テイルズオブメモリアー君と記憶を探すRPGー   作:sinne-きょのり

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チャプター6:ラリアン・オンリン

 叫び声とともに、ロストは誰かにぶつかられたのを感じた。実際にはぶつかられた、というよりも押し倒されたような状態だが。

 顔の上には何か別のものが降ってくる。

 

「がはっ!」

「ごっごっごめんなさい!」

 

 聞こえたのは謝罪する少女の声。

 一瞬視界が消えたものの、ロストは顔の上に降ってきた生き物を振り払って声の主を見た。生き物を振り払った時に「ぎゃっ」と何か声のようなものが聞こえたことは無視しておこう。

 彼女は、水色の瞳に黒い髪を持つ少女。胸元からは青色のペンダントがぶら下がっている。ロストはその少女に既視感を覚えた。

 

「君は……」

「あ、私はラリアン・オンリン。そっちの子はチャールって言うの。ごめんなさい、急いでて…」

 

 ラリアンと名乗った少女は、ロストがつい振り払ってしまった子犬のような、狐のような謎の生き物を拾って肩に乗せながら立ち上がっていた。

 後ろを気にするようにした後に、何を見つけたのか驚いた顔をした。

 

「そ、そんな!」

「なあ、どうしたんだ…」

「あ、だ、大丈夫ですではっ」

「お、おい!」

 

 ラリアンは走り去っしまった。ロストの声も聞かずに。

 慌てて立ち上がるも不意に伸ばした手は空振り、ロストはため息をついた、その後ろからまた誰かの足音がする。

 

「な、なあっそこの兄ちゃん!ねえちゃんみなかったか!?黒い髪のっ!水色の瞳のおれより背がこんな高い人!それとっあのっ青色のペンダントしてるのっ!」

 

 金髪に黄色の瞳をした少年が息を切らしながら走ってきた。先ほどの誰かから逃げていた少女の様子から恐らくこの少年は彼女を追っていたのだろうとロストは推測した。

 

「ああ…先程向こうに走り去って行った…。だが、ボロボロじゃないか…まさか、一人であの森を抜けてきたのか?」

「……」

 

 ロストの問いに、少年は俯いた。少年の格好は服は木の枝にでも引っ掛かったのかところどころ破れており、どことなく土汚れなどがついていた。

 

「危険だから、俺が村まで送っていってやろうか……?見た事がないから、恐らくエルスの人間だろ」

 

 ロストがしゃがんで少年に言うが、少年は首を縦に振らない。むしろ横に大きく振った。

 

「兄ちゃん、ララ姉ちゃんを……助けて欲しいんだ。ねえちゃん、村が襲われたのは自分のせいだってっ一人で飛び出していったんだ!」

「!?」

 

 その言葉に、まるで自分のようだ。とロストは思った。

 

「…俺の名前はロスト・テイリア。お前の名前は何と言うんだ」

「ロエイス…ロエイス・ドーリア。なあ、兄ちゃんがララ姉ちゃんを助けてくれるか?」

 

 縋るようなロエイスの言葉に、ロストは頷かざるを得なかった。一瞬だったもののロストは彼女の事が気になってしまっていたというのもある。

 

「ああ。俺も、あの子のことが心配だ。だが、お前は…」

「へへっなんとか1人で帰るさ。それか今頃母ちゃんと父ちゃんが森に入っちまってるかも。じゃあな!ロスト兄ちゃん!絶対、絶対ねえちゃんを助けてくれ!」

「わかった。気をつけろよ!」

 

 ロストは手を振って、ロエイスが森の中へ消えていくのを見送った。モンスターに襲われていないかと心配になったが、すぐに森の中からゲンコツの音がした。ロエイスは今頃親に怒られているのだろう。

 

「心配してくれる親がいるというのは、いいな」

 

 ロストはとりあえず、彼女が消えた道を辿ることにした。

 

(そういえばさっきの子、ラリアンと名乗ってたが…ララというのは愛称か?)

 

 少女が名乗った名前と少年が探していると言っていた名前が違ったが、恐らく少年が言っていた名前は愛称であろうとロストは推測した。

 少年の言った特徴と一致する部分も多い。信用性は高いだろう。

 

「この街道の先には…どんな街があるんだ?」

 

 ロストはフェアロ・リースの周囲以外は白紙とも言える地図を広げた。

 

「そういえば、近所のおじさんから聞いたことがあるな…フェアロ・ピーアっていう宿場町があると」

 

 この街道はその街に続いているのか、とロストは思った。

 ならば、先程の少女は一度休むためにもピーアへ向かうはずだ。と歩き始めた。

どうにも彼女の存在が引っかかる。

 何か手がかりになるかもしれないと思ったのだ。何も覚えていなかった7年前より前の自分のこと。それがあの少女との出会いで何か思い出すきっかけがつかめそうな気がしたのだ。

 

「今あの子は…どこに」

 

*********************

 

 地の精霊が守りし宿場町 フェアロ・ピーア。

 ここでラリアン・オンリン…ララはロストの予想通り一息ついていた。

 フェアロ・ピーアはのどかな雰囲気で気に囲まれてはいるがリースより広く、人も多い。宿場町という名の通り宿屋が多いので、恐らく観光目的の人も多いのだろう。

 その為、フェアロの王都であるフェアロ・リイルアよりも活気があるという。

 

「ここまで来ればロエイスも来ないでしょ」

 

 ララはそう呟いて腕を伸ばした。肩に乗っていた九尾の狐のような小動物…チャールはそっと頭の上に移動する。

 

「ロエイスはまだ7歳…。過酷な旅になるかもしれないから連れていくわけにはいかないの」

 

 頭の上のチャールは小さく背伸びするようにして尻尾を揺らした。眠そうな、退屈したような目をしている。

 

「ごめんね、チャール退屈でしょ?」

 

 ララの言葉にチャールは首を横に振って否定を示した。そのチャールの行動にララは少し微笑んで、周囲を見渡した。この街に来ること自体は初めてだが、この街には知り合いがいる。

 あまり気は乗らないがその人物を尋ねることにしたのだ。一休みもしないでこのまま進むのは困難だと思ったのだろう。ララは頭に乗っていたチャールを腕に抱え、目的の人物の元へと向かった。

 

(そういえばさっきの人、なーんかどっかで見た記憶があるような気がするんだよなあ)

 

 ロストの事を少しだけ、気にかけながら。

 

********************

 

「ここがフェアロ・ピーアか…」

 

 ララがピーアに着いてしばらく後、ロストもピーアに着いていた。

 リース以外の場所に来るのは初めてで、自分の見たことのない景色に少しだけワクワクしていた。

 

「っと、まずはあの子を探さないとな…」

 

 黒色の髪に水色の瞳、そして胸元に下がる青色のペンダント。それが先程の少女…ララの特徴だ。

 まだそう遠くに離れてはいないはず、彼女はきっとまだこの街にいるはずだとロストは考えたのだ。

 

「あの、すみません」

 

 まずは、適当に街にいる人に話しかけることにした。ロストが話しかけたのは金髪碧眼の小さな少女だ。

 

「どうしたんですか?なにかお困りですか?」

「え、えっと……人探しを…」

 

 小さな女の子と話すのは初めてだった為、挙動不審になっていないかロストはふと気になってしまった。しかし目の前の少女はそれを気にした様子はなく、しっかりとした様子でロストを見上げていた。

 

「どんな人を探してるんですか?私でよければ力になりますよ」

「黒い長い髪の毛に、水色の瞳で…あと、青色のペンダントを付けてる女の子だ。確か名前は……」

「もしかして…ララさんですか?」

「し、知ってるのか?」

 

 少女はロストの言葉に「はい」と頷き、周囲を少し見渡した後に「こっちです」とロストの手を引いた。

 

「すまない…俺の名前はロスト・テイリアと言う。君は」

「リリース・エールテオルと言います。このピーアの領主の娘です」

「ピーアの領主の……」

 

 領主の娘がなぜ普通に出歩いていたのかロストは気になったが、それ以上にララとこのリリースという少女が知り合いであったことにビックリした。

 

「あっここの宿屋にララさんがいます。では、私は父の手伝いがあるので」

「ああ、ありがとう」

 

 リリースはすぐに一礼をして去っていってしまった。ロストは宿屋をみて、看板が少しだけきになった。その理由は店の名前だ。

 

「ノームの穴場……?」

 

 ノームとは、地を司る大精霊の名前だ。その名前が宿屋についているということは、ここはノームにゆかりがある場所なのだろうか、と思案を巡らした。

 ロスト自身はノームについてあまり知らないが、母から多少は聞いていた。

 

「まあいい、あの子に会うのが先だ」

 

 ロストは宿屋の中に入った。そこまでは良かった。しかしその途端、誰かの叫ぶような声がした。

 

「やめてっ!!!」

 

 その声は、聞きなれた。という程でないが聞いた覚えのある声だった。

 宿屋に入ったばかりのロストが目にしたのは、チャールを手につかんだ病的に細い長身の男性と、その男性に反抗した態度を取っているララ。そして男性に対して怯えた態度をとっている人々だった。

 チャールは男性の手の中で必死にもがいていたが男性はその手を離さない。人は口々に言葉を発していた。

 

「レティウスだ」

「そんな…あの人が!?」

「少し前にあった時はあんな風ではなかったぞ?!」

 

 レティウス、と呼ばれた男性は周囲のオーディエンスの言葉を聞いて睨むように見た。威圧力があり、ロストも少し身構えた。

 向かい合っているララも少し目を逸らしかけていた。流石に威圧を感じたのだろう。

 

「ああぁ?お前らなんて知らないなあ」

「ひいっ!」

 

 レティウスが一般人に手をあげる。チャールを持っていない方の手で斧を持っていた。ララは急いでそれを阻止しようとするも武器を手に持っていない。

 

「やめろ!!」

 

 いつの間にか、体が動いていた。

 

 レティウスの斧を受けそうになっていた人は静かに目を開ける。無事だと気づいた時には腰が抜けていた。

 

「なんだあ?」

「お前こそ何者だ…突然人に手をあげるとはいい奴には見えないんだが」

 

 ロストが腰にさしていた剣を抜き、レティウスの斧を受け止めていた。いつの間にかロストの体はその人物を助けようとすぐに動いたのだ。

 

「君は……」

「また会ったな。……大丈夫ですか?」

 

 ララがロストの姿に気づいて声をかける。ロストはすぐ後ろにいる腰を抜かしてしまった人に優しく話しかけた。ロストは恐らく、レティウスの斧を受け止めることで精一杯だ。ララは何とかできないかと思うが、その前にレティウスがその手を緩めた。

 

「ったくよぉ、楽しい楽しぃところだったぁのにさぁ」

「なんだ引くのか?その前にその手にある小動物を離してくれないか」

 

 レティウスに向かってロストは強気に言った。

 「ちっ」とレティウスは舌打ちを打つ。ロストが気に食わないのだろう。

 レティウスの手の中にいるチャールはロストに小動物と言われた事が微妙に嫌だったのかムッとしたような表情を浮かべたのがロストにも分かった。

 

「こいつぁ珍しい奴だからなあ…ひょいと返すわけにゃあいかんのさぁ」

「チャールを返して!チャールはそんなんじゃないもん!」

 

 ロストに助けてもらい、自分も負ける訳にはいかないとララも強気にレティウスに向かって叫ぶ。

 

「……あまり、店の中で戦うことは好まれない。外で戦ってもらえるか?」

 

 ロストはそう言った。周囲はそのロストの言葉に驚愕の色を示した。レティウスは何を思ったかニヤリと笑い。こう返した。

 

「ああぁ、いいぜぇ?」

 

続く

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