東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第34話 始動

 

 

 

その衝撃を我が身で感じ取るまで、そう時間はかからなかった。肌の上を流れて行く、見えない莫大なエネルギーの波。練也が放った衝撃波は、ある館の住人達も驚愕させた。湖の付近に佇む、全体を赤一色に染められた巨大な洋館。名は紅魔館と言った。

 

 

 

「やっぱり何か、最近うるさいわね...。」

 

 

 

そこに住まう館の主、レミリア・スカーレットは自身の耳を湖から響く轟音に傾けていた。彼女が言う通り、幻想郷では最近謎の騒音が突発的に発生していた。その原因は誰なのか、もはや言う必要はないだろう。

 

 

 

「失礼します、お嬢様。」

 

 

 

レミリアの近くに、1人の少女が突然姿を見せた。ついさっきまでレミリア以外の存在が確認出来なかった一室に、いつの間にか現れたのだ。銀の頭髪に青を基調としたメイド服に身を包んだ少女は、十六夜咲夜と言った。

 

 

 

「咲夜。音の原因は何かわかったかしら?」

 

 

「はい。先程霧の湖の方を確認したところ、騒音はそこで行われている弾幕ごっこが原因のようです。」

 

 

 

レミリアは予め、自身の側近である咲夜に偵察を命じていた。この不可解な現象は何によってもたらされているのか、レミリア自身気になっていたようだ。

 

 

 

 

「そう。それでも、今までに感じたこともない衝撃だったけど。そんな物騒な弾幕を出せるヤツが居たかしら?霊夢や魔理沙?それとも地底の連中?」

 

 

「いえ、違いますお嬢様。全く私達が面識を持たない人物が1人。それから、妖怪の山に住む烏天狗が1人。双方共に激しく弾幕を放ち合っていました。」

 

 

 

レミリアは部屋の窓辺に立ち、霧の湖を窓越しに見つめた。今も轟音が鳴り響き、地面が若干揺さぶられている。その状況を認識したレミリアは、このことに関して興味ありげに笑みを浮かべながら言った。

 

 

 

「....ということは、先程の衝撃は...。」

 

 

「私の見方では、おそらく前者かと。」

 

 

「....これから面白くなりそうね...。それよりも.....。」

 

 

 

レミリアは視線をフッと下に移す。それは紅魔館の正門の位置で、門番が常駐している場所である。そこを見ながら、レミリアは咲夜に言った。

 

 

 

「あの衝撃で、流石に美鈴も目が覚めたかしら?」

 

 

「少々、確認して来ます...。」

 

 

 

正門の前まで移動する咲夜。そこは、普段と変わらない平和な状況が続いていた。中国衣装を身に付け、その場に腕を組み気持ち良さげに立ち寝している少女。彼女が紅魔館の門番、紅美鈴である。

 

 

 

「....zzz...。」

 

 

「.....。(ニコッ)」

 

 

 

 

その数秒後、美鈴の悲鳴がレミリアの耳に届いた。彼女は衝撃波が来ても起きないというのだろうか...?彼女は紅魔館がまだ平和であることを認識しつつ、紫から言い渡された今回の異変について考えていた...。

 

 

 

「(異世界からの、敵...。っか。)」

 

 

 

 

ところ変わり、幻想郷の某所にて。擬態したそれぞれのフォルミカアルビュスワームは一同に会して、何やら話し合いをしていた。側から見れば、練也、妹紅、慧音が話している様にしか見えない。流石ワームと言ったところだ。

 

 

 

「此処を手に入れるのは、相当骨が折れる...。まさかこれほどまでとはね...。」

 

 

 

妹紅に擬態したフォルミカアルビュスワームが人里での戦闘の経過を報告する。

 

 

 

「そう制圧するのに急くことはないだろう。我々はこの世界の住人達が持つ弾幕という攻撃手段に十分対抗出来る。戦闘を行うどころか、私達の全容も掴めていないのが関の山だ。」

 

 

「見たところ、コイツ等の記憶の中にはレプトーフィスと俺達以外の成虫ワームはまだ認識されていない。」

 

 

 

 

練也に擬態したフォルミカアルビュスワームがそう言い終えると、3体の下へと虫の形状をしたデバイスが飛来し、それぞれの腰や腕にベルトが出現する。ダークカブトゼクターを、自分の力を誇示するかのように擬態したフォルミカアルビュスワームは手に持ちながら力強く言った。

 

 

 

「御首領の力を、俺達が今こそ見せる時だ...!この幻想郷を征服する...。それが俺達に与えられた任務だ...!」

 

 

 

「...ワームが、ただの犬に成り下がるとはな...。」

 

 

「しかし私達は、”一度滅ぼされ再生された身”だ...。今更どうこう言っても始まらない。」

 

 

 

もう2体のフォルミカアルビュスワームの手にはザビーゼクター、ガタックゼクターが握られていた。2つとも暗めの色合いとなっており、禍々しさが、一層増しているように見える。

 

 

 

幻想郷での死闘が始まろうとしている、丁度その頃。博麗神社にて出会った面々は、霊夢から勧められた何番煎じみているかわからない煎茶を啜りながら寛いでいた。しかしそこに紫の姿が無い。魔理沙はほぼ風味だけの煎茶を啜りながら、霊夢に質問した。

 

 

 

「なあ、霊夢。」

 

 

「何、魔理沙。」

 

 

「紫は何処に行ったんだ?」

 

 

「知らないわよ、そんなこと。もっぱら紫のことだし、また何か良からぬことでもやってんじゃないの?」

 

 

 

そう適当に返事を返しながら、ゆっくりとお茶を啜る霊夢。そこへ士が霊夢へと言葉を放つ。

 

 

 

「そういえば、この世界で起こっている異変以外にも手を焼いていることがあるらしいな?」

 

 

「何でアンタがソレに首を突っ込むのよ?ていうか魔理沙から聞いたけど、私が戦ったあの訳のわからないのと知り合いなわけ?」

 

 

「ちょっとした因縁があってな。アイツは俺がまだ旅を続けている最中に色々と面倒なことをしてくれたしな。」

 

 

「ふーん...。」

 

 

 

空間にスキマが生じ、そこから吐き出されるようにして何者かが姿を見せた。宮司の衣装に天然パーマの頭髪、若干人相が悪い顔。紛れもない守矢神社に居候中の外来人、佐藤練也本人だった。彼は今、戦闘を終えたばかりで酷く消耗している様子だった。

 

 

 

「はあ...、はあ...。いつつ、此処は...?」

 

 

「博麗神社よ。此処が結界の大元となる場所。そして、彼女が結界の管理を行っている巫女、博麗霊夢よ。」

 

 

 

練也の後からスッとスキマから境内へと降り立つ紫。ソレに気付いた霊夢は、また紫が良からぬことを考えているのかと思考を巡らせていた。お茶を飲み終わり、ふうっ。と一呼吸置いた後、霊夢が喋り始めた。ソレに合わせて魔理沙も喋り始める。

 

 

 

「次から次へと、客人が来るわね...。私の神社は集会所じゃないわよ?」

 

 

「何言ってんだよ霊夢。折角みんな居るんだから、楽しく息抜きでもしながらゆっくりしようぜ?つーか宴会やってるぐらいなんだし、別に良いだろ。」

 

 

「私は色々あり過ぎて疲れてるのよ...。お客が来ても、どうせ賽銭なんて誰もあげやしないんだから。どうせなら怪物共に幻想郷くれてやろうかしら?」

 

 

「巫女らしくもないセリフ吐きやがったよコイツ。つーか博麗の巫女として1番言っちゃいけないセリフだろソレ!?」

 

 

 

 

その光景を側で見ていた練也は、ただ一言だけ呟くように言った。

 

 

 

「....騒がしいな。」

 

 

「貴方が1番騒がしいわよ。」

 

 

 

紫のツッコミが、彼の耳に届いたかどうかは微妙なところである。

 

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