東方 躍動仮面   作:佐藤練也

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第51話 予想外の客人

 

 

寺子屋で慧音のありがたい説教と頭突きをいただいた練也は、頭にたんこぶを作りながら寺子屋を後にした。去る際に、練也は慧音から人里の中でマンパワーを必要としている場所は少なからずあるという情報を入手し、その場所へと足を運ぶ。その場所へ行き、多かれ少なかれ信仰を集めることが出来れば、それで御の字だろう。

 

 

 

「(善行をするに越したことはないけど、どれぐらい信仰が付与されているのかがわからないな...?俺にそんな信仰メーターは無いぞ...。)」

 

 

 

次なる現場へと足を運ぶ練也。道を行き交う人々の間を通りながら彼が向かった先は、ただの八百屋だった。先のワーム異変において従業員多数がワームの餌食となり命を落とし、店の営業が困難な状況となっていたのである。...というか、慧音が練也に伝えたのはただの求人情報であって、特別何かを求めている人物の下へ紹介したわけではない。

 

 

 

「(これじゃあただのバイトや正社員の雇用試験に向かうニートみたいだな...。...そんなこと宮司が言うもんじゃないか...。)」

 

 

 

それでも信仰と収入を集めて神社に奉献すれば、最悪これで脛かじりと言われることもない。今回は善行を行うこと自体が仕事だし、ついでに職も見つけて帰ろう。そう意気込み、練也は人里の八百屋へ入って行った。

 

 

 

「すみません!求人情報を得て来た者ですが!」

 

 

「はいはいー。」

 

 

 

中から気前良さげな男が顔を覗かせた。この八百屋の店員か店長か、練也はその人物に案内されて中に入って行った。店内は今日も採れたての野菜が揃っていると言った感じで、品揃えはかなり良かった。

 

 

 

「それじゃあ、新人さん。宮司さんもやっているってことで、不思議な力でもなんでも使って、こうババーッ!!っとやっちゃってよ。ババーッ!!っとさ。」

 

 

「はいっ!」

 

 

 

店内で面接等、世間話なんかを済ませた後に、練也は早速仕事へ赴くことになった。雇用した人材を早速職場に投入する程に、人材が不足していたようだ。早速店の前に立ち、慣れない接客を始める。

 

 

 

「いらっしゃいませ!本日採りたての野菜が出揃っております!」

 

 

「もっと大きな声で!」

 

 

「いらっしゃいませえ!!」

 

 

「人相が悪い!」

 

 

「(余計な御世話だ。)いらっしゃいませえ!!」

 

 

 

内心悪態を吐く練也。宮司が兼業で八百屋の従業員をやっている姿は、あまり見られない光景かもしれない。必死に汗水垂らしながら接客を続けていると宮司の服装が気になるのか、複数人の客と思われる里の住人が集まってきた。

 

 

 

「あれまあ。ここの八百屋さん、神職さん雇ったんですかあ?」

 

 

「はいっ、そうでございます。本日より働いておる者でして。」

 

 

「今日から御世話になりますっ!」

 

 

 

店長と客の世間話に入って、元気良く挨拶をする練也。その彼の姿が好評を呼んだのか、次々と客が来るようになった。後ほどこの八百屋は、巷で宮司が働く縁起の良い八百屋であると噂される程になる。

 

 

 

「(接客の仕事も楽じゃないな...。でも、なんか程良い感じだ...。)」

 

 

 

行き交う人々を見ながら接客をする練也。彼の目には、まさに平和な日常の風景が映し出されていた。この平和な日常をつい最近、ワームによって打ち壊された。それを防ぐ為にも自分が居ることを、練也は再認識した。

 

 

 

「(もう1人の...。別の世界から来た俺が言っていたことは、そういうことか...。確かにこの美しい世界を蹂躙されるのは、黙って見ているわけにはいかないな。)」

 

 

「少々、よろしいですか?」

 

 

「はい、なんでしょうかっ!」

 

 

 

声がしたその方向へ顔を向けると、1人の少女の姿があった。綺麗な銀髪を生やし、端整に仕上げられた紺色を基調としたメイド服を着用し、片手には買い物籠を提げ、中にはドッサリと物が積まれている。見れば買い物をしに来たと1発でわかるが、彼女は何処かのお店で働いているメイドさんだろうか?

 

 

 

「私は紅魔館のメイド長をしている、十六夜咲夜と言います。失礼ですが、貴方が最近こちらに来られた佐藤練也さんで間違いありませんか?」

 

 

「はい、そうです。(紅魔館...?聞いたことないな。新手のメイド喫茶か何かか?)」

 

 

 

 

咲夜と名乗る自称メイド長の少女は、品位ある佇まいを見せながらも練也と会話を続ける。確かに自分で役職名をメイド長と述べるだけあって、雰囲気からちゃんとしているのが練也にはわかった。

 

 

 

「そうですか。では、また仕事が終わる頃に伺います。それでは。」

 

 

「はいっ、お気を付けて!(どことなく無難に対応したけど...。何者なんだ。)」

 

 

 

そして営業時間外。太陽の輝きが若干弱まり、橙色に染まり地平線近くに位置する時刻。客の足が遠ざかり、来店する客が居なくなったのを見計らい練也は他の店員と共に店仕舞いを始めた。それをやり終えたと同時に、声がかかる。

 

 

 

「おい、佐藤。お前にお客さんだぞ。」

 

 

「はい、今行きます。」

 

 

 

店の外に出ると、昼間にあった少女が夕焼けの光に照らされながら立っていた。今までに見たことのない、その容姿と雰囲気。練也は咲夜に早速声をかけた。

 

 

 

「お待たせしました。」

 

 

「いえ、私も今来たところです。それでは申し上げます。本日、佐藤練也さんに用件があり参りました。」

 

 

「俺に用件というのは...?」

 

 

「我が主、レミリア・スカーレット様の命により、貴方を紅魔館に招待するようにと事授かっている次第です。...どうぞ、我等が主の住まう館までお越し下さい。」

 

 

「....。」

 

 

 

練也は、この時思った。これは胡散臭い宗教勧誘か、それとも暇人が暇を持て余しているだけなのか。しかしこの自称メイド長の咲夜の佇まいは、確かなものだ。紅魔館という存在がどうにも怪しいが、此処は幻想郷。何があっても不思議ではない。

 

 

 

「その紅魔館は、一体何処に建ってるんですか?」

 

 

「貴方が前に烏天狗の新聞記者と弾幕ごっこをしていた場所。霧の湖と言われる場所の近くに、館は建っています。」

 

 

「その頃から見ていたんですか。全く気付きませんでしたよ。」

 

 

「そうですか...。それよりお嬢様がお待ちです、早くお越し下さい。私が紅魔館まで案内します。」

 

 

「執拗ですね。」

 

 

 

 

どうやら咲夜は、どうしても練也をその紅魔館という場所へ連れて行きたいようだ。練也は一刻も早く守矢神社へと帰り、今日の報告を神奈子や諏訪子、早苗にしなくてはならないと自身の中で考えていた。わけのわからない館に寄っている暇など、彼には無いのだ。

 

 

 

 

「俺は帰ります。それじゃ...。!?」

 

 

 

 

そう言い、咲夜に背中を向けた練也。帰ろうとする彼の前方には、既に自分が背中を向けていた筈の咲夜の姿があった。練也は彼女をその場で見据え、警戒する。それに対し、咲夜は先程と変わらない様子で言葉を述べた。

 

 

 

「もう1度だけ言います。我等が紅魔館まで、どうぞお越し下さい。」

 

 

「(コイツ...。クロックアップを使えるのか?!)嫌だと言ったら...、俺をどうする?」

 

 

「力ずくで、従わせるのみ...!」

 

 

 

咲夜がそう言いながら、大腿部に装着されたナイフポーチに手をかける。自らの両手にナイフを装備して、咲夜は戦闘の準備を整えた。

 

 

 

「...。嫌だね。」

 

 

「そうですか。残念です。」

 

 

咲夜は練也に数多のナイフを放ち、彼に対して攻撃を開始した。

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