東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第23話 轟く者と、萃める者 前編

 

 

 

永遠亭の屋内に招かれたレプトーフィスワームの少女は、気絶した鈴仙を布団の上に寝かせた。彼女は鈴仙を見守ろうと、静かに畳の上に正座をした。運良く怪我等は負っておらず、身体に異常は見られない。

 

 

 

「(...。何故、私がこんなことを...?)」

 

 

 

今思えばおかしな話だ。人間に危害を加える存在である筈の彼女が、逆に人間を助けるなど...。稀にその場合が発生するにしても、ここまで友好的な対応が出来るだろうか?

 

 

 

「(やはり、あの少女が原因...。)」

 

 

 

擬態する人間を間違えたかと考える彼女の下へ、ある1人の女性が姿を見せた。腰まで伸ばした白銀の頭髪に、紫と赤の2色を組み合わせた特徴的な服装。色白の肌をしたその女性は、レプトーフィスワームを見ながら言った。

 

 

 

「貴女が鈴仙を助けてくれたのね?ありがとう。私は八意永琳。この永遠亭で医師と薬剤師を務めているわ。貴女は?」

 

 

「....名前が、思い出せない。」

 

 

「...そう。」

 

 

 

そう言いながら、永琳はその場に正座をした。安らかに眠る鈴仙を見ながら、彼女は再びレプトーフィスワームに話しかけた。その表情は優しく、落ち着いている様子だった。

 

 

 

「先程はとんだ苦労をかけてごめんなさいね。ウチのヤンチャな白兎が悪戯をしたみたいで。」

 

 

「(ヤンチャな白兎?...あの兎の耳を生やした少女のことか?)別に私は何も被害は受けていないから...。」

 

 

 

先程、林の中から姿を見せた少女。どうやらその少女が落とし穴を仕掛けたらしい。まあ容易く見破られる様な罠は、罠としては機能しないのだが。その罠を仕掛けた張本人のてゐは、罰則として床の雑巾がけをやらされていた。

 

 

 

「そう。なら良かったわ。」

 

 

「それじゃあ、私はこれで...。」

 

 

「待ちなさい。」

 

 

 

おもむろにその場から立ち去ろうとするレプトーフィスワームを、永琳は呼び止めた。立ち止まり振り向く少女に向かい、永琳は先程の表情を崩さずに静かに問いかけた。

 

 

 

「あの竹林で、てゐに道案内を頼んだらしいけど...。彼女にはどうやって気付いたのかしら?」

 

 

「....。」

 

 

「隠れているてゐに気付くなんて大したものね。あの子は、相手が罠にかかった時以外は姿をあまり見せないのだけれど。ましてやてゐが作った罠を容易く見破るなんて、そうそう出来ることじゃないわ。普通の人間じゃあ、まずわからないわよ?」

 

 

 

まるで自分の正体を探るか、もしくは知っているかの様な言い方をする...。てゐが見てる前で少々曝け出し過ぎたかと、安易に行動したことを後悔するレプトーフィスワーム。

 

 

 

「...あの子から、聞いたのか?」

 

 

「ええ...。それに、なにか人間とは違う気配が貴女からしたもの。」

 

 

「.....。」

 

 

「どう?違うかしら?伊達に数十億年と生きてないのよ?」

 

 

 

2人の間に不穏な空気が漂い始めるかと思いきや、永琳はレプトーフィスワームに対する言及を止めた。彼女としては穏やかな時を壊したくはなかったのである。

 

 

 

「...野暮なことを聞いたわね。気分を悪くさせちゃって、ごめんなさい。ただ貴女からは本当に人間とも妖怪とも言えない気配がしたから。」

 

 

「...気にしなくて、良い...。」

 

 

 

2人がそう会話する中、廊下を健気に駆ける1人の白兎の足音が永遠亭に響いていた。

 

 

 

 

丁度同じ頃。妖怪の山、守矢神社の境内にて。そこでは今まさに、戦闘が始まろうとしていた。不穏な雰囲気の中、突然霧の中から現れた少女。伊吹萃香は、リラックスした様子で練也に声をかけた。

 

 

 

「外から来た人間が此処に居るって天狗から聞いてね。暇潰しがてらに行ってみようと思ったわけさ。見たところ、アンタっぽいけど?」

 

 

「(霧が人に変わった...?いや、人なのか...?)ああ。」

 

 

「中々堂々としているね。コレは中々楽しい勝負が出来そうだよ。」

 

 

 

縁側から立ち上がってから身動ぎ1つしない練也に、萃香は多少の微笑みを含めながら言った。どうやらはなから一戦練也と交えるつもりで、守矢神社にやって来たらしい。

 

 

 

「さて。アンタの準備が良ければ、始めようか。」

 

 

 

携行している瓢箪の中に入っている酒を一口呑む。その後口から火炎を放射する萃香を見て、練也は思った。これは避けられない戦いだと。ゆっくりと縁側から離れ、萃香の下へと近付いて行く。

 

 

 

「練也さん、大丈夫なんですか?!」

 

 

「大丈夫。早苗さんが作ってくれた御飯のおかげで元気が湧いてきたし。」

 

 

 

今更相手に背中を見せられるか。コレが練也の本心だった。ここは1つ、この少女に正面からぶつかってみようと心に決め、萃香と対面する。その様子を扇子で顔を扇ぎながら黙って見る紫。いつの間にか現れた神奈子と諏訪子も、黙って縁側に座り練也を見守る。

 

 

 

「(お昼御飯の時はかなり消耗している様に見えたけど...。大丈夫かな...?)」

 

 

 

早苗が心配そうに見守る中、練也と萃香は互いに名乗り準備を整えた。

 

 

 

「私は伊吹萃香。妖怪の山に住む鬼だよ。」

 

「俺は佐藤練也。守矢神社に居候中の外来人だ。」

 

 

 

お互いに距離をとり、相手を見据える。練也は身体中にエネルギーを行き渡らせ、戦闘準備を完了させた。それを見た萃香は、先手必勝と言わんばかりに両手に火球を出現させ、ソレを練也に投擲した。人の顔程度の大きさの火球が練也に迫るが、練也は両拳に力を込めた状態で2発の火球に正拳を叩き込む。

 

 

 

「これぐらいは余裕みたいだね。まあそうでなくちゃ困るんだけどさ。」

 

 

「(能力身に付けてなかったら、多分死んでたな...。)」

 

 

 

火球の炸裂に伴う爆炎と多少の衝撃、地面から舞う土埃。それらが両者の視界を遮る。練也はコレを利用し、攻撃を試みる。衝撃波を伴った一足跳びで一気に萃香に近迫、拳打を浴びせようとする。しかし...。

 

 

 

「どうしたんだい?」

 

 

「?!」

 

 

 

キレのある正拳を数発打ち込むが、まるで効いてないかの様な仕草を見せる萃香。カウンターを数発入れることにより、練也へダメージを与える。

 

 

 

「ふん!」

 

 

「ぐっ!!?」

 

 

 

胸部、腹部に感じる強烈な痛み。そして凄まじい衝撃により、呼吸困難に陥る練也。激しく咳き込むが、すぐに回復し態勢を立て直す。構える練也を前にして、萃香は突然酒を呑み始める。違う。コレはただ酒を呑んでいるわけではない。攻撃の準備動作だ。

 

 

 

「ふっ!」

 

 

 

萃香が口から火炎を吹き出し、その火炎は練也を呑み込もうと迫る。最早回避は出来ない。練也は一か八かの賭けにでた。

 

 

 

「ふんっ!!!」

 

 

 

自身の片腕を横薙ぎの形で振るい、その動作に並行して衝撃波を前方へ扇状に発生させる。それにより迫り来る火炎は練也に到達することなく、辺りに散った。

 

 

 

「やるじゃないか。なら、コレはどうだい?萃符『施餓鬼縛りの術』!」

 

 

「(スペルカード!?)」

 

 

 

萃香は瓢箪と同様、携行している長い鎖を手に持った。数十mあろうその鎖を、萃香は練也目掛けて投擲。練也はその鎖により腕を捕縛され、萃香に引き寄せられる。凄まじいパワーだ。練也は今、鬼が持つ怪力の凄まじさをその身で実感した。

 

 

 

「意外と耐えるねえ。それじゃあ、反対側も!」

 

 

 

使われていない逆の端末を練也に目掛けて放り、追撃を加える。次に狙う部位は頸部。おそらく締め上げて窒息させるか、首の骨を圧し折る気だろう。

 

 

 

「(もう1本!?)ぐっ...!がっ?!」

 

 

 

萃香の狙い通り、練也の首に鎖が巻かれた。凄まじい力で締め上げる。練也は段々と意識が遠退く感じを覚えた。このままではまずい...。なんとかしなければ。

 

 

 

「.....ぐっ...!(あと、もう少し...!耐えれば...!)」

 

 

 

練也は自身の懐からディケイドライバーを取り出し、腹部上に押し当てる。ディケイドライバーの両側面より固定バンドが出現し、それによりその位置でディケイドライバーが固定される。続いて練也は両骨盤部付近に出現したカードホルダー、ライドブッカーから1枚のカードを抜き取った。

 

 

 

「その玩具で最後の悪あがきでもするつもりかい?」

 

 

「.......変、....身...!」

 

 

 

 

意識が途切れる寸前で、ディケイドライバーにカードを挿入。サイドレバーを圧することにより、ディケイドライバーから音声が流れ変身を開始する。萃香は練也の変貌に驚愕した。

 

 

 

KAMEN RIDE

DECADE

 

 

 

練也の左右に多数の鉛色の影が出現したかと思えば、ソレ等が一斉に重なる様にして彼の下へと収束。続いて前方にカード型のエネルギー体が姿を現し、彼の頭部に投げ込まれる様に融合。全身にシルバー、黒、青の3色がペイントされる。

練也は仮面ライダーディケイドに変身を遂げた。

 

 

 

「変身した...!!?」

 

 

「...うおおおおおおおおああああああああっ!!!!」

 

 

 

力尽くで自身の首と片腕に巻かれた鎖を引きちぎり、練也は萃香を見据えた。

 

 

 

 

 

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