東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第35話 動き始める者達

 

 

妖怪の山にある、二柱の神と現人神が住まう守矢神社。そこでは、早苗が荒れ果てた境内を自身の能力を駆使し、補備を行っていた。剥がれた屋根瓦は割れた物は捨て、予備の物を屋根に貼り付けていく。神奈子や諏訪子も神通力で社殿や倒れた灯篭を補修している。

 

 

 

「ふう...。これで終わりましたあ...。」

 

 

「終わったか。しかしまあ、よくもまあここまで出来たものだな。素晴らしい。」

 

 

「感心しないで下さい神奈子様!」

 

 

 

早苗が神奈子に対してツッコミを入れる。この惨状を作り出したのは練也だとわかってはいたが、予想以上に境内は荒れていたのだ。諏訪子がある一点に注目し、それを示しながら言った。

 

 

 

「ねえ。多分、ここから飛んで行ったんじゃない?」

 

 

「えっ?」

 

 

 

練也が履いていたと思われる草履の跡が、境内にクッキリと残されていた。それだけではない。その跡の周りには著しく亀裂が残り、そこを中心として何かが外に広がった跡もあった。その跡こそ、練也が発動した衝撃波の跡なのだ。神奈子が心配そうに呟くが、諏訪子ははなから心配していない様子だった。

 

 

 

「練也が此処に来てから、1週間か...。あの子、無理をしなきゃ良いんだけどねえ...。」

 

 

「大丈夫だよ、きっと。今にでも元気な姿を見せて帰って来るよ。(これぐらいのパワーがあれば、へっちゃらだよね。練也。)」

 

 

 

 

神奈子や諏訪子は屋内へと戻って行く。もう直ぐ夕刻になる。早苗は傾きつつある太陽の下、練也の帰りを待っていた。心なしか、彼女も練也を心配しているようだった。

 

 

 

「(この世界に来てから、練也さんはずっと戦ってばかりいる...。なんで私は止めなかったのかな...?)」

 

 

 

 

その時、上空から見慣れた姿の客人が舞い降りて来た。それは文であった。先程練也と一戦交えたせいもあり、少々疲れ気味である。

 

 

 

「あや、早苗さん。こちらに練也さんは来ませんでしたか?」

 

 

「文さん。練也さんなら、まだ帰られてませんけど...。」

 

 

「う〜む、おかしいですねえ。さっきまで弾幕ごっこをやっていたのに。」

 

 

「そうですか...。(1日に何回やるんですか...。本当にもう...。)」

 

 

 

早苗は文の話を聞くと、尚更練也が心配になり仕方がない様子である。文はそれに気付いたのか、早苗に一言残しその場に飛び去ろうとする。

 

 

 

「そんなに心配しちゃってぇ...。まさか早苗さん、練也さんのこと...。」

 

 

「なっ...。ち、違います!私はただ練也さんが無茶をしないか、ちょっと心配なだけで...。早くしないと晩御飯の時間にもなっちゃいますし...。」

 

 

「まあまあ、落ち着いて下さい。早苗さん。」

 

 

 

 

文はこう言い残し、飛び去った。

 

 

 

 

「行ってあげて下さい。あの人、どんな人にも凄く真っ直ぐな人ですから。」

 

 

「.....。」

 

 

 

文を見送った後、早苗もその場から飛び立った。地平線に近付きつつある太陽は、まるで彼女を見送っているかのように見えた。

 

 

 

1人の男が背に荷物を背負い、夕焼けを眺めながらのんびりと歩いていた。非常に軽やかな足取りで、心身共に余裕であることが見て取れる。

 

 

 

「さて、この世界には様々なお宝の匂いがするねえ。この前は博麗神社に行ったし、人里にも少し顔を出したぐらいか。次は何処に行こうかな?」

 

 

 

男の名は海東大樹。博麗神社で霊夢と一戦交えた男である。今も謎多き外来人で、その出所は不明。一切の個人情報も全てが不詳となっているのだ。そんな彼が追い求めるのは、自分にとって価値のあるもの。目標は世界にあるお宝を全て集めることだ。

 

 

 

「確か、香霖堂だっけ...?...此処か。」

 

 

 

森近霖之助が経営する香霖堂に忍び込み、早速お宝をいただこうと試みる大樹だったが、彼の下には脅威が迫っていた。夕暮れの香霖堂。その中から1人の男性が、屋内から窓を突き破り凄まじい勢いで飛び出して来た。いや、吹き飛ばされたという言い方が1番正しいだろう。地面をずり、その後男性はなんとか立ち上がったが、吹き飛ばされた際に負傷したようだ。脇腹を押さえ、顔付きも何処となく険しい。大樹は、その男。森近霖之助の下に駆け寄った。

 

 

 

「きっ、君は...?」

 

 

「ただの通りすがりさ。それより...。」

 

 

 

見かけない人間に一瞬戸惑う霖之助だったが、大樹の立ち位置と言い回しから見て彼が自分を助けてくれる人物だと判断出来た。大樹が香霖堂の方へ向き、おそらく敵であろう存在を睨みながら言った。

 

 

 

「あまり穏やかではない...。というより、やり方がスマートじゃないなあ。誰かは知らないけど、センスないね。」

 

 

「.....。」

 

 

 

その存在は、ゆっくりと屋外へ姿を現わした。外見は驚くべきことに霖之助と瓜二つ。コレもおそらくワームだということを、大樹は即座に判断した。その判断が的中し、姿を変貌させる。その正体は蜘蛛の特徴を持つ、アラクネアワームニグリティア。完璧に化けの皮が剥がれた状態となった。

 

 

 

「ワームか。この世界に入り込んでいたのは、知っていたよ。」

 

 

 

忍ばせていたディエンドライバーを片手に持ち、大樹は臨戦態勢に入る。背負っていた荷物を降ろし、もう片方の手には1枚のカードが握られていた。そのカード。ライダーカードと呼ばれるものをディエンドライバーの銃口側面に装填し、動作させる。それと同時に作動音が鳴り響き、大樹はその容姿を変貌させる。

 

 

 

「変身っ!」

 

 

 

KAMEN RIDE

DIEND

 

 

 

頭上に出現したシアン一色に染められたカード状のエネルギー体が、姿を変貌させた大樹の頭部に融合。仮面ライダーディエンドへと変身を遂げた。

 

 

 

「さて、お宝探しの前に。先ずは害虫を駆除しなくちゃね。」

 

 

 

大樹はアラクネアワームニグリティアに銃口を向け、弾丸を放ち戦いの火蓋を切った。

 

 

「変身した...!?(コレは、まるで練也と同じ感じがするけど...。)」

 

 

 

大樹の姿が変わったことに対して、霖之助は何処か練也が変身した姿に近いと感じていた。香霖堂に流れ着いたディケイドライバーと同じような、凄まじい力のオーラをディエンドライバーから感じた霖之助。その力を、大樹は遺憾なくアラクネアワームに振るっていた。

 

 

 

「まさか、1体だけなんて言わないよね?」

 

 

 

ひたすら射撃で攻撃する大樹。彼はアラクネアワームの特性をある程度は理解していた。中でも上級クラスとされるニグリティアに関しては、集団での戦闘を得意とするワーム。徒党を組み、チームワークを活かして敵を追い詰める戦い方をするモノだと大樹は考えていた。

 

 

 

「他にも居るんだろ?だったら勿体ぶらずに出しちゃった方が良いんじゃないかな?」

 

 

「.....。」

 

 

 

瞬間、ニグリティアの姿が消える。っと、その数秒後に大樹は側面からの打撃をまともに受けてしまう。それから数発の拳打がニグリティアから繰り出され、大樹は防御をする暇もなく直撃。そのまま吹き飛ばされた。

 

 

 

「...ふん、クロックアップか。確かに強敵だけど...。」

 

 

 

ディエンドライバーにまた別のカードを装填し、その効果を発動する。装填したのはライダーカード。ディエンドライバーはこの場合、ディケイドライバーとは別の効果を発揮する。

 

 

 

「なら、僕も使うまでさ。」

 

 

 

KAMEN RIDE

SASWORD

 

 

 

ディエンドライバーより光弾が放たれ、その形は1人の戦士へと変貌を遂げた。仮面ライダーサソードである。霖之助は大樹のその能力に驚愕した。

 

 

 

「(僕が前に見た力とはまた違う力...。自身の姿を変えることなく、別の存在を召喚して戦う力か。)」

 

 

サソードが武器であるサソードヤイバーをニグリティアに振り翳し、それに対抗しようとニグリティアもサソードに突っ込んで行く。両者の間で激しく剣戟が交わされる中、大樹はもう1枚カードをディエンドライバーに挿入した。

 

 

 

「そろそろ僕もお宝を手に入れたいからね。これで失礼させてもらうよ。」

 

 

 

FINAL ATTACK RIDE

DI.DI.DI.DIEND

 

 

 

ディエンドライバーの銃口付近から、無数のホログラムエネルギー体がニグリティアを捕捉する。あとは引き金を引いて、そこから必殺技の1つであるディメンションブラストを放てばそれでおしまいである。しかしそうも簡単にはいかなかった。別のワームがその場に現れ、大樹に襲いかかって来たのだ。

 

 

 

「やっぱり居たんじゃないか。」

 

 

 

やれやれと言いたげに、ディエンドライバーの銃口を新手のワーム。無数の蛹体に向け、ディメンションブラストを放つ。青い光線が蛹体達を飲み込み、連続的に数多くの爆炎爆発が発生した。

 

 

 

「全て焼き払ったつもりだったけど、そうでもないみたいだね...。」

 

 

「!?(何だ、この数は!!?)」

 

 

 

ディメンションブラストが放たれた方向には、ワーム蛹体が発した緑に煌めく爆炎が僅かに灯っていた。そしてその奥には、まだ無数のワーム蛹体が大樹と霖之助に迫って来ていたのだ。

 

 

 

「まさか、これ程の統率力があったとはね。普通の成虫体だと思って、少々甘く見ていたようだ...。」

 

 

「どうするんだい...?このままじゃ、君も僕も此処で殺されることになるが。」

 

 

「何を言っているんだい?お宝の為でもないのに、無駄に命を投げ出せるわけないじゃないか。とりあえず、君も一緒に来たまえ。」

 

 

「えっ?」

 

 

 

そう言うや否や、大樹は新たなカードを挿入して効果を発動。霖之助と共に、その場から逃走を試みた。

 

 

 

ATTACK RIDE

INVISIBLE

 

 

 

一瞬で姿を消した大樹と霖之助。ワーム達はその姿を視認することは出来なかった。

 

 

 

「....。」

 

 

 

ニグリティアは次の目標を定め、ワームは群れを成して進撃を開始した。

 

 

 

 

同じ頃。博麗神社付近。夕刻の山地を颯爽と駆ける3つの影があった。それは人の形をとってはいるが、人ならざる者の仮の姿である。先刻の人里での戦いで、練也、慧音、妹紅の3人に擬態したフォルミカアルビュスワームが3体、幻想郷の主力を撃滅せんと練也達に迫っていた。そして、博麗神社の境内では....。

 

 

 

 

「...ところで、1つ聞きたいんだけど...。」

 

 

「ん?」

 

 

 

縁側で座っていた霊夢が、ふと何かに気付いたかのように口を開く。それは彼女にとって重要なことだった。香霖堂で感じ取った、例の強烈な気配についてのことである。

 

 

 

「本当に今更だけど、霖之助のところで感じたあの箱の気配なんだけど...。」

 

 

「あっ...。(そう言えば、まだ霊夢はこのこと知らなかったよな...。)」

 

 

「(香霖堂。あの箱...。)...ひょっとして、これのことか?」

 

 

 

 

練也が自身の懐から徐ろに取り出したディケイドライバー。霊夢が言う気配の正体は、まさにこれのことだった。彼女も彼女で色々あったのは確かだ。しかしあれ程封印すると豪語していた自分が、まさか忘れてしまうとは...。しかしそれでも香霖堂に行ったのであれば、霖之助から話は聞いている筈だが...。魔理沙も今そのことについて、ハッと思い出したようだ。それを側から見ていた士と紫は、気にせずといった感じである。

 

 

 

「まあ待てよ霊夢。話によれば、練也はコレを使って香霖を助けたって私は聞いたぜ?」

 

 

「...はあ。それは私も本人から直接聞いたわ。ただ気配を感じて、そう言えばと思っただけよ。」

 

 

「というか、練也。お前、身体中包帯だらけだけど大丈夫なのか?」

 

 

「ああ、不思議と。鎌鼬現象かな?(まあ烏天狗なら伝承から言ってそれぐらい起こすのは容易いことか...。)」

 

 

 

 

 

魔理沙が練也の身体に施された応急処置の箇所を見ながら、魔理沙は彼に言った。練也が身に巻いていた包帯からは血が滲み出ていたが、出血量はそれ程ではない。負傷箇所は多数あるものの、痛みもそれ程のものではないようだ。ゆっくりこのまま寛いでからでも、守矢神社まで帰ろうと考えていた練也だったが、それはこれから立ちはだかる敵により阻まれることになる。

 

 

 

「.....。始まったわね...。異変の本章が...。」

 

 

 

 

突然、紫がその場に居る全員に聞こえる声で言う。開いていた扇子をピシャッと閉じた彼女の眼は、若干鋭くなっていた。周辺の森は騒めき、夕日に染められた森は不気味な雰囲気を漂わせている。霊夢も何か迫り来る気配を感じたのか、その場からゆっくりと立ち上がった。

 

 

 

「(この感じは...。あの時とは違う...。敵が増えている...!)」

 

 

 

 

練也も霊夢と同じタイミングで立ち上がった。守矢神社の境内で戦った、あの禍々しい気配。

 

 

 

 

.....そして、その直後。境内へと足を踏み入れた、その禍々しい気配の根源...。その数は3体。

 

 

 

「.......。会いたかったぞ...。」

 

 

 

練也に擬態したフォルミカアルビュスワームは、不気味な笑みを浮かべながら練也に言った。

 

 

 

 

 

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