守りたいんだ 作:未完
「胡桃!逃げろ!!」
俺は叫んだ。今すぐにでもあいつのところへ、そう思い向かおうとするが、その瞬間ドアを押し開けられそうになった。ここから俺が離れたらきっとこのドアは開いてしまう。
「早く!そいつから離れろぉ!」
今すぐにでも駆けつけたいのに動けない歯がゆさを感じながら胡桃に呼びかける。しかし、彼女は腰が抜けてしまったのか動かない。そうしている間にも化け物は、
かろうじて後ずさる胡桃。その先で指先がシャベルに触れた。
「あ…」
そんなことは御構い無しに胡桃へ化け物の魔の手が伸びる。
「うわあああぁ!」
彼女はシャベルをつかみ、そして化け物に向けて振り回した。
次の瞬間血飛沫と共に、
首がとんだ。
この光景は忘れることはできない。
あの日はやたらとサイレンが多かったような気がする。しかし、当然そんなことは気にも留めなかった。当然だろう。人は自分が事にかかわらないと物事を認識できない節がある。
あの日は大学の講義が昼前に終わった。講義で固まった体を両手を挙げて伸ばす。
(今日はバイトも無いし、どうするか)
家でやることがないわけでもないのだが...
大学から出た俺は上を見上げる。雲ひとつ無く空が透き通っていた。
これだけ清々しい晴れ方をされると、なんとなく、家に帰る気が失せてしまった。インドアに過ごすのにはもったいない天気だ。
(どっか行くかー)
駐車場に向かう。そこには俺の愛車がある。親に借金して買ったスポーツカーだ。中古だけど。
車に入りエンジンをかける。心地の良いエキゾーストノートに包まれながら行き先について考える。
(高校にでも行くか?)
・・・まだ授業中か。車のオーディオに付いた古めのデジタル時計を見た。時刻はちょうどお昼の時間、思ってた以上に早かったな。
(腹も減ったし、まずは食事からか)
そう思いつつブレーキとクラッチを踏んだ。
「やってきました、リバーシティ・トロン!」
と言うほどのことでもないのだが、ちょこちょこ来るし。まあ、あれだ、青空テンションなのです。
そんな青空の下をドライブしてたどり着いたのは、リバーシティ・トロン・ショッピングモール。
ここは結構大きいショッピングモールなので、様々な専門店が立ち並ぶ。
だが、まずは何より昼飯を食おうか、食欲に正直になって目指すはフードコート。
フードコートもたくさんの店舗が並ぶ。だが、そんな中迷わず料理を注文する。
カツ丼だ。
あのとろけるような卵と豚肉の旨みはたまらない。料理を受け取り席を探す。いち早く食らいつきたいのだが。平日の昼間なのに人が多い、どこに座ったものか。
「おーい」
その時手を上げて俺を呼ぶ人物が。呼ばれたのだからそっちへ向かおうか。
「ここで合うなんて偶然だね。」
屈託のないイケメン笑顔で俺に笑いかけてくる。この人は絶対もてる、と八割の人が断言できるんじゃないだろうか。そんなイケメンは大学の先輩である。
「そうですね。今日は午前で終わりですか?」
向かい側の席に座る。
「うん、まあね。君も?」
「そうですね」
無事に座ることのできた俺はカツ丼にかぶりつく。口の中に玉子の甘みと肉汁が広がる。お口の中が天国や。
「一人で来たのかい?」
・・・せっかくカツ丼で良い気分になっていたのに現実に引き戻されてしまった。あんたが言うと嫌みにしか聞こえない。
「嫌なこと聞かないでくださいよ。相手なんか居る訳ないじゃないですか。あなただって一人でしょう?いや、むしろなぜ女を連れていない。」
「あいにく僕にも相手がいなくてね。でも、あんな車乗ってるんだからモテるんじゃないか?」
二人でご飯を食べつつ談笑。他愛もないことを話す、それはただの日常の光景の1つ。
「そうそう、サークルのことなんだけどさ今度なんかまたイベントやらない?」
「イベントですか、いいですね~。具体的にはどんなのを?」
実はこの先輩は俺の所属するサークルのリーダーだったりする。みんなを結構しっかりまとめてるすごい人だ。顔もよくて人柄も良いとか格差社会。
「いや、まだなんにも決まってないんだ。なにかやりたいなと思っただけだから。何かいい案ないかい?」
と言われてもな・・・うん、特にないっす。
「リーダーに任せますよ、そういうのは。」
カツ丼が最後の一切れになってしまった。
「そうかい、何か考えついたら連絡してくれよ。」
「了解です。」
食べ終わってしまった。最後の一切れが愛おしい。先輩もそばを食べ終わったようだ。
高級そうなメタルバンドの腕時計を先輩が見る。持ち物までクオリティ高ぇ...
「そろそろ、俺は帰るかな。君は?」
「俺は少しぶらぶら回ってから帰ります。」
昼飯のゴミを捨て、先輩とは別れて別行動、になったのだが、別れ際にこんなことを聞いてきた。
「あ、そうそう。もしかしてここまで車で来た?」
「? ええ、まあそうですけど。」
「そうか。帰り道気をつけなよ?この辺で事故あったらしいから。」
「はあ、わかりました」
物騒だなと思いつつ、先輩の忠告を聞き入れる。無事に帰れるのかねぇ...
先輩と別れた後、CDショップへと向かった。好きな歌手のアルバムが最近出てたはず。
そのCDショップへ向かう途中電気屋でテレビを見た。先輩が言ってたのはこれか。どうやら玉突き事故があったらしい。その他にもいろいろな事件のニュースが有った。どれも近いな・・・
無事欲しかったアルバムを購入して店から出る。もう特に寄るところもないし少し早いけどそろそろ帰るかな、なんか物騒だし...と思っていたのだが、
「俺らと一緒に遊び行かなーい?」
「間に合ってるから大丈夫です!ほら、美紀行こう。」
「まあ、そう言わないでさぁ!」
・・・ちょっと帰宅は後にしよう。
CDショップの前で男子三人が女子二人に絡んでいる。何故人の多いここでそんなことができるのか。恥ずかしくないの?恥ずかしいよね?
周りの人たちは関わりたくないのか嫌そうな顔でちらりと見るだけで通りすぎてゆく。
「あ、こほんこほん、君たち止めないかいこんな道の往来で。」
俺は男女の間に割って入る。
男子は知らないが女子二人は制服から『巡ヶ丘学園』の生徒なことがわかった。
「この子たちは行かないって言ってるじゃん、やめたげなよ。」
「あ?何だお前、関係ないだろ」
ぎらりと睨んでくる男子。髪も染めてなんだか物凄く....しょぼい。こんな奴らがまだ生息していたとは。
「この子たち俺の後輩なんだよね。ってことで関係ある。大体こんな所でナンパとか、もう見てるだけで恥ずかしい。」
「んだとテメェ!?」
と血気盛んな男子は俺の首もとをつかみ持ち上げた。あーチンピラ怖い。ため息をつきたくなる。
「ぶん殴られてぇのか?」
「殴られたくはないな」
仕方がないので首元の腕をつかむ、思いっきりと。
「!?」
驚いたのか奴は手を引っ込め俺を睨む。
「...覚めちまった行こうぜ」
「え、ちょ待てって!」
男子三人はどこかへ行ってしまった。
「あの・・ありがと「なんなんですかあなた!」
ショートカットの子の言葉を遮って茶髪の女の子が不審そうな目でこちらを見ている。すごい警戒されてるな。
ええ、一応俺この子たち助けた、んだよね?
「何って・・・大学生?」
「そんな事聞いてません。なんで私達のとこに来たんですか?」
「圭、ちょっと失礼だよ。」
ショートカットの子が小声で茶髪の子を諭そうとする。がしかし、
「だっておかしいでしょ、知り合いでもないのにあの場面で入ってくる?美紀はこの人と知り合いなの?」
「違うけど・・・でも助けてくれたんだし・・・」
「甘い!それで取り入ろうって魂胆なのかも・・・」
こそこそ話してるけど結構聞こえてくるのですが。まあ確かにいきなり変な男(自分)が来たら警戒するか。ナンパの後だし。
「その制服巡ヶ丘だよね?」
声をかけられてビクッとする茶髪少女。
「ええ、まあ・・・」
「俺、そこの卒業だからそのよしみで、ってことじゃダメか?」
納得してもらえるだろうかこんな理由で。まあほぼ本当なのだから仕方がない。
「・・・そうですか」
多少は警戒が解けたならいいが。
「あ、あの、ありがとうございました。」
うって変わってショートカットの子がお礼を言ってくる。しっかりしてる子だなぁ。
「いや、いいって。大したことじゃないし。しかし、珍しいな。高校生がこんな時間にここいるなんて。」
学校が終わるのは普通四時過ぎくらいじゃないだろうか。まだ時刻は昼すぎだ。それが疑問だったので関わったというのも無きにしもあらず。
「今日は早く授業が終わったので・・・」
なるほど早帰りか、いいねぇ。俺も昔はそれで一喜一憂したものだ。ほんの一年前のことだけども。あ、そうだった。
「もしかしてもう部活始まってたりする?」
「?ええ、まあ陸上とかサッカーとかはやってましたけど。」
陸上、か。良いことを聞いた。
「そっか、まあ、なにはともあれ気をつけろよ。いつもと時間が違うとさっきみたいな変な奴もいるかもしれないし。なんか今日は物騒だから。」
事故ってたし。暴動あったし。
「あ、はい、ありがとうございます。」
女子高生二人と別れたあと駐車場へと向かう。
茶髪の子の目には疑心の色が残ってる気がしたが仕方がない。別段、俺悪いことしてないし。
しかし、早帰りか・・・
(まだ急いで帰るほどの時間じゃないな。)
腕時計を見て、目的地を家から切り替える。
(たまに、顔出せって言われてたしな・・・ちょうどいいか)
「よし行くか。」
リバーシティ・トロンから出ることにした。車に乗り込む。まだ家には帰らない。
(あいつの走りを見るの久々だな)
少しの期待を胸にアクセルを踏み、クラッチを上げる。ドライブの続きだ。
目的地は『巡ヶ丘学園』
初SSです至らぬとこもありますがどうぞよろしくお願いします。
誤字脱字の指摘、批評お待ちしてます。