東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第37話 一進一退

 

 

沈み行く太陽の光を浴びながら、激しく交わる剣戟。刃と刃が干渉することによって生じる火花が、辺りに飛び散っている。その2つの刃。1つは黒き戦士、ダークカブトが持つカブトクナイガン。もう1つは青き戦士。ディケイドが持つ、ソードモードに変形したライドブッカー。両者が打ち合う最中、その付近から霊夢がディケイドに対する援護射撃を行う。

 

 

 

「練也、一旦離れて!」

 

 

「っ!」

 

 

 

 

ディケイドに変身し、ダークカブトと戦う練也。自らの耳に突然入って来た霊夢の声に反応し、咄嗟に間合いを切る為身体前面から衝撃波を放つ。それにより練也は後方へ跳び退き、半ば強制的にダークカブトとの間合いは大きく開いた。先程まで繰り広げられていた打ち合いは止み、今度はこちらからの一方的な射撃が始まる。

 

 

 

「はあっ!」

 

 

 

 

霊夢の周囲には、無数の赤く煌めく札がその頭をダークカブトに向けていた。彼女が巫女棒を持った手とは逆の手で、ダークカブトに向かい翳し札の弾幕を放つ。

 

 

 

「....。」

 

 

 

ダークカブトの現在の形態はマスクドフォームである為、動きに俊敏性がない。霊夢が放った弾幕は赤い軌跡を描きつつ、動き自体に若干のくねりを加えながらダークカブトに迫る。それに対してダークカブトはカブトクナイガンをガンモードに変更し、アバランチシュートを放つことで弾幕の迎撃を試みる。しかしそれだけではない。霊夢は新たに多数の陰陽玉を出現させ、それをダークカブトに目掛けて放つ。

 

 

 

「フンッ!」

 

 

 

ガンモードで迎撃していたダークカブトだが、瞬時にアックスモードに変更。アバランチクラッシュを飛来する陰陽玉に向かい振るい、次々と斬り捨てていく。付近に弾幕が着弾し、土煙が舞うその中からダークカブトはゆっくりと2人に向かい近付いていく。

 

 

 

「中々護りは硬いわね...。」

 

 

「元々防御重視の姿だからな。」

 

 

 

再び近接戦に持ち込む為、ライドブッカーを手に駆け出す。ダークカブトに向かい駆けながらアタックライドカードを挿入し、再び攻撃を開始する練也。それに対してダークカブトは、依然としてカブトクナイガンをアックスモードで維持したまま練也との距離を詰めて行く。

 

 

 

ATTACK RIDE

SLASH

 

 

 

 

「おおおおおおっ!!!」

 

 

「!」

 

 

 

分裂し数が増強された刀身が、ダークカブトに向かい振り下ろされる。それに対し、カブトクナイガンのアックスモードでそれを相殺するダークカブト。数撃打ち合った後に、両者は鍔迫り合いの状態となった。

 

 

 

「何故この世界を征服する!?」

 

 

「さあな...。確かにそれは重要だ。だが今、俺はそんなことよりワームとしての生き方についてしか、考えてないのでなっ!!」

 

 

「ぐあっ?!」

 

 

 

パワーで競り負け、練也はそのまま押されてバランスを崩してしまった。その後アックスモードの刀身が数撃彼の身に振り下ろされ、身体から火花を散らして後方へ弾かれる様に飛ばされた。

 

 

 

「ぐっ...!」

 

 

「大丈夫、練也!?くっ、よくも!」

 

 

 

 

それに対して霊夢が応戦し、数多の札の形を成した弾幕がダークカブトに降り注ぐ。更には妖怪バスター、陰陽玉を混ぜた形で放ち、捩じ伏せにかかる。しかしそれすら動じることもなく、その場に立ち尽くすダークカブト。

 

 

 

「(何かまだ手があるのかしら...?それとも、本当に諦めた?)はああっ!」

 

 

 

 

 

そのまま弾幕を浴びせる霊夢。練也も加勢し、2つのライドブッカーをガンモードに変形させて、火力を注ぎ込む。爆炎と土煙が舞い上がる中、ダークカブトの姿はその中に隠れて見えなくなった。しかし練也と霊夢の直感は、油断を許さなかった。堅牢な防御を誇っている相手だ。そう簡単にやられる筈がないと考えたのである。

 

 

 

「....まだ生きてるな。」

 

 

「ええ。私もそう思うわ。」

 

 

 

 

練也はライドブッカーガンモードを、霊夢は多数の札と巫女棒を構えて出方を伺う。舞い上がっていた土煙は段々と散り始め、その奥の状況が見えるようになってきた。うっすらと見える、何者かの陰。 そのシルエットは、明らかにダークカブトマスクドフォームの形だった。霊夢が練也に目を配りながら思考を巡らせ、次はどう動けば良いのかを判断する。

 

 

 

「(さっきの攻撃では、アイツに気付かれないように緊縛の護符も中に混ぜた。私達はアイツが攻撃するのを待つのではなく、逆に動いて緊縛の罠に掛けるように仕向ければ、後はこちらから一方的に攻撃を仕掛けるだけ。)」

 

 

 

マスクドフォームの鈍重さからして、罠に掛かったと気付く段階では既に出遅れである。ダークカブトの周りには、敵を捕縛する為の緊縛のお札が設置されていた。霊夢は失敗した場合のことについても考えていた。

 

 

 

「(もし緊縛から力尽くで抜け出すようなら、私の二重結界を張ってしまえば今度こそアイツは逃げられなくなる。でも...。)」

 

 

 

 

霊夢には1つだけ懸念事項があった。実はこの作戦、今さっき彼女が思い付いた作戦である為練也には話していないのだ。敵前で作戦を晒すのはマズイ。しかしこれで意図を明らかにしなければ彼も危険な目に逢い、この作戦自体が瓦解しかねない。

 

 

 

「(...練也。霊夢が考えていることは、先程私が言った通りよ。わかった?)」

 

 

「(ああ。3歩歩けば忘れるぐらい馬鹿な奴でも理解出来る説明だったよ。)」

 

 

「(それは良かったわ。)」

 

 

 

 

そう胸中の中で会話する練也と紫。彼女の持つ能力、『境界を操る程度の能力』で、霊夢の思考と練也の脳みそを一時的に直結させたのだ。コレには練也は驚いた。先程までひたすら攻勢に出ようと考えていたが、その考えは改められていた。紫は彼の返答に微笑みを浮かべた。

 

 

 

「行くぞ!」

 

 

「っ!(多分コイツのことだから、馬鹿正直に正面から突っ込んで行くんでしょうね。)」

 

 

 

霊夢の考えは決して間違ってはいなかった。彼は日頃からそういう人間性を持ちながら生活している。そのことを彼女は物心付いた時から手にした”直感”で感じていたが、今回ばかりはその直感は良い意味で外れたのだった。

 

 

 

ATTACK RIDE

BLUST

 

 

 

アタックライドカードを挿入し、その場から射撃を試みる練也。自分の意図が彼に通じていると思い、霊夢は安堵した。これで何1つ心配なく戦える。彼女はそう思いながら様々な弾幕をダークカブトに放った。

 

 

 

「.....ぐっ...!」

 

 

 

ダークカブトは若干身動ぎするが、多少の損害に構わず前に出ながら射撃で応戦する。アバランチシューティングを放ち始めるも、練也や霊夢は回避しながらも射撃を浴びせてくる。ダークカブトが更に前へ出ようとした時、足に何か絡み付く感じを覚えた。ふと足下に視線を移す。そこには、霊夢が仕掛けた緊縛の札があったのだ。更にはアバランチシューティングをしていた右手までもが、緊縛の餌食となり動作を封じられてしまった。

 

 

 

「掛かったわね。貴方にもう逃げ場は無いわ!」

 

 

「聞かせろ。お前等の目的は何だ!」

 

 

 

練也と霊夢は自身の武器を向けながら、ダークカブトに言い放った。それに対し、ダークカブトはまだ余裕を崩す様子を見せていない。まだ何かある。練也と霊夢は警戒を緩めることなく、その場からダークカブトを見据えた。

 

 

 

「...ふっ、言った筈だ...。我々は、この世界を手に入れ我が物にする。あらゆる幻想と呼ぶべきものが集うこの世界は、どんなものも手に入れることが出来る。それだけでは無い。次の世界への足がかりとなるのに、最も価値のある世界だ。御首領は、何がなんでもこの世界を手に入れると言われた。最早この世界が滅ぶも時間の問題よ。」

 

 

 

そう言ってダークカブトは、辺りに響く声で1回笑って見せた。

 

 

 

「この状況で笑っていられるの?貴方に勝ち目は無いわ!」

 

 

「違うぞ、霊夢。コイツはまだ戦える力を持っている。」

 

 

「この後に及んで何を...!」

 

 

 

 

「言うの!」と言いかけた霊夢だったが、突然響いた作動音によってそれが阻まれた。練也の表情が仮面越しからかなり険しくなっていることを、霊夢は今度こそ直感で感じ取った。ダークカブトのコアとなるダークカブトゼクターのホーン部分が、若干動いていたのだ。

 

 

 

「ちいっ!!」

 

 

「はっ!?駄目よっ、練也!!」

 

 

 

 

即座にライドブッカーをソードモードに変形させ、練也はダークカブトに斬撃を浴びせる。それを制止させようとする霊夢の声も届かぬまま、彼は突っ込んで行く。しかし、そこで彼は致命的なミスを犯した。

 

 

 

「ぐっ...!...はっ、しまった!!」

 

 

 

霊夢が仕掛けた緊縛の札が、練也の身体に纏わり付く。彼は完璧に捕縛され、動きを封じられた。それを見たダークカブトは、また大きな笑い声を響かせた。

 

 

 

「あははは!!...自ら仕掛けた罠に掛かるとは、滑稽だなあっ!....次はこちらの番だ...!」

 

 

「(何故だ!?奴はホーンに手を掛けてないのに!)」

 

 

 

ヒヒイロノカネが体外に向かい若干動作を起こし作動音が鳴り響く中、ゼクターホーンが独りでに逆方向へと倒れ、ダークカブトは姿を変えた。

 

 

 

「キャストオフ....!」

 

 

 

CAST OFF

 

 

 

 

ヒヒイロノカネが練也と霊夢に向かい放たれた。霊夢はそれ等の回避に成功したものの、緊縛を破られた。回避する術がない練也はただの的である。言わずもがな、もろに直撃を受けてしまった。それに伴い緊縛から解かれたものの、吹き飛ばされる練也。息を荒げながら、彼はダークカブトを見据えた。

 

 

 

 

CHANGE BEETLE

 

 

 

 

ダークカブトがライダーフォームへと姿を変え、2人を交互に見やりながら、こう言い放つ。

 

 

 

 

「貴様等は、俺が殺してやる...!佐藤練也。貴様は、予告通りにな!」

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