東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第3話 此処は、何処? 後編

 

 

幻想郷の人里。その一角では、昨夜空から突然落ちて来たとされる化け物の亡骸を見ようと、現場に集まって来た野次馬達で溢れ返っていた。

 

 

 

「...。」

 

 

 

その現場を目撃した1人。人里にある寺子屋で教師を務める上白沢慧音は、寺子屋の子供達にあの惨状を見せまいと現場を見張っていた。偶然にも不幸なことに、その化け物の亡骸は寺子屋のすぐ近くに落下したのだ。亡骸が人里に落下した時間は丑三つ時を回った頃であり、その時既に慧音は床に伏していた。彼女としては可能であれば処分したかったのだろうが、こうも野次馬にまみれては手の施しようがない。

 

 

 

「(何故人里にこんなものが...。)」

 

 

 

「あやや?誰かと思えば、寺子屋で教師をされている上白沢先生じゃないですか。」

 

 

 

慧音の不意を突くかの様に現れた自称伝統の幻想ブン屋、射命丸文。慧音は驚きもせずに文の方に顔を向けた。

 

 

 

「あんまり驚かないんですね。」

 

 

「当たり前だ。お前がその様な現れ方をするのは、今に始まったことじゃないだろう?」

 

 

「むっ、酷いですね。人が折角挨拶に来てあげてるのに。」

 

 

「それで。今回は特ダネを集めに山から下りてきたのか?」

 

 

「流石、上白沢先生。新聞記者というものは、常に特ダネを集める為に行動しなければならないもの。私は今まさに、特ダネの為に動いている最中なんです!それでは!」

 

 

そう言って空に舞い上がり、遥か彼方へと飛び去る文の背中を見送る慧音。ここで油を売っている暇があるのなら、とっとと記事を書けと誰もが言いたくもなるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、守矢神社。

神奈子、諏訪子、早苗の3人と共に朝の食卓を囲んだ練也。先程食べた朝食のおかげで、どうやら彼の空腹感は綺麗さっぱり無くなった様だ。満足気な表情を顔に浮かべながら、朝食後の片付けを早苗と共にのんびりとこなしていく。

 

 

 

「なあ、早苗さん。」

 

 

「何ですか?」

 

 

「ありがとう。看病してくれて。」

 

 

「私は当然のことをしただけです。目の前に死にかけている人が居て助けないなんて、巫女の風上にもおけませんから。」

 

 

「おみそれしました。」

 

 

 

早苗がゆっくり丁寧に食器を洗って、練也がそれを拭くといった役割分担で作業は進められていく。作業をしている間、練也はあることを思い出した。彼は昨夜の戦闘で、山中に貴重品を置き去りにしてきたのだ。財布、携帯電話、保険証、その他諸々の物品も無論、あのリュックの中だ。

 

 

 

「(此処に持って来ては....。...ないよなあ...。ナイトビジョンも吹き飛んだ時に落としちゃったし...。)」

 

 

「練也さん、どうかしたんですか?」

 

 

「えっ?」

 

 

「手が止まってますよ?」

 

 

「あっ、ああ。なんでもないよ?うん。ゴメンな。」

 

 

 

つい上の空になってしまった練也。貴重品のことは半ば諦めた方が良いかもしれないと考えつつ、片付け作業を終了した。次はいよいよ神奈子と諏訪子からの質問攻めの時間だ。早苗と共に2人が待っている茶室へと足を運ぶ。部屋に入ると、早速八坂神奈子と洩矢諏訪子の2人が姿を見せた。朝食の時とは変わらない雰囲気の中で、会話はスタートする。

 

 

 

「片付け作業お疲れ様。さて、早速だけど。先ずは自己紹介からだな。私は八坂神奈子、この守矢神社の祭神だ。隣に座っている諏訪子もこの神社の祭神だよ。」

 

 

「私は洩矢諏訪子だよ。よろしくね。」

 

 

 

なんと。目の前に座っている2人は神だという事実を告げられ、練也は自分の耳を疑った。しかし彼女等は神に相応しい雰囲気、佇まいをしているとは彼にもなんとなく理解は出来た様だ。練也は構わず話を進めた。

 

 

 

「佐藤練也です。一応、普通の高校生をやってます。よろしくお願いします。」

 

 

「ああ、よろしく。しかし一応と付け加えている様だが、それは何故だ?」

 

 

「恐らく、昨日保護される前の話なんですが...。」

 

 

 

練也は化け物との戦いの末、瀕死の状態に陥った。立つこともままならない状態で、彼は化け物に一矢報いたいという感情を持ち続けた。そこから力が漲る感覚を身に覚え、気付いたら地面が爆ぜ、自分と化け物は宙を舞っていた。何を言っているのかわからないと思うが、彼にも全然わからない。

 

 

 

「ふむ...。一種の覚醒かもしれんな。」

 

 

 

一通り練也の話を聞いた3人は、皆興味を示しながら考え込んでいた。ここに至るまでの記憶を整理し始めた練也は、ある部分に注目した。山に入ってすぐに、自分が遭難したことに気付いた直後。ここから何かが違う様に思えた。

 

 

 

「...しかしそうか。吹き飛んで此処まで来たのか。」

 

 

「昨日の騒音は、練也が原因だったのかもね。山の中から此処まで来るのに飛んだり歩いたりして到着するならまだしも...。」

 

 

「吹き飛んで此処まで来るとなると、相当な力が必要かもしれませんし...。」

 

 

 

昨日練也が発動したとされる”何か”によって騒音が発生し、ソレが幻想郷中に木霊した。その”何か”が何なのか彼にもわからないが、とりあえずそれがただならぬ力を持っていることは確かだろう。練也は先程から気になっていたことを、神奈子達に質問する。

 

 

 

「俺からも、1つ質問させてもらって良いですか?」

 

 

「ああ、構わないよ。」

 

 

「それじゃあ1つだけ。...此処は、何処ですか?」

 

 

 

 

神奈子はこの質問を練也に問われる以前から、気付いていたことが1つだけあった。練也は、この世界の住人ではないということだ。幻想郷ではあまり見ない奇抜な配色が施された服装と、山の中で遭難し此処まで辿り着くに至った経緯を聞いた結果、その結論に至ったわけである。

 

 

 

「そうだな...。此処はお前が知る世界とは違う、別の世界とでも言っておこうか。」

 

 

「別の世界...?」

 

 

「此処は幻想郷。忘れ去られた者達が集う場所さ。」

 

 

 

忘れ去られた者達が集う場所...。神奈子が発した言葉により、練也は幻想郷に入り込んだことを理解した。

 

 

 

 

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