東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第14話 いざ、香霖堂へ

 

 

 

朝の洗顔を終えて着替えを済ませた練也は、早苗から着替え用の袴を受け取り、それに身を包んだ。スッキリとした着心地で、なんとなく気が引き締まる。着替え終えた後、昨日の戦いで紫から渡されたスペルカードを見ながら、練也は次のスペルカードはどの様なものにするか、構想を練っていた。

 

 

 

「ひたすらパワーで圧倒する。コレだな!」

 

 

 

やはり戦い方は自分のスタイルに合ったものが1番。練也は力の限り戦うという想いを込めて、その方針を固めた。1枚を除き、イラストとテキストが描かれていない白紙のカードと睨めっこをする練也だったが、襖の奥から聞こえた早苗の呼び声に反応し声を上げた。

 

 

 

「練也さん、朝御飯の用意が出来ました。」

 

 

「ああ、ありがとう早苗さん。今行くよ。」

 

 

 

部屋から出て早苗の後をゆっくりと歩いていく。朝食が並べられている居間まで行くと、そこには神奈子と諏訪子が既に食卓の前に座っていた。

 

 

 

「すみません、遅くなりました。」

 

 

 

練也が姿を見せ、その姿を見て神様2人は声を上げた。

 

 

「ああ、大丈夫だよ。私達もさっき来たところだ。それにしても、アンタ袴が似合ってるねえ。」

 

 

「今度別のも買う?」

 

 

「良かったですね、練也さん。私から見ても、まるで宮司さんみたいですよ。」

 

 

 

袴がそんなに似合っているとは思っていなかった練也も、ここまで褒められると妙に嬉しく感じてしまう。照れ笑いを作りながら3人に挨拶する練也の姿は、まさに好青年そのものだった。全員が朝食を食べ終わると、練也は黙々と後片付けを始めた。

 

 

 

「....香霖堂か。」

 

 

 

今朝自分の前に突然現れた、同じ顔を持った存在。練也は皿を洗う手を止め、その場で深く考えていた。

 

 

 

「...ちょっと出掛けてみるか!」

 

 

 

皿洗いと身辺の清掃を済ませた後に服装を整え、近くに居た3人に外出する旨を伝える。

 

 

 

「すみません。ちょっと出て来ます。 」

 

 

「出て行くって、何処にですか?」

 

 

 

幻想郷に来たばかりの人間が、いきなり1人で戸外に出るなど危険極まりないことである。早苗は練也の言葉を聞いた瞬間、彼の身に危険が及ぶかもしれないと考えていたが、神奈子や諏訪子は別に気にしていない様子であった。

 

 

 

「ちょっと風景を眺めに、そこらまで。直ぐに戻りますよ。」

 

 

「そうかい。なら気を付けるんだよ。昼間でも危険な奴が居るからね。」

 

 

「はい。行ってきます!」

 

 

 

元気良く声を発し、練也は神社の外へと歩み出た。麓へと通じる長い石段を降りて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石段の左右に広がる森林地帯と、その中で聞こえる小鳥の囀り。時々吹くそよ風が木の枝を揺らし、木の葉同士が擦れる音が彼の心を癒す。穏やかな様子で山の麓に向かう練也であったが、そんな彼の下に1人の妖怪が姿を見せた。

 

 

 

 

「....。」

 

 

 

「....。」

 

 

 

 

 

練也の真後ろに突如現れた空間。生気が感じられない数多の瞳が存在し、何とも言えない不気味な雰囲気を漂わせているスキマと呼ばれる空間から、八雲紫が存在を悟られない様に石段の上に降り立った。練也は紫の存在に気付く事なく、黙って石段を降り続けている。

 

 

 

 

「鈍感なのね貴方。」

 

 

 

 

呆れた様子で言葉を放つ紫。練也がやっとで自分の方に向くと、彼女は続けて言葉を放った。

 

 

 

 

「石段の上に降りた音も解らなかったの?その鈍感さは尊敬に値するわね。」

 

 

 

「まあ、それが俺ですし。あっ、おはようございます。」

 

 

 

 

紫は練也の返事に拍子抜けした様子で、何とか平静を装いながらも返答した。予想以上にサッパリとした返事を返された事に、彼女自身は内心戸惑っていた。

 

 

 

 

「他の娘達と違って、リアクションとらないのね貴方。」

 

 

「一々そんなので反応してたら、寿命が縮まりますよ。」

 

 

 

紫は何かを諦めたかの様に溜息を吐き、1回咳払いをしてから練也に言った。

 

 

 

 

「近況を伝えるわ。最近この幻想郷で、異変が起き始めている。」

 

 

 

「異変?つーか、何で来たばかりの俺に?」

 

 

「貴方にも危険が迫るかもしれないと思ったから、報告しようと思っただけよ。黙って聞きなさい。」

 

 

 

紫が言う異変というモノとは、異形の者達が幻想郷に流れて来ているというものだった。更に練也とは別の外来人も幻想郷に入り込んでいる事が、紫の話で明らかになった。他の外来人はともかく、外から来た異形の者が幻想郷に入り込むのはあまりよろしくない様に思える。それが原因で、最近妖精達の動きも活発化してきているらしい。

 

 

 

 

「(いきなり妖精だの何だの言われても、訳わかんねーな。)...結構深刻ですね...。」

 

 

 

「安心しなさいな。今はそこまで深刻化していないみたいだし、本当に深刻なら私も貴方にこの事を伝えている暇はないでしょうしね。」

 

 

 

 

石段を下りながら、近況の説明をする紫。事態はそこまで深刻化していないとはいえ、警戒するに越したことはない。練也は懐の中に入れていた数枚のスペルカードを取り出し、それらを黙って見つめていた。

 

 

 

 

「今は大丈夫だけど、十分注意した方が良いわね。もしかしたらだけど....。貴方のその力が必要になる時が来るかも知れないわ。」

 

 

 

「どんな時だろうと、力は全力で使いますよ。」

 

 

 

「そう。」

 

 

 

 

そうこうしている間に、2人は妖怪の山の麓まで到着した。守矢神社から外出した練也だったが、問題はこれからどうやって香霖堂へ行くかだ・・・。どう行ったら良いのかが全く解らない。そもそも何処にどの様なモノが存在するかも解らない・・・。言わば右も左も解らない状態だった。紫が練也に質問する。

 

 

 

 

「貴方はこれから何処へ行くの?」

 

 

 

「香霖堂です。でも道が解らなくて....。とりあえず歩きます。」

 

 

 

「解らないって、貴方ねぇ。」

 

 

 

 

呆れた様子で紫は言葉を発した。ここまで来ると、尊敬してしまう程の馬鹿さ加減だ。誰もがそう思うだろう。それ故に、この先どうなるのかが気になって仕方がない。紫は何を思ったのか、練也の足下にスキマを発生させた。

 

 

 

 

「私が連れて行ってあげる。」

 

 

 

 

紫が言葉を発したと同時に、練也の足下にスキマが現れる。瞬間、彼はその空間の中へと落下した。落下の際に響くであろう絶叫を聞く事なく、何事もなかったかの様にその場に存在していたスキマは消えた。

 

 

 

 

「さてと・・・。私も行こうかしらね。」

 

 

 

 

紫は自ら発生させたスキマの中に入り、その場から姿を消した。

 

 

 

 

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