左右対称のエース   作:パワプロ大好き男

21 / 25
第21話

[稲城実業高校、選手の交代をお知らせします。ライトの土屋君がピッチャー、空いたライトには福井君が入ります。3番 ピッチャー 土屋君、5番 ライト 福井君。]

 

8回の裏から、土屋がマウンドに上がった。

 

「樹、頼むぞ。」

 

土屋が言った。

 

「うん………」

 

多田野が言った。

 

「皆さん、ぶっとばされたら、バックよろしくお願いします。」

 

「オー!!!」

 

土屋の言葉に、皆、返事した。

 

「ごめんね土屋君、ボールこぼしちゃって……」

 

「あのとき、梅宮先輩から声を掛けられたみたいだな。」

 

「うん……」

 

「教えてくれないか?」

 

土屋がそう言うと、多田野はしぶしぶ話してくれた。

――――――――――――――――――――――

7回の表のことだった。

2アウト、ランナー2塁。

ランナーは梅宮で打席には5番ファースト犬伏だった。

ライト方向にヒットを放ち、梅宮は一気にホームを狙っていた。

そのとき、土屋がライトからレーザービームを放ち、ボールが多田野に渡った。

しかし、多田野はミットを梅宮の体に触れていなかった。

それでも、多田野は懸命にアウトをアピールし、審判はアウトの判定をした。

梅宮が抗議するも覆られなかった。

 

「チッ、上手く掻い潜ったと思ったのによ。」

 

そう言って、梅宮は多田野のもとへ詰め寄った。

 

「今、ミットに触れてなかったよな、ナイス空タッチ。」

 

多田野はこれを聞いて動揺してしまったのであった。

そのせいで、8回表にランナーをタッチできず、ボールをこぼし、逆転を許してしまった。

――――――――――――――――――――――

それを聞いた土屋は多田野を励ました。

 

「もう終わったことは忘れろ、この回を抑えて、攻撃に繋ぐぞ。」

 

「うん……」

 

すると土屋は多田野の頭に頭突きした。

 

「バッキャヤロー、いつまでも引きずってんじゃねぇ!!!」

 

土屋はキレた。

土屋の声が内野手、外野手のところまで聞こえた。

 

「終わったことをいつまでもグチグチと引きずってんじゃねぇよ!失敗したことをリカバリーすればいいことだろう!!お前がしっかりしなきゃ、このチームは強くなれねぇよ!!!」

 

多田野はこれを聞いて改心した。

 

「そうだね、ありがとう。」

 

多田野は元気を取り戻した。

 

「ベンチに戻ったら、好きなだけ俺をぶん殴れ、分かったな!さっさと守備につけ!!」

 

土屋はそう言って多田野を送り出した。

 

「俺はお前を信じるからな。」

 

「あぁ」

 

こうして土屋は多田野のリードに任せ、8回と9回をきっちりと抑えた。

 

「速いなあの1年生、160㎞/h出しやがった。」

 

梅宮も驚きを隠せなかったのであった。

――――――――――――――――――――――

9回裏、9番の杉が持ち味の俊足を生かすも出塁できず、1アウト。

神谷がヒットで出塁し、1アウト1塁。

白河が打席にたち、1球見送ると神谷が盗塁した。

白河がピッチャー返しを試みたが、梅宮が足を出し、ボールを止め、1塁へ送球した。

2アウト2塁となり、打席には土屋が入った。

 

(必ず、ぶっ飛ばして、勝ってやる。)

 

土屋はバットを握りしめた。

 

シュ

 

カッキーン

 

土屋は初球を打ち、レフトスタンドに放り込んだ。

稲城実業高校が2回戦を突破した。

――――――――――――――――――――――

ベンチでは監督が成宮に言った。

 

「お前をマウンドから下ろした責任は監督である私にある。」

 

成宮はそれを聞き、詰め寄ったが、涙を流した。

 

「土屋はこのチームの不安をいち早く察したのだ、エースとしてチームを引っ張ることと仲間を信じないことは別だ、ハッキリ言ってお前のような独りよがりのピッチャーをエースとは言えんな。」

 

成宮は監督の言葉を聞き、泣いた。

成宮はベンチで膝をつき、泣き崩れた。

 

「大丈夫ですか監督、成宮の方は?」

 

「あぁ、アイツのことは問題ないだろう、アイツ自身が初めてぶつかったであろう高くて厚い壁、それを乗り越えてくれるだろう。」

 

監督の言葉を聞き、部長は頷いた。

 

「さぁ、皆、バスに乗り込むぞ。」

 

選手全員、バスに乗り込んだのであった。

――――――――――――――――――――――

「3回戦の相手は青道高校か、夏の大会の再戦だな。」

 

土屋が言った。

 

「そうだね。」

 

多田野が言った。

 

「すまねぇな樹、頭突きなんてしちゃってよ。」

 

土屋が謝った。

 

「いいんだよ土屋君、僕も少し言い過ぎただけだよ。」

 

多田野が言った。

 

「寮に戻ったら好きなだけ俺をぶん殴れ。」

 

土屋が言った。

 

「いいよ、そんな気にしないで。」

 

多田野が言った。

 

「まぁ、樹を信じなかった成宮先輩が悪いんだからな。」

 

土屋が言った。

 

「鳴さん、ストレートで押せるって言うから。」

 

多田野が言った。

 

「バカだよなあの人、梅宮先輩は明らかにストレートを狙っていたのに、なんで自分のプライドで投げちゃうのかな?」

 

土屋が言った。

 

「ごめん、僕がしっかりしなかったから……」

 

多田野が言った。

 

「確かにお前は原田キャプテンと比べたら未熟かもしれない。でもな、それと信じないは別だ。樹が成長すれば、チームだって強くなれる。いつかは樹のチームになれるから、頑張れよ。」

 

土屋が言った。

 

「ありがとう土屋君。」

 

多田野が言った。

こうして、2回戦を突破した稲城実業高校、次の相手は青道高校とリベンジマッチだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定