テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー   作:sinne-きょのり

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チャプター2:親友エート

「…はぁ…」

 

 ロストは重い足取りで隣のエートの家までやってきた。

 この時間だとまだ朝が早いものの、畑仕事をしている人は外に出ていた。放牧もされており、あさからフェアロ・リースはどことなくにぎやかだった。小さな子供達はまだ起きる時間ではないので、広場の遊具には誰もいない。

 

「エート…起きてるか?」

 

 ノックをした後にロストは反応をうかがった。二階建ての家の中からはドタバタと音がしている。と、その間に扉が開いた。出てきたのはエートではなく妙齢の女性だ。

 

「ごめんなさいねぇ、エートが騒がしくて。それにしてもどうしたんだい?こんな朝早くから」

「…少し、エートに相談したいことがあって…」

「そうかい。あまり無理するんじゃないよ。あんたの母さん、あんたとレイナちゃんの事を心配しながら亡くなったのだからさ」

「…はい」

 

 出てきた女性はエートの母親である。エートの母親は若々しい見た目をしていて微笑みを浮かべている優しげな人物だ。ロストの母親とも交流があったためロストも彼女の人柄はよく知っていた。

 

「ああ!母さんでなくていいから!すまんロスト!」

「エート…お前寝てたんだな…すまん」

「いや、別にいいさ。で、お前から来るなんて珍しいな…さては、レイナちゃんと喧嘩したろ?」

 

 慌てて出てきたエートが母親を玄関から家の中に呼び戻して代わりに自身が玄関に立つ。その次に出てきたエートの言葉がロストに突き刺さる。真っ先にレイナの事を聞かれるとは思っていなかったのだ。これから話す事ではあったものの、エートの母親がすぐそこにいるのは話し辛さを感じてしまっていた。

 

「はぁ…その、此処で話すのもなんだから、さ…」

「なになに?あっ一緒にシェルフィールの森いかね?」

「…シェルフィールの森…?なんでだ?」

「気分転換だよ。ほら行くぞ。グミとか買ったら行こうぜ。森の入り口で集合な」

「あ…」

 

 ロストとしてはただ場所を変えたかっただけである。

 そのままエートは家を出てしまった。残されたロストは途方に暮れかかったが、このままこの場にいては何もないと思い、ショップをまわった後にエートのもとへと向かうことにした。

 レイナの様子がおかしかったこと、レイナが家からいなくなったことをエートに伝えようとも思ったためだ。この村の村長であるレイシにも伝えた方がいいとおもったが、その前にエートと話すことにしようとロストは思った。

 

「まずは、家に戻って武器をとってこなくちゃだな」

 

 ロストは一旦家に戻り、母親が置いていた軽めの両手剣を手に取った。

 母が使っていた武器を、今ではロスト自身が使っていた。とはいっても、今回のようにエートに誘われた場合にしかモンスター討伐のためにシェルフィールの森へ向かっていない。

 シェルフィールの森というのはフェアロ・リースのすぐ近くにある世界樹のある森だ。なかには巨大なセレン湖という湖があり、その湖底には神殿があるという。

 ロストはあまり興味がなかったが、レイナはその話を聞いて湖に飛び込みたいと言い出し母が止めなければ実行していたであろうと思い出して少しだけロストは笑みを浮かべた。

 

 だが、そんな母親も、そしてレイナも。今ここにはいない。

 

「…エートが待ってるな…早く行こう」

 

 手荷物を確認したロストは、エートの待つシェルフィールの森へ向かった。

 

************

 

「…なあ、エート」

 

 シェルフィールの森に着き、その入り口で待っていたエートにロストは声をかけた。

 

「なんだロスト?ちゃっかりグミとかも用意してるところを見ると、お前もその気だったんじゃないのか?」

 

 エートのその言葉に、言い返せずにロストはため息をついた。ロスト自身は行くとは一言も言っていなかったが、これもエートなりの気遣いなのだろうと思い、その言葉に従っただけなので、エートが思うほど乗り気ではないと言い訳をする気も起きなかった。

 

「まあ、確かにそうだが…お前の誘いを断ると後々面倒なことになるとは思ったからな」

「まあまあ、ストレス発散だと思って思いっきりやろうぜー!なんなら競争するか?」

「競争?」

 

 エートの提案にロストはため息まじりに言った。エートの唐突な行動にロストが巻き込まれる事自体は日常茶飯事である。レイナにエートに、ロストは周囲の人間に振り回されてばかりで村長には心配されていた。

 

「ああ競争だ。俺とお前、それぞれでこの森の中を通って倒したモンスターの数を数えるんだ!期限は日没までな」

「…面倒くさそうだなあ…というか、それ俺の体力もつのか…?」

「本当にお前体力ないなあ…そんな時は得意な水の術でどうにかなるだろ?なんならなんだ。ここで俺と少しだけ手合わせをするか?」

 

 エートはそう言いながら剣を構えた。片手で軽々と扱える片手剣だ。ロストも面倒くさそうにエートと同じように剣を取り出した。両手剣を握る手が少しだけ震えている。

 

「お前…まさかそれも片手で持てないのか!?」

「うるせえ…ごちゃごちゃ言わずに…早くやるぞ。それにこれは一応両手剣だ、片手で持つもんじゃねえよ」

「わかった。じゃまあまずは物理での打ち合いな!」

 

 エートにそう言われロストは構えた剣をエートに向かって振り上げた。と、エートはロストが行動するのが予想より早かったのかあまり避けることができていなかった。さすがにロストはエート相手なので怪我をあまりさせないように注意していたが。

 

「とっとと…いてぇな!!!手加減してるのか!?」

「してるに決まってるだろ…」

 

 ロストは面倒臭そうに「もういいだろ」とロストは剣を鞘に戻そうと思ったが、エートは不服らしい、顔を膨れさせてもう一度構えを取る。

 

「いいやまだだ。もう少しウォーミングアップだ!」

「ま、まだやるのか…?」

 

 そして今度はエートの方からロストの方へ向かい、剣を振り上げる。しかし大口を叩く割にはエートの剣筋はぶれており、ロストには遅く見えた。

 

(そうだな…確か、防御の仕方は…)

 ロストはそう頭の中で考え、エートの剣を自らの剣で次々と受け止めた。エートはそれにさらにムキになり攻撃を続けるが、ロストにその攻撃は通らなかった。

 

「くっっそー!!!まだだ、まだ終わらないぞ!!」

「俺…これで体力使いきりたくないんだが…」

 そんなロストの言い分も全て「ウォーミングアップだから仕方ないだろ!」というエートの言葉の前に負けてしまう。

 

「はあ…まあいい(俺にとっては、今度は回避の練習だな…)」

「あー!お前また何か考えてるな!」

「俺に攻撃を当ててから言え。やるんだろ?さあやるぞ」

 

 ロストもエートが断ればうるさいのはわかりきっているので、あまり言い返しをせずに渋々とエートのワガママに付き合うことにした。

 

「行くぞー!やあっえいっはあっ!!!」

「…」

 

 今度はロストはエートの攻撃を避け始めた。エートの勢いに乗った攻撃は全て空振り、またエートだけが無駄に疲労する状態になってしまっている。

 

「あー!!!なんでだ!なんで当たらないんだよ!!!」

「そう言われてもな…あっ次は術技の的にしていいか?」

「的って!的ってハッキリ言っただろロスト!!」

 

 ロストは「こんなことに付き合わされているからこっちにも権利があるだろう」とエートの言い分を無視して再び剣を構え、エートの方を向いた。エートは諦めたように剣を構えた。

 

「ただし!俺も戦うからな!」

「わかった。じゃあ行くぞ。魔神剣…!」

 

 ロストの振るった剣から放たれた衝撃波はエートに向かっていき、エートはそれを慌てて避けた。

 

「お、おっとと…危ない危ない…次はなんなんだ?」

「そうだな…水の戯れよ…スプレッド」

 

 次にロストが剣を地面に突き刺し、詠唱を唱えると同時にロストの足元に魔法陣が現れ、詠唱が終わると同時にエートを水の飛沫が襲う。ロストの唱えたスプレッドは水属性の技なのだ。

 

「あわわわ!?突然唱えるなよ!」

「あ、すまん」

 

 エートは慌てた様子で術の範囲から抜け出し、ロストに詰め寄った。

 

「まったく…本当お前は水属性の術得意だよな…それに、詠唱方法はその型なのか?」

「まあな、昔習った型がこれだったんだ」

 

 エートの言う型というのは、術を唱える方法である。

 これには幾つかの方法があり、ロストのとった手法である武器を地面に突き刺し魔法陣を描く方法はその一つである。

 

「でもそれ、地面がないときはどうすんだ?」

「モンスターに直接魔法陣を書き込むらしい。母さんが昔言っていた」

「そ、そんなこともできるのか…」

「まあ、俺は地面に魔法陣書かなくても詠唱できる型は知っているが…」

「なんだ、それ使わないのか?」

「俺が知る限りは二つ。空中に魔法輪を描くか、詠唱破棄をするかだ」

「なるほどなるほど…は?」

 

 エートはロストの言葉が正確に理解できなかったのか聞き返すように言った。ロストは母親から術に関してのイロハは習っていたようだが、エートはそうでもなかったようだ。

 

「…お前、それでも英雄ヤトノの孫か?」

「…だって、ばあちゃんも父さんも母さんも…戦い方に関しては何も教えてくれなかったんだ」

 

 英雄ヤトノ。というのは100年前の戦争で活躍した人間の1人だという。彼は病弱にも関わらず、戦争で他の味方と共に戦い、戦争を終結させたという。

 エートはそんな英雄の血を継ぐ子供なのである。しかしエートはその反面に自分の先頭経験が圧倒的に足りない事を気にしていた。

 

「…そうなのか。じゃあ説明するな」

「ああ、頼む」

 エートは立っているのもなんだと思い、座った。ロストもそれにつられて座る。

 

「魔法輪というのは、地面に描く魔法陣と似たように空中に描くんだ。これは武器にトンファーを使う術師が用いるって言われてるな。他にも様々な武器でも出来るが、剣でやるときは剣では難しいから指先で描くハメになる。その為には剣をわざわざおかなければならないから魔法陣を使う人が多いんだ」

「…なるほどわからん」

「わかっとけ。で、詠唱破棄というのは、一時的にマナを大解放したときにできる大技だ。今なら状態が整っているから見せてやろうか?」

 

 ロストが立ち上がり再び戦う姿勢に入ると、エートは苦笑いをしたが、諦めたように立ち上がり防御姿勢に入った。

 

「よし…行くぞ」

 

 その言葉の終わりと共にエートはロストの解放されたマナの衝撃波に飛ばされそうになったがなんとかして耐えていた。

 

「スプレッド…スプレッドスプレッドスプレッド」

「ちょっ!?まてまてまて!?こっ怖いから怖いから!?」

 

 エートは必死にロストの攻撃から逃げ、ロストはスプレッドを無詠唱で放ち続けている。無表情でスプレッドと言い続けるロストの顔が怖い。

 エートは恐怖をみた、と後に語ったという…。

 

************

 

「はあ…はあ…。ロスト…」

「…なんだ…?俺はもう疲れたんだが…」

 

 ロストはその場に座り込み、エートは大の字になって倒れこんでいる。あの後、ロストのマナの解放が終わると同時にエートは疲れ、ロストは力を使い果たし倒れそうになっていたのだ。

 

「まったく。無理すんなよ。ほら、アップルグミとオレンジグミ。これで回復しとけ」

「ああ、グミか…ありがとうな」

「よしじゃぁ、本題のモンスター狩りに行くぞ!」

 

 エートは突然元気になって立ち上がった。何度も的にされたというのにまだ体力は結構残っているらしい。

 

「はあ??」」

 

 疲れ果てていたロストはもう、諦めたような表情で言った。

 

「だってさ、まだ日も明るいんだぜ?折角だからモンスター狩らないと損だぞ!」

 

 エートはにっこりと笑い「行くぞ」とロストを無理やり連れて行くことにした。

 

続く




次の話から下書きして出しますね。やっと書き終わりました。
本家で言うならばチュートリアルの部分ですね。
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