東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第38話 轟く一撃

香霖堂でワームの襲撃を受けた霖之助と出会った大樹は、ワーム蛹体を多数撃破後にアタックライドカードを使用して霖之助と共に退避した。そのアタックライドカード。”INVISIBLE”は自らの姿を不可視状態に変化させ、同時にテレポートの能力が付与されているカードでもある。今回のように多勢に無勢の状態に陥った時には、かなり役に立つカードである。

 

 

 

「さて、此処は何処か。案内出来るかな?」

 

 

 

大樹は自ら携行していた荷物を肩に提げながら、空いている肩を貸しながら歩く霖之助に言った。INVISIBLEは容易に危険地帯から離脱出来る優れものであると同時に、任意の場所を指定出来ないと言った最大のデメリットを備えている。だから容易に使用は出来ない代物でもあるのだ。因みに彼等が今歩いている場所は、竹林の真っ只中。霖之助は簡潔に答えた。

 

 

 

「此処は、迷いの竹林だよ。1度入ったら、永遠に彷徨い続けるという噂は聞いているけど。」

 

 

「随分と好奇心を唆る噂話だね。」

 

 

 

迷いの竹林。そこに特定の人物以外は立ち入らない、所謂禁足地の1つとして幻想郷では噂されている。此処に住む住人と言えば、悪戯好きな玉兎、偉大な薬剤師と名高い八意永琳が有名である。彼等は奇跡的にその永琳が住んでいるとされる、永遠亭の方へと足を運んでいた。

 

 

 

「ふっ。だがそれでも、此処に来れたのもまた運が良いと言うべきかな?この竹林にはどんな重病もすぐに治してしまう名医が居るんだよ。」

 

 

「へえ...。それも興味深い。でも一々こんな人が来ない所に構えなくてもいい気はするね。」

 

 

「相当な物好きか、何か訳でもあるんじゃないか?」

 

 

「物好きならば、確かに言えてるかもしれないね。後者については興味なんて無いけど。」

 

 

 

 

そんな彼等を竹林の中から監視する、ある者の姿があった。擬態を解いたレプトーフィスワームが、気配を殺しながら大樹と霖之助の動向を追っていたのだ。

 

 

 

「(...このまま行けば、ほぼ永遠亭のコースだな...。見たところ怪我人を連れているみたいだが...。)」

 

 

 

冷静に状況を分析するレプトーフィスワーム。彼女は今現在、永遠亭付近のみの警戒をするように永琳から指示を受けている。幻想郷中がワームの存在によって脅かされている状況で、彼女の存在が大っぴらになるのはまずい。だからと言って、居候の身でありながら何もしないというのも気が引ける。そこで誰にも姿を見せない仕事である、”永遠亭周辺の哨戒”を任されたわけである。

 

 

 

「レプちゃん。あたしは何時でも準備OKだよ...!」

 

 

「.....。」

 

 

 

レプトーフィスワームの隣からひょっこりと顔を覗かせたのは、悪戯大好きな玉兎のてゐ。彼女は何時でも仕掛けが発動するように準備を整え、2人の男が絶好の位置まで来るのを手ぐすね引いて待ち構えていた。それになんとも言えない絶妙な表情を浮かべながら、レプトーフィスワームは行動を自粛するようにてゐに言った。

 

 

 

「...相手に怪我人が居るから、止めた方が良いと思う...。」

 

 

「え〜。だってこの時の為にせっかく準備したのに〜...。」

 

 

「後で私が遊んであげるから、...今日は駄目。」

 

 

 

 

レプトーフィスワームに自粛するように言われたてゐはダルさMAXと言った感じで、渋々彼女の指示に従う。大樹と霖之助の行方を見守ってから、彼女はてゐと共に永遠亭へと戻って行った。

 

 

 

 

 

夕刻。もうすぐ太陽が地平線の向こうへ沈もうとしている頃、博麗神社の境内では死闘が繰り広げられていた。

 

 

 

「その程度か...?」

 

 

「...まだだあっ!!」

 

 

「くっ...!(さっきの姿とはまるで違う?!速さが格段に上がっている!)はあぁっ!」

 

 

 

 

霊夢の弾幕がダークカブトの息の根を止めんと迫り、正確かつ、より一層変則的な弾道を描き襲いかかる。それに対し練也と組み合っていたダークカブトは、練也を盾にする形で弾幕をやり過ごす。

 

 

 

「ぐああああっ!!?」

 

 

「練也!」

 

 

 

 

霊夢が一旦弾幕を撃ち終わった後、ダークカブトは練也を突き放してから更にカブトクナイの刀身で斬り付け追撃を加えた。肉や骨を裂かれんばかりの強烈な斬撃が彼を襲い、火花を散らし薙ぎ払った。容赦ないダークカブトの猛攻は、練也の戦闘力を確かに削いでいた。しかしゆっくりとではあるが、ヨロヨロとまたその場から立ち上がり練也は構えた。

 

 

 

「もういいわ、貴方は下がって!あとは私がやるわ!」

 

 

「いや...、まだ戦える...!...コイツは、俺の相手だ...!」

 

 

 

無理に戦闘を続行しようとする練也に、霊夢は叱責を浴びせた。自分の身体がボロボロなのは、練也はわかっていた。見れば見るほど無残な姿である。それでも意地を張り構えを解こうとしない彼の心には、闘志の炎はまだ灯っていた。それが例え、風前の灯火であっても...。

 

 

 

「馬鹿なの、アンタ!?そんな満身創痍の状態で戦っても、勝てはしないわよ!無理して死なれても困るのよ!」

 

 

 

そう言いながら、ダークカブトに妖怪バスターを放つ霊夢。それに対してダークカブトは俊敏性を活かしそれらを回避し、霊夢に詰め寄る。対する霊夢は両手に無数の札を持ち、ダークカブトに放つ。通常の弾幕と小型結界を一時的に形成する特殊な弾幕を混ぜた、搦め手の戦術を駆使しダークカブトを翻弄させにかかる。更にはスペルカードを発動するまでに至った。

 

 

 

「(思った通り速い...!)はあっ!」

 

 

「足掻け。足掻いて、俺を楽しませろ!」

 

 

 

 

戦いが進む度に、ダークカブトは自身の心を段々と高揚させているかのようだった。外見は仮面ライダーだが、中身がワームなだけあって中々の狂気を孕んでいる。戦い方に関しても、先程練也を盾に使うぐらいの非情性も兼ね備えている。純粋に、殺人に特化した生物という分類で見ても良いかもしれない。

 

 

 

「夢符『二重結界』!」

 

 

 

霊夢から放たれた弾幕を俊敏な身のこなしで回避するも、スペルカードで生じた大規模な結界、通常の小型結界が発生し行き足が止まった。それを霊夢が見逃す訳もなく、続いて攻撃する。

 

 

 

「...。(消えた...?)」

 

 

 

結界で囲まれたダークカブトの頭上から不意に封魔針が飛来し、それに反応しカブトクナイで払い除ける。その直後に霊夢が虚空から出現し、ダークカブトに対して跳び蹴りを見舞った。

 

 

 

「っ!」

 

 

 

コレも辛くも防ぐ。尚も結界が自身の周りに張られている為、ダークカブトは動くことが出来ない。そして再度消えた霊夢をまた探すダークカブト。彼女の次の位置は上空であった。

 

 

 

 

「宝符『陰陽鬼神玉』!」

 

 

 

 

上空に居る彼女の頭上に巨大な陰陽の印を象った球体が出現し、それを両手で添えて持つような格好でダークカブトを見下ろす。

 

 

 

「(コレが、霊夢の力か...。)」

 

 

「どう、凄いでしょ?博麗の巫女って。」

 

 

「ああ。(こうでもなけりゃあ、博麗大結界は形成出来ないってわけか...。)だから戦わなかったと。」

 

 

「そういうことよ。...それより、もうお終いかしら?」

 

 

 

練也と紫は霊夢の戦いを静観する。その戦いの行方を見守っていたが、練也は居ても立っても居られない気持ちが段々と込み上げてきていた。元々ダークカブトを倒すと豪語していたのは自分なのに、こんな醜態を晒してしまうとは。自分は力を手に入れても、こんな形になってしまったのが情けなく思えてならなかった。

 

 

 

「.....。」

 

 

 

紫はこの時の練也の心情を見透かしているように横目で彼を見つめた後、霊夢の戦いを静観する。今まさに、霊夢から放たれた陰陽鬼神玉がダークカブトに命中するところだった...。っが、結果は大きく反転する。

 

 

 

「クロックアップ...。」

 

 

 

 

CLOCK UP

 

 

 

 

ダークカブトがクロックアップを発動し、自分だけの時間軸の形成した。迫り来る陰陽鬼神玉

の動きは止まり、その場で制止する。無論、霊夢や練也、紫も同様である。それに目掛けてダークカブトは霊夢に対するカウンター攻撃を行った。ダークカブトゼクターの上部に存在する3つのスイッチを、左から順番に押すことで音声が発せられ、その後マスクドフォーム時の形に復旧。

 

 

 

ONE

 

 

TWO

 

 

THREE

 

 

 

 

「...ライダー...、キック...!」

 

 

 

 

 

ダークカブトはそう言った後、ゼクターホーンを力強く先程と同じ位置まで倒す。それによってダークカブトゼクターを基点とし、タキオン粒子と呼ばれるエネルギー体が一気に前頭部に聳える角に収束。その後に右足へと収束させ、それ等収束したモノ全てを陰陽鬼神玉にぶつける。

 

 

 

 

RIDER KICK

 

 

 

 

「ふんっ!!」

 

 

 

 

ダークカブトのライダーキックと陰陽鬼神玉が干渉したことにより起こったのは、陰陽鬼神玉が打ち返されたという驚くべき事実。その直後にクロックアップは解除され、霊夢には現在の状況を飲み込む猶予は最早無いも同然だった。

 

 

 

「霊夢っ!」

 

 

「待ちなさいっ、練也!」

 

 

「コレが黙って待っていられるかっ!」

 

 

 

俺のせいだ...!俺のせいで、霊夢は...!クソッ、馬鹿野郎がっ!こんな所で膝付いてんじゃねーよっ!まだ立てんだろっ!根性まだ残ってんだろっ!だったら、自分でもう1回でも良いから戦ってみろよ!行けっ!こんなところで腐ってないで、早く行けっ!!自分に檄を飛ばしながら、その場から駆け出す練也。衝撃波を伴った一足跳びで霊夢まで近付き、彼女の盾になる形で前に出た。練也の行動に、霊夢は驚きを隠せない。

 

 

 

「....!?練也!何を...!」

 

 

「迷惑かけて、ごめん!ちゃんと借りは返す!」

 

 

「何言ってんのよ!?無理矢理やろうとしたって...!」

 

 

「必殺技が、まだ残っている。まだソレをやるぐらいの体力は残っている!」

 

 

 

 

練也は辛うじて保っているディケイドの姿のまま、ライドブッカーから1枚カードを取り出して霊夢に言った。

 

 

 

「俺さ。ヒーローになるのが、夢だったんだ。人を誰かの理不尽な手から護る為の、強くて逞しいヒーローに。形はどうであれ、俺はこの幻想郷に来て仮面ライダーになることが出来た。だから...!!」

 

 

「.....だから...?」

 

 

 

ディケイドライバーにカードを装填し、それに伴って作動音が鳴り響く。その最中、練也は力強く言い放つ。

 

 

 

FINAL ATTACK RIDE

 

 

 

 

「この力を...。俺に最大の夢と希望を与えてくれた、この幻想郷の為にも...!俺を助けてくれた人達の為にも、俺は今戦うっ!!」

 

 

「練也...。」

 

 

 

自身の前に連なる、ホログラム状の複数のエネルギー体。ディメンションキックを放つ際の、ディケイドが通る道となる。ソレを見据えながら、奥にある陰陽鬼神玉と、更にその奥にいるダークカブトに向け意識を集中させる。サイドハンドルを左右から圧することにより、ディメンションキックを発動。更には自身のスペルカードを使用し、ディメンションキックの破壊量に上乗せする。

 

 

 

 

DECADE

 

 

 

「轟双撃『ディメンションバスターキック』!!」

 

 

 

衝撃波を推進力とし、更に上空へ向けて上昇。そこから跳び蹴りの姿勢を作り、ホログラムゲートを通過し始める。陰陽鬼神玉に接触した瞬間に青い閃光が煌めき、爆発が発生。その爆炎と衝撃の中、ダークカブトに向かい練也は突き進む。それに対してダークカブトはその場から離脱を図ろうとするが、霊夢のスペルカードによりそれを阻まれる。

 

 

 

「神技『八方鬼縛陣』!!」

 

 

「ぐっ....!!?...馬鹿なっ!?」

 

 

 

 

幾多にも連なる濃密な結界を前に、動きを拘束されるダークカブト。徐々に勢いを増し近付くディケイドに対し何も抗う術を持たないダークカブトは、ただ自らの死を待つのみとなった。

ホログラム1枚を通過する度に、確実にパワーが増している。それを感じていた練也は、今度こそ勝利を確信した。

 

 

 

「馬鹿なああああああアアアアァっ!!!!」

 

 

 

八方鬼縛陣に捕縛され、その後練也が放ったディメンションバスターキックの直撃により、ダークカブトはその場から吹き飛ばされた。凄まじい勢いで境内をずり、そして付近の森林にある大木に激突。そのまま動かなくなり、やがて腰に装着されたベルトはデバイスと別々に脱装された。

 

 

 

「...倒したのかしら?」

 

 

「ああ。デバイスやベルトは無事みたいだけどな。擬態したワームは...。」

 

 

 

大木に保たれ、擬態が解除され醜い姿を晒すフォルミカアルビュスワーム。練也と霊夢、紫に手を伸ばし、まだ抗おうとしながらもその手が3人に届くことはなかった。そのまま力尽き、白い爆炎を発し爆散した。

 

 

 

「.....。終わったか...。」

 

 

「ええ、コッチはね。」

 

 

 

フォルミカアルビュスワームの死を見届けた練也は、変身をその場で解除し元の姿に戻る。その姿を見た霊夢と紫は、驚愕した。包帯は大量の血で滲み、そこから血液が滴り落ちている。最早身に付けているものが包帯として機能するのか、疑問符を付けなければならない程のものとなっていた。当の練也本人も勿論、今まで気にしていなかった分驚いたようだ。

 

 

 

「うわあ...。流石に、出過ぎだなあ。」

 

 

「呑気なこと言ってないで、早く治しなさいよ馬鹿!」

 

 

「そんなに言わなくたっていいだろ?!」

 

 

「うるさい!あの時どれだけ心配したかわからないから、貴方はそんなこと言えるのよ!」

 

 

 

そう口喧嘩を始める2人。その側で紫は、ダークカブトのデバイスとベルトを手に持ちながら、何やら笑みを浮かべていた。

 

 

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