例えば、こんな、あぽくりふぁ ~なんだかしょっぱい冬木の戦争のようです~   作:たんぺい

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三話:正直キャスターだってやっぱりしょっぱい

「何で……何でよ……私の管理する土地で、聖杯戦争なんて……」

 

 

丁度、ライダーが自爆して、海野を半殺しにして決着を付けたその頃。

少女…竹内美香(たけうち・みか)は焦っていた。

 

17歳で両親が急逝、その後土地管理人としての魔術師としてその責務を受け継いだ少女である。

彼女は高校生でありながら、それなりの魔術刻印と家柄を誇る、それこそ、地方レベルで言えば群を抜く資質があったと言えよう。

 

とは言え、根源や何やらと言うものにはあまり興味はなく、家伝の魔術を受け継ぎ、家を潰さない程度につつがなく暮らせば良い程度にしか、魔術について考えていない。

少なくとも、聖杯戦争などと言った、大それたものに手を出す人物ではなかった。

 

しかし、今回の…暴走した聖杯戦争における英霊の無差別召喚。

彼女もまた、巻き込まれていた人間なのだ。

 

…しかも、呼ばれた英霊と言えば…

 

 

「我が輩のティータイムを邪魔するでない!街が少々穴だらけになったぐらいで騒ぐでないわ!」

「神秘の隠匿ってレベルじゃないのよぉぉぉぉ!人的被害0でも物的被害こんな出たら最悪、家が取りつぶされるわぁぁぁぁ!」

 

…尊大な上に、呑気過ぎであった。

 

 

 

さて、そんな事はさておいて。

話を主人公、山本とセイバーの話に戻そう。

 

 

山本はとりあえず、ライダーの事を決着付けた後、どうするかと考えて…とりあえず、土地の管理人の魔術師に挨拶しようと結論付けた。

管理人への早期の相談は手としては悪手ではないし、そもそも、黒幕が管理人じゃ無いなら本来は山本とは目的はかなり近くなる。

そもそも偶発的に参加しただけなんだから、これからの相談も必要になってくるかも知れない。

 

その辺をセイバーに相談した所…

 

「まあ、それで良いでしょうね」

 

と、特に反対されなかったので、その土地を管理する竹内の家へと足を運んだのである。

 

 

そうして、向かった先にたどり着いた2人だったが…とりあえず、その家の様子がおかしい。

 

とりあえず、人がめちゃくちゃ多い。

犬を散歩させている人も居る、ホットドックをかじっている人もいる、ビジネススーツでせわしなくしている人すらいる…

そんな人達が、百人ははくだらないだろうと言う数、せわしなく土地を蠢いている。

 

更に、家の敷地内なのに、何故か家や公園が数多覗いている。

料理屋や靴屋、服屋だってあれば、警察だって存在している。

それだけではない…汽車すら汽笛を鳴らし走っていた。

 

まるで…小さな街がまるごと入ったような、そんな不思議な光景だった。 

そして…

 

「マスター…何語です?これ」

「英語かな、とりあえずここは…景都市と言う街の中に、イギリスかアメリカがまるごとやって来たって感じだが…」

 

…妙に欧米ナイズされていた。

 

 

「訳がわからんが…何かの攻撃かな?にしちゃあ…妙に平和なんだが…」

 

山本は不意に漏らした、そんな時だった。

 

「た、助けてくださぁぁい!」

 

どこからか、日本語の…女の子の声がした。

山本とセイバーは身構え、そしてその助けを呼ぶ声に答えようとした。

 

「行くぞ…!セイバー!」

「はい!片っ端から攘夷ですね!」

「地味に物騒だなお前!ちげえ!あの女の子助けるぞ!」

 

…新撰組の地味に強行な攘夷派だったよな、とセイバーの来歴に頭を抱えつつ。

山本はそんな少女の声のする方向へと足を向けた、その時だった。

 

「うちのキャスターの宝具止めてぇぇぇぇ!とりあえずお家帰してぇぇぇぇ!」

「…お、おう」

「…何のための令呪なんですか…」

「…あ!」

 

…特に、山本もセイバーも力を貸す必要性は、なかった。

 

 

「令呪を1角を以て命ずる、『とりあえず宝具をしまえキャスター!』」

 

カッと彼女の右手が光る。

そうするとどうだろう…右手に刻まれた紋章が3分の1消えて、その魔力はその輝きを放つ。

 

すると、みるみるうちに、その欧米ナイズされた小さな都市がなくなっていき、やや大きなサイズの普通の洋館とその敷地が顕れる。

そこには、山本とセイバーとその少女…そして、

 

「わ、我が輩の『大いなる我が帝国(ジ・アメリカ)』を…マスターと言えども皇帝に対して、無礼で有るぞ!」

 

なんだか尊大な男がふんぞり返って、コーヒーをすすっていたのだ。

 

 

「あ、あー…ジョシュア・アブラハム・ノートンか…あんた…」

 

山本は力なく呟く。

誰だそれはと、セイバーはおろか、そのマスターたる少女までが聞き返す中、その男は実に嬉しそうな表情で返したのであった。

 

「如何にも、我が輩はキャスターとやらで来た…アメリカ初代皇帝、ジョシュア・A・ノートンである!極東から来た若人よ、ゆるりとなされい!」

 

 

山本はそれはそれは見事な苦笑いで返す中、セイバーと少女は顔を見合わせていた。

アメリカ皇帝って何だよ、と。

 

 

 

ジョシュア・アブラハム・ノートン(ジョシュア・ノートン)

 

アメリカにかつて存在した「皇帝」である。

…ただし、自称でしかなかったが。

 

ゴールドラッシュなどの動乱期が終わった直後ぐらいのアメリカ、彼は投資で失敗。

素寒貧になり…精神に異常をきたした。

そして、いきなり「アメリカ皇帝」を名乗りだし、それを新聞社に投稿したのだ。

だが、彼はそれ以上の事は求めず、そして当のアメリカ国民はと言えば…受け入れた。

 

彼を「皇帝」と認め、ただのり用の汽車の切符を渡したり、サイン一つでレストランの料理をただでだしたりと、それはそれは愛されていた、とか。

臣下と言う友人は数多居たが、『部下』は飼い犬二匹だけだったと言う。

 

彼を評価する言葉として、「彼は、誰も奪わず・追わず・犯さない…唯一の皇帝だった」と言われる言葉が残っている。

 

 

 

「…って感じでな、とりあえずそんな危険人物じゃないぞ、その人」

「マスター、無駄に詳しいですね…」

 

山本がセイバーに向かって、簡単なキャスター…ジョシュアの事を解説した。

…ちゃんと説明しないと、下手したらセイバーが問答無用で切りかかりそうだったからだ。

 

そんな事をだまってキャスターのマスターたる少女が聞いていたが、キャスターに向かうとぷりぷりと怒り出した。

…そりゃ、家を閉め出されたら怒るに決まっているのだが。

 

何故いきなり悩んでいる自分を見て宝具を使ったのか、と言うかあの宝具なんなのか、令呪無駄使いしたじゃないか…と、延々怒る彼女だったが、キャスターはマスターに向かって臆面もなく言った。

曰く…お前の為だ、と。

 

どういう事だと、全員からつっこまれる中、キャスターはこう続けた。

 

「マスター、お前さんが…お前さんのせいでもない街の破壊にいちいち気に病んでいるのが気になってな…

我が輩の『臣下』が頑張っている姿を見せて、我が輩の『領土』の美しい姿を見せてやれば、良い気分転換になると思ったのだ」

「…街の破壊って…」

「おお、なんだか巨大な海賊船が街を疾走したらしくてな、いやあ、不思議な時代になったモノだ!だが街を壊すのはいただけんな!」

 

 

あー、と言う山本とセイバー。

自分たちも巻き込まれた被害者だが、良く考えたら彼女…管理人の少女も被害者の

1人には違いない。

 

不可抗力に近い上にライダー組が全部悪いとは言え、責任はとらないといけない立場と言うものがある。

…とは言え、17や18そこらの娘には、荷が重い話だった。

それを気に病んで、気分転換になればぐらいで宝具を展開したのだろう。

 

キャスターにとっては、恐らく映画を上映するかのような、そんな話なのだから。

はた迷惑にもほどが有るが、悪気はなかったのだろう。

 

 

「マスター…この人と戦うのすっごい嫌です!異人だけど、いい人じゃないですか!」

 

セイバーはちょっと涙目になっている。

…まあ、一本気で良くも悪くも真っ直ぐな彼女には、多分一番苦手なタイプには違いない。

 

はぁ…と、山本はため息をつくと、管理人の少女に向かって話しかけた。

 

 

「ウチのセイバーは戦うつもりは現状無いし、俺も巻き込まれだ。

セイバーの願いが容量喰うから完全同盟は無理でも停戦の提案がしたい…ってか、あの馬鹿ライダーの被害者同士だし、戦いそのものは乗り気じゃない同士みたいだしな…」

 

被害者?と聞く少女に、ライダーの宝具に巻き込まれて死にかけたんだ、と返すと、

彼女は意を決したような表情で、少女は右手を差し出した。

 

 

「わかったわ…竹内美香、キャスターのマスターとして管理人として、貴方の提案を飲みましょう。

キャスターも私も戦闘は苦手ですし、私も願いは無く、キャスターも『アメリカ国民がちょっと幸せになってくれたらいい』と…聖杯に望む類いの願いを持っていません、力をお貸しいただけますか? 」 

 

同盟の提案である。

わりと、セイバーは…格がなんかすごいしょっぱいとは言え、燃費のキツいクラスの英霊、キャスター…魔術師の協力は非常に山本にはありがたい。

 

セイバーも少しほっとした表情をしている、戦わずに済んだ、と。

 

そんな彼女の顔を笑いながら山本は眺めつつ、右手を差し出す。

握手が成立してなごやかに済みそうだった…正にその時だった。

 

 

「ヒャッハァァ!アメリカみたいなテーマパークがなくなったぜぇぇぇぇ!殴り込みだぁぁぁぁぁ!」

「ランサーたる俺が、最強で、最強なんだぁぁぁぁぁぁ!」

 

なんか、ランサー組が強襲して来たのである。

 

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