東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第3章 平穏
第40話 ホッと一息


 

 

 

 

練也の周辺の状況は、著しい変化を見せていた。先程まで博麗神社の境内に居た筈だが、360度見渡す限りの暗闇が広がっている。彼自身いつ頃からこの景色に変わったか記憶が定かではないので、なんとも言えない。ただ覚えているのは境内でダークカブトと戦い、その後霊夢と若干口喧嘩をしたところまでは覚えている。しかしそれ以降の記憶が抜け落ちたかのようになくなっている。まず彼は、一体此処が何処なのかを考え始めた。

 

 

 

「....。」

 

 

「気が付きましたか。」

 

 

 

突然何者かの声が、何もない暗闇の中に響いた。練也は辺りを見渡すが、声の主と思われる人物は見当たらない。しかしその声の主はすぐに現れた。オーロラのように歪み、鉛色に染められた壁が生じた。その壁の奥から、1人の男が現れ練也の近くまで歩み寄り、口を開いた。

 

 

 

「まず、僕から貴方方がやってくれたことにお礼を言わせていただきます。ありがとうございます。」

 

 

 

 

練也は続けてその場に佇むもう1人の自分に言い放った。

 

 

 

 

「今回の戦力は、ほんの尖兵に過ぎません。次はまた違う敵が来る可能性があります。」

 

 

「違う敵...?」

 

 

 

またゆっくり歩き始める練也に対し、彼の方に顔を向けながら反応する。すると彼等の周りには幾つもの地球が出現し、それぞれ正常に動いていた。練也はやがて立ち止まり、再び彼の方を向き言葉を述べた。

 

 

 

「そうです。破壊の力を持つディケイドが僕の居た世界で暴走し、それが他の世界にも影響を及ぼしています。」

 

 

「待ってくれ、話が全くわからない。それは俺が持っているディケイドの力のことを言っているのか?」

 

 

 

その練也の答えに、彼は答えた。

 

 

 

「違います。貴方が持つディケイドの力は、破壊を抑制する為にあるもの。僕が言った者とは対極的な存在であり、今では敵対している存在です。」

 

 

「破壊の抑制...。」

 

 

「必然的に今の状況から見て、もう1人のディケイドがいずれこの世界に来ることは間違い無いでしょう。破壊と抑制。この2つの力は、惹かれ合う運命にあります。言うなれば、宿命というモノでしょうか。」

 

 

「宿命...。それより、新たな敵っていうのは...。」

 

 

 

 

練也がそう聞くと、彼は自身の指をパチンッと1回鳴らした。するとどうだろう。周りに存在する地球が、次々と細かい粉状の物体に姿を変えていき消滅していくではないか。コレはどういうことだと、練也は表情を険しくする。

 

 

 

「破壊の力を持つディケイドの能力は、何も単純に対象を破壊するだけではありません。破壊したモノを自身の能力として取り込み、それ等を支配し、力を増大させる能力も持っています。破壊された世界の数だけ、力が増してしまうのです。」

 

 

「ソレを抑える為に、このディケイドライバーがあるのか...。次はソイツが支配している別のヤツが来るってことか...。」

 

 

 

「ご理解いただけたようで、何よりです。すぐに来るという確信はありませんが、彼等は必ずやって来ます。」

 

 

 

 

そして最後に1つだけ地球が残り、その地球が今消えようとしているところで映像は消えた。

 

 

 

「僕は自分の世界を護れずこのような姿になってしまいましたが、貴方なら他の方々と共にディケイドの破壊の力を止めてくれると信じています...。もとより貴方と僕は住んでる世界は違えど、お互いが自分自身であることに間違いはありません。...僕のように身体を無くさないように気を付けて下さい。」

 

 

「ああ...、大丈夫。例え身体は死んでも魂は残るよ。アンタみたいに。」

 

 

「恐れ入ります...。ソレに。...こんなに美しい世界なら尚更、蹂躙されているところも見たくはありませんしね。」

 

 

 

そう言って練也は例の如く現れた、鉛色の歪みが生じた壁の奥へと姿を消した。それに伴い、その場に残っていた練也も意識が何処かへと引っ張られる感覚を覚え、そこで意識が途絶えた。

 

 

 

暗闇から一気に解放された感覚。それは妙な安心感を練也に与えた。彼がゆっくりと目を開けたその先には、木目の天井があった。自分は今、畳の上に敷かれた布団の上に横になっているという状況を認識し、目だけを横に動かしてみる。

 

 

 

「...あっ、練也さん!目を覚ましたんですか!?」

 

 

「やっと起きたわね。」

 

 

「まあ、私の見込み通りかしら?」

 

 

 

 

その目線の先には、早苗と霊夢、紫の顔が見えた。どうやら意識を失ってからは、彼女達が面倒を見てくれたようだ。ムクりとその場から上半身だけを起こし、3人を見やりながら言った。

 

 

 

 

「...3人共。面倒見てくれてありがとう。」

 

 

「本当よ、全く。包帯を替えるのも面倒だったし、途中で倒れたアンタを運ぶのも重くて大変だったし。何より驚かされちゃったわよ。」

 

 

「私も、ひょっとしたら練也さんが死んじゃうのかと思って心配でした。でも、助かって良かったです。」

 

 

「まあ、一件落着と言ったところかしらね。士達の方も終わったみたいだし。」

 

 

 

 

床の間でそう会話を交える4人。ふと外を見れば、既に日は暮れていた。空には月が昇り、僅かな光を幻想郷の大地に届けている。おそらく神社では神奈子と諏訪子が、練也と早苗の帰りを待っている筈だ。

 

 

 

「練也さん。どうしますか?」

 

 

「今日はもう帰ろう...、神奈子さんや諏訪子さんも心配しているだろうし。今日はありがとう、霊夢。」

 

 

「ええ。...ていうか、貴方立てるの?かなり力を使ってたでしょ?」

 

 

 

霊夢の問いに、練也は微妙だと言うかのような絶妙な表情を見せた。しかし大丈夫だと思い無理矢理立ち上がろうとするが、彼の身体は彼の意思とは逆に立つことすらままならない状態だった。膝立ちをしてから立ち上がろうとした練也だが、そのまま前のめりに畳に向かい倒れてしまった。

 

 

 

「...!うおぉっ...?!」

 

 

「練也さん?!」

 

 

「ちょっ、大丈夫!?」

 

 

 

早苗と霊夢が練也の両脇に入り、彼を支えた。彼は戦闘時に莫大なエネルギーを使ってしまい、日常生活に支障が出るまでに至ってしまった。2人に再び布団の上に戻され、はあ...っと1回溜息を吐いてから練也は口を開いた。

 

 

 

「...アレ?おかしいな...。...やばい、這いつくばることしか出来ない...!」

 

 

「どうしましょう...。これじゃあ神社まで帰るのはとても...。」

 

 

 

 

練也と早苗の困り果てた姿を見るや、霊夢は2人に宿泊をするように言った。

 

 

 

「...仕方ないわね。良いわ、貴方達。今日は泊まって行きなさい。」

 

 

「...良いのか?」

 

 

「良いから、良いって言ってるの。...まあ、ある程度きちんとしてくれれば問題無いわ。」

 

 

 

 

 

そう言って、霊夢はその場から去って行った。向かった先は台所で、これから夕食の支度にかかるようだ。その後ろ姿を見送る練也と早苗。再び天井に目をやる練也。彼は今、凄い充実感と感謝の気持ちに包まれていた。

 

 

 

「...それに、貴方には助けてもらったしね。」

 

 

「あら、霊夢?少し嬉しそうね。」

 

 

「アンタは黙ってなさい、紫。」

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