「!?」
咲夜が練也に目掛けて放った数本のナイフは、その鋭い刃を煌めかせ彼を貫かんと迫る。その速度は速く、風を斬る音と共にその数本が練也の皮膚、袴を掠めた。この攻撃は牽制。迫り来る咲夜本人が、攻撃の本命である。
「(速いっ...!)」
両手にナイフを持ち近付く咲夜に対して、キレのある正拳を繰り出す練也だが、彼女の姿は既にそこには無かった。正拳を振るった際に空気を揺らすようなブンッという音が鳴ったに過ぎず、突然消えた咲夜を捉えることは出来なかった。
「(消えた...!?)」
練也の顔面部に、ナイフの刃が突き立てられる。その寸前に彼は身を反らせて、迫る刃の軌道から僅かに外れる。身体のバランスが乱れ、前転をしてから受け身をとり態勢を整えた。頬を新たに刃が掠め、生じた2つの斬り傷からは血が滴っていた。
「(またか...!厄介だな。)」
「....。」
滴る血を手の甲で軽く拭う練也の目には、刃に付着した血を布で拭う咲夜の姿が映る。手拭いで拭き抜いたナイフの刃先を地面に向けた状態で、非常にリラックスをした様子で彼女は自身が持つ懐中時計を見る。
「......。」
自身の両腕にエネルギーを収束させ、それによって練也の両腕が赤いオーラに包まれた。このオーラを纏うことによって、エネルギーを一点に収束し光線を撃ち出すことができ、また威力のある拳打を放つことが出来るのだ。
「行くぞっ!」
「...。」
一瞬で両手に数多くのナイフを持ち、それらを自身の身体の前にクロスさせるようにして構え、咲夜はナイフの刃を煌めかせながらそれらを放った。
ナイフの1本1本が1つの閃光のような煌めきを放ちながら、咲夜の手から放たれた。それらが練也へと迫る。衝撃波を発すれば迎撃出来るかもしれない。しかしそれをやれば今朝の時のように巨大なクレーターを作るだけではなく、住居を破壊してしまう。
「(くそっ...!ダメだ、やられる...!)」
練也が諦めかけたその時だった。突如として弾幕が飛来し、咲夜が放ったナイフを迎撃。その弾幕の色は、青。その弾幕を放った者は、彼等のすぐ近くに現れた。昼間に練也が寺子屋で会った上白沢慧音が手を翳し、弾幕を放った格好のまま言葉を述べた。
「人里でこのような真似をするなど、あまり感心しないな。まして、かの有名な紅魔館のメイド長らしくない振る舞いだ。」
「....邪魔が、入ったか....。」
「慧音さん!?」
「ああ、間に合って良かった。」
その後、更に咲夜を襲う新たな弾幕。その色は赤く、咲夜を追い込もうと迫る。それも回避する彼女だが、ここでまた新たな存在が姿を見せた。
「慧音、大丈夫?!...お前、紅魔館のヤツだな...?」
「...。」
想定外の事態だ...。これでは多勢に無勢。あまりにも戦闘を継続するのは無謀。
「......。」
咲夜は姿を消した。