレ以外のやつわからないよな」

 

 ここまで話して、そう言えばソルに自己紹介をしていなかったとメテオスは思い出す。

 

「…そういえば、まだ自己紹介、してなかったね」

 

 ソルはロストを見て、ロストは「あー…」とソルを見つけてからを振り返った。

 ロスト達は自己紹介をする間もなく全員休息を取ってしまっていたのだった。

 

「言われてみればお前は俺達の事を知らないか。俺はロスト・テイリアだ。お前の姉に世話になった」

「私はユア・メウルシーよ」

「…私は、ルン・ドーネ。さっきは、悪かったわ」

 

 ルンは先程冷酷な物言いをしてしまった手前、どうやら恥を感じてしまっているようだった。ユアはまだルンは精神的に未熟な故、仕方ないと思うもソルの方も精神的にララやルンより遥かに幼く思えた。

 しかしユアには、どちらが悪いとも言えないのだ。いくらソルの精神が幼かろうとルンはそれを知らない、察する事が出来ていない。

 先程の口論は互いに何も知らなかったが為に互いに地雷を踏みあってしまったようなものなのだ。

 

(私達は、もう少しお互いの事をしっかり知るべきなのね…でも、私は…)

 

「僕はルシオン・オンリン。ララからはソルって呼ばれてる…宜しくね」

「ああ、宜しく。ユアさん、次の行先は」

 

 ロストに話を振られたユアは洞窟の出口を見てから少し考えてこう言った。

 

「そうね、この出口からだと…普通にフェアロ・テスフェ港へと向かえる筈だわ。テスフェからはエレッタ、スレディアそれぞれの国に繋がる船が出ているはずだもの」

 

 ロストはユアに地図を見せてもらい、どうやらテスフェに向かうまでは途中に大きな森や山、洞窟などは見つからないようだ。

 そうであればここから真っ直ぐにテスフェへと向かうのみである。

 

「ロスト君、私達結構遠くまで来たんだね」

「この程度で遠くなど言ってたらエレッタはどうなるんだ。外国だぞ」

「あっそっか」

「フェアロは旅行船が発達してないんだもの、無理はないわ」

 

 船でも使わない限り他国へと向かえない為、殆どのフェアロ国民は国の外へと出た事がない、とルンは前もって知っていた。

 ルンもフェアロを出た事が無いため実際にエレッタやスレディアを見たことがない。

 ましてや田舎とも言える村に住んでいたロストやララ、ソルは海すら見た事が無いであろう。 

 この中で海を見、船に乗り、エレッタへ直接向かった事があるのはユアしかいないと思われる。

 

「オレ、エレッタに行ったことあるぜ」

「メテオス…意外ね。貴方が行ったことあるなんて」

 

 メテオスはララと同じ村の出身。ララと共に育ったと聞いていたので、エレッタに向かった事があるというのはユアにとっても予想外だったのであろう。

 

「まあ、昔に…見学程度だけどな」

「…まあ、行先ははっきりしてるなら、私達はそこに向かうしかないわ!ね、ユアさん」

「そうねルン。もう元気そうなら、今すぐ出発してもいいかしら」

 

 ルンは「大丈夫です!」と大鎌を肩に抱えた。

 メテオスやソルも準備は出来たようだが、ソルはまだあまり活動的な事はできないようだ。

 

「僕も…力になれたら良かったんだけど」

「無理だけはするな。メテオス、いいか」

 

 ロストはまだふらふらしているソルをメテオスに支えさせる。ララはソルを見て心配そうな表情をしたが、今は前に進もうとした。そうしなければ、彼のプライドを傷つけてしまうと察したのだ。

 テス洞窟を抜けた後は、フェアロ・テスフェ港に向かうだけだ。

 

続く

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