すぷら!   作:カイ

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 あ、そういや主人公はケンです。剣先イカから名前取りました。ヤリはもちろんヤリイカ。

 しばらく出番はないですがブドウとマツもイカの名前です。


ガチマッチとイカボーイ 前

 

「ごきげんイカがですか?ハイカラニュースの時間だよ!」

「こんちゃ~、シオカラーズで~す」

 

 

 午前十一時。特にすることも無くブイヤベースでブキを眺めていたケンが広場に向かうと、イカスタワーの巨大モニターから軽快な音楽が流れだした。ハイカラシティのアイドル、シオカラーズが出演しているハイカラニュースの時間である。

 

▼ このニュースは四時間に一度行われ、その都度現在のバトルのマップや、ショップのブキの追加状況、フェスの予告などを報道している。

 

 ちなみに生放送であり、ショップの反対側にある建物の窓側のスタジオで撮影している。放送の合間にこっそり覗いていると、たまにシオカラーズは手を振ってくれるのだ。こういう仕草も彼女たちが人気アイドルである秘訣なのだろう。▲

 

 ちなみにヤリは一日一回は必ず行っている。二人に手を振ってもらわないと眠れないなどと言っていた。意味不明である。

 

 よくそれに付き合わされるケンだが、彼もファンであることは事実なので毎回照れながらも小さく手を振り返している。一度ヤリが照れていることを指摘したことがあったが、その日、ケンはヤリが敵チームになると恐ろしいほどのエイム力で執拗にスナイプをしかけてきたので、以降触れなくなった。

 

 

「現在のレギュラーマッチのステージはコチラ!」

「じゃらじゃらじゃらじゃら・・・ばん!」

 

 

 レギュラーマッチのステージはハコフグ倉庫とホッケフ頭のようだ。

 

 

「マジか……物凄い狙撃天国じゃねぇか」

 

 

 どちらもケンが得意とする遠距離射撃がしやすい縦に長いステージである。いつもなら意気込んでロビーに赴くところだが、今日はヤリとガチマッチに行く約束である。ケンはわかりやすく溜息をついた。

 

 そこにちょうどヤリが現れる。十一時に広場で待ち合わせをしていた。

 

 

「なーに溜息してんだよ、ケン」

「……ああ、ヤリか。遅いぞ」

「いやー、ギリギリまで寝てた! ……ってああ、そういうことね」

 

 

 でへへと憎むに憎めない顔で笑みを浮かべるヤリ。そのままイカスツリーの巨大モニターを見上げて、ケンが溜息を吐いた理由を悟った。

 

 

「現在のガチマッチのステージはコチラ!」

「じゃらじゃらじゃらじゃら・・・ばん!」

 

 

 ガチマッチのステージは、タチウオパーキングとモズク農園だった。

 

 

「ん、ガチマッチのほうも両方ともいいんじゃない? これ」

「まあ、そうだな」

 

 

▼ タチウオパーキングは自陣と敵陣の高度がとても高く、ステージの中央に行くには降りていかなければならない。中央を上から見下ろせる位置に陣取ると、敵は全く意識してない位置から狙撃を受けることとなるのだ。

 

 モズク農園は逆に高低差がほとんどなく、正方形となってる。中央から、四方に向かって金網が伸びており、意外と金網の上からの奇襲は対応しづらい。とはいえ、遠距離から見れば一目瞭然なので相手が何か行動を起こす前に仕留めることもできる。▲

 

 

「じゃ、今日も元気にいってみよー!」

 

「イカ、よろしくーーー!」

「イカよろしく~~~」 

 

「イカ、よろしくうううううう!!」

 

 シオカラーズの真似をしながら、さぁやるぞ! と意気込むヤリと、ステージの立ち回りをイメージするケン。今日が二人のガチマッチデビューの日である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケンは……今日はリッター(※1)?」

「ああ。スプラ(※2)だとタチウオパーキングでは射程が足らないからな。スコープ付きにするか迷ったが、まあ、大丈夫だろう」

「そっかそっか、俺は今日もシャープマーカー(※3)だ!」

 

 

 ちなみに昨日ケンが使用していたのはスプラスコープ(※2)、ヤリが使用していたのはシャープマーカーである。

 

 ロビーに入ると、いつもとなんら変わりは無いはずの空気が重く感じた。ケンは少し自分が緊張していることに気付く。レギュラーマッチではなくガチマッチの受付を済ませ、対戦相手が確定するまで少し深呼吸をしていた。

 

 ヤリはそんなことはいざ知らず、年相応の笑みを浮かべて、今日自分が活躍するビジョンを描いていた。

 

 

 

 

 対戦相手が決まる。

 

 システムが軽い処理を行っている間、ロビーのモニターに自分たちの名前とランク、そしてウデマエが表示される。息を飲みながら確認するが全員ランクはC帯だった。初心者、またはあまり強くない者しかいないようである。

 

 ケンは最初から腕に覚えのある者と当らないで済んだことに安堵した。

 

 

▼ ガチマッチはウデマエが近い者達が優先的にマッチングするようになっているので、あまりそのような心配はないのだが、人が少ない場合は離れたウデマエの所に入れられてしまう可能性もないわけではない。▲

 

 モニターに文字が表示される。どうやら準備ができたようだ。ケンとヤリは軽く拳を合わせてから、スーパージャンプの着地先を指定してくれる床に従って対戦マップへと飛んだ。

 

 

 

 飛びながら着地先をしっかりと確認する。ステージはタチウオパーキングだった。

 

 着地したらまずイカになって潜伏し、四人で四角になるように並ぶ。これはどうやら、モニターでこの試合を観戦している者達への配慮らしい。イカ状態だとブキや防具がわからず、ギリギリまでドキドキがあってイカしているのだとか。

 

 同じチームメンバーに軽い挨拶を交わしながらケンは後ろに陣取った。一緒に来た自分のパートナーは見当たらない。どうやらヤリは向こうのチームのようである。

 

 

 

 

 一つ目の合図が鳴り響く。チーム全員が一斉にイカからヒトへ。

 

 

 

 

 ────開始の合図。

 

 全員が一斉に地面をオレンジのインクで汚していく。ケンは高台から飛び降りる仲間の道を作るように上からフルチャージしたショットを放った。

 

 ルールはガチマッチの基本、ガチエリアである。

 

▼ ガチエリアとは、ステージのどこかに『ガチエリア』が存在し、エリア内を一定割合以上塗って、確保し、その状態をキープして百カウント続けられたら勝ち、というものである。どちらも百カウントに届かなかった場合は、制限時間である五分を過ぎた時点で、どちらの方がカウントを多く取れたかで勝敗が決まる。

 

 また、確保している際に敵にガチエリアを一定割合塗られてしまうと、カウントはストップされてしまう。この状態から再び塗り返せればカウントは動き出すが、更に塗られてしまうと、今度は相手が確保した状態になる。更にこの場合、ペナルティと呼ばれる、カウントとはまた別の数値がその時のカウント数によって与えられる。

 次にガチエリアを確保した際、まずそのペナルティ分カウントを動かしてから、実際のカウントが動き出すこととなる。つまり余計に確保しなければならない時間ができてしまうのだ。▲

 

 

 一つ、二つと高所から飛び降りていく。飛び降りながら無チャージのショットを横に動きながら連続して放ち、少しでも行動範囲を広げておく。

 

 

▼ タチウオパーキングにはガチエリアが二つある。どちらも占拠しないと確保した状態にはならない。▲

 

 

 仲間たちに少し遅れて中央が見下ろせる位置までたどり着くと、チームのうち二人が既に中央に飛び降りて果敢に敵陣に攻め入っており、もう一人は自陣側のガチエリアを確保しに掛かっていた。

 

 積極的な仲間たち。チャージャーにとってかなり動きやすい展開であった。早速ケンは中央を見下ろし、携えたブキを構える。

 

 

 と、同時に自分に突き刺さる一本の光。反射的にイカに変わりながら体を少し右にずらすと、つい先ほどまで自分がいた位置は緑色のインクが食らっていた。

 

 

(危ない危ない。向こうにもチャージャーがいるみたいだな……)

 

 

 チャージャー特有のエイム時に出る着弾位置を知らせる予測線の動きがゆっくりだったため、奇跡的に避けることができた。

 

 額を冷たいものが落ちる感覚を味わいながらケンは通路の壁に身を隠す。タチウオパーキングで高台の上から対岸までインクを届けることができるのはメインブキではリッター3kのみである。光の出元は同じ高さにいるようだった。向こうもリッター3kを装備しているのであろう。

 

 だが、相手は素人のようである。向こう岸のチャージャーは、既に二発目のチャージを終わらせ、予測線を何度も行ったり来たりさせていた。明らかにこちらの出方を伺っている。

 一発目をモロに受けそうになっていたケンだが、ここで相手の実力がそうたいしたものではないことを見抜く。

 

 

 チャージャーはその圧倒的射程があるとは言え、予測線によりやはり相手にある程度狙っている位置がばれてしまう。

 

 それを隠すために強者たちは、ギリギリまで予測線を明後日の方向に向けておいて、敵の体力を吹き飛ばせるまで貯めてから、対象に予測線を合わせて、撃ち取っていく。『ずらし』と呼ばれる技術だ。高いエイム力が要求される技術ではあるが、チャージャーには必須な技術である。

 

 

 ここまで露骨に警戒されていると逆にやりやすい。見事にこちらに集中しているため、その身を遮蔽物に隠すことなく、晒け出している。

 

 

 何はともあれ、好機である。イカからヒトになったケンは、壁の後ろに隠れたままチャージを始めた。

 

 向こうからも帽子が見えているのであろう。こちらの姿を捉えた相手は壁の無くなった位置に予測線を当て、いまかいまかと待ちわびている。

 

 チャージがマックスまで溜まる。

 同時にケンはその場から跳躍した。

 

 壁で隠れていた相手が、少しの跳躍で一瞬だけ視界に映る。

 

 射撃。

 命中。

 撃破。

 

 簡単に相手をインクの海に沈め、ケンはすぐさま移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ケンが使ったのはずらしの中でも簡単な部類に当たる、ジャンプ撃ちという技術だ。予測線を壁越しに横軸だけ揃え、縦軸はジャンプ一回分下に合わせる。そしてジャンプしたらあとは引き金を引くだけ。

 

 そして何故ケンが相手を素人だと判断したかというと、このタチウオパーキングではとてもジャンプ撃ちが有効だからだ。バカ正直に下を見下ろしていると、わけもわからないまま頭しか見えていないリッターに撃ち抜かれることはよくある。

 ケンは向こうの高台に敵が視認できる時には壁の後ろからあまり出ないことを徹底していた。

 

 少し前にジャンプ撃ちの上手いリッターとこのステージでぶつかり、ボロボロに負けているからである。

 

 

 

 

 一人目を撃破した直後、自陣のガチエリアが確保された状態を示す音と光を発した。ケンは高台から敵陣のガチエリアの状況を確認する。……どうやら先行した二人はどちらもやられてしまったようだ。その代わりに敵も一人しか残っていないようだ。中央には誰も降りてこず、リッターはさっき撃破したので、先行した二人はとりあえず二人撃破してくれたようである。

 

 残った敵を見るとどうやらヤリのようだ。倒した時に食らったのか、オレンジのインクで少し汚れていた。

 

 ヤリはエリアを確保したらそのまま中央に降りていく。かと思えば一心不乱にボムを投げ始めた。どうやらスペシャルが既に溜まっていたようだ。

 

 

 

 ボムラッシュ系のスペシャルは、発動中周りへの意識がおろそかになりがちである。そして、よく一緒に戦ってきたケンは、ヤリは顕著にその傾向にあることを知っている。

 

 ケンは冷静に壁に隠れながらチャージを始め、壁から出ると同時に一瞬でヤリを撃ち抜いた。

 颯爽と二キルを飾ったところで、先行した二人の復活待機時間が終わったようである。ケンのポイントへとスーパージャンプの着地予想マーカーが出現した。

 

 

 

 勝負はまだまだここからである。




なっげぇ!!
スピード感表すの難しいな……。三千文字くらい? でまだ三十~四十秒しかたってねぇぞ……。とりあえず前後編にわけることにしました。


※1リッター3k
メインブキの一つでありチャージャー。全メインブキ中最大の射程を誇る。ダメージも高く、マックスまでチャージすることなく敵を屠れるが、チャージ速度は遅く、またインクの消費がかなり激しい。立ち回りは難しいが非常に強力。サブはクイックボムであり、着弾するとその位置で爆発するボムを投げることができる。直撃なら二発、余波なら三発で倒せる。スペシャルはスーパーセンサーであり、一定時間敵の位置を示す線が表示される。またこれはチーム内で共有される。

※2スプラ(スプラチャージャー、スプラスコープを指していた)
スプラチャージャー
メインブキの一つでありチャージャー。射程は長い。基本的な性能を持ったチャージャーである。チャージがリッターに比べると早い。サブはスプラッシュボム。スペシャルはスプラッシュボムラッシュであり、一定時間インク残量に関係なく、スプラッシュボムを投げ続けることができる。

スプラスコープ
メインブキの一つであり、スプラチャージャーにスコープを装備したもの。サブ、スペシャルは同じ。

※3シャープマーカー
メインブキの一つであり、シューター。射程はそこまで長くはないが集弾性と連射力が高いので、塗り、対人ともに優秀である。サブはキューバンボム。スペシャルはキューバンボムラッシュであり、一定時間インク残量に関わらず、キューバンボムを投げ続けることができる。非常に凶悪なスペシャル。
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