例えば、こんな、あぽくりふぁ ~なんだかしょっぱい冬木の戦争のようです~   作:たんぺい

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五話:黒幕の計画の雑さは残念しょっぱい

さて…

 

ランサー組を退けて、一段落ついたセイバー&キャスター組。

これからどうしようか、という話になった際、竹内から山本とセイバーに提案して来た。

うちに泊まらないか、と。

 

確かにお互いにメリットの多い話ではある。

 

セイバー組視点からしたら、土地勘が有って有能な管理人がバックに付いてくれてるのはありがたい。

キャスター自体は魔術師としての適性そのものは低いとはいえ、最低限の陣地作成と礼装作成は出来るし、マスターの方はそれ以上に有能である。

戦闘に特化し過ぎたセイバーからしたら、キャスターのバックアップは戦術の取れる幅が一気に増えるのだから願ってもないだろう。

 

キャスター組視点からすると、単純に用心棒が欲しい…コレだけに終始する。

キャスターの宝具が癖が強すぎる為、規模こそ最強なものの、戦争最弱のキャスターは…

それこそ、まだ見ぬアサシン・バーサーカー・アーチャーからしたら良いカモなのだから。

 

山本は、ホテルの予約キャンセルしないとな…と呟きつつ、それを了承。

聖杯戦争中、離れを借りて、用心棒代わりに寝泊まりする事になった。

 

…なお…

 

「マスター!ベッドがふかふか、凄いふかふかです!何か窓から見える景色も良いし、晩ご飯も凄いおいしかったですね!

あんな豪華な洋食はじめて食べました、攘夷思想がちょっとゆらいじゃいます!

…後は、お酒…日本酒はどこでしょう?あ、今から買いましょうよ!『こんびに』…でしたっけ?万屋さんが真夜中に開いてるらしいですし…」

「夜中の二時にうっせえセイバー!令呪で死なすぞ!」

 

寝ずの番をする山本の隣で、セイバーが相当はしゃいでたとかそうじゃないとか。

 

 

さて…そんな事が有った日の翌日の朝8時ぐらいか。

竹内邸へと、2人の来客が現れた。

山本が慌てて確認した際、遠間から見るには詳しくはわからないが、30代か40代ぐらいのナイスミドルと10歳ぐらいの少年という組み合わせだった。

 

…親戚の来訪、とかじゃ無いよな。

山本は小さく呟きながら、相棒に声をかける。

 

「どうやら早速出番だぜ、行くぞセイバー!」

「…はう、朝ご飯ですか?マスター?」

「ちげえよ!聖杯戦争の…来客だ!」

 

最初は寝ぼけてトンチンカンな事を言っていたセイバーだったが、戦争という言葉を聞きセイバーも一気に戦士の顔になる。

…マスター、さあ、行きましょう!とセイバーが言った、まさにその時だった。

 

 

「すみませーん、停戦の話に来ましたー!」

「マスターの魂の叫びを聞いてやってくれ!」

 

こんな二人の叫ぶ声が聞こえる。

…なんだか、山本もセイバーも顔を見合わせるしかなかった。

 

 

それから、敵意が無いことを示すかのように両手を上げながら竹内邸に入る二人。

そして、竹内の命令で客間で全員集められた中で、件の来客2人は自己紹介をする。

 

「僕は、三神鏡助(みかみ・きょうすけ)って言います!そして、こっちが僕のサーヴァント…」

 

鏡助と名乗る少年がぺこりと挨拶する。

そして、整えた髭と撫でつけたオールバックが妙に男臭い…ベージュに統一したスーツにコートがむせかえる様なダンディー臭を漂わせつつ、鏡助に視線を送られた男は皆の前に出る。

そして、そのダンディーさんは、ぐるりと一回転して額に手を載せながら語り出した。

 

「俺は…心の独唱(ソロ)を愛する孤独な狼(ウルフ)…誰にも縛られない、それが、男のブルース…」

「うぜえよ!一日中この調子で会話しなきゃなら無いこっちの身になってよ!てかクラス紹介しなよアーチャー!」

 

…うざかったので、マスターがしばきながら、アーチャーのフォローに入った。

 

 

…これはこれでしょっぱいなぁ、と全員が心の中で呟きつつ、キャスターだけが首を傾げる。

貴殿、どこかで見たような、と。

 

ああ、お前さんはアメリカ皇帝様か、俺とは違って交響曲(マーチ)を愛するやつだったな、とアーチャーは笑いつつ…

しかし、アーチャーは真面目な口調になると、こう切り出した。

…バーサーカーとアサシンを止めてくれ、と。

 

 

まだ見ぬサーヴァントの情報をどこで手に入れたのか、と一同が聞く中で、今度は鏡助が口を開いたのだ。

 

「すみません!この迷惑な聖杯戦争…本当は僕のせいなんです!」

 

どういう事か、とセイバー組とキャスター組が顔を見合わせる中、鏡助は頭を下げ続けながら話を始める。

それは簡単に纏めるとこういう事だった。

 

 

そもそも、三神家とは占星術を軸にした、一種の土着の魔術師一派だった。

 

その能力を使い、その地の武人や名家に取り入り、占いをして生計を立てていた。

しかし、明治維新以降、非科学的な存在が排疎されるにいたり…三神家は実質的に滅亡した。

だが、家伝の魔術を、三神家は細々と受け継いでいたのだ。

 

そうして、魔術刻印とその技術のみひっそりと継いだ中で、1人の少年が産まれる。

三神鏡助とは、それだった

彼には魔術刻印が有って、そして…魔術回路が、一般人程度の数しかなかった。

 

言ってしまえば、コンセントだけ沢山有って、電線が全く通っていない。

鏡助とは、そう言う少年だった。

単独行動スキルが有る、燃費の良いアーチャーで無ければ、それこそ半日でサーヴァントを保てないぐらいの魔力量しか扱えないぐらいに、だ。

 

別に鏡助自身には魔術師としてのあり方はまるで興味はなかったが、それを嘆いた人物が2人居た。

姉の環と兄の剣八、三神の魔術を受け継いでいた2人だったのだ。

…弟の魔術回路をせめて普通の魔術師程度を数まで増やして、三神家の再興の礎にしなければ、と。

兄弟愛なのか、魔術師としての家の使命なのかは…その判断は任せよう。

 

 

「…そこで、擬似的な聖杯戦争、か」

「そうです、お兄ちゃんとお姉ちゃんでも扱えるぐらい、わざと格を落とした聖杯戦争を」

 

山本のツッコミが入りつつ、とにかく、彼らは聖杯戦争を開始した。

 

作戦はこうだ。

比較的呼びやすい、そして取り回しがわかりやすいアサシンとバーサーカーを自分たちが先行して呼ぶ。

そして、彼らが選んだ、聖杯戦争に頼らないといけないような困窮した三流以下の魔術師たちを狭い箇所に集めて、触媒になりそうなモノをそこに送りつける。

そして、聖杯戦争が開始した瞬間、アサシンをけしかける。

参加者を皆殺しにしてアサシンを令呪で自害、残ったバーサーカーは理性がない。

つまり…聖杯を独り占めできる、そう言う手筈だった。

 

だが、彼らには…ものすごい誤算が有ったのだ。

 

アサシンもバーサーカーも狂性が強い…というか、大体バーサーカーの適性のある反英霊はハサンを呼ばない限りアサシンで呼べてしまうので、暴走の危険が酷い。

今回もそんな感じであり、令呪ですら完全に制御が利かないという酷さだった。

 

 

「…そんな英霊、自害させちゃいなさいよ」

 

竹内が思わずツッコムが…鏡助は、それはそれはげんなりした顔で頭を抱えた。

お兄ちゃんもお姉ちゃんも、もうやった、と。

 

はあ?!と騒然とする一同を無視して、鏡助はこう言った。

 

 

「バーサーカー…鰐です、そもそも自殺なんて無理…というか、爬虫類なんで自殺の概念が多分わかって無いです」

「ちょ…はぁ!?」

「アサシンはお侍さん…だったかなぁ、バーサーカーよりマシだったけど、『自害』が何かブロックワードというか令呪で強要されるのが概念レベルで嫌だったみたいで…

『死にたくないでござる!殺すのは大好きだけど痛いのは嫌でござるぅ!』って、令呪の縛りすら抵抗してて…」

「最悪だぁぁぁぁ!」

 

…人選を、ミスっていた。

 

 

はぁ、と、そんな皆を見ながらアーチャーは一つため息を付くと、最後にこう纏めた。

 

「…とにかく、まあコイツらの選んだサーヴァントが暴走してしまったらしくてな、英霊光臨の術式が中途半端なまま暴走しちまって、俺たち他クラスの連中が事故で呼ばれた、そんな感じでな…しかも、サーヴァントに拉致されるように、マスターの姉貴や兄貴たちが行方不明になったのさ…それを止めたい」

 

 

なるほどと、事件の経緯を把握する一同。

これで、強制参加の聖杯戦争というイレギュラーの謎は片付いた。

…そして、悪いのは全部、目の前にいる少年の兄と姉だという事も。

 

はあ、と一言呟いた竹内は鏡助に顔を上げるように言うとこう言った。

 

「貴方は、今回巻き込まれただけで何も悪くないわ…保護ならしてあげるから、『今回の街の被害が全部その兄と姉のせい』って口裏合わせてくれるなら、いくらでも協力するわ!」

 

…半分ぐらい打算の、保護の提案だった。

 

  

だが、そこにアーチャーは口を挟む…それでは通らない、と。

どういう事か、という一同の質問にアーチャーはこう返した。

 

「あくまでも、俺たちは『バーサーカーとアサシン』の討伐が目的だ、下手すると無差別な魂喰いが発生するからな。

そのための協力を頼みに来たと言う寸法だ…まあ、マスターの保護自体は願っても無いが、俺にはかなり容量を食うだろう願いもある、同盟自体は直ぐ崩れるだろう」

 

一同はアーチャーの言に納得する、それはそうだ、と。

更にアーチャーはこう続けた。

 

 

「つまり…俺たちは一方的に借りを作りながら、裏切ると、こんな男の背中を汚すやり方を公言してる訳だ…

なのでな、2つ縛りを己に与える。

一つは『俺の宝具をお前さん達に向けない』、俺の宝具は発動条件が難しい分だけ本当に『必殺技』だ、防御も回避も不可能なんだよ、それをお前さん達に向けないことを自己誓約(セルフギアス)で出そう…そして、もう一つ…俺の真名を教えよう」

 

真名…とざわつく中で、アーチャーはこういった。

 

「俺はパット・ギャレット…しがない、アメリカのハンターさ」

 

 

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