東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第11話 並行世界からの来訪者

 

 

「....久しぶりだな、門矢士...。いや....。仮面ライダーディケイド。」

 

 

 

鉛色に染められた、絶えず歪みが生じ続けているオーロラの様な空間の奥から、中年の男が1人現れた。男はどうやら、士のことを知っている様だった。頭にはハットを被り、眼鏡をかけ、この季節には合わない厚手の服装に身を包んでいる。その容姿とその声には、士にも覚えがあった。

 

 

 

「鳴滝...。何故、お前がこの世界に....?」

 

 

「貴様が行く場所には、私は必ず現れる。それだけのことだ。」

 

 

 

士に対し何か険しい顔を向けながら、鳴滝と呼ばれる男は声を発した。彼がこうして姿を現わす時に限って、士にとって面倒なことが必ず起こる。彼の周りを取り巻く人物も、幾度となくソレに巻き込まれてきた。士は頭を抱えたくなる気持ちを抑えながら、鳴滝を見据えながら言った。

 

 

 

「俺はバダンを倒し、昭和ライダー達と戦って以来、様々な世界を旅してきた。しかしその旅の途中、お前の姿は見なかった。...何故此処に来て姿を見せた?」

 

 

「彼女にはもう伝えたが...。この世界に危機が迫っている。今回はソレをより詳しく伝える為に、此処に来た。」

 

 

 

幻想郷に危機が迫っている。ソレはどういうモノであるのか、士には見当がつかなかった。ソレをわかっていたかの様に、鳴滝は話を進めた。

 

 

 

「安心しろ。今回はキミが元凶ではない。元凶は、別の存在だ。」

 

 

 

パチンと鳴滝が指を鳴らすと同時に、士と紫は状況の変化に気付いた。辺りは暗闇に包まれており、それ以外は何も認識できるモノがない。ただ暗闇がそこに広がっているに過ぎない、何も無い空間がそこにあった。

 

 

 

「鳴滝さん?そろそろもう1人の方を出してくれても良いんじゃないかしら?」

 

 

「ああ、そうだな...。それでは、2人に紹介しよう。」

 

 

 

暗闇だけの空間に、例の鉛色に染められた壁が現れる。その奥から姿を現したのは、1人の男だった。顔立ちは青年の様で、人相が若干悪い様だった。全体的に白い服装を身に付け、身体は士とあまり変わらない体型だった。その青年が、士と紫に対し言葉を述べた。

 

 

 

「門矢士さんに、八雲紫さんですね。鳴滝さんから話は伺いました。僕は、別の世界の住人。パラレルワールドと呼ばれる世界から来た者。名前は佐藤練也と言います。」

 

 

 

その名を聞いた瞬間、紫は驚愕した。無理もないだろう。今日自分がスペルカードを渡した人物が目の前に突然現れ、信じられない言葉を述べているのだから。パラレルワールドから来たと言い、しかもその顔は彼と瓜二つという、信じられない事態が紫の前で起きていた。

 

 

 

 

「...僕の世界には、貴方が元々居た世界と同じ様に、仮面ライダーが存在していました。しかし、それは1人だけではなかったのです。」

 

 

 

自身を練也と名乗る男は、指をパチンッと1回鳴らした。するとどうだろう。暗闇は一気に消え、そこに新たな景色が映し出されたのだ。その新たな景色というのは、荒廃した市街地。その景色の中に、2人の戦士が剣戟を交え、激しく戦いを繰り広げている姿があった。

 

 

 

「アレは...!」

 

 

 

士は自身の目を疑った。それもその筈だ。剣戟を交えているその戦士両名の姿は、色を除けば紛れもなく自身が変身するディケイドと同じ姿をしていたのだから。一方は黄金色の身体に黒い眼、もう一方は白銀の身体に青い眼を持っていた。やがて大地は裂け、2人の戦士はその裂け目に落ち、姿が見えなくなった。

 

 

 

「士さんが変身する、仮面ライダーディケイド。その存在が、僕の世界では2人存在していました。1人は聞かずと知れた、破壊者としてのディケイド。もう1人のディケイドは、その破壊を抑制する為に生み出された存在です。」

 

 

「今戦っていたのが、その2人ってこと?」

 

 

 

紫が練也に対し質問し、ソレに答えながら彼は話を進めた。

 

 

 

「そうです。そして僕は、破壊を抑制する役割を負っていた者。白いディケイドに変身する者として、任務を全うしていました。しかし破壊の力を持つディケイドの暴走により、僕の世界は崩壊しました。先程の映像を見ていただいた為、わかると思いますが....。」

 

 

 

映像は消え、また暗闇だけがある空間に戻る。しかし先程の話から察するに、練也は自身の世界が崩壊した時に命を落としたのではないか。紫はそう考え、再度彼に質問する。

 

 

 

「貴方は、その崩壊に巻き込まれて命を落としたの?」

 

 

「ええ。しかし僕は概念という形でなんとか魂だけが生きながらえ、ディケイドライバーと2つのライドブッカーをこの世界に託しました。...そこに別の世界に住んでいる自分が来てくれたのは、幸いでしたが。」

 

 

 

どうやら彼は、練也が幻想郷に入り込んでいることを知っている様だ。

自身が自身の変わりとなり、そのディケイドライバーを手に入れてくれることを、彼は望んでいた。自分で着けれなかった落とし前を、別の世界の自分にしてもらおう。彼はそう考えていた。士が練也に質問する。

 

 

 

 

「(香霖堂で博麗霊夢に封じられたのは、まさかコイツが送ったものだったのか...?)お前は、この世界に何が起こるか知っているのか?」

 

 

「僕にもハッキリとはわかりません。ただ、もう1人のディケイドが僕のディケイドライバーの存在を感知し、此処にやって来る可能性は否定出来ません。最終的に破壊の道を行くのか、それとも永遠の幸福を紡ぐのか。それは貴方方次第です。」

 

 

 

その言葉を最後に、練也は鳴滝と共に姿を消した。2人の目の前に広がっていた暗闇は消え、マヨヒガの庭が全容を露わにする。

 

 

 

「彼等が言っていたことは、確実にこれから幻想郷に影響を及ぼすわ...。」

 

 

「ああ...。そうかもな。」

 

 

 

士は、自身の懐に忍ばせていたディケイドライバーを手に持ち、ソレを見ながら戦いへ身を投じる決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

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