テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー 作:sinne-きょのり
「シェルフィールの森にいるモンスターはなんだったか…。まあいい。エートに負けるのもなんだからな…」
ロストはエートと別れた後、1人でシェルフィールの森を歩いていた。
森の中は進んでいくごとに風が強くなっていたりする。これはこの森の最深部にシルフがいるから、という理由らしい。
「とはいっても、シルフに会ったことはないがな…と」
ぼやきながら歩いていると、ふとロストは足にむにゅっとした感覚があることに気づいた。何を踏んだのかとロストは一瞬考えるが、足元を見たくないと目を逸らしそうになる。
「きゅっ!!」
「…ん?」
しかし、何らかの鳴き声を聞いたロストは何か嫌な予感がして足元を覗く。そこには、ロストの足に踏み潰され怒りを表したモンスター…オタオタの姿があった。
「さて…逃げるか」
怒ったオタオタはロストに向かって攻撃を繰り出そうとし、ロストはそれを避ける。逃げようとしたがオタオタが仲間を呼んだのか沢山のオタオタがロストの元へとやってきた。
「や、やばい…くっそ…。魔神剣っはってえええい!!」
ロストは周囲に集まってきたオタオタをまずは薙ぎ払うように剣を振り、距離をとる。しかし、魔法陣を描く程の余裕はなく、剣での直接な戦闘を強いられることとなった。
「体力がもつか……くっこうなるなら最初から足元見てればよかったな……はっ!」
オタオタから逃げながらも追いつかれそうになったら剣を振り、何体かのオタオタは倒すことは出来ていた。
「大人しく……してろ!」
その一閃で最後のオタオタを倒すことは出来たらしい。周囲に何もいない事を確認すると、ロストは「はあ……」と言ってその場にへたりこんだ。
「疲れた……こういう時のために持ってきた材料で料理でも作ろう……サンドイッチなら簡単だしな」
ロストは材料を取り出して簡単なサンドイッチを作り、一人黙々と食べる異にした。持ってきていた水筒の水を飲み、ふう、とため息をつく。
今頃エートはかなりの数のモンスターを狩っているだろうか、だが彼の剣筋では難しいだろうかと思いながら一息ついていた。
「それにしても、この森ってこんなに広かったか?ここまでに1度もエートの姿を見てないが」
ここまでに一切エートの姿、そして声や痕跡を見ても聞いてもいない。
ロストはふとそれが気になった。これまで何度かエートと共にシェルフィールの森に来たことはあったがこのように姿、声、痕跡が一切ないことはありえなかった。
「何かあったのか……?」
サンドイッチを食べた後、ロストは立ち上がり、エートを探してみようと周囲を見渡した。別方向に向かったので姿が見えるわけはないかと思っていたが、遠くから微かに声が聞こえた。
「ぎゃああああああああ!!?」
「エートっ?!」
エートの声だ。とロストは即座に判断した。今この森にいる人間はロスト自身とエートのみであるはず。それに、ロストは何年も共にいる友人の声を忘れてはいない。
「くっ……!」
何かあったのであればエートが危ない。ロストは焦りながらエートの声がした方向へ走った。
(なんだかんだいいつつも、大切な親友だ……!何かあったら……もしも、危ない目にあっていたら……!)
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「エートっ!」
「ロスト……!良かった……」
ロストがエートを見つけた時、エート左足を引き摺りながらも何かから逃げているようだった。ロストはエートに駆け寄り、左足の怪我を確認すると、エートに何があったかを尋ねた。
「一体何があったんだ」
「ロスト、こうしてる場合じゃないんだ!オタオタが!でっけえオタオタが!」
「でかいオタオタ……?」
エートの言っている事に首を傾けていると、ズシンズシンと何かが近付いているような音がした。
そっと、音の方向に振り向く事にする。
「な、な……」
エートの言う通り、巨大なオタオタがそこにいた。周囲の木はその巨体によって倒され、倒された木がロスト達に襲いかかる。
「なんだこれは!?…エート走れるか!?」
ロストは思わず叫んでエートの方を見やる。痛々しい左足の怪我がロストの視界に入る。どうも走れるようには見えないがロストの筋力ではエートを抱えることはできない。
「わっわかんねえ!」
「いざと言う時は俺がおぶるが今は頑張ってくれ……!広い場所に逃げるぞ」
「あっああ!」
ロストはエートの手を引いて周囲に木があまりないひらけた場所へと逃げていく。こうすれば倒れてきた木に押し潰される事なく戦えるだろうと考えた。
「ここなら戦えそうだな…まだやつが来るにも時間がありそうだ…」
「そ、そうか。…っ!」
エートはひと安心したと同時に左足に激痛を感じたようで、また左足を抱え始めた。
「足が痛むのか?」
「あ、ああ…」
これ以上はエートに負担が掛かると判断したロストはエートの左足を見て手をその左足にかざした。
「ロスト…?」
「応急処置程度だが…聖なる水にて、癒しを…ヒーリング・ウォーター」
すると、ロストが手をかざしたあたりから水色の魔法陣が現れ青い柔らかな光がエートの左足を包んだ。
「ありがとな」
「どういたしまして。さてと、もうそろそろ来るな。隠れておいてくれ、これ以上の治療は実際にやらないと無理かもな」
「わ、わかった!」
そう言ってエートは近くの木へと少しは痛みの和らいだ左足をまだ抱えつつも隠れた。ロストは巨大なオタオタというものを待っていた。
足音よりもはるかに音きい音が聞こえてきた。ロストは腰にさしてあった剣を抜き、両手で構えた。
(来るなら来い…!!)
目の前に巨大なオタオタが現れた。ロストは剣を構えたまま巨大なオタオタへと向かっていった。
「いけーロスト!」
「お前は黙っとけ…はあっ魔神剣!」
ロストは巨大なオタオタを一度斬りつけてから魔神剣を放つ。巨大なオタオタは怯みもせずに、ロストへと突進して来る。
「危ないぞ!!」
「分かっている!…だが、確かにこれは下手すりゃ大怪我もんだな…」
ロストは一度その攻撃を避けたものの、再びの攻撃に備え避ける構えをとる。
エートは親友が戦う様を見ていることしか出来ないのか、と歯がゆい気持ちになったが、今ここで自分が出ても足でまといにしかならないと分かっているため何も余計な事はしないようにと遠くで身を隠した。
「どれくらいやれば倒せるんだ…?」
「ロスト!スペクタクルズを使うんだ!」
「…これか」
ロストはエートに言われた通り用意していたアイテムの中からモンスターの特性や弱点を調べる事のできるアイテム、スペクタクルズを取り出し、巨大なオタオタに向かって使用した。
「なるほどな…急所を狙えば行けるということか…」
「いっけー!ロスト、デカオタを倒せ!」
ロストはスペクタクルズで見た巨大なオタオタ…デカオタの性能を見た。残り体力は少なくはなかったが、ロスト1人で倒せるくらいだった。
「エート、もう少し待ってろ…はっとおっ!」
デカオタに対してひと蹴り入れ、きりつけた。デカオタは少し怯み、そこに畳み掛けるようにロストは技を繰り出す。
「水流斬!!はあっ……!!」
水のマナを纏った剣を振り、ロストはデカオタに突き刺した。デカオタは体を震わし、ロストを投げだす。
「がぁ……っ!!」
「ロストっ!!!!」
ロストは地面に叩きつけられたものの、その場に剣を突き刺した、魔法陣を描いた。
水色の魔法陣は展開され、淡い光を放つ。
「諦めるか……水の戯れよ……スプレッド!!」
ロストの唱えた術はデカオタの動きを一時的に止め、ロストはその隙にデカオタに止めの一撃を入れる。
「うおりゃあああああああ!!!」
その一撃はしっかりとデカオタに突き刺さった。今度こそデカオタの動きは止まり、マナの光がデカオタから発せられる。
「はあ……はあ……」
デカオタの消えたところからは一つの水色をした石が見つかった。見たことのある気はするものだが、いまいちロストは思い出すことが出来なかった。
「(そういえば、これまでにモンスターを倒した時も落ちていたような…)なんだこれは?」
「さあな…にしても今のすごかったなロスト!……とと」
ロストはとりあえず石を荷物の中に収め、駆け寄ろうとしてこけそうになるエートをみて苦笑いを浮かべる。
「治った訳では無いんだからあまりはしゃぐな。もうこれで満足だろ?怪我をしているなら帰ろう」
ロストは軽くエートを抱えるようにするが、本人もよろけかけてしまう。
「お前も疲れてんの?まあ、うーん…仕方ないなあ」
エートは左足をまだ少し引きずりつつロストの方に腕を乗せた。
「(結局、相談することが出来なかったな…)っておい、何してるんだ」
「いやーあんまり歩けないんだなこれが」
エートはへらっと笑っていうものの、先程の疲れもあるのだろうとロストは思った。
(俺も疲れてるんだがな…)
自分の方がエートよりも走り回った自信のあるロストは少し不満だったものの、怪我をしているのであれば仕方ないと思う事にした。
「もしモンスターに襲われたらどうするんだ」
「ロストが倒してくれるんじゃねえの?」
「お前は…」
そんな風に2人にとっては普段と変わらない会話を交わしていた。
しかし、村の近くに来た時2人の足は止まり、呆然と立ち尽くすこととなる。
「な、何なんだよ、これ…」
エートは力無く呟く。ロストもすっかり言葉を失ってしまっていた。
村が、燃えている。
逃げ惑う人々、村を誰かが襲ったのだろうかとロストは思案するが、今朝のレイナのこともあって頭が回らない。
「おいロスト!!どうにかするぞ!お前水属性だろ!?どうにかしてくれよ!!」
「あ、ああ……」
ロストは力なく返事し、先に走り出したエートを追って燃えている村へと駆けて行った。
この事件が、1人の普通の青年であったはずのロストの運命が動き始めるきっかけとなるのとは、ロスト自身考える事はしていなかった。
続く