東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第46話 守矢の宮司、誕生! 前編

 

 

 

丸一日帰ってこない練也と早苗の安否を気にしながら待つ二柱の神、神奈子と諏訪子...。いや、そうではない。そもそも心配なぞしていない様子で、神奈子と諏訪子はいつも通り平穏な日常を送っていた。守矢神社を含む妖怪の山に拠点を置く勢力は、今回発生した異変の影響は受けておらず生活自体に一切の乱れも生じていない。

 

 

 

「天狗が書いている記事には異変が解決したとあるが...。」

 

 

「異変起きてたんだね...。」

 

 

 

居間で煎餅をかじりながら新聞を読んでいる神奈子と、その側でノンビリと煎茶を啜る諏訪子。はたから見れば神奈子が母親で、諏訪子がその娘という、母子家庭の構図が成り立っているようにも見える。

 

 

 

「...むっ...。」

 

 

 

神奈子がある記事に視線を集中させた。その記事には、博麗神社で行われた戦闘の経過についての記載がされている。写真も数枚が掲載されており、神奈子はその部分を見ながら何やら感心した素振りを見せた。諏訪子もその記事の内容が気になるようで、神奈子の傍から記事を眺めた。

 

 

 

「どう思う?諏訪子。」

 

 

「う〜ん。私は良いと思うけどな、神奈子の話。」

 

 

 

 

同じ頃、守矢神社の境内。幻想郷に木霊した衝撃音の発生から数分が経過し、再び衝撃音が木霊した。博麗神社より”跳んで来た”守矢神社の居候、佐藤練也が有する『ありとあらゆるもの吹き飛ばす程度の能力』の効果である。彼は戦闘時以外でも、こうして日常的な行動にも能力を活かし活用している。(といっても、最近この使い方を覚えたばかりだが。)

 

 

 

 

「(着地の時が、ちょっと難しいな...。)」

 

 

 

 

どうやら衝撃波の調整がいまひとつのようだ。着地地点に目掛けて衝撃波を放ち、落下時の負担を軽減しようとしたらしいがそれが強過ぎた。境内の一部が多少抉られ、落ち葉が本殿や住居に向かい吹き飛んでいく。後に続いて境内に着地した早苗も、練也の周りを見て愕然とした。

 

 

 

「....。」

 

 

「...ちゃんと元に戻すよ...。うん。」

 

 

「まっ、まあ、早く行きましょう。神奈子様や諏訪子様が心配しているかも...。」

 

 

「そうだね。」

 

 

 

そう言って、住居に向かって歩いて行く練也と早苗。その途中、玄関の戸が開けられた。先程の騒音を耳にした神奈子と諏訪子が、案の定と思いつつ結果を確かめに来たのだ。

 

 

 

 

「やっぱりお前だったかい、練也。全く、また境内が変になっているじゃないか...。」

 

 

「...すみません、後で直します。」

 

 

「神奈子様、諏訪子様。お待たせして申し訳ありませんでした。」

 

 

 

それぞれ謝罪する、練也と早苗。それにあまり気にしてないといった素振りを見せながら、諏訪子は言った。

 

 

 

 

「2人共、お疲れ様。無事で何よりだよ。それより神奈子。練也に伝えようと思ったことがあるんじゃない?」

 

 

「俺に?」

 

 

「(なんでしょうか...?)」

 

 

「そうだな。その素質が十分あるか微妙だが、練也。お前に言っておかなければならないことがある。」

 

 

 

屋内に上がり、お互いに姿勢を正し座って向かい合う二柱と2人。そこで神奈子は、練也にこう言った。

 

 

 

「守矢神社の、宮司になる気はあるか?」

 

 

「...んっ?」

 

 

 

宮司?ふと練也の頭の中に浮かんできた、疑問符付きの2文字。そう、宮司である。神の下に使え、厳しい修行を積み心を清めた究極の聖職者にして、神道を極めた歴戦の猛者。それが...。

 

 

GUJI

 

 

である。

 

 

 

っと、わけのわからないことを胸中で抜かす練也を他所に、軍神、八坂神奈子は話を進める。

 

 

 

 

「まず最初に言っておくと、ウチにはあまり居候を養う余裕も無くてね。氏子はたくさん居るが、居候の為にその者達からお金を更に絞り取ることも出来ない。」

 

 

「....。」

 

 

「そこで、練也には見習いから宮司を始めてもらうことに決めた。」

 

 

「....えっ、っと...。マジですか?」

 

 

「ああ、そうだな。もっと現代風に言うと、『えらくガチだ』。」

 

 

 

『ガチである』と、神様の口からその言葉が出ることを予想しなかった練也。いや、もっと驚くところあるだろう...。まさに自分はこの神社で宮司になるということを、目の前の神様から求められている。その現実を認識した上で、彼は具体的に何をすればいいのか神奈子に聞いた。

 

 

 

「神奈子さん。宮司って、祝詞を唱えたりとか色々あると思うんですが...。」

 

 

「いや、そんな面倒なことは最初からしなくて良いさ。それは早苗に任せてもらって構わない。練也には、この守矢神社の信仰を集めてもらおうと思ってね。」

 

 

「信仰心ですか?」

 

 

「そう、信仰心。コレは私達神が存在する為には必要不可欠なものだ。」

 

 

 

 

信じると言う字に、仰ぐと書き、信仰。その心のことを信仰心という。姿無きものを信じ、それを大切にするという日本人の素晴らしい文化の1つである。この信仰心が絶えれば、神様は人間から認識されなくなり存在出来なくなってしまう。

 

 

つまり、守矢神社の宮司や巫女が良い事をすれば、神社の人気は高まり信仰する者も増える。

 

 

練也は自分に求められていることが、今わかった。働けと言うのだ。脛かじってばかりいねーで、貴様も働きなさいよ!っという神奈子と諏訪子の訴えだと、彼は考えた。確かに今まで好き勝手に幻想郷をのらりくらりと歩いていたし、神社には何1つ貢献していない。帰る気も失せた今となっては、守矢神社に貢献してこの世界で暮らす。練也は、腹を決めた。

 

 

 

「わかりました!...俺、宮司になります!」

 

 

「よし、では決まりだな。今日については壊した境内を元に戻して、それで終わりだ。明日は信仰を集めに人里へ降りてもらう。わかったかい?」

 

 

「はいっ!」

 

 

 

そう返事をする練也。その側で、早苗は微妙な表情を浮かべていた。

 

 

 

「(大丈夫かな...?)」

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