東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第45話 幻想郷に残るという決意

 

 

異変の翌日、幻想郷に平和な朝が訪れた。太陽が地平線の彼方から顔を出し始め、眩い光が幻想郷の大地を照らし始める。それにつられるかのように博麗神社の巫女、博麗霊夢は布団の上で目を覚ました。

 

 

 

「(...朝、か...。)」

 

 

 

 

陽光が境内を覆っていた暗闇を取り払ったかのように、辺りは明るい。その場で横になりながら障子戸を横にずらして、外の様子を伺う霊夢。静かな朝だ。小鳥のさえずりが耳に聞こえ、それだけで平和だと感じる程に穏やかな気分だ。立ち上がって部屋の外に出てから、軽めに深呼吸をする。

 

 

 

「(昨日は色々とあったけど...。まあ、面子が違っても何時ものことよね...。...でも...。)」

 

 

 

 

昨日は練也の覗き(?)の被害にあった魔理沙と、立派な逸物を見せ付けられた霊夢と早苗の精神的被害が生じたことで騒動になったが、紫の仲介の下無事に収まったわけである。

 

 

 

 

「(アイツや士が居ることで、少し変わったかもしれないわね...。)....?」

 

 

 

 

博麗神社の宿泊客の中には、今回は男性陣も居る。必然的に離れた部屋で宿泊することになるわけだが、その部屋から練也がゆっくりと歩いて来た。彼が挨拶をしてきたので、彼女も練也に返答し声をかけた。

 

 

 

「おはよう、霊夢。」

 

 

「おはよう、練也。やけに早いのね。」

 

 

「うん。あっちに居る時からの習慣でさ。ところで、洗面所とかって何処?」

 

 

 

ボーッとした顔付きのまま、練也は霊夢に言った。朝起きてからの洗顔は、確かにやっておくべきものだろう。寝ぼけ眼のまま目の前に立たれたら、逆にこちらの1日分のやる気を持っていかれそうになる。霊夢は今自分も起きたところだから、洗顔がてら練也を水場に案内することにした。

 

 

 

「私もこれから洗顔するところだから、場所教えるわ。」

 

 

「ああ、頼む。」

 

 

 

 

板張りの床の上を歩きながら、練也は霊夢の背中を見やりながらあることを考えていた。霊夢は確かに博麗の巫女をやっている。昨日の戦闘で霊夢の力を見て、練也はそれを実感した。多方向から迫る凄まじい弾幕に、相手を封じる結界、多種多様な戦闘スタイル。それをこの少女は平然とやってのける。これも修行の賜物なのだろうか?

 

 

 

「(俺の直線的な弾幕とは、全く異なる弾幕。アレを手に入れるのにどれだけ時間がかかったんだ...?)」

 

 

「洗面所は此処よ。」

 

 

「んっ?ああ、わかった。」

 

 

 

案内された先でバシャバシャと顔を洗う練也。洗顔をすれば、やはり気分的に違うものだと思いながら霊夢から手渡されたタオルで顔を拭く。その元気そうな練也の様子を見て、霊夢は言った。

 

 

 

「その様子だと、もうちゃんと動けるみたいね。」

 

 

「ああ、おかげで助かったよ。ありがとう霊夢。」

 

 

「お安いご用よ。」

 

 

 

洗顔を済ませた2人は、ゆっくりと来た通路を戻って行く。そう言えばといったような仕草を一瞬見せた霊夢は、練也にある質問をした。彼は外来人で、彼女は博麗の巫女。この組み合わせである質問と言えば、ただ1つだ。

 

 

 

 

「そういえば、貴方は外来人でしょ?今なら元の世界に帰すことは出来るけど...。」

 

 

「...確かに俺は外来人だよ。だけど...。もうこの世界に興味持っちゃってさ。」

 

 

「昨日の戦いを経験しても、まだそう言うのね。」

 

 

「ああ。それに、それだけじゃない。何も、興味本位でこの世界に残ろうってわけじゃないんだ。初めて弾幕ごっこをやった時こそ、興味本位でやってたけどさ。」

 

 

「ふーん。じゃあ、どういうわけで残るのかしら?」

 

 

「(もう1人の自分と幻想郷を護ることを約束した!っとは、とても言えないな...。)」

 

 

 

少しの間、顎に手を当てて考える練也。それを見た霊夢は気にしない様子で、歩みを進めながら言った。

 

 

 

「...まあ、別に良いわよ。時間なんてたくさんあるし、気持ちの整理がついてからでも結論を出せば...。」

 

 

「いや、もう結論は出てる。」

 

 

「即席で思い付いたかっこいい理由?」

 

 

「そんなんじゃない。...俺は、この綺麗な世界が好きになった。だから残りたい。」

 

 

 

 

練也が歩みを止め、真っ直ぐ霊夢を見つめながら自分の意見を述べた。一片の曇りも無く鋭い、綺麗な彼の目を見て、霊夢は彼の答えに嘘は無いと確信した。そして再び歩き始める2人。

 

 

 

「...。貴方の目を見てわかったわ。それじゃあ

、私が貴方に手を打つ必要は無くなったってことね。」

 

 

「博麗の巫女の仕事が1つ減ったな。」

 

 

「良いのよ、それで収入が得られるわけじゃないし。帰しちゃった人間にどうやってお金請求するのよ。」

 

 

「確かにな。」

 

 

 

そう会話しながら、2人は部屋に戻った。そして朝食後、各々博麗神社を出発する時間が来た。境内に集まった練也、士、早苗、魔理沙を霊夢が見送る。昨日の晩まで紫も神社に居たのだが、いつの間にか姿を消していた。彼女は神出鬼没の存在である為、そこまで気にすることでもないだろう。

 

 

 

 

 

「霊夢、今回は泊めてもらって悪かったな。また来るぜ!宴会楽しみにしてるからな!」

 

 

「ええ。またいらっしゃい、魔理沙。」

 

 

「それじゃあ私は帰るぜ。じゃあな、皆!」

 

 

 

そう言って箒に跨り、魔理沙は境内から飛び去って行った。続いて士も鉛色の壁を出現させ、マヨヒガへ続く道を作った。霊夢は士にも別れの言葉を述べる。

 

 

 

「アンタは色々と気に入らなかったけど、一緒に居れて楽しめたわ。」

 

 

「その毒舌が何時まで持つのか楽しみだな。」

 

 

「言ってくれるじゃない。アンタも宴会には顔出しなさいよ?」

 

 

「ああ。邪魔したな。」

 

 

 

霊夢と練也と早苗の3人がレンズに収まるように調整してから、1回カタンッとシャッターを切る士。それから後ろに生じた鉛色の壁が士を飲み込み、彼の姿は壁と共に何処かへと消え去った。

 

 

 

「あとは、俺と早苗さんだけだな。」

 

 

「そうですね。...はあ、神社に帰った後が怖いです...。」

 

 

 

溜息を零しながら、早苗は落胆する。それを慰めるように、練也が言う。

 

 

 

「大丈夫だよ。事情を話せば、理解してくれる神様だから。お勤めを1日やらなかったぐらいで怒ったりしないよ。」

 

 

「う〜...。...でも、そうですね。神奈子様や諏訪子様もわかって下さいます!間違いありません!霊夢さん、本日はありがとうございました。」

 

 

「良いのよ。気を付けて帰りなさい、早苗。練也も気を付けてね。」

 

 

「ああ。行こうか、早苗さん。」

 

 

「はい。...アレ?でも練也さん、貴方は...。」

 

 

 

早苗と練也は飛べると言っても、意味合いが全く異なる。早苗は純粋に”飛ぶ”のだが、練也の場合は”跳ぶ”という意味が強い。『ありとあらゆるものを吹き飛ばす程度の能力』の効果である。浮遊能力が無い代わりに、衝撃波による莫大なエネルギーを利用し大跳躍をするというものだ。

 

 

 

「大丈夫。きちんと境内を傷めずに帰るから。」

 

 

「....はっ、えっ...?どういう意味?」

 

 

「ちょっとだけ大きな音が出るから、耳を塞いでて。」

 

 

 

 

両足にエネルギーを収束。そこから突然階段の方に向かって駆け出し、跳躍。その後、空中で収束した分のエネルギーを一気に放出。練也は激しいパワーを利用して大跳躍し、空の彼方まで飛翔した。

 

 

 

「またうるさいヤツが幻想郷に来たものね...。」

 

 

「霊夢さん...。その、なんかすみません...。」

 

 

「良いのよ。貴女のせいじゃないわ...。」

 

 

 

 

幻想郷の朝空には、練也が発した衝撃波の轟音が木霊した...。

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