東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第19話 外の世界の脅威

守矢神社の屋内。その一角にある茶室にて、早苗、神奈子、諏訪子の3人はいつもと変わりない様子で寛いでいた。縁側に座ってお茶を飲んでいる神奈子と諏訪子の下へ、早苗がお盆に和菓子を載せて持っていく。ゆったりとした時間が流れる守矢神社では、もうそろそろ昼食を食べる時間が近付いていた。早苗は時計を見てふと思った。練也は、まだ神社には帰って来ていない。

 

 

 

 

「(直ぐに戻るって言っていたのに...。まだ戻って来ないなんて。)」

 

 

 

練也の安否が気がかりなのか、先程から早苗はソワソワしている様子を見せている。神奈子と諏訪子には、それが目に見えて解った。和菓子を2人に配った後、その場で不安な顔をしながら正座の姿勢で座る。その姿を見ていた神奈子と諏訪子は、優しく早苗に言った。

 

 

 

「そこまで心配なら、行ってきなよ。」

 

 

「ああ。此処は私達が見ているから、ゆっくり探してきな。」

 

 

 

神奈子と諏訪子の言葉を聞いた早苗の顔には、不安が一片と無い普段の穏やかな表情が浮かんでいた。準備を整え緑色の頭髪を微風に靡かせながら、彼女は練也の搜索に向かった。

 

 

 

魔法の森で死闘を繰り広げた練也、魔理沙、士の3人は、魔理沙の自宅に到着した。その外見は洋風的なもので、茶色を基調とした煉瓦造りの家屋だった。外装の至る所には微々たる汚れ、植物の蔓が伸びており、窓の内側にまで侵蝕しているものも散見される。

 

 

 

「さあ、着いたぜ。此処が私の家だ。」

 

 

 

魔理沙に案内され、中に入る練也と士。家の中に入るや否や、2人の目には目も当てられない光景が飛び込んできた。僅かな生活感を醸し出す程度に物が散乱しているのならまだしも、コレは度が過ぎている。出したまま放置され、山の様に積み重なっている魔法関連の書物。今や使用用途がわからない、得体の知れない小道具。何かの調合に使うであろう様々な素材も丁寧にまとめられることなく、コレも同じ様に床に散乱している。床が剥き出しになっている場所が殆ど無い。まるでゴミ屋敷に招待された気分の男子2人は、足下に気を配りながら奥へと進んで行った。

 

 

 

「悪いな、散らかってて。まあゆっくりして行ってくれよ。」

 

 

 

そう言う魔理沙に、2人はそれぞれ口から言葉を零した。見たままの感想を言う士に、練也が突っ込みを入れる。

 

 

 

「全くだ。」

 

 

「それはハッキリ言い過ぎだと思うぜ。(まあ、流石にちょっと驚いたけどな。)」

 

 

 

混沌とした空間の中で、3人はノンビリ会話を始めた。まず最初に口を開いたのは魔理沙だった。

 

 

 

「先ずは私の方から御礼を言わせてくれ。さっきは助けてくれてありがとな。士に、えーっと...。」

 

 

 

魔理沙は士とは面識があり、名前もお互いに名乗ったので覚えていた。しかし練也に関しては人里近くで見かけたに過ぎず、顔は覚えていても名前がわからなかった。自己紹介を済ませていなかったことに気付いた練也は、魔理沙の方を向きながら言った。

 

 

 

「俺は佐藤 練也。外来人だ。そういえば、まだお互いに自己紹介してなかったな。」

 

 

「まあしてる暇も無かったしな。私は霧雨 魔理沙、普通の魔法使いだ。これからよろしくな!」

 

 

 

 

互いに名乗ったところで、魔理沙は士と練也を交互に見た。興味深げに2人を見つめた後、彼女は再び口を開いた。

 

 

 

「しかし、さっきは驚いたぜ。何か得体の知れない化け物が突然出て来て、いきなり攻撃してくるんだからな。」

 

 

 

先程の戦闘で練也と士の手により葬られた、レプトーフィスワーム。クロックアップを駆使するレプトーフィスワームの前に魔理沙は苦戦を強いられたが、彼等が現場に駆け付けたおかげで窮地を脱することが出来た。少々考える様な仕草を見せる魔理沙に、士は彼女を見て問いかけた。

 

 

 

「それで。俺達に何か質問があって、此処に招待したんじゃないのか?」

 

 

 

頬杖を突いた格好で思考を巡らせている魔理沙だったが、士の言葉に反応し今回自身が疑問に思ったことを口に出していく。

 

 

 

「ああ。早速だが、さっき私を襲ったあの青色の妖怪のことを知っているか?私が今まで見たこともないヤツだったけど...。」

 

 

「アレは、ワームだ。」

 

 

「ワーム...?」

 

 

 

ワーム。外の世界で確認されている地球外生命体であり、それらが持つ特性は幻想郷の中でも十分通用するレベルであるとみて間違いないだろう。ワームの特性は人間の中からターゲットを選定し、選定したターゲットの容姿や記憶をそのまま受け継ぐというものだ。簡単に言えば、人間に擬態出来るのである。

 

 

 

「成る程...。そのワームってのは、擬態出来るのか。私がさっき戦ったヤツも、もしかすると...。」

 

 

「擬態される前にやれたのが、不幸中の幸いだったってところだな。」

 

 

 

ワームに擬態された者は、殆どその場で殺されてしまう。更にその場でワームを殺し損ねてしまった場合、クロックアップを使用されあっという間に逃げられてしまう可能性もある。そうなればその後の捕捉は困難を極めるだろう。

 

 

 

「それから、アイツ。途中で見えなくなったんだ。...それが、その『クロックアップ』ってヤツなのか?」

 

 

「ああ。だが消えたわけじゃない。一種の高速移動みたいなものだ。時間を支配する能力、っと言ったところか?」

 

 

「私の知り合いでそういう能力を持ったヤツが居るけど、それとはまた別の感じがしたな...。」

 

 

 

士が魔理沙にワームの全般説明をしているその横で、練也は自分の世界に入り込んでいた。どうやらライドブッカーの中を整理している様で、カードを取り出している。1枚1枚を黙々と確認していく内に、練也はあることに気付く。

 

 

 

「...。アレ?」

 

 

「どうした、練也。」

 

 

「何かあったのか?」

 

 

 

練也の疑問系の声を聴き取った士と魔理沙は、視線をお互いの顔から整理に勤しんでいる練也へと向けた。

 

 

 

「カードの数が明らかに足りないんだ。ライダーカードも無ければ、フォームライドカードも無い。アタックライドカードやファイナルアタックライドカードだけなんだ。」

 

 

「どうやら俺の力とはまた別の力が、ソレには備わっている様だな。...詳しい事は、まだわからないが...。」

 

 

 

練也がライドブッカーの中身を士に見せているその様子を見ながら、魔理沙は彼が持っているバックルから放たれる異様な存在感を感じていた。ソレは彼女がつい最近、香霖堂に行った時に感じたものと同様のものであった。

 

 

 

「(そういえば、この感じ...。前にも香霖のところで。)なあ、練也。ソレは何処で手に入れたんだ?」

 

 

「コレは、もらったんだ。霖之助さんから。」

 

 

 

魔理沙の考えは的中した。どうやら、自分が香霖堂で感じたただならぬ気配の正体は、練也が持つバックル。ディケイドライバーと2つのライドブッカーだった様だ。しかしそうなると、色々とまずいことが起きる。例えば、霊夢...。彼女は後程本格的にこのディケイドライバーを封印すると言っていたが...。

 

 

 

「(そういえば、早めに来るとか言っていた様な...。まあ、香霖がなんとかしてくれるだろう。多少面倒になるけど、アイツなら大丈夫だな。)」

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