輝弥が地球にいた頃   作:虚ろな星屑

2 / 3
桜の花散る夜の闇、橘薫る少年の秘め事。

病室の中で俺、赤城是光はとある友人のことを考える。

 

橘の宮、本名橘 輝弥という名前の友人は、とても奇妙なやつだ。

俺みたいな目つきの悪い嫌なやつでも気兼ねなく話しかけてくるし、

名門の、それこそ平安学園の初年度組のように、下手をすればもっと高貴な血筋の生まれ、

そのくせ不真面目で、人をからかうことに全力をかけている。

ころころ変わる表情も、いつでも人を小ばかにしているようで。

それでもたまに、ほんの少しだけ、優しい目をする。

自分がなりたいとは思わないが、女にだってモテるだろう。

妙なところで紳士だし、メガネを外して真面目な顔してれば普通にイケメンなのだから。

アンバランスでミスマッチ。

友人曰く俺しか感じないらしい奇妙な違和感は、なぜかとても気になって。

俺は、もう何年もアイツとの縁を切れずにいる。

 

「なんなんだろうな、この気持ちは」

小さいころから笑えない自分が嫌いだった。

それでもいいといってくれた唯一の男。

あいつは、俺の自慢の友人だ。

わかりきったことを言葉にするたび、心の中にうまれるくすぐったさ。

とても、とても心地いいその想いに、身を任せることが怖くて。

でも、悪くないと思えている自分がいる。

こんなこと、アイツには絶対に言わないが。

 

横目で、アイツの絵が揺れる。

そろそろ寝ようと、右手でコントローラーを操作して窓を閉める。

暖かな春の日差しが、もうじき冷ややかな夜の風に変わるだろう。

それはなんだかとても寂しいことに思えて。

「……ああ、ヒマだ」

咄嗟に、そんな言葉でごまかすのだった。

 

明日、字でも書いておこう。

筆も、黒い絵の具もあるのだから、お礼にあげる字を。

目を閉じた瞼の裏に、泣きながら謝る女の姿が見えた気がした。

 

そのころ。

「報告を聞きましょうか」

豪華な女物の着物を着た少年が部下に問う。

「はい、かぐや様」

彼の名は輝弥。

彼女の名は、輝夜。

夜に輝く、闇の住人。

 

「金融部門、重工業部門が予定通りに計画を遂行中です」

「開発部門とIT部門から予算増額の打診が来ています」

「京都本家から再三帰省の要求が、もう誤魔化せません」

「情報部統括と外務部委員会の連名で産業スパイの密告」

「内閣府より暗密部への依頼です、内容は御客様の確保」

 

凄まじい速度で仕事を片付けていく。

仕事中笑わないこの少年は、与えられた役目に辟易していた。

「本家からは突っぱねなさい、どうしてもというなら東京まで来るように、と」

というか、性別が男の自分に婿あてがってどうすんだか。

と本気で思っている少年。

 

「はあ、ほんと、ろくなものじゃないわね、女ってのは」

戸籍上女の少年は、今日もまた闇に君臨する。

 

手に持つレポート、そこに映る御客様に、また処理済みの印を記す。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。