「『ありとあらゆるものを吹き飛ばす程度の能力』...っか。」
夕食後の片付けを終えた練也は、縁側に腰掛け夜風に当たっていた。夜空を見上げ、1回溜息を吐く。この感覚は、どこか久しいものだ。まるで田舎にある祖父祖母の家に泊りに来た時の感覚に似ている。エアコンが無くとも気持ち良い風が吹き、虫達の羽音は夏の風情を感じさせ、そして微風に揺られて音を鳴らす風鈴。
「(今思えば、俺がこの世界に入り込んだ時から、既にこの能力が身に付いていたのかもしれないな...。)」
ギシギシと音を立てそうな身体には、若干の余熱が残る。微風がまるで練也の身体に溜まっている熱と疲労を取り除くかのように、優しく吹き抜けていく。自身の懐から2枚のスペルカードと一緒に、白紙のスペルカードを取り出した練也はそれらを見やった。
「(俺の、力か...。皆はもっとスペルカードを持ってるんだろうな。俺も力をもっと付けないと...。)」
そういえばまだ風呂に入ってなかったなと思い、練也はゆっくりと支度をして風呂場へと向かう。脱衣所に着き早速身に付けていた袴を脱いで、風呂場に入った。...っが。彼は、そこでは見てはいけないモノを見てしまう。言うまでもなく、女子の裸体だ。
「......。」
「.......。」
先に入浴していたのは、魔理沙であった。肌色の綺麗な肌に彼女特有の金髪。彼の視点からは微妙に湯気で見え隠れしているがスタイルも良く、その裸体はバスタオルで覆われていたにしてもこれはマズイ。練也はその彼女の容姿を見て硬直した。彼は決して魔理沙の入浴シーンを故意に覗いたわけではない。(覗きではなく、もはや堂々と見ているが。)勿論若干そういうシチュエーションに期待していたりとか、色々考えていることはあったが...。
「あっ.....、あっ.....。」
「...まっ、魔理沙....。...。」
見る見るうちに魔理沙の顔が赤み帯びていく。それは恥ずかしさからか、怒りからか。しかしそんなことを今気にしている暇は、練也には無かった。魔理沙が片手を練也に翳し弾幕を放った。
「早く出て行け!この変態っ!!」
星型の弾幕が練也に直撃し、そのまま彼は吹き飛ばされた。っと言っても、ほんの数m程の距離だが。その際生じたボンッ!という衝撃音を耳にした霊夢と早苗は、すぐに駆け付けた。其処には身体の所々に煤が付着しボドボドな練也の姿があった。
「....(あっ、ぶっ飛ばされるパターン...?)」
「....あっ...、アンタって....!!」
「...練也さん...?」
2人が俯きながら言葉を放ち、何やら両手に一杯の札を持っている。いつの間に装備したのかという練也の疑問を他所に、霊夢と早苗は問答無用で力を行使した。
「...この、変態っ!」
「...私は...、見損ないましたっ!」
「...(もう何も言うまい。)」
そう胸中で呟きながら、練也は霊夢と早苗のお仕置きを全身で受けたのだった...。
「アイツが同じディケイドか...。変わった奴はライダーの世界では多く見てきたが、アイツはまた違う感じがするな。」
練也が煙に囲まれ見えなくなったところで、士はまたカタンッとトイカメラのシャッターを切った。
「...。マジかあ...。」
自分が如何に疲れていて注意力が緩慢になっていたからといって、女子の入浴シーンを見ていいという道理にはならない。彼が自身の行いにどれだけ過失があったかを、紫が開いたスキマの中で思い知った。
「あの娘達もちょっとやり過ぎかもしれないけど、貴方も貴方よ?外の世界であれば公然わいせつで逮捕は確実でしょうね。」
「ごめんなさい。...覗いちまうとは...。」
「まあ最初はどうあれ、そのうち良くなるわよ。貴方は元気が1番の取り柄なんだから。」
紫が練也を言葉で元気付ける。その後また脱衣所に戻った練也は、汚くなった身体を綺麗にしてから風呂場を出た。次はいよいよ女子の誤解を解く為に、紫に予め言われて待機していた3人の前に同じように、練也は正座の姿勢で座った。
「...本当に、ごめんなさい!!」
声に力を込めて、確かな誠意を持って練也は女子3人に対し謝罪した。謝るなら早いほうがいい。それならズルズルと引きずるままより、ずっと良いと考えた。
「...。...はあ。わかったわ。紫の話では故意ではないみたいだし。」
「紫様がそう言ったのであれば、私も練也さんを責めたりしません。間違って女子トイレに入っちゃう男の人がいるのと同じで、間違って女湯に入ることもあるんです。」
最後に魔理沙が練也に言った。
「...その...、私も悪かったよ...。まさかあのタイミングで堂々と胸を張って入ってくるなんて思わなくて...。」
「俺も、確認不足だったよ。次から気を付ける。」
「ああ、頼むぜ。それより霊夢。せっかく異変も解決したし、練也や士の歓迎会も兼ねて宴会でもと思うんだが...。」
魔理沙が霊夢に顔を向けながら言う。
「....そうね。練也や士も今回の異変解決で頑張ってくれたし、その労も労うということでやりましょう。」
「いよいよ宴会ですか?ワクワクします!」
いよいよ幻想郷一大イベント、宴会がスタートする。