東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第43話 練也の能力

 

 

最後のワームを士達が倒した。これで人里や幻想郷全体に降り掛かる火の粉は、全て取り除けたわけである。今訪れている平穏は、久しく感じる。練也にはほんの僅かの間だというのに、壮大な時間のように思えた。

 

 

 

「(....。この分じゃ、夜は寝れないな...。)」

 

 

 

 

再び目を覚ます練也。自分がこの世界に来てから僅か1週間が経過しただけだというのに、早速弾幕ごっこやら仮面ライダーに変身やら、そして異変やらが発生している。練也は変化に次ぐ変化、戦いに次ぐ戦いで、心身共に疲労がピークを迎えていた。しかし、その疲労感は身体にのしかかる重しと言うより、彼の中では日々の退屈な日常から抜け出した証拠という認識が定着していた。

 

 

 

「(この疲労感...。このやり切った感じ...。今までこんな余韻に浸ることなんてあったか?...いや、無かったな...。)」

 

 

 

胸中で自問自答し、練也は微笑みを浮かべて今の充実を噛み締めていた。それにこの世界に来てからというものの、美少女にしか会っていないと彼はふと思った。彼の心には、再び女性や恋に対する関心も徐々に芽生えていたのだ。

 

 

 

 

「ただいまー!いやあ、疲れたぜえ。」

 

 

 

玄関から元気に声を上げて博麗神社に入る魔理沙は、早速縁側へと腰を下ろして寛ぎ始めた。その後から士と紫が屋内へと入り、霊夢達が居る台所まで向かう。

 

 

 

「魔理沙、紫、士、おかえりなさい。随分と遅かったわね。」

 

 

「ええ。星を見ていたら、時間を忘れてしまったのよ。」

 

 

「アンタ等何してたのよ。」

 

 

「まあ皆さん。そんなことより早くご飯を食べましょう。後は配膳作業だけですから。」

 

 

 

早苗が霊夢のツッコミを遮り、強引に晩御飯の時間へと移行させる。配膳作業も完了し、あとはみんなで合掌して夕食を食べるだけである。

練也もその配膳の音に気付いて、身体に鞭を打って台所へ向かう。

 

 

 

「あっ、おはようございます練也さん。もう夕食の準備出来てますよ。一緒に食べましょう?」

 

 

「...ああ。ありがとう、皆。」

 

 

 

ズラリと並ぶ食卓を前に。....っということはなく、博麗神社にはそれ程の金銭的余裕が無かった。参拝客は来ない代わりに妖怪や鬼や天狗、魔法使いまでもが来る。そんな神社に普通の参拝客が来て収入である賽銭を投げ入れること自体、あまり考えられないことだ。

 

 

 

「おい。主食が無いぞ。」

 

 

 

卓上に並べられた味噌汁、白米、沢庵漬けを眺めながら、士は口を開いた。なんとも質素な食卓である。霊夢の収入は、何も賽銭だけではない。彼女は妖怪退治の巫女としても幻想郷では有名で、それも収入源となる。しかし得られる給料は雀の涙程で、それで神社の維持費や食事など生活面でやりくりしなければならない。氏子も居ない為、彼女1人でこの神社を支えているのだ。

 

 

 

「仕方がないじゃない。ウチは貧乏なんだから。」

 

 

「よくそんなんで神社が持つな。感心だ。」

 

 

「締めるわよ?モヤシ男。」

 

 

「なんだ?脇...。脇?ワキガ巫女?」

 

 

「なんですって!!?」

 

 

 

 

士の言動に顔を赤くさせ、怒り出す霊夢。それを紫に落ち着くように指摘され、平静を保とうとする霊夢。

 

 

 

「落ち着きなさい、霊夢。士、貴方も無闇に挑発しちゃダメよ。この娘こう見えてナイーブなところあるんだから。...ちょっと待ってなさい。」

 

 

 

そう言ってスキマを作り、その奥に手を伸ばす紫。その数秒後、彼女の手には豪華な食卓があった。なんと唐揚げや、シュウマイ。焼き魚と言った豪華な食物が、皿の上に盛られて出て来たではないか。

 

 

 

「(コレがスキマの力か...。すっげえ...。)」

 

 

「さあ、たあんとお食べなさい。今回は私の式、藍の手作り料理よ。」

 

 

 

 

博麗神社ではその日、珍しく食卓の周りが幸せに満ちていたという。先程まで殺伐とした雰囲気だった士と霊夢も、いつの間にか雰囲気は温和なものとなっていた。特に練也。彼に関しては立てない程疲労が蓄積しており、当初はそれ程でもなかったが豪華な食卓を前にして尋常ではない空腹感に襲われていた。

 

 

 

「ガツガツガツガツガツガツ....!ムシャムシャムシャムシャ...。」

 

 

「凄い食うんだな、練也は。」

 

 

「練也さん?あんまり急いで食べない方が...。」

 

 

「凄い食欲ね。あっという間にご飯一杯完食なんて。」

 

 

「(まあ、あれだけ動けば当然かしらね...。)」

 

 

 

それを見ながら、この状況を納得する霊夢。彼女は彼がどのように戦っていたのかを、この中で1番知っていた。ひたすら自らのエネルギーを駆使し、自身の身体を酷使するぐらいの域まで彼は躍動していた。まるでその様相は戦士そのもの。轟音を轟かせ、大地を、空気を震わせ、自身を奮い立たせ戦い、更には自分の芯をちゃんと持ち、それを常に胸中に秘めていた。

今思えば、霊夢は彼の能力を知らない。何故あんなに躍動し、轟き、闘争本能を剥き出しにしながら戦うことが出来るのか。

 

 

 

「....。」

 

 

「...どうした。」

 

 

 

 

急に箸の動きが止まった練也を見て、士は唐揚げを自身の皿に移しながら言った。練也はどこか難しい表情というか、何か考えているかのような顔をする。士の問いに対し、水を一杯流し込んでから練也は答えた。

 

 

 

 

「幻想郷に来てから、早1週間。色々なことがあったけど、特に戦いの中で俺が手に入れた”能力”について気になることがあるんだ。」

 

 

「知りたい?貴方の能力。」

 

 

 

紫はどうやら、練也の能力を知っているようだ。口周りをスキマから取り出したテッシュで一通り拭いた後、彼女は練也に近付いた。彼の手に自らの手を添えてから、ゆっくりと目を瞑る。彼女が添えた掌は、妙に冷たく気持ちが良いものだった。紫の脳裏には、こう浮かんだ。

 

 

 

 

「...人によって、貴方の能力の呼び方は変わるかもしれないわね...。」

 

 

「....そんなに難しい能力なのか...?」

 

 

「いえ、至ってシンプルよ。ただその分奥が深いだけ。...そして、2つの能力を持っているわね。欲張りなこと。」

 

 

 

それからまた一呼吸置いて、紫は喋り始めた。

 

 

 

 

「結論を言うわ。...貴方の能力は、『ありとあらゆるものを吹き飛ばす程度の能力』。そしてあと1つは、『変身する程度の能力』。この2つよ。」

 

 

 

 

遂に、練也の能力が明らかになる...!

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