Sword Art 00nline -The world in which an angel fell- 作:シビリアン
今まで公務員の勉強だとか体調不良だとかで全然書くタイミングが見つかりませんでした……。
別の方で連載しているSAO Dも今月中には投稿したいと考えていますのでもう暫くお待ちください。
それでは本編へどうぞ。
キリト達が始まりの街から出て既に1ヶ月が経とうとしていた。その間に10000人いたプレイヤーが8000人とかなり減っていた。
デスゲーム開始以降、絶望に染まったプレイヤー達が自殺をしたり、自分が生き残るために他人を蹴落として、その蹴落とされたプレイヤーがモンスターに襲われて死ぬというケースが多くなっており、そのせいかプレイヤー同士の睨み合いが発生しているのだ。
そんな状況の中、キリト達は1層の最後の街ともいえる場所、トールバーナに到達していた。
今まで始まりの街、ホルンカの村と見てきたが、ここトールバーナは始まりの街ほどではないが街としては成り立っているような感じだ。
キリトは一旦ディアベルと別れてフィールドでレベリングをしに行く。ディアベルの話によると明日に攻略会議があるらしく、その次の日にボス攻略をする予定だというのでそうなると今日以外レベリングできる日がないので、今のうちにできることをしておくとのことだ。
一方ディアベルはというと、昨日とあるプレイヤーが見つけたというボス部屋と、そのボスの詳細を情報屋を名乗る者と纏めていた。ディアベル曰く、ゲームの攻略本は誰かが作らないと初心者が苦労してしまうだろう、このゲームがデスゲームなら尚更だとのことらしい。
彼は自分のことは勿論だが、プレイヤーが一人でも多く生き残れることようにすることを考えられる優しい人物なのだ。皆自分のことでいっぱいの筈なのに、彼のように他人の心配をする人物はよほどのお人好しでなければいないだろう。
多くのプレイヤーはそんなディアベルに感心していた。そして彼の行動で自分も何か皆の為にできることをしようと考え始めた人物も日に日に増えているとか。
さて話は戻すがキリトはフィールドに着き、早速適当にポップしてくたモンスターを狩ってレベリングをしていた。
彼の場合もうレベルが14となっているので既に安全マージンであるレベル10は越えているのである。だがこの世界、何が起こるか解ったものではなくましてやデスゲームとなればたとえ安全マージンに到達したとしても油断は禁物なのだ。
キリトがレベリングをしていると、何処からか男性の悲鳴が聞こえてきた。
何事だろうとキリトはその声の方を向いてみると、そこには失礼な例えだと思うがサボテン、又はホヤのような茶髪の中年らしき男性が狼型のモンスター……ルーウルフに襲われていた。
ルーウルフというのは先程も言った通り青い毛並みの狼型モンスターのことで、個体として戦うなら容易に倒せるのだが複数体となるとそうもいかなくなる。
そしてその男性は複数体のルーウルフに襲われていた。HPもよく見ると半分くらいしか残っておらず、このまま放っておいたら確実に彼は命を落としてしまう。
そんなことはさせまいとキリトは剣を手に取り複数体……正確には3体いるルーウルフのうち一体を攻撃した。
すると攻撃されたルーウルフとそれを見た他のルーウルフはターゲットを男性からキリトに変え、襲い掛かった。
キリトは向かってきたルーウルフに投擲用ナイフを用いてソードスキル"シングルシュート"を放つ。するとそれを食らった一体のルーウルフはまるで痛がるかのように足を途中で止める。
キリトはそれを見て、怯んでいるルーウルフをソードスキル無しで何度も斬りつけ、ルーウルフを倒す。
その方法を残り二体にもやり、三体いたルーウルフは体を無数の結晶体にしてその身を散らした。
それを見届けると彼は襲われていた男性の方を向いた。
「……大丈夫か」
「……あ、あぁ大丈夫や」
男性はキリトを唖然として見つめた後、少し戸惑いながらも返事を返す。
キリトはそれを聞くと手に持っている剣……アニールブレードを背中の鞘に仕舞った。
このアニールブレードは、以前ホルンカの村でのクエストで手に入れた物であり、今現在使える片手剣の中では最も強い部類に入る剣である。
「そうか……では俺は失礼する」
キリトは彼にそう顔一つ表情を変えないままそう告げるとこの場所を後にしようとした。
「ちょ、ちょお待ってんかあんさん!」
……その時だった、キリトに助けられた男性が彼を必死に呼び止めたのは。
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「いやぁさっきはあんがとなキリトはん!」
「……あぁ、別に問題はない」
キリトと茶髪の男性……キバオウはトールバーナのレストランで食事をしていた。
……何故こうなったのかと言うと、あの後キリトが立ち去ろうとした時、キバオウに呼び止められて助けてもらったお礼をさせてくれと言い、彼自身はそのまま断ろうとしたがどうしても引き下がってくれなかったので渋々と了解し、今に至るのである。
ちなみにレストランでの食事はキバオウの奢りらしい。キリトは流石にそれは不味いと思い自分の分は払うと言ったのだが、「それじゃあお礼にならへん!」と怒鳴ったのでこれまた渋々と言った感じである。
「あんときキリトはんが助けてくれんかったらワイはお陀仏するとこやった。ほんまにありがとな!」
「……俺にとってはあれくらい当然のことだ。だから気にすることはない」
笑顔でそうお礼をするキバオウに対し、キリトはいつもの仏教面でそう返事をする。
ちなみに余談だがキリトは自分以外のプレイヤーを助けるのが今回限りのことではなく、フィールドでモンスターに殺られそうになったプレイヤーを何度も助けているらしく、ディアベルとは違う意味で尊敬されていたりもする。本人はその事を知らないらしいが。
「いや、キリトはんは自分以外のプレイヤーを助けれるいいプレイヤーや!ニュービーを見捨てて自分だけを優先するクソなβテスターと違ってな!」
「……何?βテスターだと?」
「そや!あいつらはワイらニュービーを見捨てて自分達しか知らない旨いもんばっかりごっそり持っていく汚いクソ共やからな」
キバオウは顔を少ししかめてそう口にする。そう、あの茅場晶彦のデスゲーム開始宣言で大半のβテスターのプレイヤーは始まりの街を他のプレイヤーより早く後にしたのだ。そのせいからなのか、話を聞く限りキバオウはβテスターに対して強い嫌悪感を抱いているのであろう。それを聞いてキリトは反論しようと口を開けた。
「……それは違う」
「……へ?」
「確かに大半のβテスターであったプレイヤーはそうなのかもしれない。というよりそうなのだろう……。このデスゲームと化したSAOでは自分のことでいっぱいになり、自分のことだけを優先するプレイヤーだらけなのだからな」
「そ、そや!そう自分のことだけ優先して他人は知らん顔のβテスターなんて……」
「だがそのβテスターの中にもちゃんと他人を思って行動しているプレイヤーだって数こそ少なかれいる。俺の知り合いにβテスターがいるが、そいつは他のプレイヤーのために尽力している。別にβテスターを嫌悪するなとは言わない。だがそのβテスターの中にもそう言った人物がいるのを覚えておけ」
「……」
彼は珍しく能弁でそう言うと、キバオウは俯いて黙り混んでしまった。
……少し不味いことでも言ってしまったのだろうか?
キリトは用意されていた料理を先程の発言に少し後悔しながら食べ終えた。
「……では俺はもう失礼させてもらう」
キリトは彼にそう言って席を立ち上がり、店を後にした。キリトが最後に見たのはまだ俯いたままのキバオウの姿だった。
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キバオウと食事をしてから翌日、キリトは第1層のボスの作戦会議をするということをディアベルに改めて聞き、作戦会議をする広場に集まっていた。
辺りを見渡すと会議には30名ほどしか集まっていなかった。やはりデスゲームの恐怖を振り切れない者が沢山いるのだろう。
キリトは空いている席に座り、会議が始まるまで腕を組んで目を瞑った。
「……キリトはん」
その時だった、彼の後ろから自分を呼ぶ声が聞こえたのは。キリトは目を開けて後ろを向くと、そこには昨日共に食事をしたキバオウがいた。
彼は「何か用か?」と素っ気なく聞くと、キバオウは少し曇ったような表情で口を開いた。
「ワイはキリトはんに言われてあの後色々考えたけどやっぱりβテスター共を許すことはできん。そん中にはいい奴がおるかもしれへんけど、そんでも…や」
「……そうか」
キバオウの言葉にキリトはこれ以上自分からは特に言えることはないだろうと思い、少し経ってからそう返事をした。それを聞いたキバオウは、失礼するで、と言うと前の席の方へ向かっていった。
キリトはキバオウが前の席に向かって行くのを確認すると、再び目を瞑った。
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あれから暫く時間が経ち、キリトは周りが騒がしくなってきたので目を開けると、視線の先……広場の中央に"蒼い髪"をした好青年のプレイヤー……ディアベルが立っていた。
ちなみディアベルは先日、彼の知らない場所で髪染めアイテムを手に入れたらしく、それを使って髪を蒼く染めたらしい。
「皆!集まってくれてありがとう!俺はディアベル!職業は……気持ち的にナイトやってます!」
ディアベルがそう自己紹介すると、周りは笑いに包まれた。ディアベルの視界にふとキリトが移るが、彼は相変わらずの仏教面だったので思わず苦笑してしまった。
そして周りを確認すると、彼は一度目を瞑り、笑みの顔から真剣な表情に変えると再び目を開けた。
「……先日、とあるパーティーが塔の最上階でボスの部屋を発見した」
彼がそう口にすると笑いに包まれていた周りが一気に静まり返った。
それを確認すると彼は話を続けた。
「俺達がボスを倒して今始まりの街にいるプレイヤーに希望を与えるんだ。このゲームがクリアできるということを、それが俺達トッププレイヤーの義務だ!そうだろう皆!」
ディアベルの言葉を聞いて、周りは決意を露にした表情になった。
そう、あのデスゲーム宣言が原因で、100層クリアなんてできるわけがないという思考を持ち、始まりの街から出てこないプレイヤーが生存プレイヤーの8割もいる為、中々攻略が進まないという現状なのだ。
なので、もし今回のボスを倒せれば始まりの街から出てこないプレイヤーも希望を持ち、 攻略に参加してくれるかもしれないのだ。
だがこれは希望と共に一種の博打でもある。今言ったように都合よくボスを倒せればいいのだが、もし負ける……最悪のケースとしてここにいるプレイヤーが全滅してしまったらどうなる?そう、現在以上に攻略が進まず、最悪永遠とこのゲームから脱出できずになってしまうかもしれない。
それほどまでに今回のボス戦は大事なのだ。ゲームクリアの第一歩としても、プレイヤー達に希望を与えるという事としても。
「……それじゃあまずボス戦に挑む準備として最大6人のバーティーを組んでくれ」
ディアベルがそう言うと周りは次々とバーティーを組み始めた。するとキリトは何か悩んでいるような表情になった。
それに気づいたディアベルはどうしたのだろうと思い、キリトのもとに行って声をかけた。
「どうしたんだキリトさん?何か分からないこととかがあるのか?」
「ああ。……そのパーティーとは何だ?」
『……え゛っ?』
キリトのその一言でここにいる数名を除いた全プレイヤーが目開いて驚いた。勿論ディアベルも含めてだ。
「……まさか……知らないのかい……?」
「知らないから聞いている。それでパーティーとは何だ?」
更にその一言でほとんどのプレイヤーが信じられないというような感じに表情が固まった。
……何かおかしなことを言っただろうか?
「……じゃあ説明しようか。パーティーというのは……」
ディアベルは苦笑しながらキリトに説明をする。それを見ている周りのプレイヤーは未だに唖然としていた。パーティーというのは複数人でグループを組み、そうすることによって皆で協力し合って戦いや探索ができるというRPGにおいては基本中の基本操作なのだ。それを知らないとなるとプレイヤー達のこの反応は間違いではないのだろう。
しかし彼は全てにおいてのゲーム初心者、そんでもって説明書を読み忘れてこの世界に入ってきてしまったものだからゲーム知識は皆無に等しい。
彼はそういうところがうっかりさんなのかもしれない。
「……というのがパーティーだよ。理解できたかな?」
「理解した。説明感謝する」
「うーん……感謝されるほどでもない事なのかもしれないけど……。と言うわけでキリトさん、俺達のパーティーに入らないか?」
「ああ、分かった」
そう言うとディアベルはキリトにパーティー申請を送る。キリトは送られてきた申請ウインドウを確認すると迷うことなくYESを押す。
これでキリトはディアベルのパーティーに入ったことになる。それを見ていたプレイヤー達はそんなキリトに少し不安になりながらも、広場の中央に戻っていくディアベルに視線を戻した。
「それじゃあ今日の攻略会議はこれにて終了だ!それでは明日に備えて解散!」
彼がそう号令するとプレイヤー達はそれぞれバラバラに解散していった。キリトもその場から離れようとするが、未だに一人ぽつんと座っているフードを被ったプレイヤーが彼の視界に入る。……何故あのプレイヤーは一人なのだろうか。先程パーティー組んだ筈ではなかったのか?彼は少し気になり、そのプレイヤーの元に行った。
「……何をしている?会議はもう終わったぞ。自分のパーティーの元に行かないのか?」
「……パーティーは組んでいない」
「……組んでいない?誰かと組まないのか?」
「……」
そのプレイヤー……声からして女性だろう……はキリトに答えることなくただ黙っている。
すると広場の中央にいたディアベルがそんな彼らの元に駆け付ける。
「キリトさん、その人は?」
「ただパーティーを組んでいないということ以外詳しくは知らない」
「パーティーを組んでいないか……そこの貴方少しいいかな?」
「……何?」
「誰ともパーティーを組んでいないというならよければ俺達のパーティーに入らないか?あと一人は入れるからさ」
「……好きにすれば」
彼女はディアベルの誘いにそう素っ気なく答えると、彼は少し苦笑して彼女にパーティー申請をし、彼女がパーティーに入ったことを確認する。
「Asuna……アスナさんか。これからも宜しくな」
「……ちょっと待って」
「?どうしたんだい?」
「……何で名乗ってもいないのに私の名前分かるの」
「えっと……それはだね、HPバーの上にプレイヤーネームが表記されてあるからだよ」
ディアベルがそう言うと、彼女……アスナは表情こそフードで隠されていてわからないが、納得したような感じになる。それと同時に彼女はディアベルとキリトのHPバーを……正確にはHPバーの上に表記されているプレイヤーネームを確認する。
「キリト……ディアベル……それが貴方達の名前……」
「ああ、改めてディアベルだ。宜しく」
「……キリトだ」
「……宜しく」
アスナに名前を呼ばれた彼らは改めて自己紹介をする。
「それにしてもまさか貴方のような女性プレイヤーが攻略会議に出ていたなんてね……正直驚いたよ」
「……何故驚くんだ?」
「俺が知っている女性プレイヤーはこのゲームの中では滅多にいなくて、いるとしてもこのゲームの現状だ、始まりの街に留まっているのが大半だからだよ」
「……成る程な」
ディアベルの説明にキリトは少し納得したような表情になる。
このゲームにおいて女性プレイヤーは、"手鏡"が渡されるまで半分以上だったが、その手鏡が渡された後、女性プレイヤーは一気に2~3割に激減した。というのは、男性プレイヤーが女性プレイヤーに成り済ましていたのが大半だった為、手鏡を渡された瞬間に男性へと変わったからだ。……欲に言うネカマというものだろう。
なのでこのSAOで数少ない女性プレイヤーがいる……更に言えばこうしてこの攻略会議の場にいるのは珍しいのだ。
「じゃあこれから場所を俺たち以外のパーティーメンバーも集めてボス戦でよそれぞれの役割決めをしたいんだけどいいかな?」
「特に問題はない」
「……分かった」
ディアベルに二人はそう返事を返すと彼らは広場を後にした。
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あの後キリト達はそれぞれの役割分担や作戦を決め合い、それらを決め終えた頃、空はもうすっかり夕方になっていたので、明日に向けてということで解散した。
ちなみにこれらを話し合っているとき、キリトとアスナはゲーム専門用語が分からく、話に全然ついていけなくなる状況になっていたので、それを教えたために解散が夕方になったというのはまた別の話である。
ディアベル達のパーティーは、これから宿屋で一杯を交わすことになった。……のだがキリトとアスナはあまりそれに乗り気ではなかったのでディアベルの誘いには断ったらしい。
ちなみに断った時、キリトとアスナは二人同時に返事をしたため、アスナはフードで隠されて見えない顔を驚いたようなしぐさをした後キリトの方を向いたが顔1つ変えずに仏教面だったのを確認すると少し驚いた自分が馬鹿だと思ってしまったというのは別の話である。
場所は変わり、アスナは人気のない場所を見つけると、先程NPCショップで購入した10コルの味気なく少し硬いパンを食べていた。このゲームでは別に腹が減るものでもないので何も食べなくても平気なのだが、人の第三欲求である食欲には流石に叶わないので物を食べたりはしたくなるらしい。現にアスナもパンを食べているように。
因みに今更ながら知っていると思うが、コルというのはこのSAO内の通貨である。彼女でさえも知っている通貨をキリトは先程の話し合いでなんのこっちゃ発言をしたので、彼女はそれに驚かずにはいられなかった。
それでも気まずくしないで平然とそう聞くものだから彼の態度には驚きを通り越して呆れるものともなっていた。
彼女がパンを食べていると、そこにもう一人此方に向かってくる人影があった。
キリトである。彼もまた人気のない場所を探していたらしい。
キリトはパンを噛じっているアスナを見つけると、彼女に一声かけた後、少し間を開けて席に座る。
彼はアスナと同じくNPCショップで購入したパンを2つ取りだし、黙々と食べ始めた。
因みにこのパンは一番最低ランクの食べ物らしく、好き好んで食べる者はまずいないのことらしい。
それを2つも食べるだなんて考えられないことなので、ついアスナは彼に問う。
「……ねぇ貴方」
「……どうした?」
「……そのパンあまり美味しくないはずなのになんで2つも食べれるの」
「特に理由はない。食べれればそれで十分だからな」
「……そう」
「……」
キリトはそう素っ気なく返すと、また沈黙が訪れる。
彼の流石の無口さに、普段あまり周りのプレイヤーと会話しない彼女でも気まずいような雰囲気になってしまう。
そんなこんなでキリトは何時にもなく平然というか仏教面というかといった顔をしながら2つ目のパンを食べ終える。すると彼はその場を後にしようとする。
「……ねえ」
「……何だ」
急に自分を呼び止める声がしたので彼は一度止まり、顔だけを彼女の方に向けた。
「貴方はこのゲームクリアできると思っているの」
「……分からないな。だが諦めさえしなければきっとクリアできると思う」
「……本当にそう思っているの?」
「そう思っていなかったらこんなことは言わない」
「……私は正直、無理だと思う」
「……何?」
キリトは彼女の言葉を聞くと表情を険しくする。だが彼女はそんな彼の表情を見ずに、未だ手に持っているパンを見ながら話を続けた。
「……この一層がクリアされたとしてもそれ以降もしあの街に閉じ籠っている人達が攻略に参加しない限り、きっとクリアは何十年掛かってもできない。……だから私は無理だと思う」
彼女の言葉は認めたくはないがあながち間違ってはいないと思う。
もし今彼女が言った通り一層がクリアされたとして、始まりの街から未だ恐怖心で外に出ようともしないプレイヤー達がずっと留まっているのであれば、その内攻略組は全滅し、それを知ったプレイヤー達は更に絶望して死を恐れて街に留まり続け、未来永劫脱出は出来ないのかもしれないだろう。
……なら何故彼女は戦おうとしているのだ?そう考えているのなら何故?キリトはそれが気になりアスナにそれを聞く。
「……そう考えているのなら、何故アンタは戦おうとしている?」
「……例えこのゲームから脱出出来ないのだとしても、私はこの世界には負けたくない。……この世界にだけは負けたくない。……だから私は戦っている」
つまりアスナは、ゲームクリアが無理だとしてもこの世界に抗いに抗い続けるというのだろう。
キリトはそんな彼女を見て、不意に"刹那"だった頃の自分を思い出す。
……かつて彼が所属していた私設武装組織ソレスタルビーイングの仲間達のことを、彼らと共に歪んだ世界に抗うべくして"ガンダム"を駆り、戦争根絶を為すべくして戦い、散っていった仲間達のことを…
「……ならば生き続けろ」
「……えっ…?」
アスナは彼が言った言葉に少し驚き、相手に目が見えない程度に顔を上げてキリトの方に向く。
「世界に負けたくないというのなら生き続けろ。アンタは今例え死んだとしてもと言ったがそれでは世界に負けるということになる。だからこの世界に負けないというのなら生き続けろ」
「……」
キリトは彼女のフードで見えない目を見て能弁かつ少し声を強めて話した。
彼がそう声を強めて話すのは珍しかった為、アスナは驚いてしまった。
話を終えたあと、キリトは失礼すると言いその場から立ち去り、今日泊まる予定の宿屋へと向かって歩き出した。
一人ぽつんと残ったアスナはその後暫くぼうっとした後、残っているパンを一気に食べ終えて泊まる予定の近くの宿屋へと向かい歩き出した。
ちなみにこの後アスナは宿屋の部屋数が足りず、唯一1人分空いていた部屋……キリトが使っている部屋に泊まることになり、異性の人と寝泊まりすることに抵抗感を感じながら少し憂鬱になったというのはまた別の話である。
更に余談だがキリトは異性と泊まろうが別に気にせずにいた……というか本人は別に気に止めることでもなかったのことらしい……。
お疲れ様です。
はい、みなさんお分かりの通りキリトは原作と違い、ディアベルのパーティーに入れました。
共に始まりの街を後にしたのに別のパーティーになるのはおかしいかなと思い組ませました。
後悔はしてないっ(キリッ
それと今回書いててキリト(刹那)がキリト(刹那)らしくないと思ってしまったがこれまた後悔はしてn(ry
……コホン、それでは次回もお楽しみに!
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※誤字脱字、おかしな表現やいらない場所、こうしたほうが良いという場所などが御座いましたらご指摘の方をよろしくお願いします。