テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー 作:sinne-きょのり
「村長!村長!!」
「エート……それに、ロストではないか……やっと帰ってきてくれたのか」
エートは燃える村の中、村長であるレイシ・テイリアを見つけると、すぐに傍に駆け寄る。エートを追って来たロストは消せる分の火を自らの術を使って消し、道を作っていた。
「はあ…はあ…。爺さん、これは一体、どういう事だ」
レイシはロストの親族らしく、同じファミリーネームである。母から詳細は聞いてないが、祖父かなにかであろうとロストは推測している。
それはともかく、レイシは息絶え絶えのロストに申し訳ない、とでも言うような表情を浮かべ、まだ燃えている部分を見ながらこう言った。
「ロストに似た、別の何者かがこの村に近づき『オリジナルを殺す』と叫んでいるのじゃ…。ロスト、ここは危ない、逃げるのじゃ」
レイシは真剣な眼差しでロストに向かってそう言った。その真実はロストを動揺させるのには十分だった。
「……!?そんなこと、できるはずないだろう!!」
レイシの言葉にロストは取り乱したようにそう言った。彼の言葉通りでは、ロストのせいで村が襲われたような思いを感じるものであった。
「…」
ロストの隣のエートは少し震えた様子で少し火から目をそらしたような状態であった。ここでロストは思い出した。エートは過去に酷い火傷を負ってしまっていて火が苦手であることを。
「…エート」
静かに話しかけられ、エートはロストが何を考えているか推測しようとしていた。
「ろ、ロスト……ひ、火が」
「大丈夫だ。俺には水属性の術がある。恐らく相手は火属性だ。」
ここまで大きな火をつけることが出来るとあれば、相手は恐らく強い火属性のマナを持つ人間。
ロストは不安そうな顔をするエートに「大丈夫だ」と精一杯励ましてみた。
「エートは爺さんを連れて逃げてくれ。これは恐らく俺の問題だ」
「ロスト……!!!」
レイシは火の奥へと進もうとするロストを引き留めようとしたが、ロストはそれを振り払って走って行った。
不安の表情を浮かべるエートとレイシを残して。
「くっあいつはなんで……」
エートはこの時、恐怖心で動かない上に怪我をしているその足を恨みたくなった。この状況でロストを一人にしておくことは良くないとわかっているのだろう。
「信じるしかなかろう…。信じるのじゃ。奴は死にはせんとな。親友であるお主が信じるのじゃ」
レイシの言葉に、エートはただただロストが無事に帰ってることを願うしかなかった。
ロストは、燃え盛る村の中自らの術で消せる部分の火は消しながら進んでいた。見慣れた景色が崩壊していく様を見て、ロストは歯がゆく思っていた。
(エートの両親は無事だろうか、フリーヌおばさんやフレイヤは…)
墓は大丈夫だろうか…そこには、ロストの母親の墓もある。しかし、それを確かめる暇はない。
「オリジナルだ…オリジナルが来てくれた!!」
誰かの声が響いた。誰か、というよりも聞きなれた声、いや、他人が発しているとは思えない程にそっくりな…ロスト自身の声だ。
確かにその声は、ロスト自身の声に聞こえた、しかし、ロストは今一言も発していなかった。
「誰だ……!!」
ロストは見渡す限りの火を消した。だが火の球…恐らくファイアボールだろう…がロストめがけて飛んでくる。
「そこか!」
ファイアボールの飛んできた方向に向かってロストは魔神剣を放った。その方向には誰もおらず、ロストは気配を追おうとした。先程聞こえた声は、誰なのか。
「くっ…俺に用があるんだろ…。関係の無い村の人達を襲うな!」
「アハハハっ!!そうそう!ボクはオリジナルに用があってきたんだ!でもさあ、オリジナルがここにいなかったのが悪いんだよ」
「どこにいるんだ!出てこい!」
声の主はどこから出てるかわからない。ロストは前、左、後ろ、右と視線を移していく。
気持ち悪いくらいに自分と同じその声。その声の主が誰なのか、ロストは考えることもしなかった。
「出てきてあげるよ…ほらほら!!」
声と同時に炎が燃え上がる。ロストはいつの間にか炎に囲まれ動けない状態となってしまった。
「お前は……!?」
ロストは炎の中から出てきた人物をみて、固まってしまった。いや、固まるしかなかった。
それは、自分だったからだ。
自分…ロストと同じ顔を持つ、違う人間という方が恐らく正しい。その表情は普段無表情のロストが浮かべるようなことのない、嘲るような表情を浮かべていた。
「アハハハハっ!!!間抜けな顔だねオリジナル!!!」
「オリジナル…?お前は一体何を言って…」
ロストは剣を構え、警戒を解かないままで自らと同じ顔を持つ人間を見つめていた。
「まあいいや。自己紹介をしてあげるよ。ボクはロスト、そう、君だよ…君の一部なんだよ!」
「はあ?どういう事だ!」
訳が分からない。ただただ目の前にいる彼はロストの調子を狂わすだけだった。
ロストと同じ顔を持つ青年は、片手剣を構えると、ロストに襲いかかってこようとした。
「そう来るか!はあっ」
「ふふふふふ!はあっ!」
「……!?」
ロストは剣をすんでのところで受け止めるもうまくいかずに弾かれてしまう。剣だけは手放さずに、体制を立て直そうとした。
「一体……なんなんだ!」
「まだわからないわけ??ボクは君だよ。全く、オリジナルは飲み込み悪いねえ、せっかくあの場所から生き残ったのに」
「があっ!!」
ロストに似た青年は体制が崩れているロストの腹目掛けて拳を勢いよく突き出した。腹部を殴られたロストはうずくまるようにして殴られた部分を抱えて唸る。
「う、うあ……」
「ははははっ!!!オリジナルを殺せばボクが成り代われる…あの人がそう言ったんだ」
青年がそう言ってロストにトドメを刺そうと炎球をロストに向かって放とうとする。
ロストは必死に足掻こうと水属性の術を唱えようと指先を動かした。その時だった、彼女の声が聞こえたのは。
「何をしてるの。04」
「え……」
ロストは目を見張った。まだ痛む腹部を支えながらなんとか立ち、出てきた人物を見つめた。
「あーあ。01かよ。こっから楽しいところだったのに」
「私は少なくとも、こうするとは聞いてないわ。02に言われた任務は、こうではなかった」
茶色の長髪に、緑色の瞳。そしてロストと同じ顔。
レイナ。そう言いたかったけれどもロストの喉から声は出なかった。なぜレイナが彼といるのか、それが疑問で仕方なかった。その上、レイナの喋り方はロストといた時とは違い冷たい雰囲気を纏っていた。まるでレイナではないみたいに。
「…なんだよ、お前やっぱオリジナルに情があるんだろ!」
「そうは言ってない。オリジナルはいずれ殺すわ。けれど今殺しても面白くないでしょ?」
「そうだけどさー」
(殺す…?どういう事だ。レイナ、何を言っているんだ?)
レイナは表情の消えた瞳でロストを見つめ、04と呼ばれた青年と共に去ろうとした。
「帰るわよ」
「へーい」
「ま、まて……レイナ!」
ロストはやっとの事で声を絞り出した。
レイナは振り返ると、少しだけ悲しそうな表情を見せた、がしかしその表情はすぐに消えた。
「私はもうあなたの知ってるレイナじゃない。もう…あなたとは一緒にはいられない。さようなら」
「レイナ……?レイナ、レイナ!!!!」
ロストは必死に呼びかけたがレイナの姿は消えていく。
燃える村の中、ロストの叫びが虚しく響く。焼け焦げた家々は無情にもレイナ達の去っていった方向を塞ぐように倒れてきていた。
「なん、でだよ……なんでだよ!レイナ!」
(悲しまないで…………ネ……)
「どうすれば…いいんだ」
(わたし……が…ちか…かす)
呆然とするロストに声が聞こえた。
ロストはその声を特に気にすることなく、静かに術を唱えた。
「水脈よ、我が言霊に従い…燃えさかる業火を鎮圧せよ」
ロストの足元に巨大な水属性を示す水色の魔法陣が展開される。と同時にフェアロ・リース全体を包むほどの大きさの雲が集まってくる。
何秒と立たない内に、雨が降ってきた。そしてロストの体は力を失い倒れ、魔法陣は消えた。
冷たい雨は村を襲っていた炎を消し、ただ降り注ぐだけだった。
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「どーしてあの時、オリジナルを庇ったのさ。せっかくボクがオリジナルを殺そうとしてたのに」
「別に。今回ロストを殺すことは算段になかったもの。それに、あなたが彼を殺すとは決まってない」
フェアロ・リースを離れた所で、二人は会話していた。
レイナは冷静に04に向かって話している。それが04にとっては不満で仕方ないのか、むー…と唸っている。
「昨日はあんなにも取り乱した感じだったのに急に変わりやがって。オリジナルを殺してボクがオリジナルになってやる!」
「私は別に彼を殺したところで彼に成り代われないのはわかってるから口出しはしないけど、それ以外のクローンが黙ってないのではないの?」
レイナの言葉はもっともだ。と04は肩を落とした。彼らの目的は一体何なのか。それはまだ明かされない。
「そういえば『あの子』の方はどうなったのかな」
「さあね、あっちはあっちで違うオリジナルのいる場所だから知らないけど。襲撃は上手くいったんじゃないの」
04はそう言ってフェアロ・リースではない方向を見る。その先にはフェアロ・エルスという別の村がある。04達の言葉通りならば、恐らくその村も何者かによって襲撃を受けているのだろう。
「とにかく、あの人のところへ戻るか。01、もう後戻りはできないぞ。ボクはオリジナルを殺す」
「ええ。私はもう彼のところには帰らない」
レイナはフェアロ・リースを振り返ることなく、去っていった。それはもう、彼女自身には思い残したことはないと自分に言い聞かせているようであった。
04はそれを見ながらつまらなそうに共にどこかへ消えて行った。
続く