東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第47話 守矢の宮司、誕生! 中編

 

静かに時が進む妖怪の山に、突如として響く轟音。その轟音は万物に振動を与え、それはそこの住人達にも伝わる。烏天狗、白狼天狗、河童、鬼、その他の妖怪。それ等の存在がまたこの音かと、耳を傾けた。最近突発的に起こるこの正体不明の衝撃音は、守矢神社付近から発せられていると文々。新聞の紙面で公表された。その現象は、一体誰によってもたらされているものなのか?神社の面子を除きそれを知る者は、ある2人の人物を置いて他になかった。

 

 

 

 

「相変わらず騒がしいねえ...。」

 

 

 

 

1人で朝酒に興じる、1人の鬼が居た。彼女は伊吹萃香。前に守矢神社で外来人と一戦交え、その日の晩杯を交わした。以降、その外来人と面識を持つようになる。瓢箪に入っている酒をクイっと一杯口に含みながら、上機嫌な様子で守矢神社の方向を見つめた。

 

 

 

「また暇潰しに行ってみようかな。」

 

 

 

そう言って、彼女は霧となり守矢神社へと飛んで行った。

 

 

 

それから少し時間が経ち、守矢神社の境内には1人の男が姿を見せる。たった今、守矢の二柱の命を受けて宮司(仮)に就任した佐藤練也だ。まだ祝詞も唱えられないのであれば、(仮)でも十分だ。っと本人が言ったので、(仮)を付けることとしよう。

 

 

 

 

「さて...。クレーター拵えたは良いが、どうやって戻すか...。」

 

 

 

 

練也は途方に暮れていた。自分がエネルギーの調整を失敗したばかりに、それがとんでもない過失に繋がってしまったと彼は自覚する。ポリポリと天然パーマのかかった頭髪を掻き、まるで王手がかかった自分の王将の駒をどうやって助け出せるかと考えるような表情を浮かばせる。

 

 

 

 

「どうしようか...。とりあえずどっかからでっかい岩でも持って来て...。...ん?」

 

 

 

辺りに霧が立ち込め始めた。一体どういうことだ。幻想郷では晴れていても霧が発生するのかと練也は考えたが、この霧は違うと彼は気付いた。まるで意思があるかのように辺りを漂っている。立ち尽くして考えている、彼の脳裏にはある人物の姿が映った。

 

 

 

「萃香か?」

 

 

「ご明察だよ。覚えていてくれて何よりだねえ。」

 

 

 

 

霧が空中で形を成していき、辺りの視界がクリアになったと同時に萃香が姿を見せた。ゆっくりと境内に舞い降り、練也に挨拶する。

 

 

 

「数日ぶりだっけ?元気してた?」

 

 

「ああ、元気だよ。萃香も元気そうだな。」

 

 

「アタシは何時でも元気さ。...それより、なんか困っているみたいだけど?」

 

 

 

 

萃香が練也の前に出来上がった、小さなクレーターを見て言った。だいぶ困惑した様子で萃香にモノを言う練也は、自業自得とはいえ、萃香には不憫に思えた。

 

 

 

「...っと言うことなんだ。」

 

 

「それはお気の毒だね〜、能力でそうなっちゃうなんてさ。」

 

 

「壊したりぶっ飛ばしたりは出来るけど、修繕となりゃあ...。」

 

 

「まあ、呑みなよ。話はそれからさ。」

 

 

「うん。」

 

 

 

萃香の勧めに甘んじて受ける練也は、とりあえず酒を一口流し込む。法的にも聖職者的にもこの男は大丈夫なのだろうか?確実に外の世界に戻れば、何かしら問題を起こすこと間違い無しである。

 

 

 

「ふう...。美味い、ありがとう。」

 

 

「うんうん。喜んでもらえて何よりだよ。それより、この穴を埋めれば良いんだろ?アタシにかかれば、こんなもの楽勝さ。」

 

 

 

 

萃香が自身の持つ能力、『密と疎を操る程度の能力』を使いクレーターの中へ細かい砂塵を集積させる。なんと見る見るうちにクレーターが埋められていくではないか。流石だと言うかのように、その現象を見ながら練也は口から滴る酒を手で拭った。

 

 

 

「ふう。ザッとこんなもんで良いかい?」

 

 

「いや、もう完璧だよ。ありがとう萃香。悪いな、酒をもらっただけじゃなくて直してもらってさ。」

 

 

「気にすることは無いさ。そんなことより天狗から聞いたけど、近い内に宴会があるらしいね。アンタも一緒に行くだろ?」

 

 

「...ん?まあな。」

 

 

 

若干酔いが回ってきたのか、練也の顔は萃香のそれに近くなってきた。一杯飲むだけでこうなるとは、流石鬼の酒。油断ならぬ銘酒である。

 

 

 

 

「萃香も行くんだろ?...一緒に行くか?」

 

 

「?!...。えっ...、アタシと一緒に?」

 

 

「おう。」

 

 

「...。ははっ、嘘じゃないみたいだね。鬼と一緒に酒の席まで行くなんてこっちの人間ならまだしも、外来人から誘われるなんてあんまり聞いたこと無いなあ〜。」

 

 

 

練也からの突然の誘いに一瞬驚き、その後あははっ。と萃香は笑いながら言った。

 

 

 

 

「それじゃあ、約束だよ?」

 

 

「...うん、約束だ。」

 

 

 

更に酒を飲む萃香。コイツ、肝臓のリミッター外れてるんじゃないかと思う練也であった。それに加えて練也は改めて、異性に対する関心を抱くようになった。博麗神社の一件で、もうそれが始まっていたのだ。

 

 

 

「...はあ...。」

 

 

「?」

 

 

 

隣で不思議そうに練也を見つめる萃香。彼は今、恋の病にかかっていた。人物は絞れたのだが、一体誰と付き合いたいか、彼は決めかねていた。

 

 

 

「(...恋愛...、っか...。)」

 

 

 

 

今冷静に考えると、彼はその恋愛に対する関心が高まったことから萃香と一緒に宴会へ行こうと思ったのだ。つまり今の段階で彼が1番好いているのは、客観的に見て萃香だという可能性が高い。実際には、誰なのかわからないが...。とりあえず、彼女が対象になっていることは間違いないだろう。

 

 

 

「...んー。」

 

 

「まあ、そんなに唸ることないって。何があったか知らないけどさ。気楽にやろうよ、気楽にさ。はいっ、もう一杯。」

 

 

「...いただきます。」

 

 

 

萃香の肝臓以前に、この瓢箪の中にはどれぐらいの酒が入っているんだろうと、練也はそんなどうでも良いことを考えながら萃香に酒を注いでもらう。クイっと一口流し込んだその後、次第にアルコールが回り始めた。段々と自制が効かなくなってきた。コスチュームや年齢はともかく、自分の目の前にこんな美少女が居るのだ。なんとか堪えなければ...。

 

 

 

「....。」

 

 

 

その2人の姿を、影に潜み見る者が居た。早苗である。練也がどうしているか様子を見に来たのだが、すっかり出来上がっている状態で石段に腰掛けている。クレーターは綺麗な平坦へと姿を変え、神奈子から言われたことはやり終えたようだ。しかし問題なのは、彼の隣に居る萃香である。彼女も出来上がりの状態で、練也の隣でゆっくりと酒を呑んでいる。

 

 

 

 

「(何ですか...?!凄い仲が良さそうじゃないですか、2人共!この間戦った2人の間に一体何が...!)」

 

 

 

というか、何故隠れる必要があるのだろうか?2人は特別な間柄でもないし、何か行為をしているわけでもない。...その行動をとるのは、至って簡単である。早苗が、そういう風に意識しているからである。

 

 

 

「(何か、混ざっちゃいたいけど...。何か駄目な雰囲気がします...!ていうか練也さん、貴方仮にも宮司さんでしょう?!何で昼間からお酒を呑んでいるんですか!?)」

 

 

 

幻想郷では常識に囚われてはいけないと言っていた張本人が、今更何を思おうと石段に座る2人には関係の無いことだった...。

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