東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第32話 決闘する衝撃と風刃

 

 

「自分は箒に乗っているから良いものを。...。」

 

 

周りが自然で囲まれている道を歩きながら、門矢士はぼやいていた。先程偶然魔理沙と会って、彼女がこれから博麗神社に行くというので暇ならお前も来いと言ったことに対して、彼は特に訳は無いが行ってみることにした。魔理沙から概ねの道のりは聞いているので、そこまでは難無く辿り付けはするだろう。歩いていると、やがて左手に長い石段が見えてきた。博麗神社に通じる石段である。

 

 

 

「此処か。確かに”空を飛べる連中”には直ぐに行ける場所な訳だ。」

 

 

 

ゆっくりと石段を登り始める士。此処までマシンディケイダーがあれば、もう少し早く着くことは出来た筈だ。旅の途中で逸れた自分の相棒の存在が無いことに対して、今更嘆きも悲しみもせずに士は石段を黙々と登って行った。

 

 

 

所は守矢神社。意識を取り戻した練也は、縁側で1人寛ぎながら前回のダークカブトとの戦いを振り返っていた。自身の視野の狭さが敗因となった先の戦いでは、クロックアップにも苦戦を強いられた。自分にとってかなり手強い相手になると考えていた練也は、かなり険しい表情を浮かべていた。

 

 

 

「.....。」

 

 

「そんなに怖い顔してると、ちょっと近寄り辛いですね。」

 

 

 

いつの間にか現れた文に対して、練也は平静を保ったまま対応する。一瞬境内に風が吹いたかと思えば、その後に彼女の声が聞こえた。風のような速さで此処まで飛んで来たと言うのだろうか。

 

 

 

「こんにちは、文。」

 

 

「こんにちは。今日はどうしたんですか?1人で難しい顔をして。まっ、まさか...!!」

 

 

「まさか...?」

 

 

「練也さんにも、恋の季節が...!」

 

 

 

真剣に考えているところに水を刺されるとはこのことだ。しかし練也は確かに恋愛をしたことはあったが、どれも成就すること無く終わりを告げている。文の言う通り、もう直ぐ彼の恋愛劇が始まる...かもしれない。

 

 

 

「恋愛ぐらい、もうしてるよ。」

 

 

「ワオッ!ソレは誰ですか?!誰を好いていらっしゃるんですか?!」

 

 

「此処には、まだ居ないよ...。外ではやっていたけど、全て失敗した。」

 

 

「あっ、...そうですか...。難しいですよね、恋愛って...。」

 

 

「うん。難しいよ...。それより、今は別の意味で大事なタイミングなんだ。」

 

 

 

練也はゆっくりと縁側から立ち上がり、境内の中央へと移動する。それを黙って見ている文は、自然と何かを感じ取っているようだった。

 

 

 

「練也さん。新しいスペルカードですか?」

 

 

「ああ。イメージが纏まってきたところなんだ。....!」

 

 

 

目を閉じて、深く息を吸いながら。集中し、自身の気を操作する。身体の内面から体表に向かい、一斉に放射するイメージ。

 

 

ソレはまさに、巨大な艦砲が弾着し、炸裂するが如く激しい衝撃....。

練也は今、大和型戦艦の主砲弾の威力をイメージしながら、気を溜め込んでいた。

 

 

 

「....。練也さん。思い出しました。私は今、スクープを探している途中でした。」

 

 

「.....。是非も無し...。っ!!」

 

 

 

 

守矢神社の境内にて轟音が響き渡り、ソレは例の如く幻想郷中に響いたという。守矢神社の屋根瓦は多数剥げ落ち、灯篭は複数が倒壊。狛犬はなんとか無事だった。コレは後ほど早苗の能力で是正したとのことらしい。

 

 

 

 

 

 

地面が轟き、空気が震える。ソレはある人物の行動により、引き起こされた現象だった。両足より出力を大にしたエネルギーを放出させ、大跳躍した後に絶好の場所を選定する。その人物。佐藤練也は射命丸文との決闘をする為に、程良い場所を選んでいた。

 

 

 

「...あそこでどうかな。」

 

 

「あやや、霧の湖ですか。カメラが結露しないか心配ですが、絶好のチャンス!逃しませんよ!」

 

 

「(ただ記事を作りたいだけなのか...?)」

 

 

 

落下と衝撃波を利用した推進力を使い、霧の湖まで一気に突き進む。この時点で既に酷使の域に入るが、身体は悲鳴をあげてはいない。心も高揚し始め、戦闘をやるにあたっては心配は無かった。霧の湖に近付き、衝撃波を使いブレーキをかけて着陸に成功。文も練也の後を追って着陸した。湖畔に佇む2人の周りには、相手が視認出来る程度の霧が立ち混んでいた。静寂に包まれたその中で、文が練也に提案を持ちかけた。

 

 

 

「ただ戦うだけじゃつまらないので、少々工夫を加えます。」

 

 

「どんな風に?」

 

 

「此処は幻想郷。何もかもが美しいこの世界では、戦い方も美しくなければなりません。ということで、今回の取ざ...もとい、勝負では一切の打撃攻撃を禁止とします!」

 

 

「(やっぱり取材なのか。)」

 

 

 

今一瞬だけ文の本音を聞いた気がするが...。しかし練也はこの機会を好都合と捉え、彼女の提案を受け入れた。彼はまだ射撃系統の攻撃は生身の場合充分とは言えず、攻撃の殆どは近接系を占めていた。全ての攻撃が射撃に限定されるのであれば、コレは自身の問題を解決するのに良い影響を及ぼすであろう。練也は戦う前に、身体に力を漲らせる。

 

 

 

「ようし...!」

 

 

「そんなに力まなくても...。でもやる気を出してくれてありがとうございます。」

 

 

 

文もどこか嬉しそうに練也に対して言葉を述べた。お互いに相手を見据え、戦いの準備を整えた。文は自身の周りに風を纏い、練也は自身の身体に赤いオーラを纏った。

 

 

 

「(相手が誰でも、手は抜かない...!全力を尽くす!)」

 

 

「良い目ですね〜。まさに戦う男という感じが伝わって来ます。」

 

 

 

シャッターを数回切った後に、手に持っている団扇を構えながら文が練也に言い放った。

 

 

 

「手加減は不要です!全力でかかってきなさい!」

 

 

 

 

その言葉を聞いた後に、練也は息を大きく吸ってから声を大にして文に言い放った。

 

 

 

 

 

 

「行くぞおっ!!!」

 

 

 

 

 

右腕にエネルギーが収束し、一気に赤く染まる。思いっきり振りかぶった後に手首を半回転させながら前方へ押し出し、そこから赤色の熱線がエネルギーを螺旋状に纏って文に目掛けて放たれる。ソレが迫るも、文は冷静に応じた。

 

 

 

「(凄まじい勢いに、エネルギー。そして直線的な攻撃。私の観察力に狂いは無かったようですね。それにカラス達が持ち帰った情報にも狂いは無かった。)」

 

 

 

文は迫り来る熱線をその場から飛翔し回避する。熱線がか細くなり、やがて見えなくなった直後。文が先程いた場所が盛大に爆発を起こした。地面が抉られその周辺の草木は消し飛び、巨大なクレーターが出来上がった。凄まじい量の砂塵と煙が舞い上がり、まるで先程放たれた熱線の威力を物語るかのようである。

 

 

 

「(点の射撃では少々キツイか...。威力があっても当たらなきゃな...。)」

 

 

 

抉られた地面や、周辺の草木があった場所の状況をカメラにしっかりと収める文。余裕のよっちゃんとでも言うぐらい、あからさまにまだ余裕があることを練也に見せ付けている。団扇を構えながら彼女が言った。

 

 

 

「さあ、次は私の番ですね!」

 

 

 

湖での決闘が、今始まった。

 

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