例えば、こんな、あぽくりふぁ ~なんだかしょっぱい冬木の戦争のようです~   作:たんぺい

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六話:アサシンの末路はあっさりしょっぱい

「誰かと思えば、キミはいつか新聞で見たような気がするよ…我が輩の帝国の、愛すべき臣民(フレンド)の1人とは、じつに我が輩も嬉しいよ」

「俺も…同窓に会えて酒が旨いな、あんたの風下に立ったつもりは今までもこれからも無いがな!」

 

 

キャスターとアーチャー…ジョシュアとパットは談笑しつつ、実に嬉しそうな表情でアメリカ人らしく、男同士だと言うのにハグを交わしていた。

 

妙にお前ら仲良いな、この場にいた全員が思った事だが…山本は、1人納得していた。

キャスターとアーチャーがやたら仲が良いことも、アーチャーが自分の宝具を「必殺技」と評した事も。

それは、パット・ギャレットと言う1人のガンマン、そのものの人生の縮図なのだから。

 

 

パット・ギャレット

 

彼は、硝煙と策謀が嵐のように飛び交う、西部劇の時代のガンマンである。

 

彼自身は、本人の言うように…アウトロー寄りのハンターのような生き方をしていた。

バッファローハンター、一時期はそれを生業とした職業ハンターでも有るが…保安官も経験している。

つまり、彼は人を狙ったハンターでもある、そういった…その当時のガンマンらしいガンマンである。

そして彼がハントした男は…それは「王」であった。

 

それは、ビリー・ザ・キッド、ガンマンの時代が産んだ「少年王」。

悪行の限りを尽くしたガンマン、西部劇の時代が産んだ悪と自由の象徴たる男…ビリーはそう言う男だった。

パットは、それを討ち『西部劇』の象徴を終わらせた、そう言う男だった。

 

 

恐らくだが、と山本は脳内で頭に付けながら思う。

 

パットの宝具はそれが逸話なのだろう、他に英霊らしい逸話は少ないのだから。

必殺技と言うか、暗殺や謀殺がそのまま呪いとして機能する、そう言う宝具なのだ。

少年王すら屠った宝具…なるほど、事前に知らなかったら危なかったかも知れない。

 

山本は1人、そう結論つけた。

 

 

さて、そうこうしているウチに、バーサーカーとアサシンをどうするかと言う話になった。

 

それはそうだろう、彼らは暴走して街をさ迷っている。

どこに居るのかが、まるで全く掴めないのだ。

魔力の方向を掴めば、それでも大ざっぱには掴めるが…正直、焼け石に水である。

 

山本や竹内がとりあえず式神や使い魔を飛ばすが…望み薄だろう。

砂漠の中のコンタクトレンズ…と、までは行かないが、一般人に被害が現れる前に見つけて、そこに急行する。

不可能では無いが、かなり難しいだろうと焦っていた…その時だった。

 

キャスターがいきなり口を開いたのだ。 

…私に任せてくれないか、と。

そして、キャスターはこう続けた。

 

「我が輩の宝具は、『領土』ごと呼び出せば維持が相当大変だが、『臣下』だけを呼ぶなら維持は簡単だ、何せ単なる一般人の召喚だからな…ふむ、探偵のビッキーか警官のジェニー辺りが良いか、ホームレスで暇なグーイでも巻き込むか…いっそ、スリのロナルドやプルトーでも呼び出すかの?人探しなら任せられる人材なら15人は下らん」

 

…本当に便利だな!と、全員がキャスターを見直した。

 

 

それから二時間ほど経った後、場所を景都市の市街地…その裏通りに場面を移そう。

そこでは、3人の男女と一匹の鰐が居た。

 

2人の男女はお互いに顔を見合わせて真っ青な顔をしている。

そんな2人を睨むかのように、1人の侍が刀を抜きながら、イライラするかのようにあたりをうろちょろしている。

鰐は…無表情に、まるで獲物を狙うかのように静かに彼らを眺めていた。

黒幕の三神環と三神剣八、彼らとそのサーヴァントの姿であった。

 

 

…どうしてこうなった。

環も剣八も真っ青な顔のまま、その言葉だけがぐるぐると回っている。

自分達の計画は完璧だったはずだ、弟の為に…家の為に、計画した完璧なものだ。

 

生け贄たる候補者達も犯罪者崩れのみを選び、協会やらなにやらから目を付けられにくいようにした。

触媒もそれっぽいような、弱いサーヴァントしか呼べない物だけを用意した。

そして…自分達は、計画に最適なサーヴァントを召喚した…ハズだった。

主を裏切らぬアサシンと、余計なことを考えない獣のバーサーカー…そういった手筈だったのだ。

 

だが、実際に呼ばれたサーヴァントと言えば…

 

「拙者のぐるぐると煩わしいこの魔力の枷がなくなったら、まず真っ先に貴様らから殺してやるでござるぅぅぅ!」

「グギュアァァァア!」

 

こんな感じである、明らかにマスターを殺す気満々だ。

令呪を無理やり「枷」にして殺害しないようにしているが、そろそろ限界に近かった。

 

「や、止めてアサシン!私たちをこ…殺さないで!」

「バーサーカー!俺たちは美味しくねえぞ!こっち来るな!」

「やかましい!先ずは拙者たちに自害を命じた貴様等を…殺して喰う!それから暴れるだけ暴れるでござるよ!」

「ひぃぃぃぃぃ!?」

 

そう、本当に限界だった。

環と剣八の令呪の残りは既に0。

もはや、この令呪の魔力を破られたら…文字通り、『餌』として魂喰いの的にされるだろう。

環に至ってはちょっと魔力がある程度の女だ、アサシンになぶり物にされる可能性だってある。

 

「誰か……助けてぇぇぇぇ!?」

 

2人は失禁しながら、恥も外聞もなく助けを求める。

その時だった。

 

 

「…マスター、令呪ってこう使う事も出来るんですね」

「まあ、本質的には単なる無色の英霊を操る魔力だ、ロスはデカいが3角分集まれば、移動ぐらいは使える」

 

山本とセイバーが…

 

「とりあえずコイツらに責任取らせないと、死んでおじゃんじゃこっちにお鉢が回って来るの!」

「…マスター、ぶれないであるな」

 

竹内とキャスターが…

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん!助けに来たよ!」

「…見捨てない、それも男の業さ…!」

「アーチャーうっぜえ…単に、僕や家の為にやったのに死んだら、目覚めが悪いんだよ!令呪でそのうざい口調矯正するよ?!」

「……」

 

鏡助とアーチャーが、彼らの目の前に現れたのだ。

 

弟よ…救世主よ…と言う彼らを、全員が怒気を含んだ冷徹な目で黙らせつつ、アサシンとバーサーカーを飛んできたメンバーは見据えた。

 

 

さて、何故、セイバー・キャスター・アーチャー組が瞬間移動が出来たかだけは解説しよう。

 

実は、キャスターの宝具…その1人、ジェニーが黒幕たちらしき物達を探し出し、それを念話でキャスターに伝えた際、ジェニーはこう言った。

…本当に危ない、今すぐにでもマスター殺しと魂喰い、それどころか無差別な殺人テロが発生する、と。

 

どうしよう、瞬間移動でもできないとまずい…そうセイバーが言った時、山本は、それだ!と声を上げた。

 

 

「…ふむ、ならば本当に瞬間移動してしまおうか、座標はジェニー…だったっけ、キャスターの宝具が有るからしっかり把握できてるし、後はすごい魔力が有れば、簡単な術式を組めばそんな座標に吹っ飛ぶのは簡単だ…どっかのアホのライダーみたいにな」

 

すごい魔力?と全員が聞く中で、山本は右手を掲げた。

 

「『令呪』、別に命令権として使わなくても英霊の能力のブーストや治療にも使える無色の魔力だ!この場合、キャスターの宝具の補助…と言うか回収の変形だな、キャスターの宝具の座標に吹っ飛ぶ形で全員巻き込めば良い…2角、いや3角使えば6人の人間ぐらい楽に運べるよ、それを俺が出せば良い」

 

なるほど、と皆が山本の説明に納得するが竹内は質問する。

…それで、貴方は良いの?と。

山本はセイバーを、少し恥ずかしがるような表情で見ながら、話を続けた。

 

「…セイバーは、こう、思った以上のアホだけどさ」

「マスター、アホて」

「でも、令呪で縛るような相手には思えない…維持なら俺の魔力でも充分できるしさ、それぐらいのリスクぐらい大丈夫さ」

 

マスター…と、セイバーが感涙する中、で竹内と鏡助が顔を見合わせる。

そして、はあ…とため息をつきあい、山本をスリッパで一発すつしばいた後、2人はこう言った。

…あんたにだけいいかっこさせるか、と。

 

「うちのキャスターもアホはアホだけど、貴方と同じ気持ちよ…と言うか、元々うちの宝具なんだから、こっちが負担するのが筋よ」

「…と言うか、そもそもの原因が僕の家の話なんだから、僕が負担無いのも変だよね…なら、みんな1角ずつ出して3角って事にしようよ、アーチャーもやっぱりアホだけど、無理やり言うこと聞かせる相手違うし」

 

…全員アホって酷いよ!とサーヴァントはマスターに文句を言いつつ、件の座標へと飛んだのだ。

 

 

さて、そうして、まるでヒーローのように現れた3組のサーヴァントとマスターのコンビ。

アサシンは…呆気にとられたような表情でそれを見ていたが、とりあえず自分を止めに彼等は現れたとは、しばらくして理解した。

 

そうして、怒ったような、笑ったような表情で彼等をアサシンは見ると、まずは貴様等からサビにしてやるぜござる!と、誰に向けて言ったのかわからないように叫ぶ。 

そして…なめ回すかのように、3組の新顔を眺めると、一番弱そうな…そう、キャスターとそのマスターに向かって突進する。

 

 

「ひゃぁぁぁぁぁははは!まずは、てめえらから拙者の必殺宝…ぐ……」

 

 

しかし、彼は、そう言葉を言い切ることもなく、股から両断されてしまった。

…龍飛剣、セイバーの剣だった。

そして、セイバーと山本は呆れるかのように呟いた。

 

 

「士道の無い剣に負けません、新選組は…同じ思想を持つ攘夷志士とは言え、弱いものからしか殺せない愚かな獣風情には!」

「…せめて武市の忠臣としての側面が出たら良かったな、『侍』かつ『暗殺者』で『痛みを嫌がる』…もうそれが答えだろアサシン、否、『岡田以蔵』!」

 

 

そう、アサシンの正体、それは岡田以蔵…幕末四大人切りの1人として知名度が高い人物である。

 

特に、岡田以蔵は残り3人より人を斬っており…それ以上に『狂犬』として有名だった。

武市に心酔し、冷酷に彼等の敵を殺す暗殺者だったが、学が無く、血の気が多い男でも有った。

簡単に言えば、「強いがよほど彼を心酔させられないと信用できない」そんな人物でも有った。

 

また、拷問を受けたさい、それはそれは流れるようにゲロって身内の組織を壊滅させかけたと言う、人切りとして最悪な所業も行っていた。

 

…本当に、環は「武市の忠犬」と言う側面を期待して呼んだのだろうが、ここまで地雷だとどうしようもないだろう。

 

 

「…まあ、そんな人の末路なんて、私の剣のサビがふさわしいしょっぱさですよね…さて」

 

そんな事を呟きながら、セイバーは次なる敵へと標的を定める。

そこには、そろそろ令呪の縛りがなくなって、今にも暴れ出しそうなバーサーカーが、『餌』に向けて舌なめずりをしていたのだ…

 

 

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