左右対称のエース 作:パワプロ大好き男
[稲城実業高校、選手の交代をお知らせします。ライトの土屋君がピッチャー、空いたライトには福井君が入ります。3番 ピッチャー 土屋君、5番 ライト 福井君。]
8回の裏から、土屋がマウンドに上がった。
「樹、頼むぞ。」
土屋が言った。
「うん………」
多田野が言った。
「皆さん、ぶっとばされたら、バックよろしくお願いします。」
「オー!!!」
土屋の言葉に、皆、返事した。
「ごめんね土屋君、ボールこぼしちゃって……」
「あのとき、梅宮先輩から声を掛けられたみたいだな。」
「うん……」
「教えてくれないか?」
土屋がそう言うと、多田野はしぶしぶ話してくれた。
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7回の表のことだった。
2アウト、ランナー2塁。
ランナーは梅宮で打席には5番ファースト犬伏だった。
ライト方向にヒットを放ち、梅宮は一気にホームを狙っていた。
そのとき、土屋がライトからレーザービームを放ち、ボールが多田野に渡った。
しかし、多田野はミットを梅宮の体に触れていなかった。
それでも、多田野は懸命にアウトをアピールし、審判はアウトの判定をした。
梅宮が抗議するも覆られなかった。
「チッ、上手く掻い潜ったと思ったのによ。」
そう言って、梅宮は多田野のもとへ詰め寄った。
「今、ミットに触れてなかったよな、ナイス空タッチ。」
多田野はこれを聞いて動揺してしまったのであった。
そのせいで、8回表にランナーをタッチできず、ボールをこぼし、逆転を許してしまった。
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それを聞いた土屋は多田野を励ました。
「もう終わったことは忘れろ、この回を抑えて、攻撃に繋ぐぞ。」
「うん……」
すると土屋は多田野の頭に頭突きした。
「バッキャヤロー、いつまでも引きずってんじゃねぇ!!!」
土屋はキレた。
土屋の声が内野手、外野手のところまで聞こえた。
「終わったことをいつまでもグチグチと引きずってんじゃねぇよ!失敗したことをリカバリーすればいいことだろう!!お前がしっかりしなきゃ、このチームは強くなれねぇよ!!!」
多田野はこれを聞いて改心した。
「そうだね、ありがとう。」
多田野は元気を取り戻した。
「ベンチに戻ったら、好きなだけ俺をぶん殴れ、分かったな!さっさと守備につけ!!」
土屋はそう言って多田野を送り出した。
「俺はお前を信じるからな。」
「あぁ」
こうして土屋は多田野のリードに任せ、8回と9回をきっちりと抑えた。
「速いなあの1年生、160㎞/h出しやがった。」
梅宮も驚きを隠せなかったのであった。
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9回裏、9番の杉が持ち味の俊足を生かすも出塁できず、1アウト。
神谷がヒットで出塁し、1アウト1塁。
白河が打席にたち、1球見送ると神谷が盗塁した。
白河がピッチャー返しを試みたが、梅宮が足を出し、ボールを止め、1塁へ送球した。
2アウト2塁となり、打席には土屋が入った。
(必ず、ぶっ飛ばして、勝ってやる。)
土屋はバットを握りしめた。
シュ
カッキーン
土屋は初球を打ち、レフトスタンドに放り込んだ。
稲城実業高校が2回戦を突破した。
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ベンチでは監督が成宮に言った。
「お前をマウンドから下ろした責任は監督である私にある。」
成宮はそれを聞き、詰め寄ったが、涙を流した。
「土屋はこのチームの不安をいち早く察したのだ、エースとしてチームを引っ張ることと仲間を信じないことは別だ、ハッキリ言ってお前のような独りよがりのピッチャーをエースとは言えんな。」
成宮は監督の言葉を聞き、泣いた。
成宮はベンチで膝をつき、泣き崩れた。
「大丈夫ですか監督、成宮の方は?」
「あぁ、アイツのことは問題ないだろう、アイツ自身が初めてぶつかったであろう高くて厚い壁、それを乗り越えてくれるだろう。」
監督の言葉を聞き、部長は頷いた。
「さぁ、皆、バスに乗り込むぞ。」
選手全員、バスに乗り込んだのであった。
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「3回戦の相手は青道高校か、夏の大会の再戦だな。」
土屋が言った。
「そうだね。」
多田野が言った。
「すまねぇな樹、頭突きなんてしちゃってよ。」
土屋が謝った。
「いいんだよ土屋君、僕も少し言い過ぎただけだよ。」
多田野が言った。
「寮に戻ったら好きなだけ俺をぶん殴れ。」
土屋が言った。
「いいよ、そんな気にしないで。」
多田野が言った。
「まぁ、樹を信じなかった成宮先輩が悪いんだからな。」
土屋が言った。
「鳴さん、ストレートで押せるって言うから。」
多田野が言った。
「バカだよなあの人、梅宮先輩は明らかにストレートを狙っていたのに、なんで自分のプライドで投げちゃうのかな?」
土屋が言った。
「ごめん、僕がしっかりしなかったから……」
多田野が言った。
「確かにお前は原田キャプテンと比べたら未熟かもしれない。でもな、それと信じないは別だ。樹が成長すれば、チームだって強くなれる。いつかは樹のチームになれるから、頑張れよ。」
土屋が言った。
「ありがとう土屋君。」
多田野が言った。
こうして、2回戦を突破した稲城実業高校、次の相手は青道高校とリベンジマッチだ。