守矢神社から飛び発ち上空から練也の捜索をしていた早苗は、それらしき人物を発見した。袴を着て歩く男の姿といえば今のところ彼しか該当者はいない筈だと思いながら、早苗はゆっくりと近付いて行く。
「...ん?あっ、早苗さん。」
練也も近付いて来る早苗に気付き、飛行する彼女に向かい声をかけた。早苗はゆっくりと地面に降り立ち、練也に歩み寄る。
「練也さん、大丈夫ですか?帰って来るのが遅いと思って、私探しに来たんです。」
「ああ、特に変わったこととかは無いよ。大丈夫。」
心配そうなそぶりを見せた早苗を見た練也は、多少の罪悪感を感じ早苗に言った。
「すぐに帰るって言ったけど、だいぶ遅れたよ。心配かけてごめんなさい。」
「いえ、何も無ければ私はそれで...。早く帰って、ご飯を食べましょう。神奈子様と諏訪子様もお待ちしていますし。」
ゆっくりと守矢神社に向け帰って行く練也と早苗。
一方、博麗神社。そこでは博麗霊夢が、外出する為の身支度を始めていた。昼食を摂った後なのか、どこか気だるそうな様子を見せながら作業をしている。
「おーい、霊夢ー!居るかー?」
外から自分を呼ぶ声が聞こえる。その声を聞くや否や、霊夢の顔にはより顕著に今の気持ちが映し出されていた。
「(ああ、面倒くさい...。)」
気だるそうな顔を浮かべながら境内へと向かう霊夢。顔は口よりモノを言うとは、まさにこのことだ。境内の方へ向かうと、そこには魔理沙の姿があった。人の都合を考えないのは相変わらずかと思いながら、霊夢は口を開いた。
「どうしたの、魔理沙。」
「なんか何時もより増して、面倒くさそうにしてるなお前。」
「余計な御世話よ。昼ご飯済ませたばかりだし、仕方ないじゃない。」
「それより、話があるんだ。実は...。」
魔理沙は霊夢に異変の兆候が見え始めたことを報告する。更にその異変の一部であるワームのことについても話す魔理沙であったが、霊夢はそこまで過剰な反応は示さなかった。霊夢にとってはワームよりも、香霖堂で感じた絶大な力の気配の方が気になるようだ。
「そのワームだかオームだか知らないけど、私はあの”例のモノ”の封印で香霖堂に行かなきゃいけないのよ。貴女もあの場に居たなら、すぐに封印しなきゃいけないことぐらいわかるでしょ?」
「お前なあ...、外から来た怪物だぜ!?しかも得体の知れない能力を持っている連中ばかり!コレは十分お前が介入する余地ありだろ?!」
「それじゃあ、見つけ次第片付けるわよ。それで良いでしょ。」
ホントに面倒くさがる時と勤勉な時の差が激しいぜ...。心中でぼやいた魔理沙は、神社から離れようと箒に跨った。
「良いか!私はちゃんと伝えたからな!後悔してもしらないぞ!」
そう言って境内から空に舞い上がり、彼方へと飛び去る魔理沙。飛び行く彼女の姿を見送った霊夢は、引き続き支度を続けるのだった。
所変わり、守矢神社。練也と早苗の帰宅に伴い、屋内では一同仲良く昼の食卓を囲んでいた。2日連続で戦闘したことにより、それなりに体力を消耗していた練也は、これでもかと言う程に昼食にがっつく。神奈子と諏訪子は練也を見ながら言った。
「そんなに腹が減っていたのかい?」
「あまり急いで食べるとお腹壊すよ?」
練也は、自分でも信じられない程にエネルギーを消耗していた。午前中に起きた妖精達との戦いに、レプトーフィスワームとの戦い。まさか幻想郷に来てから2日目に、2回戦いを強いられるとは彼は
思わなかった。
「...。はい。でも、なんか身体がエネルギーを求めている気がして...。スペルカードを使った直後から、そんな感覚がしたんです。」
どうやら戦闘時に使用したスペルカードにより、練也はエネルギーをごっそりと持って行かれたようだ。使用したカードはスペルカードの『ヒートスマッシュ』と、多数のアタックライドカードである。
「スペルカードに何か問題でもあるのかな...。(...思い当たる節はあるけど......。)」
「とりあえず、練也さん。今はお腹いっぱい食べて下さいね。ご飯はまだいっぱいありますから。」
「ありがとう、早苗さん。」
昼食とその後の食器洗い等を終えた練也は、居間の卓袱台にカードを並べ何やら考えている様子を見せている。卓上に並ぶカードを前に、腕を組み険しい顔をしている練也が気になるのか、早苗が居間に入り練也のすぐ側に座った。
「うーん...。あっ、早苗さん。」
「どうかしたんですか、練也さん?」
「ああ。新しいスペルカードを作ろうと思って、今どんなのにしようか考えているところなんだ。」
どうやら練也は新しいスペルカードを作ろうとしているようだ。前回スペルカードを作った時は、カードにイメージを込めることによりそのイメージの図がカードにスペルとして反映された。
「多分、紫さんがカードを渡してくれた時みたいにすれば、上手くやれると思う。」
「ルーミアちゃんと戦った時ですね。あの人は神出鬼没な人ですから、どのタイミングで出て来るのかイマイチわかりません。」
「正直、俺もあのタイミングでカードを渡されるとは思わなかったな。」
2人がスキマ妖怪の話題で会話をしだすや否や、突然2人が座っているすぐ側にスキマが現れた。
「「!?」」
その不気味な空間から紫が傘を持って現れ、2人の前に姿を見せた。いつもと変わらぬ落ち着いた様子で、彼女は2人に話しかける。
「早速使ってくれているみたいね。ヒートスマッシュ、格好良かったわよ。」
「いえ、それほどでも。」
紫に褒められ若干照れる練也。早苗は突然の来訪者に若干驚きながらも、口を開く。
「今日はどうしたんですか、紫さん。」
「ええ、ちょっとした見物にね。」
「見物...?」
紫がそう言った後に、突然辺り一帯が霧に包まれた。突然発生した濃霧に驚きを隠せない練也。しかし早苗と紫は、落ち着いた様子でこの状況を眺めていた。
「ふう...。どうやら、天狗の話は本当だったみたいだねえ...。」
霧の中から聞こえる声に、練也は耳を傾けた。声がした方向を見据えるが、誰も姿を現さない。ほどなくして、霧が晴れた。その瞬間、練也は驚きの表情を浮かべる。何故なら、霧が1人の角を生やした少女の姿になったからだ。
「(コイツは...。)」
「さあ。思う存分、楽しませてもらうよ。」
今、守矢神社の境内で、騒然な戦いが繰り広げられようとしていた。