例えば、こんな、あぽくりふぁ ~なんだかしょっぱい冬木の戦争のようです~   作:たんぺい

5 / 12
四話:こんなランサーは最強しょっぱい

「オラオラァ!てめーらのこのこ集まりやがって、まとめてぶっ潰してやるぜぇ!」

「最強の俺たちで、最強の勝利を手に入れてやらぁ!」

 

 

前回までのあらすじ。

なんか上みたいな事をほざきだした、ランサーとそのマスターが空気読まず土地管理人の敷地内に乱入して来たでござるの巻。

 

 

 

…柄悪いのが来たな!

まず、彼らの初見の印象はそれである。

 

 

マスターらしき男の方は、見事なまでの金髪にモヒカン。

大きな肩パッドを素肌に付けて、上半身はレザーのタンクトップ。

鋲を大量に打っており、妙にメタリックな印象を与える。

更に黒いレイバンのグラサンに黒いズボン。

…某北斗の雑魚まんまである。

 

彼の名は神楽坂次郎(かぐらざか・じろう)、こんななりだが、れっきとした魔術師である。

正確には魔術使い、か。

火を操る魔術を使い、非合法組織の雇われ用心棒をしている男だった。

そして、山本と同じく、偶発的に家伝の礼装を触媒としてランサーを召喚したのだ。

 

そして、肝心のランサーはと言えば…

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!俺は、最強だぁぁぁぁぁぁ!!」

 

こればかりである。

会話が全く成立してない、バーサーカーかお前は…と、山本は内心突っ込んでいた。

 

衣装は中国服で獲物は戟…薙刀のような中華風の長物ということで、とりあえず古代中国のサーヴァントなのはなんとなく予想が付くが、それ以上には特別変わった特徴は無い。

そして、その戟を、型を無視するかのようにぶんぶん振り回していた。

まるで、チンピラ崩れなマッチョが「俺は強いだろ?」と筋肉やナイフを見せつけるような、威嚇のような雰囲気で自慢げにその技を披露している。

 

別に弱そうにも見えないが…三國志か春秋戦国か、逆にもっと後時代のサーヴァントかはわからないが、中国サーヴァントで最強を名乗るには、少々ならず力不足に見えた。

 

 

「弱い犬ほどよくほえるって奴ですかね…」

 

セイバーも、ランサーの威嚇に呆れていた。

というか、一目でこうもげんなりするコンビに…それも1日二度も絡まれるとは、厄日だな。

山本も内心呟いていた。

 

竹内に至っては口をあんぐり開けて放心しており、キャスターもオロオロするばかりだ。

…ライダーが酷すぎて、主人公達には妙な耐性が付いていたのかもしれない。

 

 

そんなおり、モヒカンがいきなり口を開いた。

 

「奴らコンビを組んだのかも知れねえ!宝具行くぞごるぁ!」

「おう……あの、関雲長すらぶっ倒す、最強の俺様の実力を見やがれ!」

 

え…と、一瞬放心する主人公組&キャスター組。

こんな格がしょっぱい聖杯戦争で関雲長…関羽以上ってどういう事だよ!と一斉に突っ込んだ。

関羽以上って、もう光武帝とか始皇帝クラス、最低限でも曹操でも連れてこないとダメだろ…と。

 

しかし…ランサーの宝具を聞き、とりあえず仕事柄偉人にやたら詳しくなった山本は納得した。

…お前そういう事かよ、と。

 

 

「俺の宝具…喰らいやがれ!『我関雲長捕縛セリ(オレがかんうをつかまえた)!』」

「お前地味な方の馬忠かよ!」

 

 

地味な方の馬忠、三國志では孫家に仕えた方として区別されている馬忠である。

 

彼の逸話はただ一つ、「かの軍神関羽を捕まえた」。

それだけである、それ以上の記録は一切無い。

昇進したとか討ち取られたとか、詳しいことは一切書いてない。

本当に「関羽を捕まえた人」としか記録されてないのだ。

 

演義ではもうちょい見せ場があるのだが、まあ…モブの1人でしか無い。

 

 

さて、そんな彼の宝具と言えば…

 

「お、檻を召喚した…だと!」

「マスター!閉じ込められたみたいです!」

「な、何よコレ!?」

「ふむ、我が輩を捕らえるとは…」

 

漆黒の鉄檻に対象を捕縛する、シンプルながら厄介な宝具である。

 

すぐに山本は脱出を試みるが、魔力が強く流れており、破壊には骨が折れるだろうと予想がついた。

曲がりなりにも『宝具』、英霊が使用する武装は、並大抵の物ではないのだ。

 

そこに、皆が捕らわれている檻にモヒカンはこつこつと近づいた後、こう言った。

…俺たちの勝ちだ、と。

そしてこう続ける。

 

「てめーらはこの檻から脱出不可能よ!俺は外から火を放つ、魔力を込めてな!仮にサーヴァントは無事でもマスターは蒸し焼きだ!」

 

そして、横からランサーも口を挟んだ。

 

「そして、仮に貴様等がこの檻を壊して万一逃げ出そうとした瞬間、俺の戟が届くという俺の完璧な間合い!これぞ二段構えの最強の俺発案の最強戦術!」

 

 

はははは、と高笑いするモヒカンとランサーの二人。

ぎりぎりとセイバーが歯ぎしりし、竹内もオロオロしだし、山本も焦る中…キャスターだけは平然としている。

 

そして、冷淡な口調でキャスターは語った。

 

「ふむ、小細工にしては良くできた策だな…だが、我が輩とは格が違うな!」

 

何だと!とランサー組が威嚇する中で、キャスターはこう語った。

 

「では、見せてやろう我が輩の宝具の本来の使い方…『大いなる我が帝国(ジ・アメリカ)』!」

 

 

そうするとどうだろう。

彼らの目の前にあった鉄檻は綺麗さっぱりと消滅する。

 

否、既にあたりはさっきのアメリカの市街地だ。

公園も列車も交番も市街地も…あたりは先ほどみた光景と何一つ変わらない。

 

ただ一つ違う事はと言えば…そこに住んでいた住民達が、一様に怒っているという事だ。

握り拳を固めているのは当たり前、どっから拾ったのか、石ころやナイフや角材を握りしめている者もいる。

アメリカらしく、ウィンチェスターを整備するハンターらしき男も居た。

 

何事か、と焦るランサー組に、キャスターは毅然として言い放った。

 

 

「これが我が愛しい祖国、これが我が愛しい臣民…いや、同じ帝国を愛した友人だ!それこそが我が力、我が宝具!我が輩は何一つできない弱いサーヴァント…いや、人間だったが、絆という魔法が、我が輩そのものの力なのだ!故に…汚らしい貴様の檻ごとき、アメリカの自由を愛する心で吹き飛ばしてやった!」

 

んな無茶な…と、全員思ったが、同時に彼の力の本質を理解した。

彼は、『アメリカそのもの』の化身に近い。

使用する力は限定的かつ本人は一般人レベルの力しか無いが、その宝具はある種の『アメリカ』という名前の固有結界そのものなのだ。

 

言ってしまえば「対国宝具」と言うべき宝具なのだろう。

あくまでも対人クラスのランサーの宝具では、太刀打ちできない、規模が違いすぎるのだ。

 

 

戦慄する全員に向かって、キャスターは更につづけた。

 

「我が友人達はあくまでも一般人…それも、我が輩の信念に縛られて『殺す』事はできないし、何よりサーヴァント相手には叶わない…だがな」

 

そう言うや否や、いずこからかモヒカンに向かって石が飛んでくる。

土やら野球のボールやら、酷いものになれば馬糞が詰まったバケツまでモヒカンとランサーに向かって飛んできた。

 

「別に、殺さずとも無力化する方法なぞ、いくらでもある」

 

 

すげえ…山本は素直に思っていた。

 

圧倒的な宝具の能力によって、仮にも3騎士の一角たるランサーをああも手玉に取っている。

セイバーも、喧嘩売らなくて良かった…という表情をしていた。

 

あの絶対のフィールドを維持されたら、どんなサーヴァントも勝ち目は無いだろうから。

だが、そんな無敵のフィールドも…長くは続かなかった。

 

 

「おや、我が輩の宝具もそろそろ時間切れみたいだの」

 

そういうと、全員が居たアメリカから、さっきの屋敷の敷地内へと戻っていた。

 

もう時間切れなの?とキャスターは竹内に問い詰められて、キャスターはなだめる中…

宝具から解放されたモヒカンとランサーはぜえぜえ言いながらキャスターを睨みつけていた。

そして、野郎殺してやるぜ…と、呻き、さっきの檻の宝具を使おうとした、その刹那だった。

 

 

「貴様等…俺たちをこけにしやがって…ほう…」

「…遅い」 

 

ランサーが、股から頭にかけて、真っ二つに両断されたのだ。

いきなり何事かと、目を丸くしたモヒカンに向かって、山本とセイバーはこう告げた。

 

 

「さっき宝具の開帳の許可は出している…これぞ、セイバー最強の必殺剣…」

「『龍飛剣』です、あなたも真っ二つになりたいですか?」

 

龍飛剣、沖田の三段突きや斉藤の左片手平突きに並ぶ永倉の必殺技である。

股から頭に向かって下からズバッと切り裂く、最強無敵の剣。

この技で、セイバーは新撰組3指の実力を得た、と言われている。

 

ましてや、宝具として昇華されたなら、防御不能の『必殺』技になるだろう。

本質的には…規模があまりにも違うのだが、ギルガメッシュの乖離剣エアに近い概念へと、昇華されている。

 

 

さて、相棒たるランサーが…それはあっさりと、呆気なくセイバーの剣のサビになった事をモヒカンは理解するにつれて、それは面白いぐらい顔が真っ青になったという。

 

小便はおろか軽く脱糞しながら、さっきまでの威勢はどこへやらとばかりに、陸上選手も裸足で逃げ出すような足の速さで、ごめんなさーい!とモヒカンはいずこへと消えて行った。

 

 

「…しょっぱい人たちだったわね…」

 

竹内の言葉に頷く一同。

 

何かどっと疲れた、そんな表情に一同なる。

そんな姿を…

 

 

「ふむ…彼等なら、俺のマスターと男のブルースを奏でられそうだ…」

 

アーチャーが、遠くの物影から覗いていたのであった…

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。